Secret Level 01: 早く殺りたい! F2Pなオンラインゾンビサバイバル『H1Z1』

公開日時:2014-08-16 00:00:00

 最近の洋ゲーで少しずつ勢力を伸ばしているのがPlayer versus environment(以下、PVE)と呼ばれるプレイヤー対環境をテーマにしたゲームだ。具体的にどういったゲームかと問われれば、あえて名前を挙げるべきタイトルは『DayZ』だろう。

 日本人には馴染みのないタイトル名だと思うが、どういったゲームかと簡単に説明すると、ゾンビアポカリプスに陥った世界にあるチェルナルス共和国という架空の国を舞台に、プレイヤーはただ生き延びることを目的としているゲーム。

 プレイヤーはゾンビアポカリプスで難を逃れたサバイバーとしてチェルナルス共和国にスポーンし、サバイバルに必要な物資を探して町や都市を訪れたり、動物を狩ることで食料としたりすることが可能だ。

 ここまで聞くと、案外簡単そうに思うかもしれない。しかし、それは大きな間違いだ。『DayZ』はマルチプレイ専用のゲームで、同じ境遇のプレイヤーがサーバー上に30人~50人ほど参加している。つまり、ちょっと立ち寄った倉庫の中で、地面に落ちている食料を挟んで他のプレイヤーと睨み合い、最終的に殺しあうといったことも少なくない。

 つまり、平和ボケしたMMOみたいに「プレイヤーどうし仲良く遊びましょうね!」といった雰囲気ではなく、「弱い奴、死ぬ奴、騙される奴、殺される奴が悪い」といった世界であり、少しでも油断すればPKされるシビアなタイトルとなっている。

 元々はミリタリーFPS『Arma 2』のMODとして、Rocketの名前で知られる開発者のDean Hall氏が空いた時間に制作している遊びのMODだった。しかし、シビアなゲームに偶然と発生するドラマ性や、参加するプレイヤーが善人や悪人を自由に演じる世界に魅了される人が続出した。
 ちなみに、『Arma 2』の発売が2009年で、DayZがリリースされたのが3年後の2012年なのだが、このMODのおかげで『Arma 2』が爆発的に売れ、死に体だったタイトルが不死鳥のごとく大復活する珍事が起きた。


 その後、MOD版『DayZ』の人気に気を良くしたのか不明だが、『Arma 2』のデベロッパであるBohemia Interactive StudiosはMOD版とは互換性がない新規製品として『DayZ Standalone』を発表。開発が難航してスケジュールがかなり遅れたものの、昨年の12月にSteamにて完成版とは程遠いアルファ版を早期アクセスタイトルとして発売。現在は200万本以上のセールスを記録しているビッグタイトルとなっている。

 と、華々しい感じではあるが、正直現状の『DayZ Standalone』はプレアルファ版ということもあり、遊べることは遊べるのだがゲームとして見ると不便な点が多く、1から作り直してることもあり乗り物が未実装だったり、バグが多かったりといった問題を抱えている状況である。

 さて、そんだけ大ヒットしたなら当然のようにフォロワーとなるゲームが登場する。最初に名乗りを上げたのが『Infestation survivor stories』というタイトルだ。このゲームは最初『WAR Z』というタイトルで売りだしたのだが、映画『World War Z』と商標のバッティングや他所のコンテンツを無断借用したり、そもそもゲームの最初の出来が酷かったりしたため、Steamから除外(今は復活)されたりと、なんとも言い難いゲームだった。

 その後も『Nether』や『Rust』といったフォロワーは出てきたのだが、その中でも特に注目を集めたのが今回取り扱うSony Online Entertainmentの『H1Z1』である。


■Planetside2の製作陣が作るゾンビアポカリプス!

 そして、現在行われているSony Online Entertainment主催のイベントにて、『H1Z1』のKeynote(基調講演)が日本時間の午前7時から約55分に渡りTwitchで配信された。Keynoteとは基本的にどういうゲームかをプレゼンする場だと思っていたのだが、行われたKeynoteは特にプレゼンは行われず、開始早々にQ&Aセッションがスタートする少々肩透かしなところからスタートした。そこで、まず最初にこのセッションで明らかになった内容について気になるポイントをいくつかピックアップしたので紹介していこうと思う。

Q:地図はあるのか?
A:キーボードのMキーを押すことで表示されるような物はない。もしかすると、ポップアップアイテムとして存在するかもしれないが、今はまだなんとも言えない。

 なんとも濁した表現だが、恐らく最初はプレイヤーにマップを彷徨ってもらうのが目的なのだろう。そして、あわよくばユーザーがwikiのような感じで地図を作ったりといった動向に期待しているのかもしれない。ちなみに『DayZ Standalone』ではマップが落ちていたりするのだが、Steamのオーバーレイで地図が掲載されたページを見るのが常套手段となっており、アイテムとしての存在価値があまりない。

Q.マイクロトランザクション(少額課金)で買ったアイテムは死んだ時にロストするのか?
A.課金やアイテム性能についてのデザインはいろいろ検討したが、買えるアイテムは外見用のアイテムのみで、それでゲームが有利になるような性質のものではない。購入したものについては死んだ場合もキープできる。

 『DayZ』では入手したアイテム類は、殺害された瞬間にオールロストとなる。しかし、『H1Z1』ではアイテム課金で購入できる外見用アイテムに関してはロストしないことが判明。この外見用アイテムがどういった物なのか現時点では不明なのでなんとも言えないが、「ゲームバランスに影響しない」と言っているとはいえ、例えば草木に擬態するためのギリースーツのようなアイテムの場合、持つ人間と持たない人間で優劣がハッキリしすぎる。イーブンな状態とはいえない。それと個人的には課金アイテムだろうとロストするシビアさで良かった気がする。まぁ、ゲームバランスが変わるようなアイテムじゃなければありがたいが。

Q:ほかのプレイヤーとの会話手段はあるのか?
A:ボイスチャットは実装済み。ただ、トランシーバーと短波ラジオはどう組み込むか思案中。普通のラジオみたいにチャンネルや周波数を変えたら他所の会話が聞こえたりするかも。

 『DayZ』ではサーバーに参加しているプレイヤー全体に聞こえるボイスチャットと、近場のプレイヤーにのみ聞こえるボイスチャットが実装されていた。その使い方も千差万別で、近距離チャットで相手プレイヤーを威嚇したり、全体チャットで追い剥ぎの居場所と名前を報告するなどイロイロ。恐らく、同様なスタイルを構築し、ユーザーにその使用方法を任せたいのだろう。

Q:物をぶっ壊したらどうなるの?
A:時間経過で復活する。プレイヤーが建築した建物の場合、定期的にメンテナンスをしなければ劣化するだろう。

 MOD版の『DayZ』で一部のサーバーが採用している建造MODとか、『RUST』に実装されている建築についての質問だろうか。木を伐採して入手した木材とかを使って『H1Z1』はプレイヤーが基地を構築することが可能なんだけど、要メンテナンスだそうな。松明を持っていれば放火することも可能なゲームなので、定期的にメンテしないと進入路が作られて荒らされるといった感じかな? 資材とか物資をしこたま持ってそうな基地を荒らすことができるなら面白そうなシステムである。

 Q&Aセッションの最後に公開されたのが、マップ上空に飛来するC130らしき輸送機から物資の入ったケースが投下される、つまりエアドロップイベントの映像。

 このケースの中身は明らかではないが、恐らくレアアイテムやレア武器が入っており、それを求めてプレイヤーどうしが殺しあうといった流れになるのだろう。もしかすると、物資が投下される前に、どこどこに投下するといった情報が共有されるシステムがあるのかもしれない。いずれにしろ、漁夫の利を狙うプレイヤーが大量に発生しそうで興味深いイベントだ。


 といったところ。今回のKeynoteと同時に行われているプレイイベントを見る限り『DayZ』と『Rust』のいいとこ取りを狙ったタイトルと言ってもいいだろう。

 元々MOD版『DayZ』にはクラフト要素が一切なかったのだが、『DayZ Standalone』では切り倒した木から弓を作ったりといったクラフト要素が実装されている。また、『Rust』はプレイヤーが集めた資材を利用することでベースを構築することが可能だ。『Rust』が元祖という訳ではないが、本作のシステムに大きな影響を与えているように見られる。

 実際にTwitchの『H1Z1』チャンネル(www.twitch.tv/h1z1)で行われている配信や、E3デモのプレイを収録した動画を見ると、プレイヤーが建物を建築したり、伐採した木材と引き裂いた布を組み合わせることで弓矢を作ったりしながら戦っているのがわかる。

 ゲームディテールに関しては不明な点がほとんどで、サーバーに参加可能な人数やアップデートの頻度といった点は不明。早期アクセス(編注:本編はF2Pだが早期アクセスは19ドル99セントらしい)には最低限の要素のみが実装され、少しずつコンテンツを増やしていく『マインクラフト』スタイルが採用される見込みだ。

 まだまだリリース日が不明だったり、近接攻撃にヒット感が無かったりと物足りない部分は多いが、PK上等なPvEゲーが好きな人にとっては気になるタイトルである。  ちなみにこの『H1Z1』はPCだけでなくPS4でのリリースが正式に発表された。今年のGamescomではパイオニアと言っても過言ではない『DayZ Standalone』のPS4版も発表されたことも有り、今後もPvE市場は目が離せないと言って良いだろう。


著者近況:『Infestation survivor stories』は絶許(編集:もう許してやれよ)

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BRZRK
週刊ファミ通やファミ通Xboxに“スオミ松崎”名義で執筆していたFPS歴15年のフリーライター。現在は他媒体でも使用しているBRZRK(バーサーク)名義に変更し、執筆活動のほかにゲーム大会の実況・解説やインターネット番組に出演したりしなかったり。まぁ、そんな感じでイロイロやってます!

BRZRKの「うるせー洋ゲーこれをやれ」(仮)