2022年1月28日(木)から1月30日(日)にかけて開催された、“東京eスポーツフェスタ2022”。その最終日となる1月30日に、『eBASEBALLプロ野球スピリッツ2021 グランドスラム』(以下、プロスピ2021)の決勝大会が開催された。
※『プロスピ2021』決勝大会は0:22:55ころより。
こちらの決勝大会には、VTuber・バーチャルライバーグループ“にじさんじ”から、小野町春香さん、社築さん、舞元啓介さん、東堂コハクさんの4名の所属ライバーが応援団長として駆けつけ、実況席から野球愛溢れる声援で試合を盛り上げてくれた。
試合のほうも、一瞬も目が離せない投手戦が続き、1失点がそのまま決着につながるような緊張感溢れる展開となったが、最後の決勝戦ではそれが一転した。一気に爆発した打線により、4回裏にサヨナラ3ランまで飛び出す劇的なコールド勝ちで“あらき”選手が優勝した。
以下、いずれの試合もハイレベルな名試合となった大会の模様をリポートしていく。記事の最後には、優勝したあらき選手のプロならではのすさまじい“魅せる”試合運びについて触れたインタビューも掲載しているので、そちらもぜひご一読いただきたい。
にじさんじライバーが応援する4リーグから決勝へ
今回の大会は、セ・リーグ選手による“攻めのスパーズ”と“守りのワークス”、パ・リーグ選手による“攻めのクロップス”と“守りのアンバーズ”という、大会運営側が用意した4つのチーム編成のいずれかを選択して参加する形式となっていた。決勝戦でも、参加時に選択したチームを使用することとなる。
それぞれのチームごとに予選大会を開催し、期間中に試合結果により得られる“SP(セレクションポイント)”が各リーグ内でいちばん高かったプレイヤーが、決勝戦に進出。各チームごとの予選から1名ずつ、計4名の選手が決勝の舞台に立った。
にじさんじのライバーといえば、プロ野球パ・リーグとのコラボ企画が実現するなど、かなりディープな野球好きが多いことでおなじみだ。今回応援団長となった4名も解説中に応援する球団への愛や野球への造詣の深さを、大いに見せてくれていた。
準決勝は緊迫の投手戦と、打線爆発の対照的な試合
決勝大会はまず準決勝第1試合、ざわちん選手とあらき選手の対戦で幕を開けた。お互いに初球打ちなど、攻めや守りといったテーマにとらわれない積極的な打線を展開するが、いずれも打たせて取る守備に抑え込まれていく。
今回のチーム編成では投手も打者も全員一流だ。とくに打者についてはボールの芯をとらえたバッティングさえできれば、長打はほぼ確実なパワーヒッターばかりが揃っている。
こうなると、いかにナイスバッティングをさせない投球ができるかが重要となる。両選手ともストライクゾーン外角ギリギリを絶妙に攻め、アウトを量産していく。試合はそうして、あっというまに最終イニングの3回に入った。
3回表、あらき選手の攻撃でついに試合が動く。さきの打席で3ボールまでよく見るなど、選球眼が高まってきたあらき選手が、外角高めのボールを見事とらえて待望の長打を放ち、ランナーをひとり帰して1点を先制する。
そのあとの3回裏でもあらき選手の好調は止まらず、盗塁を完全に読み切ったセーブで逆転のランナーを潰しつつ、3アウトを奪って勝利を収めた。
続く準決勝第2試合は、タイジュ選手とでかりゅう選手のカード。こちらの試合も、1回表がタイジュ選手の積極的な初球打ちから始まり、さらにフェンス直撃の2塁打を打つなど、攻めの意気に溢れるスタートを切る。
対するでかりゅう選手からは、あえて代打を敬遠で歩かせるなど、戦略的なプレイもくり出される。ランナーへの細かなけん制球など、こちらの試合は冷静な試合運びの勝負へと展開していった。
2回表をリリーフ投入した千賀投手のフォークで0点に抑えたでかりゅう選手が、2回裏で一気に攻める。バントの構えでバント警戒の守備シフトを誘い、そこをヒットで抜いてランナー1、2塁としたところで、送りバントも成功させた。
守備側のタイジュ選手がこれに対し、あえて満塁にしてダブルプレイなどが取りやすくなる敬遠策を実行する。だが、でかりゅう選手が送り出した代打が見事に長打を奪い、一気に3人のランナーをホームに帰した。
ランナーを帰したあとも、デッドボールによる出塁とヒットによってまたも満塁の状態が戻ってくる。その状態からの長打によりランナーをふたたび帰し、5点コールド勝ちが成立。でかりゅう選手が、2回裏で勝負を決めた。
決勝は衝撃の、サヨナラホームランによる決着に
決勝戦はあらき選手対でかりゅう選手というカードになり、お互いに守りがテーマのチームという対決となった。しかし守りのチームであっても打線が強力であることは、さきの試合で証明済みだ。
1回表、でかりゅう選手の攻撃はあわや長打になりそうなバッティングを守備がファインプレイでアウトに抑え、0点で凌ぐ。その回の裏、あらき選手の攻撃で、まず1番打者から初球を読み打ちしての2塁打が飛び出す。
あらき選手はそこから犠牲バントと犠牲フライに連続で成功し、1点を先取する。続く打者は抑えられてチェンジとなったが、1回から貴重な先制点を獲得した。
続く2回でも、あらき選手の攻めが続く。2回表、でかりゅう選手の攻撃を0点に抑えたあらき選手は、2回裏で大胆な盗塁を成功させてランナーを3塁に進ませ、そこに的確な選球とバッティングによる長打を重ね、1点を追加で獲得した。
続く3回は、でかりゅう選手がダブルプレイを決めるなど、互いの守備陣の固さが発揮されてお互いに0点で終えることになった。
4回表、でかりゅう選手の攻撃では最初の打者から2塁に進出し、そのあとも打線をつないで待望の1点を取り返す。そのあとの追加点はないまま4回裏に移ったが、でかりゅう選手も球の見極めが仕上がってきた様子を見せ始めた。
4回裏、あらき選手の攻撃は最初のランナーのフォアボールによる出塁に続き、ノーアウト満塁というチャンスを迎える。ここであらき選手が代打に送り出したのは、江越大賀選手。名打者とはいえ、この場面ではほかにも候補が多いと思われるチョイスで、解説陣に戸惑いが走る。
あらき選手はその戸惑いを吹き飛ばすかのように、ランナーをふたり帰すヒットをたたき出して4点目を獲得。そのあとも解説陣が「どうやって!?」と驚くような目で球をとらえ、ヒットを量産して5点目も獲得していく。
あらき選手はさらにバントを成功させて1アウトランナー2塁3塁という状況を作り出し、バッターボックスに入ったのは3番・岡本和真選手。2ストライクまで追い込まれるもボールを見極めて3ボールまで粘り、フルカウントに持ち込んだところで、完璧に真芯をとらえたバッティングが決まる。
打球は伸びに伸び、決勝ステージで初のホームランとなった。サヨナラ3ランによるコールドゲーム成立という、劇的なフィニッシュであらき選手が本大会の優勝を決めた。
表彰式の場でも、あらき選手は「サヨナラで決められたのがうれしい」とコメントした。また、江越選手の代打については「満塁で江越選手だとファンの期待も高まるでしょうし、結果がどう転んでも楽しんでもらえるのではと思った」と語った。
大舞台となる決勝戦の場で、ファンサービスまで考えてプレイできるほどにほぐれて仕上がってくるとは、まさに圧巻の勝利。応援団長のライバー4名、ならびに解説のトンピ?氏からも「ドラマのようなすばらしい展開でした」と、全選手に賞賛と祝福の言葉が贈られ、決勝大会は閉幕となった。
優勝者・あらき選手へのインタビュー
――優勝の感想を、改めて聞かせていただけますか。
あらき優勝はもちろん狙っていたんですけど、観てもらっている皆さんにとにかく僕の顔やeBASEBALLの存在を覚えてもらって、eBASEBALLでまた大会が開催されたときに「あっ、あのときの人だ」と興味を持って観戦してもらえたらと意識していました。
ここで優勝することで皆さんにeBASEBALLへと興味を持っていただいて、eBASEBALLのおもしろさを知るきっかけにしていただけたらと頑張りました。
――勝つだけでなく、魅せるためのプレイも重視したと。
あらき正直、勝つことよりも爪痕を残して、みなさんに「楽しかったな」と思ってもらえたら幸いでした。とはいえ、優勝はついでというわけでもなくて、優勝を狙っていく気持ちも強かったです。優勝すれば、当然爪痕は残せますから。
――優勝が一番目立ちますからね。では、今日魅せるために心掛けたプレイはどのようなものでしたか。
あらき皆さんが分かりやすい、ホームランは狙っていました。ただ、そればかり狙ってしまうと結果が悪くなるので、『プロスピ』や野球の本来のおもしろさを伝えるためにも、僕がいままで積んできたものをすべて出すような、あいさつ代わりにできるようなプレイを心掛けました。
――たしかに、本日の試合内容はすごくおもしろかったです。最後にホームランというのは、まさに有終の美といったところでしょうか。
あらき観戦している皆さんに気持ちよく視聴を終えてもらいたいなと思っていたので、当然狙っていました。
――決勝戦までの全試合を含めて、とくにきつかった試合はありましたか。
あらき今日の決勝で当たった選手はもちろん全員怖かったのですが、同じ守りのワークス予選で2位だったまめしば選手は2020年プロリーグのときの、楽天イーグルスでのチームメイトだったんですよ。
めしば選手と予選1位を争うなかで、直接対決では1回も勝てなかったのですが、結果としてはポイント制度で僕が決勝に出られました。このまめしば選手もじつは強かったということを証明する意味でも、今回の決勝では結果を残したかったです。
――今回起用した選手のなかで、とくにキーパーソンになった選手はいましたか。
あらき社築さんが選んでくれた全員がキーパーソンでした。そのなかでもとくに岡本選手はチームの中でいちばんホームランが打てる選手だったので、そこを中心にどうやってランナーを溜められるように回すかという点と、ランナーがいなかったとしても「ちょっと打たれそうだな」という雰囲気を相手に感じさせながら打席に回すという点を大事にしていました。
――投手についてはどうでしょう。
あらき準決勝ではセ・リーグ優勝で日本一になった奥川選手を先発に出しまして、ゲームでも強いんだと証明できるようにがんばりました。続いてオリンピックで活躍した栗林選手をリリーフに出すことで、観客の皆さんにもおもしろいと思ってもらえるようにしました。
決勝では絶好調だった青柳選手を先発にして、最後は球界を代表するような投手を起用したいのと同時に、プロ野球を見ていない人にも「この投手は強いんだよ」と名前を覚えて帰ってもらえるようにと、中川投手とマルティネス投手を準備しました。けっきょくマルチネス投手の出番はありませんでしたが。
――ありがとうございます。では最後に、さきほどeBASEBALLプロリーグのお話が出ていましたが、今年は『パワプロ』でのリーグ戦も復活させてほしいという気持ちはありますでしょうか。
あらきはい。そのために今日優勝して、何かのアピールになればと思っていました。eBASEBALLを知ってもらうことで、「『プロスピ』もおもしろいけど『パワプロ』もおもしろいんだよ!」ということを伝えられたら幸いです。
eBASEBALLには人生を賭けているつもりでいますので、自分が生きる場所はここだと思っていますし、そのために今回の大会に参加してシーンを盛り上げられればと考えてプレイしていました。
東京eスポーツフェスタ2022リポート記事はこちら
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※記事内の画像の一部は、配信画面からキャプチャーしたものです。