E93M1: 『Lies of P』ブラボというより、むしろSEKIRO? 耽美なピノッキオのアクションRPGはジャスガが超重要

文:BRZRK 編集:ミル☆吉村

公開日時:2023-09-14 00:00:00

 ドモー。手軽に移動できる電動キックボード(特定小型のやつ)を購入したことで夜中でも飯を食いにいける距離が広がったBRZRKです。ナンバー取得とかちょっと面倒だったけどかなり満足。

 今回紹介するのは『Lies of P』(PS4/5, Xbox Series X|S/Xbox One, PC。Game Pass対応。9月16日0時よりデジタルデラックス版アーリーアクセス、19日0時より正式配信開始。公式サイト)。カルロ・コッローディの童話『ピノッキオの冒険』を題材にスチームパンク的な世界観と融合させた、ソウルライクなシングルプレイアクションRPGだ。

 開発は韓国のRound 8 Studiosってことで、普段このブログで扱っている欧米の海外ゲームと毛色が違うけど、ソウル系も好んでプレイする筆者ということで扱うことに。ただイロイロと悩ましいこともあり、担当編集との“困ったときの対談形式”ですすめていきたいと思う。

■「ダクソ・ブラボよりむしろ隻狼」ぐらいのジャスガゲー

BRZRK(以下、B) つーわけで発売前に恐らく中盤?くらいまで本作を遊んでみたけど難しいねこのゲーム。最初はダークソウルとかブラッドボーンみたいなもんだろうなと思って遊んでみたけど、アクション部分の手触りは結構違うんだわこれが。

ミル☆吉村(以下、M) 正直『Bloodborne』をイメージする人は多いと思うんですよね。美術のテイストとかからも絶対影響を受けているのは感じられるし。

B あー、俺も最初トレイラーとか画面写真を見た時はブラボクローンかなと思ったね。でも、プレイしてすぐに間違いだと気付かされる。

M ブラッドボーンってドッジ(回避)と銃パリィ(相手の攻撃モーションに発砲で割り込むアクション)で敵の攻撃に対応しながら戦っていくゲームだと思うんですけど、その感じでやっていくとどうにも初期ボスすら倒しづらかったりするんですよね。

『Lies of P』

B んで、俺とミルがたどり着いた結論は「このゲームはとにかくジャスガ(※)」ってこと。(※ジャストガード。敵の攻撃に合わせて防御することで弾く)

 つーのもさ、ジャスガだと敵の攻撃をほぼノーペナルティで受け止められるけど、普通にガードしちゃうとペナルティでスタミナだけでなく体力も削られるのよ。

M 実はブラボのリゲインシステムがここに応用されてて、ガードで削れた体力は自分が攻撃を当てることで回収できるようになってるんですけど、相手のコンボが始まってたりすると回収のための反撃タイミングが厳しかったり。

B まーぶっちゃけると「ブラボの皮を被った『SEKIRO」なんよねコレ。ジャスガでとにかく凌いで、敵が次の攻撃に入るまでに効果的な攻撃を当ててまたジャスガ。この繰り返しって感じかな? だもんで、ブラボ・ソウル系のイメージで遊ぶと違和感が凄いある。

M Co-op(協力プレイ)がないし、一部の例外を除くと遠距離武器もないので基本的に接近戦のゲームなんですけど、ジャスガのメリットがちょっと多すぎるぐらいあるんですよね。

『Lies of P』

B ジャスガしないと体力ゴリゴリ減るわ、下がって戦っていると攻撃を差し込むチャンスが減るわで結構なテクニック要求脳筋ゲーかな。

M ジャスガして攻撃の手数を増やすと致命攻撃を入れられるスタガー状態にもなりやすくなるし、さらにこのゲームでは攻撃を当てていくと回復薬(パルス電池)の使用回数が回復したりする。

B 回復薬が復活するまでの溜まりも遅いけど(笑)。ちょっと進めていけば“P機関”という強化システムを使って多少のボーナスは獲得できるんだけどさ。結局、明らかにジャスガしまくって手数を増やすのを奨励するシステムになってるよね。

『Lies of P』

M ちょっと思うんですけど、『SEKIRO』って高速な移動アクションがあった上での剣戟の“弾き”(ジャストガード)じゃないですか。

B うん。動き回りながら、受け止められる攻撃が来たら弾きで敵の体幹を削ってって、致命攻撃に持っていくって感じだよね。

M でもこのゲームってテンポやキャラクターのスピードはダークソウルなんですよね。しかも『SEKIRO』みたいに“受けてはいけない攻撃”がなくて、代わりにあるのが“ジャスガするか大きく避けないといけない攻撃”(赤く光る)。

 なので下手に動き回って回避も織り交ぜるとかより、もう腹をくくって足を止めて全部ジャスガするつもりで待ち構えるぐらいの方がよくなってしまう。

『Lies of P』

B そうね。俺はソウル系では「相手の攻撃をガードしてから背後に回り込んでバックスタブ」みたいな戦法を好んでやるんだけど、このゲームではそれができる局面が少ない。

 だから「このゲームはジャスガなんだ」って頭を切り替えるの結構苦労したね。ってかまだ適応しきれてないわ。でも、敵の連撃を捌き切ったときの快感~ンッ!

M ジャスガで捌き切って大きな隙ができたら、中二病全開な戦技“フェーブルアーツ”を叩き込んでいくというようなね。ボスへの致命攻撃も結構派手だし。

■最序盤でつまづくならサクッとやり直すのもアリ

B このゲームの特徴を把握する前は、体験版にも出てくる序盤のボス”パレードマスター”を相手にするのすら結構シンドかったね。まぁそれも最初からやりなおして戦闘スタイルを変更したらなんとかなったけど。

M オープニングでオールマイティな平均型の“コオロギの道”、いわゆる技量特化の“バスタード”、脳筋スタイルの“スイーパー”の3種類から選んでスタートするんですけど、BRZRKさんは最初バスタードを選んだんですよね。

『Lies of P』

B バスタードはガード時の削れが大きいレイピアが初期武器なんで、ガードで受けてたらもりもり体力が削れてどうにもならなかった。大剣使いのスイーパーを選んだらなんとか安定したって感じだね。

M 自分もバスタードを選んだんですけど、レイピアはRTチョイ押しの一回踏み込んでステップバックする攻撃とRT長押しの3連突きが便利で、間合い管理しながらのヒット・アンド・アウェイが面白いものの、守備はほぼジャスガするか完全に避けるかの2択ですからね。

B とりあえずパレードマスター戦でつまづくようなら、無理に踏ん張らずサクッとやり直して戦闘スタイルを変更したほうがいいと思うね。ストレスも軽減されるだろうしさ。

M 初期武器はどれもパレードマスター戦前に買えるから、とりあえず平均的なステータスの“コオロギの道”を選んでスタートするのもアリかもしんないですね。初期ステータスの違いはあるけど、レベルは結構サクサク上がりまくるから割とすぐに差を埋められるし。

B ところでレベル上げは何をメインで上げていってる? 俺は主に攻撃力に直結する”動力”と属性攻撃のダメージ上昇のために”進化”を上げてたけど。

M 自分はいわゆる技量特化型をやってみたかったんで、攻撃力は完全に“技術”依存ですね。あとこのゲーム、ちょっと装備を厚くするとすぐ“少し重い”って判定にされるので、重量軽減のために“積載力”をガン上げしてます。

B あー、積載力は移動速度に関わるし割と大事だよね。積載量の負担を軽減する装備品とかもあるけど、移動にストレスを感じない程度に割り振りは必要かな。

『Lies of P』

■武器の合体改造システムなどはユニーク

B そういや武器まわりのシステムは結構作り込んでるよね。武器の強化はもちろんだけど、刃と柄を別々に組み合わせたりすることができるのはオモロイ。

M 刃が攻撃力のステータスを持ってて、柄がボーナス特性(筋量が高いと伸びるなど)を司っているという関係。さらにどちらにもフェーブルアーツがついてて、それらを組み合わせられるんですよね。だから攻撃力が高いとか魅力的なフェーブルアーツがついてる刃を自分の特化に合わせた柄と組み合わせるってことができる。

B まぁメインで使ってる武器では最初の組み合わせが自分に合ってたからあんまり組み替えてなかったけど、ゲームを進めていってビルドが深くなると、よりこのシステムのポテンシャルを感じられるようになるだろうね。

『Lies of P』

M これも隻狼っぽい要素ではあるけど、グラップリングフック風の“パペットストリング”とか火炎放射器とか設置爆破型とか銃タイプとか、武器を仕込んだ左手“リージョンアーム”も面白いシステムですね。

B 俺はパペットストリングが好きだね。レベル上げするときに敵を引き寄せて倒してっていうのがサクサクできるから楽しい。

M わかりますね。あとパペットストリングは強化すると敵に向かって飛ぶこともできるから、小屋の屋根の上から爆発物を投げてくる敵とかいる所で一気にそいつを倒しに行ける。高低差があるとちょっと届かないことがあるので慣れが必要ですが。

B でも敵によっては引き寄せできないとかの制限も有ったりするよね。ミニボス的な人間にも使えたりするけど、デカい強雑魚とか大型ボスには無理。

M 他のリージョンアームも大型ボス相手だと使い所が限定されてたりするのがなぁ。まぁでも、強雑魚と雑魚数体が出てくるようなシチュエーションとかではリージョンアームとフェーブルアーツをどう使うかがカギって感じですかね。

B アームはスターゲイザー(このゲームで言う篝火的なポイント)じゃないと切り替えられないので、出てくる敵とかマップの構造が分かってからじゃないと効果的に使うのは難しいけどね。

『Lies of P』

M ビルド構築にはそのほかにも各種ステータスアップ以外にも防具とか、Perk的な能力を得るアミュレットとか“P機関”とかもいろいろあってよさげなんだけど……要素がそこそこ揃うのが結構遅いんですよね。

B だから序盤は悪く言えば代わり映えがあんまない。オモロイ要素が出始めるまでに心が折れる人って結構居るんじゃないかな?

M なので我々としては、そこを乗り切る妨げになる誤解をとにかく解消したい。いわゆるボス武器を入手できるようになるのとか、3人ぐらい倒した後ですからね。

B そう。ボスを倒して得られるレアエルゴ(ソウル的なやつ)は使わないで温存がマストだよ。

『Lies of P』

■マップ構造は仕込みネタはいろいろあるものの割と一直線

M レベルデザイン、要はステージの作りはどうでした? 序盤のエリアがあまりにも直線的な要素ばっかりで作られててちょっとびっくりしたんですけど。

B ソウル系みたいにマップをウロウロするような構造ではなくて「こっち行け」という動線がはっきりしすぎてる感はある。まぁそれでも見つけにくい曲がり角とか入ってみると武器があったりエルゴがあったりという馴染みのパターンはあるけどね。

M 曲がり角に敵がいるトラップ配置とかね(笑)。でもショートカット開けなどの要素もあるけど、最初からモロに見えてる場所がそのまんま本当にボス前の終点から繋がってたりする。

B だから「あーこのエリアとここが繋がんのかすげぇな!」という驚きは皆無。というかぶっちゃけレベル構成が『バイオハザード4』みたいじゃない? 絵的にも似てるけど、そもそもの構造がさ。

『Lies of P』

M 探索でぐるぐるまわっていって世界が広がっていくようなスタイルではないですね。章が進むと少しは横道が長くなったりしてある程度構成が複雑になっていくんですけど、いろんなエリアに繋がってるみたいなことは遊んだ限りではなかったし。

B あとエリアごとに雰囲気が変わりすぎなのもちょいと気になるかな? なんつーか地続き感がないというか。

M それはありますね。それぞれのエリアを見ると「あぁこういうテーマなのね」っていうのがわかるんだけど、物語的な繋がりが感じられなかったりする。「そもそもなんでここ一回下がって上がるような構造になってるの?」とか。

B 「こういう高低差のあるマップをやりたい」みたいなテーマありきで作っているような雰囲気は感じるね。なぜこういう構造してるのかっていう説得力のある設定が感じられないから「なんで大聖堂にこんな大掛かりな鉄格子とかエレベーターあんの?」って思ったり。まぁゲーム性には関係ないけど。

M  「酸を投げてくるやつがいる中で天井の梁の上を走っていかなきゃいけないセクション」とかそういう苦行じゃなくてね、もっと物語が感じられるような所を真似てほしい(笑)。ステージの長さとショートカットまでの距離がばらつきがあるのとかも気になったなぁ。

■アート面、ストーリー面はなかなかナイス

B アート部分はかなり力を入れてデザインしているなぁという印象。スチームパンクな世界観とビクトリア調はもともとマッチするけど、そこに『ピノッキオ』を被せて耽美な自動人形モノにしたのもうまくハマってる。てか「ピノッキオが美少年なうえにオープニングエリアでは雨でシャツが濡れ透け」ってどこの層を狙ってるんだか。

M このゲーム、防御を上げる装備と外見の着せ替えアイテムが別なんでね、ゲーム内ファッションが好きな皆さんはぜひいろいろ集めて欲しいですね。

B ただ、ピノッキオのビジュアルと比べて他の登場キャラクターの力の入れ具合が結構違うというか、韓国産MMOのキャラクターデザインという感じが強すぎて、そこは若干の違和感があるかな。

M 確かにピノッキオは主人公としてオリジナルで映えるものにしようという意気込みが明らかに感じられるのに対して、周囲のキャラクターはどこかで見たような感触のキャラが多かったような気はします。ピノッキオの耽美な感じで全員揃えてっても良かったのになぁ。

『Lies of P』

B こんな感じだけど、本作は原作と同様にピノッキオの嘘がテーマのひとつになっていて、ゲーム中にも関わってくるのは面白いね。 ローディング画面も「Now Loading」じゃなくて「Now Lying(嘘をついてます)」なうえに、ローディングゲージが伸びる鼻っつーのもイカしてる。

M この世界では人形は嘘をついてはいけないというのがロボット三原則的なルールの禁止事項になっているんだけど、そもそも拠点であるホテルに入る時に「人間です」って嘘をつかされるようになっているんですよね。

『Lies of P』

B それでそれ以降に出会う人にも嘘をつくか選択が求められていく。嘘をつくと「ぜんまいが反応した」とだけ表示されて、どんな影響があるのかは話を進めてのお楽しみ、みたいになっている。

M サイドクエストで困っている人を助けるために嘘をつかなきゃいけなかったり、なかなか悩ましいんですよね。そうこうしてるとどうにも怪しいアイコンがステータスバーに増えていったりするし(笑)。まぁこのあたりはまだ我々としても掘り下げきれてない部分ですが。

B サイドクエストはチョイチョイあるね。お互いの進行度を報告していて「え、アレそういう展開があったの?」ってこともいくつかあった。意味深なセリフとかが聞こえたり、敵じゃないっぽいNPCを見かけたらチェックしに行くといいんじゃないかな。

■まとめ

B そんな感じでまだぜんぜんストーリー半ばなわけだけど、開発者は30時間くらいのプレイタイムを想定しているらしくボリュームはソコソコあるんじゃないかと思う。まぁ死にゲーなので進度は人によって千差万別だと思うけど。

M とにかくこのゲームならではのシステムを早めに把握して、結構スローな展開になる序盤をうまく乗り切って欲しいですね。ステージ自体はそんな長くないので。3章・4章ぐらいになればこのゲームらしさが出てくるから。

B 俺個人としては回避を駆使して裏とったりといったソウルライクなムーブなほうが好きなので本作のアクション面はいまいちピンとこない部分もあるんだけど、物語がどうなるのかスゲェ気になるのでクリアまでプレイしたいとは思うよ。Gamepassでも配信されるしさ。

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著者近況:神社巡りしたい
編集者近況:8月9月のリリースラッシュでレビューやりすぎて廃人に

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BRZRK
週刊ファミ通やファミ通Xboxに“スオミ松崎”名義で執筆していたFPS歴15年のフリーライター。現在は他媒体でも使用しているBRZRK(バーサーク)名義に変更し、執筆活動のほかにゲーム大会の実況・解説やインターネット番組に出演したりしなかったり。まぁ、そんな感じでイロイロやってます!

BRZRKの「うるせー洋ゲーこれをやれ」(仮)