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『KOF』の未来を拓く人々~『KOF15』開発者インタビュー~第4回ステージグラフィック編

KOF XV』クリエイターインタビューの連載第4回目は、ステージグラフィックを制作する中心人物3名に話をうかがった。

公開日時:2022-03-28 10:45:00

 戦いを演出するステージグラフィックは、対戦格闘ゲームにはなくてはならない要素。『KOF XV』クリエイターインタビューの連載第4回目は、それを制作する中心人物3名に話をうかがった。これまでのインタビューに引き続き、ディレクターとして制作現場を統率するおぐらえいすけ氏、空中海人氏には今回もご同席いただいた。『KOF』はステージの作り込み具合もファンに愛される理由だが、本作での意気込みはいかに?

※記事はソフト発売時期の取材をもとに作成しています。

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おぐらえいすけ氏(下段左)
クリエイティブディレクター。バトルやグラフィックなど、ゲームプレイに関わる部分をすべて指揮する。

空中海人氏(下段右)
ゲームディレクター。制作の管理がおもな業務で、バトルシステムを考案するといった作業も行う。

天野祐輔氏(上段左)
アートディレクター。キャラクターグラフィックと同様にステージのグラフィックの制作も管理。

野中真江氏(上段中央)
イラストレーター。実際にグラフィックデザイナーが制作するステージのもととなるコンセプトアートを担当。

ジム・ブルマー氏(上段右)
プログラマー。キャラクターグラフィックと並行して、ステージグラフィックでもプログラミング作業を行う。

ステージのコンセプトは“大会らしさ”、“お祭り感”

――最初に、ステージがどのように作られているのか作業の流れを教えていただけますか?

天野 まずは設定に基づいて、私やおぐらと野中でその世界をイメージした絵、すなわちコンセプトアートを制作します。その作業と並行して、簡素な背景モデルのモックアップ(基礎)を作り込んでいきます。ここで作るものは、ステージのもととなる仮のもの。レイアウト設計するために用いる仮素材なんです。

――キャラクターと同様に、最初に基礎となる素材から作るのですね。

天野 そうですね。見せかたの方向性が決まったら本番のモデル制作に入ります。背景に用いるさまざまな配置物、建物、モブを作り込んでいき、最後に実際のゲームに搭載して調整をします。おおまかな説明ですが、こんな流れで進行しています。

――ステージ構成は、ゲームやストーリー内容を反映したものになると思うのですが、どのようにアイデアを出していくのでしょう?

野中 さきほど、最初にコンセプトアートを制作するという話が出ましたが、その前段階に行う作業としてディレクターとの対話があります。ここでは、どういうゲームにしたいのかというゲームの全体的なイメージを確認します。そして、対話を重ねて徐々に具体的なレベルまでイメージのすり合わせを行います。ここで得られたことを絵に起こして形にしていくのです。

――コンセプトアートは、やはり時間をかけて制作するものなのですか?

おぐら そうですね。でも、その後の実制作の過程で多くのステージが最初のコンセプトアートとは変わってしまいます(笑)。たとえば、我々のほうで浮かんだアイデアをコンセプトアートに盛り込んでも、プロデューサーの小田から「それは、止めて」と制止されることもあります。我々はそこでまた頭を悩ませるんですよ。

――制止が入るほどの大胆なアイデアだったんですね(笑)。ちなみに、リテイクはかなりあることなのでしょうか?

おぐら それなりにはありましたし、それ以外にも“表示の限界”といった事情で不採用になることもあります。我々が自由にアイデアを出していた分、プログラマーのジムさんに苦労をかけてしまったはずですし(笑)。

――それでは、本作に登場するステージのコンセプトをお聞かせください。

おぐら 本作に限らず『KOF』では“大会らしさ”、“お祭り感”を大切にしたいという思いがあります。ステージを作るうえでもこの雰囲気を全面に打ち出したいと思いました。さらにプラスして、“静寂のステージ”と“喧騒のステージ”という、表と裏の関係のような対称的な表現をしたいと考えていました。この表と裏のムードは、ステージに限らず演出面でも表現ができればと判断してのものです。具体的な例としては、“裏”に相当するステージではキャラクター同士のシリアスな会話が展開するという感じです。しかし、残念ながらその演出案はいろいろあってなくなってしまいました……。それでも、各ステージのビジュアルにはその名残がありますよ。

――確かにステージは明るいイメージと、静かなイメージのものに分かれているような印象を受けます。

おぐら オロチチーム(Concert Hall)、G.A.W.チーム(Hyper Galaxy Ring)、餓狼チーム(Beach Resort)の各ステージはいかにも大会という華やかな雰囲気。一方でヒーローチーム(Classical Chinese Garden)やアッシュチーム(Freezing Forest)の各ステージは少し静かな人目につかない場所という雰囲気になっています。照明のコントロール“ライティング”を担当したスタッフがとてもがんばってくれて、ステージ特有のムードをライティングでうまく引き出してくれました。

天野 ステージのモデルを作るときは、視認性を意識して全体のカラーの調整を行っているんですが、とくに暗いステージは調整が難しいんですよね。単純にトーンを抑えればいいというものではないんですよ。キャラクターが沈まないように、かつ汚くならないようにしなくてはなりませんから。

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オロチチームのステージ“Concert Hall”コンセプトアート。

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G.A.W.チームのステージ“Hyper Galaxy Ring”コンセプトアート。

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餓狼チームのステージ“Beach Resort”コンセプトアート。

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ヒーローチームのステージ“Classical Chinese Garden”コンセプトアート。

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アッシュチームのステージ“Freezing Forest”コンセプトアート。

すべてのステージは公平な対戦ができるように一定基準をクリアー

――ステージのここを見てほしいというポイントはありますか?

野中 それぞれのステージに、最低ひとつはこだわりのポイントを入れるように制作しています。たとえば、クローネンステージ(Abandoned Theme Park)では背景のクマ。よく見ると結構おもしろい動きをしています。動きや表情にそれぞれ設定を作って、モデル担当の人に細かい動作指示を出してお願いしています。“かわいいいけれど怖い感じの表情”が出ているのではないでしょうか。

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不気味なクマの人形が目を引くクローネンチームステージ“Abandoned Theme Park”コンセプトアート。

――ステージにはさまざまな仕掛けがありますが、その中には動作させるのにたいへん大掛かりなものもあるのではないでしょうか?

ジム オロチチームのステージのようにモブ(群衆)がいっぱいいるステージはたいへんですね。最初の時点では、ライブの観客があまりに多かったのですが、問題なく動作するレベルに減らしてもらいました。

空中 このステージでは中央後ろで演奏している人がいるんですけど、オロチチームのメンバーが対戦で登場しないときにこのステージを選んだら、オロチチームの3人がバンドで演奏しているというアイデアもあったんですよ。

――それは見たかったですね。モブの多さでいうと、餓狼チームのステージも多いですよね。

野中 このステージもだいぶモブの人数を減らしたんです(笑)。

おぐら このステージこそ、さきほどお話した“大会らしさ”を打ち出すことを狙っていました。当初は、いまよりさらに賑やかな感じで人がうわ~っと山のようにいました(笑)。『KOF '94』のパオパオカフェのステージの雰囲気が好きなので、『KOF XV』であの感じを再現したいと思っていたんですけど、背景データを作るスタッフにこんなに出せるわけないだろって怒られちゃいました(笑)。

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KOF '94』のパオパオカフェステージ。

――そのような表現的な制約もドット絵の時代とは事情が異なるものなのでしょうか?

おぐら ドット絵の時代はそれこそ絵を描いて載せたら終わりでしたが、3D表現ではなかなかそうはいきません。

――ということは、現代のゲームのほうがステージ表現でゲームにかかる負荷は高いのでしょうか?

おぐら そうですね。PS5のようなハイスペックなコンシューマー機が基準になれば話は変わってくると思います。ハードの世代が変われば作る側の負荷も減ります。
 
ジム PS5のスペックがあればレイトレーシングが使えますから、少ない負荷で高度な表現ができるようになるんですよ。
 
おぐら たとえば、トレーニングモードのステージの床がさらにピカピカになったり、地面の水溜りがキラキラと反射するような表現が可能になります。
 
――現実的な話として、コンシューマー機はハードの世代交代までもう少し待つことになりそうですね。でも、PS5レベルのハードが基準になると、今度はPC版の推奨スペックがかなり高くなりそうです。ワールドワイドに考えるとPC版でプレイする人も多いでしょうから、ハードの基準設定に悩むところではないでしょうか?

おぐら PC版はロースペック寄りにするにしても、その最低のラインはどこに合わせるのかは難しいところですね。

――対戦格闘ゲームの対戦では、トレーニングモードのステージを標準ステージに設定する人が多いですが、『KOF XV』でもゲームへの負荷の低いトレーニングモードステージでの対戦を推奨するのでしょうか?

天野 いえ、すべてのステージは処理落ちの心配がなく、公平な対戦ができるように一定の基準をクリアーしています。ですから、安心していろいろなステージで対戦を楽しんでいただけたらと思います。

おぐら 天野の言う通り、対戦に影響がないように細心の注意を払って制作していますので、トレーニングモードのステージを推奨するということはありません。

あの人もこの人も密かに出演! 遊び要素もたっぷり

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三種の神器チームのステージ“Esaka Construction Site”コンセプトアート。

――三種の神器チームのステージ(Esaka Construction Site)は、歴代シリーズでおなじみの江坂(SNKの本社がある大阪府吹田市の町名)をテーマにしたものです。表現でこだわった部分はありますか? このステージはいつも工事しているイメージがあるのですが(笑)。

おぐら やはり工事現場にしたことですね。過去作のオマージュ要素を入れたかったんですよ。でも、前作もそうだったんですが、じつは江坂と言いつつ現実の江坂とはまったく違うという(笑)。

野中 言うなれば、近未来感のある“ネオ江坂”ですね。我々、江坂で働いてる者の願望が少し入っているかもしれません(笑)。

――(笑)。ちなみに、背景に掲げられている幕の文字“投げるな、落とすな”とはなんでしょう?

野中 工事現場によくある“安全第一”みたいな標語のイメージです(笑)。

おぐら これを守ったおかげで、今回は大門が出られなくなった……ということはありません(笑)。

――このような背景の看板の文字も野中さんが考えているんですか?

野中 ええ、そうです。一応、実際に存在するものを参考にしています。

――モブがたくさんいるステージは、おなじみのキャラクターがこっそり隠れていることが多いですよね。見つけるのを楽しみにしている人も多いかと思います。

おぐら 前作『KOF XIV』では、そのような仕掛けをあまり入れられなかった分、今回はたくさんやりたいなと思っていました。しかし、そこに将来DLCとして登場するキャラクターが絡んでしまうと、プレイヤーさんにいろいろと混乱を招いてしまう可能性があります。したがって、最終的には控えめになりました。

空中 作業面としても、DLCを作る予定がないのにキャラクターモデルを作らないといけなくなってしまいますし、逆に背景キャラクターなのに妙に作り込んでしまって、誤解や変な期待を与えてしまうということも(笑)。

おぐら そういう意味では怒チームのステージ(The Sahara)ではかなり思い切ったと思います。ここは『メタルスラッグ』をモチーフにしているのですが、このゲームのある意味主人公といえる、メタルスラッグや捕虜が登場しています。

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怒チームのステージ“The Sahara”コンセプトアート。

野中 『メタルスラッグ』なら背景に捕虜をいっぱい出せるんじゃないかと思ったんですよ。

おぐら ただし、最終的にはスペックの制約でそんなに多くは出せなかったんですけど。

――対戦に影響が出ない範囲でとなると、ハードのスペック的に難しい面があるんですね。

おぐら そうなんですよ。じつは最後まで悩んでいたことがありまして……初期の『KOF』では、背景に待機中のチームメンバーがいましたが、『XV』ではこの表現を何とかして復活させたいと考えていました。しかし、やっぱりスペックの問題が大きくて……。
 
空中 じつは、2018年に発売された『SNKヒロインズ Tag Team Frenzy』では画面の手前側と奥側に2体のキャラクターを同時に出すという、待機表現の“予行練習”を密かにしていました。

――背景キャラクターの話に戻すと、龍虎チームのステージ(Pao Pao Café)には『餓狼伝説』シリーズのキャラクター、リチャード・マイヤとボブ・ウィルソンがバーテンとして登場していますね。ここにいるということは、DLCで彼らは出ないということですか……?

おぐら それはわからないですね。背景から消せば登場する可能性はありますよ(笑)。

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龍虎チームのステージ“Pao Pao Café”コンセプトアート。

――G.A.W.チームのステージでは、背景の左右にふたりのプロレスラーがいますが、このキャラクターは誰ですか?

おぐら 昔のNEOGEOソフトに『ファイヤースープレックス』というプロレスゲームがあるのですが、そのゲームから主人公テリー・ロジャースとボス格のマスター・バーンズに出演してもらいました。

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背景で妙に目立つふたりは、テリー・ロジャースとマスター・バーンズ。

――彼らはG.A.W.所属だったりするのですか?

おぐら いや(笑)。同じ団体ではないようです。

――このようなSNKの過去作からキャラクターを起用する仕掛けは、どのように決めているんですか?

おぐら ここはプロレスのステージなので、SNKのプロレスゲームのキャラクターをこっそり出すアイデアは最初の段階からあったんですよ。SNKのゲームを古くからプレイしてくださっているファンの方が、思わずクスッとする小ネタをこっそり入れる感じで取り入れています。

――こっそり入れるのがポイント?

おぐら はい。全面的に大きく打ち出すよりは渋めのチョイスをして、ネタ元を知っている人が「俺、このキャタクター、知ってる!」と言えるようなネタを入れられればいいのかなと思いました。

空中 結構コアなチョイスしてるんですよね。

――確かにネタが“濃い”ですね(笑)。

おぐら プレイヤーの皆さんはやはりよくご存じといいますか、マニアックな視点をお持ちの方が多いんですよ。ですから、餓狼ステージでは上半身裸になっている謎の金髪おじさん2人組が登場しているのですが、これは『餓狼伝説』のマイケル・マックスのステージや、『餓狼伝説2』のビッグ・ベアのステージにいた人物のオマージュです。当時遊んでいた人は彼の姿を見てピンと来るのではないでしょうか?(笑)。

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餓狼伝説』より。背景で上半身ハダカになっているモヒカン男が……。

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餓狼チームのステージに登場している! ちなみにどちらのステージもサウンドビーチという地名だ。

――餓狼ステージだから『餓狼伝説』シリーズから起用したということなんですね。

おぐら そうですね。ここの地名、サウンドビーチは『餓狼伝説』シリーズで設定が与えられている場所ですし。

――先程のリチャード・マイヤの話ではないですが、背景にダック・キングが入っていなくて内心ホッとしました(笑)。

おぐら 本人はいないのですが、じつはダックをオマージュしたスプレーの落書きというものは存在します。ライバルチームのステージ(Subway Tracks)にこっそり描かれていたりしますよ(笑)。

――電車の後ろに描かれているものですか?

おぐら そうです。一番奥にあります。でもかなり見えにくいですけど。

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ライバルチームのステージ“Subway Tracks”コンセプトアート。

――昔『餓狼伝説SPECIAL』で背景に空を飛ぶキム・カッファンが出現するというものがありましたが、さすがにあのような遊びはないのでしょうか?

おぐら ありましたね(笑)。このような特殊な仕掛けは、バグが出るリスクが多いので入れるのは難しいんですよ。

天野 その代わりというわけではないのですが、特定条件で背景のNPCの動きが変わるという仕掛けはあったりします。βテストの時点で、この仕掛けに気づかれたプレイヤーさんもいらっしゃるようですが、パオパオカフェのステージに登場するリチャード・マイヤとボブ・ウィルソンは、対戦するキャラクターによって位置が変わります。前に出てきて応援することもあるんですよ。

――応援ということは、対戦中のキャラクターとの関係性も関連していたりするのですか?

天野 餓狼伝説チームのキャラクターが現れると、彼らはテンションが上がるようで、前に出てきます。

――ちょっとかわいいですね(笑)。

空中 遊び要素の話でいくと、冬の森のステージで真ん中に光っている鹿がいますが、じつはもともとはバグが引き起こしたものなんですよ。最初、色がおかしい鹿を見つけて「これバグってるやん!」と思ったのですが、綺麗だからこのままにすることにしたんです(笑)。

おぐら 「これはこれで、かっこいいやん。ええんちゃう?」って(笑)。

天野 最初はすべての動物が光っていましたが、ステージの象徴になるイメージでさらに神々しく見えるよう調整し、鹿だけを光らせるようにしました(笑)。

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神秘的なムードを醸し出す鹿。まさかバグだったとは!

――K´チームのステージ(Beach Resort -Sunset-)では、ヨットの帆に意味ありげな数字が描かれていますが、これは?

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K'チームのステージ“Beach Resort -Sunset-”コンセプトアート。

おぐら この部分、指示したのは私じゃないですよ。入れたのは背景チーム?

天野 そうです。背景チームの方でヨットの帆の部分に何かを入れようって話になって、ネタを集めたという感じですね。そのヨットのところに書かれている数字は、19940825。1994年8月25日は『KOF '94』の稼動開始日なのです。

――やっぱり! 

おぐら ほかには突っ込みどころのあるネタもけっこうありまして、怒チームのステージには『メタルスラッグ』でおなじみの設置物もあるのですが、おなじみの武器アイテムもちゃんと登場しています。ヘビーマシンガンの“H”などですね。これ、2Dの原作ゲームを遊んでいるときにはとくに意識することはなかったのですが、『KOF XV』の3D化した世界で見たらこの“H”はいったい何なの?と(笑)。
 
――つい質感とか気になりそうです(笑)。
 
おぐら じつは、原作の設定資料を見たことがあるんですが、このアイテムにもちゃんとした設定があって、コンテナなんですよね。当時の『メタルスラッグ』チームのこだわりはすごい! と心底感じました。

天野 あの武器アイテムは箱で、中に武器がしまってあるっていう設定です。

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武器アイテムは本来の設定通りに武器の入った箱のように表現。

将来的に新しいステージが追加される可能性は……?

――今後ステージを増やす予定はありますか? たとえば、DLCで新キャラが追加されるタイミングなど。

おぐら 今発表されているDLCでは増やす予定はないですね。ただ、今後新シーズンが発表されたときには、もしかしたら増える可能性があります。もっともいまのところまったくの未定ではありますが……。

――少しステージの話から外れてしまうのですが、今回はチームごとにエンブレムが設定されています。こちらについてもお聞かせいただけますでしょうか?

おぐら ポスターやホームページを作っているデザインチームのスタッフにエンブレムの基礎デザインをお願いしました。出来上がったものに対して、我々で各チームらしさが出るように議論しながら、ブラッシュアップしていきました。

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対戦前にチーム名とともに表示されるエンブレム。

――このエンブレムがあることで、大会という雰囲気が出ますよね。

おぐら そうですね。このエンブレム設定の試みはやって本当によかったと思います。じつはチームによってはグラフィックで表現するのが難しい場合があったんですよ。餓狼チームや怒チームなどはチームに対してエンブレムの絵柄が設定しやすいです。この場合はいいのですが、たとえば、クローネンチームのように、ひとりのメンバーだけ際立っているチームでは悩みました。ひとりではなくチームの象徴にしなくてはなりませんから。

――では、どのようなデザインにしたのですか?

おぐら クローネンチームは、クローネンのベルトのバックルのデザインをモチーフにしました。このバックルのデザインはネスツのマークに自分で傷を付けたものという設定です。アンチネスツ的なチームのシンボルとして象徴的かなと。

――最後に、注目してほしい部分や開発中とくに苦労した部分をお聞きしてもいいですか?

野中 苦労したというか、私がモデル班に無茶を振っていました(笑)。コンセプトアートには自分がやりたいことを全部詰め込んで描いて「ぜひこれを背景で表現したい!」という思いで提出しました。そんなコンセプトアートをモデル班に渡して悩ませてしまったので、苦労されたのはモデル班でしょうね(笑)。

――やりたかったけど実現できなかったものの具体例は挙げられますか?

野中 ライバルチームのステージは地下鉄をモチーフにしたものですが、当初はまったく別の案を用意していました。でも、これは表現が難しいとのことで没になってしまいましたね。

おぐら 建物の屋上みたいなところで戦っている状況で、街の遠景が広がるという案だったのですが、遠くまでグラフィックを作らなくてはならないので無理だとスタッフに怒られました(笑)。

ジム 私の場合は、半透明の処理の部分です。ここをスムーズに表現するのに苦労しました。事前に背景スタッフに背景では半透明は使わないでくださいとお願いしていたのですが、トレーニングモードステージの奥の壁は全部半透明の指示になっていて本当に参りました。あれだけお願いしていたのに(笑)。

――まさか、もっとも半透明と関係なさそうなトレーニングモードステージに! という感じですね(笑)。

ジム あとは、エージェントチームのステージ(Provence Main Street -Night-)に登場する水たまり。ここの光の反射の処理がたいへんでした。PS5、XSX、PC版はハードの機能でこのあたりの処理はフォローできるのですが、他機種版ではそうはいきません。技術的に少し難しかったですが、挑戦のしがいがあって楽しかったですね。ぜひ注目してみてください!

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エージェントチームのステージ“Provence Main Street -Night-”コンセプトアート。

取材・編集:豊泉/とよまん
協力:大瀬子ヤエ、リプ斉トン、ベックス、わたなべりー渡辺

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タイトル
THE KING OF FIGHTERS XV
メーカー
SNK
ハード
PS5/PS4/Xbox X|S/PC
発売日
2022年2月17日発売予定
価格
各7920円[税込]
ジャンル
対戦格闘
CERO
15歳以上対象
備考
『Deluxe Edition』は各10890円[税込]

© SNK CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED.

『THE KING OF FIGHTERS XV』公式サイト