Xboxプラットフォームビジネスのトップとして、ゲーム業界をけん引するマイクロソフト ゲーミングCEO フィル・スペンサー氏にお話を聞いた。フィル・スペンサー氏が見据えるXboxの現状と、今後の戦略は?

聞き手:三代川正(ファミ通.com編集長)

【VIPインタビュー】マイクロソフト フィル・スペンサー氏「Xboxとは、マルチデバイスで遊べるプレイヤーのコミュニティー」

フィル・スペンサー氏

マイクロソフト ゲーミング CEO
マイクロソフトのすべてのゲーム機器とサービスにおけるグローバルのインタラクティブ エンターテイメント ビジネスを率いる。大のゲーム好きとしても知られている。

日本のクリエイターとのコミュニケーションを密接に取っている

――東京ゲームショウ2023に合わせて配信された“Xbox Digital Broadcast”で、「日本とアジアにおけるXboxの市場が進化している」と発言されていましたが、とくにどういった点が特徴として挙げられますか?

フィル過去10、20年の日本のゲームマーケットを見ていると、その動向はとても興味深いです。まず、日本はモバイルゲームが大きく成長しています。また、家庭用ゲーム機向けゲームにおいても、マーケットは好調のまま維持されています。そんな中、とくにPCゲームが日本で成長しています。

 日本における現在の数字を見ますと、過去3年間で、どの国や地域、市場よりも、Xboxがもっとも成長しているマーケットです。そのうちの多くの成長がPCで牽引されています。それは、Xboxというブランドが日本のゲームファンの皆さんにとって、家庭用ゲーム機やPC、クラウドなど、幅広いプラットフォームでプレイしていただけているということでもあり、私たちにとってもたいへんうれしいことです。Xboxとしては、プレイヤーの方々がどこにいても選ばれるような、ゲームのブランドになりたいと考えています。

――PCの伸びは、Xboxにとっても追い風になっているということですね。

フィルもちろん、家庭用ゲーム機が重要であるという認識に変わりはありません。たとえば、9月6日に発売された『Starfield』に関しては、日本におけるXbox Series X|Sの新規ユーザー数が相当多くなっています。当たり前の話ですが、すばらしいゲームがXboxにとっても非常に重要ということですね。

【VIPインタビュー】マイクロソフト フィル・スペンサー氏「Xboxとは、マルチデバイスで遊べるプレイヤーのコミュニティー」
2023年ファーストパーティー屈指の大作となる『Starfield 』。9月6日に発売されるや発売から約2週間で世界累計1000万プレイヤーを突破するなど、ベセスダ・ソフトワークス史上最大のローンチになっている。

――Xbox Series X|Sが、前世代のXbox Oneよりも好調な要因というのは、どのように分析されているのですか?

フィルおそらく日本ではより小型のタイプのほうが好まれるのではないかとの判断からXbox Series Sを作ったのですが、実際XSSは受け入れられました。これは、戦略上でも有効な判断だったかと思います。

――日本の累計販売台数では、XSXよりもXSSのほうが多いですね。

フィルあと、日本のクリエイターさんとのコミュニケーションも密接に取っています。日本のクリエイターさんに、日本のプレイヤーさんが遊びたいと思うゲームを作っていただきたいと働きかけているんですね。それをXboxで提供できるということ。それが非常に大切だという認識でいます。これに関しては、この5、6年で大きな進捗があったと思っていますが、まだまだやるべきことは多いです。日本のクリエイターさんたちに、Xboxのゲームを作っていただくというのは、私たちにとって引き続き重要なテーマです。

――日本のクリエイターに対する熱心なサポートが、Xbox Oneのときとは違うということですか?

フィルはい。Xbox Oneのときは、日本のクリエイターさんとの結びつきが足りなかったのではないかという反省があります。私自身、日本の開発チームの方やクリエイターの方々と積極的にお話をして、信頼関係を築いていくことが、Xboxでゲームを展開していただくうえで、極めて重要であると感じています。日本に来たときは、だいたい10社~15社のパートナーさんを訪問しているのですが、今回も東京ゲームショウが終わったあとはしばらく日本に滞在して、クリエイターの方々とお話する予定でいます。

※インタビューを実施したのは東京ゲームショウの会期中。

――日本人クリエイターも、Xboxで積極的に展開したいと判断しているのですね。

フィル日本のクリエイターさんたちは、いまは自分たちのゲームを世界中のユーザーに届けたいと考えていると思います。これが20年くらい前だったら、日本のクリエイターの方々は、まず日本で成功することにフォーカスしていて、その後でもしかしたら世界を狙えるかも、という意識だったかもしれないのですが……。

 いま世界には30億人のゲーマーがいると言われていますが、日本のゲームクリエイターは、世界中のゲーマーに訴求できるだけの実力をお持ちだと思っています。いまだと、マルチプラットフォームでの戦略を考えているクリエイターさんやチームが多いかと思うのですが、“プレイヤーがどこでも好きなときにゲームをプレイする環境を提供したい”というXboxの戦略ともマッチしているんですね。そういう意味でも、日本のクリエイターさんとはいいディスカッションができていると感じています。

――フィルさんは、日本のクリエイターの持ち味だと感じるのはどのような点ですか?

フィル一般的に、私はすべてのクリエイターが、ゲームを作る際には自分の人生の経験を活かしていて、それが大きなインパクトになっているのではないかと考えています。彼らが実際に子どものころにプレイしていたゲームから影響を受けて、いざ自分は何を作りたいのかと考える段になって、自身の視点を確立していく。日本に来て、いろいろなクリエイターさんにお会いしていて実感するのですが、彼らのゲームの作りかたというのは、どこからインスピレーションを受けているのか、どのようなプロセスで作っていくのか、かなり独特な感じはします。

【VIPインタビュー】マイクロソフト フィル・スペンサー氏「Xboxとは、マルチデバイスで遊べるプレイヤーのコミュニティー」

Xbox Game Passは、Xboxで重要な意義を持っている

――日本のクリエイターへの支援や、XSSの生産に加えて、Xbox Game Passの内容が充実してきたことも、XSX|Sの普及に貢献しているかと思います。

フィルそうですね。Xbox Game Passは、Xboxにおいて重要な意義を持っています。とくに、PC Game Passの伸びが顕著です。日本のPCゲームの市場サイズは、過去3年間で約2倍になっているのですが、PC Game Passの利用者は約4倍になっているんです。市場の成長よりも、Game Passの成長のほうが早いということで、これはXboxブランド全体にとって、非常にいいことです。

――もしかして、ハードの販売台数よりも、Game Passの利用者のほうが多かったりするのですか?

フィルいい質問ですね(笑)。私たちとしては、Game Passの利用者も含めて、プレイしてくださる方々がすべてXboxユーザーだと思っています。家庭用ゲーム機で遊んでくださっている方はもちろん多いですが、自宅では家庭用ゲーム機やPCで遊んで、出先ではクラウドで……というマルチデバイスでプレイされている方も多いです。

 そうすると、「Xboxというのはマルチデバイスのコミュニティーなのか?」という疑問も出てくると思うのですが、私としては、「Xboxは、さまざまな場所でマルチデバイスで遊べるプレイヤーのコミュニティーである」と考えています。

 私は出張や移動が多いので、ASUSのROG Ally(ASUSから6月に発売されたポータブルゲーミングPC)を持ち歩いているのですが、私はこれもXboxだと考えます。Game Passももちろん使えますし、『Starfield』や『Lies of P』もプレイします。私のいろいろなセーブデータがクラウドにあるので、スクリーンを移行してどのような場所でも遊ぶことができるのです。私自身が持ち歩いているコミュニティーという位置づけになりますね。家に帰ったら、家庭用ゲーム機で大型テレビにつないでプレイするわけです。

――日本でもゲーミングPCの需要が伸びていて、PCでゲームを遊ぶプラットフォームとしてSteamが非常に浸透しています。プラットフォームとしては、Xboxとのライバルにもなり得るわけですが、Steamについてはどのように感じていますか?

フィルSteamに関しては、私はパートナーであると考えています。長年にわたって彼らは、Windowsのゲーミングにおいてすばらしいイノベーターであり、革新的なテクノロジーを提供してくださっています。そういう意味では、私は、そういう意味では、私はROG Allyだけでなく、Steam DeckもXboxだと思っています(笑)。

――なるほど(笑)。

フィルXboxを成長させるという意味でも、彼らは重要なパートナーです。というのも、Xboxで提供しているほぼすべてのファーストパーティータイトルをSteamでも販売していますので、Xboxのお客様がSteamでゲームを購入したいということであれば、それは歓迎すべきことです。PC版どうしでのゲームのセーブデータも共有できるので、とても近しい存在と言えますね。

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月額一定の金額で、対応タイトルが遊び放題となるXbox Game Pass。極めて使い勝手のいい同サービスだが、ファーストパーティータイトルは発売と同時に対応。サードパーティータイトルも、セガの『龍が如く7外伝 名を消した男』(11月9日発売)など複数のタイトルが発売と同時に対応することが発表されている。

『FFXIV』は、スクウェア・エニックスとより強い関係を築いていくための一歩

――日本のタイトルで言うと、先日、『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)のXbox版が発表されました。ついに、という印象がありますが、同作のXbox対応はどんな影響があると感じていますか?

フィルまずは、『FFXIV』のプレイヤーを始め、長年にわたってコミュニティーを作り上げてきたプロデューサーの吉田直樹さんとクリエイターの皆さんを称えたいと思います。7月末にラスベガスで行われたファンフェスティバルに参加させていただいたのですが、皆さんが歓迎してくださって、何年もかかって特別なコミュニティーを築き上げられたことを改めて実感しました。新しいプレイヤーをXboxへ誘導していくという意味でも、完璧なコミュニティーだと思います。

 と言いますのも『FFXIV』のコミュニティーの方々というのは、新しくプレイヤーが入ってきてプレイする際に、どういうふうに進めていくか支援するための心構えや体制を持っていると思います。『FFXIV』に関しては、Xboxの観点からお話しさせていただきますと、長期的に見て、スクウェア・エニックスさんとより強い関係を築いていくための一歩で、スクウェア・エニックスさんのタイトルを、さらにXboxで展開することにつながっていくと考えています。

――日本のファンからは、もっとスクウェア・エニックスの作品がXbox Game Passに対応してほしいという声もあるかと思いますが、それは期待してもいいのでしょうか?

フィルラスベガスのファンフェスティバルでは、新しい代表取締役社長の桐生隆司さんや吉Pさん(吉田直樹氏)と壇上でお話をさせていただいたのですが、桐生さんは「これからXboxのサポートをもっとしていく」とおっしゃっていましたので、非常に心強いことだと思います。もちろん、スクウェア・エニックスさんとはこれからさらに時間をかけて調整を重ねていかないといけないのですが、『FFXIV』のXSX|Sへの対応はたいへんうれしいことですし、今後未来に向けてワクワクすることがたくさんあると思います。

【VIPインタビュー】マイクロソフト フィル・スペンサー氏「Xboxとは、マルチデバイスで遊べるプレイヤーのコミュニティー」
※画像は配信番組をキャプチャーしたものです。

――時間がかかると言えば、東京ゲームショウで映像が公開されたSWERYさんと須田剛一さんの『ホテルバルセロナ』も、当初の発表から4年を経ての詳細発表となりました。

フィルそうですね。新しい取り組みというのは、総じて時間がかかるものではあります。ちなみに、『FFXIV』の件で吉Pさんと私が最初に話したのは4、5年前でした。『ホテルバルセロナ』に関しては、SWERYさんや須田さんとは長年の付き合いがあって、すでに信頼関係があり、そのうえでやっと発表ができたわけです。

 新作をどの機会に露出するのかを最終的に決めるのは、クリエイターの方々なのですが、今回東京ゲームショウの私たちの配信に合わせて、『ホテルバルセロナ』の詳細発表をすると決めてくださったのは光栄なことですし、長年の関係が実を結んだ結果だと思うと感慨深かったです。そういう意味でも、クリエイターの方々と信頼関係を築くのは大切なことだと思っています。

【VIPインタビュー】マイクロソフト フィル・スペンサー氏「Xboxとは、マルチデバイスで遊べるプレイヤーのコミュニティー」
※画像は配信番組をキャプチャーしたものです。

――マイクロソフトの配信で、日本人クリエイターの新作がお披露目されたのは、日本のゲームファンにとってもうれしいことでした。マイクロソフトと日本のクリエイターの取り組みとしては小島秀夫さんとのプロジェクトも気になります。進捗を教えてください。

フィル以前もお話ししたかと思いますが、小島さん次第です。今回日本にいるあいだに小島さんとも会う予定があり、そこでアップデートのお話をする予定なので、その後のほうがきちんとしたお答えができると思います。小島さんとお会いするのを私は楽しみにしていますし、彼とゲームを作るのは初めてなので、とても楽しみにしています。

【VIPインタビュー】マイクロソフト フィル・スペンサー氏「Xboxとは、マルチデバイスで遊べるプレイヤーのコミュニティー」
※画像は配信番組をキャプチャーしたものです。

ファーストパーティーの大作を今後3ヵ月に1本のペースで発売していく

――さきほど、『Starfield』が好調だというお話がでましたが、ファーストパーティータイトルに対する手応えはいかがでしょうか?

フィルまず、『Starfield』に関しては、トッド・ハワードさんやベゼスタ・ゲームスタジオにとって25年ぶりの新規IPプロジェクトということで、その功績を称えたいです。世界中で1千万人以上のプレイヤーがいて、すばらしい成功を収めています。

 Xbox Game Passの加入者も増えて、ハードの販売台数も伸びています。Steamの販売も好調で、プレイ時間もかなり増えているとのことです。このような大作をリリースするというのは大きなことだと思いますし、『Starfield』は本当にいいスタートを切りました。今後は、毎年すばらしいゲームを、Xboxのプレイヤーに対して継続的に提供していくことが重要です。10月には『Forza Motorsport』も出ますし、今後はいろいろなゲームが予定されています。

【VIPインタビュー】マイクロソフト フィル・スペンサー氏「Xboxとは、マルチデバイスで遊べるプレイヤーのコミュニティー」
『Starfield 』は、宇宙を旅する探検家集団“コンステレーション”の一員として、銀河に眠る貴重な遺物を探す壮大な旅路を体験できる一作だ。

――数年先も含めて、コンスタントに大作がリリースできるという見通しが立っているのですか?

フィルはい。今後2、3年という意味では、だいたい3ヵ月ごとに、ファーストパーティーの大作や期待作をリリースする予定です。それに対しては、私たちはたいへんワクワクし、楽しみにしています。

 実際のところ、ファーストパーティータイトルの提供に関しては、2022年まではユーザーの皆さんが求めるものと少しギャップがあったのは否めないところですが、2023年は『Hi-Fi RUSH』や『Starfield』、『Forza Motorsport』とありまして、来期も非常に楽しみにしています。

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10月10日に発売されたTurn 10 Studios開発によるファーストパーティーの期待作『Forza Motorsport』。

――かつては『Halo』や『Gears』などの人気IPが際立っていましたが、XboxのIPも新しいターンに入ったということなのでしょうか。

フィル過去数年間は、『Halo』、『Gears』、『Forza』、『Fable』という主要な4つのIPをくり返し出していただけの時期があったと思うのですが、いまはフランチャイズも含めて、幅広くゲームを提供できることをうれしく思っています。『Gears』に関しては、前回お話ししてからしばらく経ちますが、方向性に関してはいいほうに進んでいると手応えを感じています。どこかの段階で、開発元であるThe Coalitionと取り組んでいる作業の成果をお話しできると思います。スタジオのテクノロジーに対してもしっかり投資をしていますのでご期待ください。『Halo』のほうもチームでいろいろと取り組んでいます。従来のフランチャイズに関しても、しっかり進めています。

――マイクロソフト関連で気になるトピックとして、アクティビジョン・ブリザードの買収の話があります。最近の報道で、買収のメドがほぼたったという報道がありました。こちらの状況はいかがでしょうか。

フィルニュースをご覧になっているかと思いますが、イギリスの競争・市場庁(CMA)が“買収認可”の認識を示したということで、メドが立ったかなと思っています(※)。買収が近づいてきますと、私自身Xboxのことを考えるようになります。つまり、「どのようにラインアップを構成していくのか」や「Xboxコミュニティーにとって、どのような方向性に向かうのか好ましいのか?」といったことですね。

※今回のインタビュー取材の後、米国時間10月13日に、マイクロソフトはアクティビジョン・ブリザードの買収完了を発表した。

――買収後のビジョンを考えているということですね。

フィルアクティビジョン・ブリザードの存在がなかったとしても、私たちはSteamやプレイステーション、そしてNintendo Switchプラットフォームで大手のパブリッシャーということになります。そこにもしアクティビジョン・ブリザードが加わったとしたら、多くのプラットフォームやストアに対して、より多くのゲームを提供できるようになります。先ほどもお話ししましたが、Xboxはコミュニティーだと思っていますので、さまざまな異なるプラットフォームから、皆さんにXboxコミュニティーのメンバーになっていただくということも可能です。

――プラットフォーム間による競争ではなく、より多くのXboxユーザーを獲得するチャンスになりえると。

フィルよく、「プレイステーションプラットフォームから、アクティビジョン・ブリザードのどのIPを引っ張ってくるのか」と質問されますが、実際のところは、「何も引っ張りません」です。

 Xboxというのはプレイヤーのコミュニティーなので、さまざまなプラットフォームにおいてプレイヤーのコミュニティーが築かれるのが意義のあることなのであって、それがコミュニティーやブランドにとってのさらなる強みになっていくのです。ですから、いかに柔軟に、フレキシブルに対応していくかということを考えています。たとえば、将来のハードウェアのイノベーションにはどのように取り組んでいく必要があるのかとか、私たちのロードマップはどうなるのかとか……。いずれにせよ、アクティビジョン・ブリザードの買収は、Xboxとってさまざまなチャンスがあると思っています。

――お話をうかがっていると、将来的にはゲーム機だけではなく、クラウド上でXboxのコミュニティーができるという概念が成立するようになっていきそうですね。

フィルどちらも大事な存在ですね。まず、ハードウェアについても、私は将来どんなことができるかと非常にワクワクして、楽しみにしています。ハードウェアに関しては、他社がやっていることにただ単に合わせていくということだけではなくて、Xboxのユーザーに向けて、ユニークな何かが提供できるのではないかと思っています。ROG AllyやSteam DeckをXboxコミュニティーの一部として考えているように、今後は多数いるNintendo SwitchやプレイステーションのユーザーもXboxコミュニティーとして考える必要があります。

 同様に、PCでGame Passを遊んでくださっているユーザーの方々も含めて、継続してXboxのゲームをプレイしてくれている皆さんが、コミュニティーにおいて平等であると感じていただけるようにすることも重要だと考えています。取り組むべきことは多いです。

――20年前は、おそらく任天堂やソニー・インタラクティブエンタテインメントをライバルとして捉えていたと思うのですが、フィルさんはいつごろからXboxをコミュニティーとして見るようになったのでしょうか。

フィル私はXboxのゲームを作るということにかなり時間を費やして、そこで育ってきたと言ってもいいと思います。そこで実感したことは、ゲームクリエイターとしては、いかに多くのプレイヤーにゲームを届けられるかが大事だということです。ということは、当然新しいハードウェアに関しても、新しいプレイヤーに届けてくれることを期待しているわけです。

 もしふたつのハードウェアがあったとして、まったく性能が同じであれば、ただ2社が競合しているだけということになります。その場合、ゲームクリエイターの観点からするとあまり市場の助けにはなっていません。ただプラットフォームが競合しているだけですから。

――たしかにその通りですね。

フィル私の考えかたが変わる起点のひとつであり、学びを得ることができたひとつの例としては、『Minecraft』を擁するMojang Studiosの買収がありました。

 『Minecraft』は非常にすぐれたコミュニティーであるというのは皆さんご存じだと思います。昨今のクリエイターの皆さんは、さまざまなスクリーン、プラットフォームの上で世界を描いたり、コミュニティーを作っていこうと志向していらっしゃいます。東京ゲームショウの会場を歩いていても、非常にいいプレイヤーのコミュニティーができているメーカーさんがたくさんありました。ですので、クリエイターのコミュニティーの声も、私たちは聞くようにしていまして、彼らがXboxで何がしたいかというのを、できる限り聞いていきたいと思います。

――最後に、今後のXboxに期待している日本のファンに向けてひと言お願いします。

フィルまず、日本のXboxのコミュニティーにおける、情熱や熱意に感謝しています。日本においては私たちが最大規模のプラットフォームというわけではありませんが、Xboxへの熱意というのは、ほかのコミュニティーの熱意に負けないものだと思っています。皆さんにぜひとも知っておいていただきたいのは、私たちはこれからもXboxで引き続きよいものを作っていきたいと思っているということです。これからもよろしくお願いします。

【VIPインタビュー】マイクロソフト フィル・スペンサー氏「Xboxとは、マルチデバイスで遊べるプレイヤーのコミュニティー」