『ウォッチドッグス2』が描くリアリティーをサイバーセキュリティの観点から“専門家”が語るスペシャル企画をお届け!

公開日時:2016-12-16 23:00:00

 1週間のご無沙汰です! そろそろ『ウォッチドッグス2』のメインオペレーションをクリアーしているころだと思いますが、いかがでしょうか? もちろんここではネタバレしませんが、マーカスとデッドセックの戦いは、どこまでも肥大した“監視”社会に対するカウンターパンチとして“機能”したわけです。いや、痛快でした! レンチ大好き!! 

 話が飛びました。実際、プレイしていて『ウォッチドッグス2』で描かれる社会は絵空事ではないな、と思いまして。ドローンを使った戦争はもはやふつうですし、本サイトのコラム(コチラ)にもあったとおり、サンフランシスコの地下鉄のチケットシステムがハッキングされる事件もありました。すべてがネットワークでつながった現実の社会では、ゲームのような脅威はつねに“そこ”にあるのです。

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 『ウォッチドッグス2』の描くリアリティーとは、たとえばサンフランシスコ・ベイエリアを再現したグラフィックやキャラクターの挙動、スマホを活かしたゲームデザインだけではありません。ゲームが描き出す世界そのものにもあると思います。

 そこで今回は、サイバーセキュリティ企業の“スプラウト”が運営する、サイバーセキュリティ情報に特化したオンライン・メディア『THE ZERO/ONE』の編集長、岡本顕一郎氏に、『ウォッチドッグス2』が描き出す世界について、いろいろと伺ってみました。『THE ZERO/ONE』は、セキュリティの専門家やジャーナリストを執筆者に揃えており、国内外の最新ニュースや独自の分析などを届けているメディアです。

 『ウォッチドッグス2』をプレイしていた後に『THE ZERO/ONE』の記事を読むと、いままで知らなかった世界に気づかされます……。かなり興味深い記事ばかりなので、ぜひチェックしてみてください。

■『THE ZERO/ONE』はコチラ

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ネットに繋がった世界では「自分もつねに被害に遭う可能性がある」という意識を持つべき

Q.
ウォッチドッグス2』で描かれているような、ドローンを介したハッキングは現実的に可能なのでしょうか?

A.
 現時点ではゲームのように簡単にハッキングはできませんが、将来はできるようになるかもしれません。
 ゲーム内でドローンはパソコンやスマートフォン、デバイスをハッキングし、情報を盗んだり挙動をコントロールしています。しかし、これらのハッキングはパソコンを利用した場合でも時間がかかり、難易度が高いものばりです。そのため、ドローンではゲームのように一瞬でハッキングを成功するのは至難の業でしょう。
 しかし、以下の事例のように、物理的な距離というハードルをクリアしてハッキングを行うのに、ドローンはとても魅力的なガジェットです。今後、バッテリーや解析能力が高くなれば、ゲームのようにドローンを使ってハッキングできるようになるかもしれません。

▲これはイスラエルの研究所とカナダの大学による研究チームが、スマートランプをワームに感染させてドローンから遠隔操作した模様の動画。ゲームの世界は現実にあった。『THE ZERO/ONE』でも、「ドローンが上空からIoTをハッキング!」と題した記事(コチラ)で、ZigBee(近距離無線通信規格のひとつ)を使ったハッキングの手法を解説しています。(※本文章はファミ通編集部によるもの)

Q.
 本作には、ハッキングで社会的・政治的なメッセージを周知するデッドセックが登場しますが、その良し悪しは別として、今後もこういったハッカー集団が世界を席巻するのでしょうか?

A.
 ハクティビズムを体現するハッカー集団が世界を席巻するためには、「情報拡散」という大きなハードルをクリアしないといけません。ハクティビズムとは、ハッキングを使って社会的・政治的な主張をすることです。ハッキングという手法は、誰も知らない情報や技術を入手するのには向いています。しかしメッセージを発信・拡散させるのには向いていません。
 ハッカーたちは情報を探すことは得意でも、それを拡散させるのは苦手です。ウィキリークスやエドワード・スノーデンも、情報を公開し拡散を狙うときは、必ず既存のメディアを利用しています。そうすることで、世界に大きなインパクトを与え、社会を変えてきました。彼らは自分たちの情報拡散力の弱さを知っているのです。この「拡散力」を上手に利用できるハクティビストであれば、席巻することができるでしょう。

Q.
 スマホの浸透で個人情報へのハッキングに対する危険性は大きく増したと思いますが、私たち個人で対処することは可能でしょうか?

A.
 ある程度は可能です。いちばん大切なのは、インターネットに繋がった世界では「すべて疑う」「自分も常に被害に遭う可能性がある」という意識です。
 スマートフォンを使いターゲットに対して「盗聴」「個人情報の奪取」「電気ショックを与える」といった攻撃は『ウォッチドッグス2』のように容易にはできません。しかし、インターネット経由で繋がっている機器、それはパソコン、スマートフォン、ドローン、IoT機器など、すべて「公平に」脅威から晒されています。誰もが「マーカス」に侵入される可能性があります。
 だからこそ、セキュリティに対する基本的な対策は必須です。スマートフォン・PCは、セキュリティソフトの導入、怪しいファイルやアプリはダウンロード・インストールしない、胡散臭いサイトにアクセスしない、大事なデータは安全な場所に保管する、パスワードの複雑化・使い回しをしない、アップデートは必ず行う…… などの対応はやらなければなりません。しかし、これらの対策を施していても、被害に遭う組織・人が後を絶ちません。それはなぜでしょうか?
 たとえば、近年、会社の上司や同僚、友人や親類に成りすまし、ウイルスに感染したWordファイルやPDFファイルを添付し、攻撃する手法が増えています。これらの攻撃は、ターゲットとなる人間の「心」を狙ったものなので、いくらセキュリティ対策をしっかりとやっていても、最終的にユーザーに「スキ」があると、それを突いて攻撃を成功させます。
 「ハッキング」というと、どうしても技術的なテクニックに意識が行きがちです。確かに技術を踏み台にして攻撃をしてきますが、最終的には私たちの心の弱点を利用しているのです。

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 いかがでしょうか? 最新の情報をつねに追うスペシャリストならではのご意見をいただけたと思います。怖がっているだけでは何もできませんが、「意識」しておくのは重要ですね。マーカスたちも攻撃しているだけではありませんでした。攻撃に対する防御こそ重要だと。このへんを意識してゲームをプレイすると、また違った視点で楽しめるはず。

 オンラインプレイも、シーズンパスもありますし(買ってないならもったいないですよ!)、まだまだ楽しみは続く『ウォッチドッグス2』。年末年始に遊ぶにはピッタリのボリュームと内容なのでオススメです。

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この記事の個別URL

『ウォッチドッグス2』特設サイト “インサイド ウォッチドッグス2”

ウォッチドッグス2公式サイト

●GAME SPEC

タイトル:ウォッチドッグス2
ハード:プレイステーション4、Xbox One、PC
メーカー:ユービーアイソフト
発売日:2016年12月1日発売予定
価格:各8400円[税抜](各9072円[税込])
ジャンル:アクション
CERO:18歳以上のみ対象
備考:ダウンロード版は各7500円[税抜](各8100円[税込])、『デラックスエディション』は各8700円[税抜](各9396円[税込])、『ゴールドエディション』は各12300円[税抜](各13284円[税込])、PCはダウンロード版のみ発売

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