E47M1: 2018年は'90s FPSの20年ぶりの豊作年かもしれない! 突発的'90s FPS特集(前編)

公開日時:2018-03-16 10:35:00

 ドモー、日頃エナジードリンクはRed Bullばっかり飲んでるわけだけど、今のようにいろいろエナジードリンクが日本に入ってくる前には、BAWLSという超強力なハイカフェイン飲料が輸入されて一部地域で出回っていたのを今でも覚えているBRZRKです。あれ、飲みすぎるとマジで震えが来るくらいアブねぇんですわ。

 まぁそんなわけで、最近のPCインディーFPS界隈で最先端を突き進む、90年代(風)FPSのタイトルをいくつか紹介したいと思う。ちなみに、アーリーアクセスのタイトルの話がほとんどなので、実際の製品版では良し悪しの印象がぜんぜん違うものになる可能性もある。その点についてはあくまでプレビューということで容赦して欲しい次第だ。

 そんなわけで、今回は担当編集であるミル☆吉村とBRZRKのふたりで、困ったときの対談形式で進めていこうと思う。(前編 / 中編 / 後編
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ミル☆吉村(以下、M): BRZRKさん、事件ですよ! 3D Realmsから20年ぶりにBuildエンジンの新作登場ですよ! その名も『Ion Maiden』。『Bombshell』ってあんまり成功しなかったゲームの前日譚なんですが、内容が完全に……。
BRZRK (以下、B):プレビュー版を遊んでみた印象は『Duke Nukem 3D』(1996)のキャラ総とっかえ版だったね。MODかよと思うレベル。

M: そして僕らがしばしばつきあいのあるインディーFPS界の黒幕Dave OshryのNew Blood Interactiveからは、新たなオールドスクールFPS『Amid Evil』が登場。もしかして2018年は90年代FPSにとって、ここ30年で最高の年なんじゃないでしょうか!
B: 2018年に満を持して'90s FPSが熟成されたという印象はあるかな。最先端の技術とかクソ食らえ感あってIndeed。

M: そもそも90年代FPSって、『ウルフェンシュタイン3D』(1992)から初代『ハーフライフ』(1998)ぐらいまで含まれるわけですけど、BRZRKさんにとって特徴的な要素はどの辺ですか?
B:見た目の印象で言うと、スプライト処理とか、ローレゾ(低解像度)でソフトウェアレンダリングのガビガビ感(※詳細は後述)。あと、スクリーンショットで出力した画像ファイルのフォーマットがPCX形式。
M: ああ、変換がめんどいって奴。あとそれは当時の話ね。今はSteamの機能でJPGで撮れちゃうから。

B: あとゲームシステムとしてはキーカードとか鍵を探さないと次のエリアが開けないとか、探索要素がやたら多かったかな。
M: そう、探索ですよね。作者不詳(※)の「FPS Map design」という昔のFPSと現代的(2010年当時)なFPSのレベルデザインの違いを皮肉を込めて描いた図があるんですけど、ここで強調されているのが、とにかくマップの各地をぐるぐる探索して進んでいく作りになっていること。(※編注:『バイオショック』のレベルデザイナーの誰かによるものという噂があるが、当時の関係者に聞いてみたものの、誰が描いたのか確証は取れず)

fpsmapdesign2010

B: 当時はPCに搭載されているメモリの容量が少ないこともあって、最近のゲームみたいに大きなマップを作ることが難しかった。そこで、容量の小さなマップでも遊び応えを良くするために、「通行証を探し出さないとルートが開けない」といった仕掛けがあって、進んでいくと序盤のドアが開いて、そこに向かう途中で敵が再配置される……みたいなのが多かったよね。
M: とにかく限りあるスペースに遊びを詰め込みたいという発想ですよね。なんせ本当に初期はカットシーンなんかもないわけだし、ほとんど全部レベルデザインやマップギミックで驚かせたり笑わせたりするしかない。だからシークレットや罠もいっぱい仕掛けてあって、僕はレベルデザイナーと会話してる気分になれるんですよ。個人的には当時のFPSのなかで、単なる射的の要素より探索要素の大きさの方が重要ですね。
B: だから老害的に言わせてもらうと、昨今のゲームでどう見ても行けそうなのに行けない場所とかがあると割とフラストレーションが凄い。いや、昔のゲームもそういうのはあったけど、リアリティが増したから余計にそう感じる部分があるかな。

Keycard

よくある仕掛け、キーカード。敵を倒しつつカードを取りに行って戻ろうとすると、途中の広場かなんかに新たな敵が出ているというのがお約束。

M: グラフィックはさっき少し触れてもらったように、今オマージュする場合は2パターンあって、3Dマップと2Dスプライトを組み合わせたタイプか、ガビガビのローポリ3Dのどっちかですよね。僕はどっちの表現も単なるノスタルジー以上の何かがあると思うんだけど、どうですか?

B: んー、返事が難しいなこれ。多分、面白さ=グラじゃないっていうアンチテーゼもあると思う。だから、資金云々は置いといてインディーのデベロッパーはオールドスクールスタイルに取り組んでいる人が居るんじゃないかな? まぁグラが良くてもクソなゲームなんてごまんと有るし。
M: 実際この手の作品を作るところはインディーなんで、リッチな今時の3Dモデルでフルに作るよりは工数が多分少ないというのも事実ではあるとは思いますね。それでこのスタイルを選ぶというわけではないと思いますけど。

B: そっちはどういう捉え方してる? ノスタルジーと工数以外に何かあると思う?
M: 僕としては2Dスプライト系FPSの場合はクレイアニメーションを見ているような独特な不穏さを感じるし、ガビガビのローポリ3Dの場合も、今見ると歪んだモデルに気味悪さを感じるんですよ。
B: あーわかる、スプライトで表示されるキャラは解像度が低いテクスチャのキャラクターがノソノソ動いていて、クレイアニメーション感はかなりあったかな。特にGlide(※)で処理されたゲームに多い傾向。(※編注:3dfx社製の3D処理チップVoodooに特化したグラフィックAPI。初代『Quake』や『トゥームレイダー』などが採用し、一時覇権を握った)

DN3D-Quake

左がスプライトFPSの『Duke Nukem 3D』の敵(厚みがない)。右の『Quake』は、ガビガビのローポリ(頂点数が少ない)だが3Dモデル。

M: グラフィックとレベルデザインの特徴の話をしましたが、それ以外のゲームデザイン面で特筆すべき点はどうでしょ。
B:移動速度がやたら早くて制御が難しい。当時マルチプレイ対戦をやってて回線がラグった時、自分が撃ったロケットランチャーに追いついて被弾できたぐらい。
M: 2016年版のリブート版『DOOM』が発表された現場にいましたけど(※当時の記事)、そこで最初に主張してたのも「速い」ってことでしたからね。
B:リブート版はあれでも'90sに比べると遅いんだけどね。当時は移動速度もはえーし、着弾速度も即着だったよね。撃った瞬間に当たってる感があって、その視覚情報で得られるフィードバックがメチャクチャ気持ちよかった。その極みにあるのが『Brutal DOOM』(ModDB内の『Brutal Doom』配布ページ)なんで、是非プレイしてみて欲しいかな。むしろ殺(や)れ。
M: それ最近のMODだから! まぁオリジナル『DOOM』のインパクトを強調したものであるのは間違いないし、だからこそリブート版『DOOM』がどう見ても参考にしたぐらい、いいゲームですけどね。
B: (*ノω・*)テヘ (まさかの顔文字で中編へ続く)

著者近況: しゃぶしゃぶはゴマダレ派

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BRZRK
週刊ファミ通やファミ通Xboxに“スオミ松崎”名義で執筆していたFPS歴15年のフリーライター。現在は他媒体でも使用しているBRZRK(バーサーク)名義に変更し、執筆活動のほかにゲーム大会の実況・解説やインターネット番組に出演したりしなかったり。まぁ、そんな感じでイロイロやってます!

BRZRKの「うるせー洋ゲーこれをやれ」(仮)