『ロード・オブ・ザ・リング』という、三部作の映画がある。2001年から2003年にかけて公開された、ファンタジー冒険譚の大傑作だ。

　その映画の舞台となる“中つ国（ミドルアース）”でくり広げられた、“指輪戦争”を題材としたタイトルが2022年4月14日にリリースされた。NetEase Gamesのスマホ向けゲームアプリ『ロード・オブ・ザ・リング：戦いの幕開け』だ。

　『ロード・オブ・ザ・リング』は、その後のファンタジー作品すべてに影響を与えたとも言える古典的な長編小説『指輪物語』を映像化した作品だ。本作では、そんな世界的に有名なファンタジー世界に飛び込み、いずれかの勢力に参加して覇権を目指すことになる。

　今回の記事では、『ロード・オブ・ザ・リング』の世界やさまざまな勢力を忠実に再現した本作の概要について紹介していく。原作の世界にもとづくかつてない規模と併せて、まずはぜひ本作の壮大さを知っていただきたい。

『ロード・オブ・ザ・リング』とは†

　そもそも本作の原作である映画『ロード・オブ・ザ・リング』がどんな作品なのか、まずは本作の世界観の解説も兼ねて紹介していこう。

　映画の原作となった小説『指輪物語』は、1937年から12年に渡り執筆された長編ファンタジー小説だ。第二次世界大戦（1939年～1945年）のさなかに執筆された本作は、さらに時を経て1954年から全3巻で出版された。

　『指輪物語』というタイトルにもなっている通り、本作最大のキーアイテムとなるのが“一つの指輪”と呼ばれるものだ。邪悪な冥王サウロンによって滅びの山の火口で鍛え上げられたこの指輪は、強大な力を持つ魔法の指輪の数々とその持ち主のすべてを支配できてしまう、サウロンによる世界征服の要となるものだ。

一つの指輪はサウロンの力の結晶であり、この指輪がある限りサウロンは不滅。これを破壊しないと、闇の勢力にはだれも打ち勝てない。

　だが、この一つの指輪はかつての戦争のなかで行方不明となり、サウロンは一時的に撤退した。そして中つ国の“第三紀”時代、サウロンは世界を蹂躙すべく闇の勢力を集結させ、それと並行して大規模な指輪の探索に乗り出す。

ゲームの本作にも登場する、冥王サウロン。その強大さに加えて不滅という、恐るべき存在だ。

　一つの指輪はとある冒険のなかで、陽気な小人族“ホビット”のひとりであり、その種族のなかでも類まれな勇敢さと精神力を持っていた青年・フロドの手に渡っていた。偉大な魔法使いガンダウルフはその指輪の隠されていた正体を見出し、この指輪を破壊するために旅の仲間を集めていく。

フロドとその忠実な従者であるサム。ホビット族は、戦いよりも隠密能力に長けた種族だ。

偉大な魔法使い、灰色のガンダルフ。後年のファンタジー作品における“大魔法使い”のイメージに、多大な影響を与えた始祖的存在だ。

　指輪を破壊する方法は、それが作られた滅びの火山の火口に放り込むことのみ。滅びの山は当然ながらサウロンの監視下にあり、闇の勢力の捜索をかいくぐってたどりつくのはあまりに困難だ。しかも一つの指輪は持ち主を誘惑して破滅へと導くため、ホビット族のなかでも強靭な精神力を持っていたフロドであっても、それを火山まで持っていくのは至難の業と思われた。

　さらに闇の勢力は指輪の帰還を待たず、中つ国への侵攻を開始しようとしていた。それを食い止めるために、古き王家の末裔であるアラゴルンを中心として、人間、エルフ、ドワーフといったさまざまな種族が団結し、絶望的な状況下にあってもくじけずに抗戦していく。

アラゴルンは最初はフロドの旅の仲間“野伏”として登場したが、作中でその正体が判明し、絶望や謀略によってバラバラになっていた人間たちをまとめあげる象徴になっていった。

　この手に汗握る絶望的な状況下で、恐るべき追手からさまざまな出会いと助力を経て逃れ、滅びの山を目指すフロドとその仲間の冒険譚と、アラゴルンがまとめあげていく人間・エルフ・ドワーフの連合軍を中心としたさまざまな戦争とヒューマンドラマという、ふたつの軸のストーリーが絶妙に絡み合うことによって、『指輪物語』の壮大な世界は描かれている。

闇の勢力に寝返った大魔法使いサルマンや、セオデン王をそそのかして姦計を企んだグリマなど、人間側にもさまざまな人物がいた。連合軍がまとめあげられていく過程そのものも、非常に壮大な物語となっている。

　本作がファンタジーに古典的な作品という表現は誇張でもなんでもなく、この作品以降のファンタジー作品における“エルフ”という種族の描写など、さまざまなファンタジー世界の常識を作り上げた作品となっている。

エルフの中心人物である、エルロンドとガラドリエル。我々がファンタジー作品でエルフと聞いて思い描く神秘的なイメージは、『指輪物語』で確立されたものだ。

　また、この小説はそのスケールがあまりにも壮大すぎたため、世界的に有名ながら「映像化は不可能」と言われ続けてきた。その不文律に挑み、エルフの王による美麗な大魔法や、動く樹木のような種族“エント”たちによる大地を揺るがす行軍など、とくに映像化は無理とされていた幻想的な場面をも見事に映像化してみせた名作映画が、『ロード・オブ・ザ・リング』なのだ。

こう見えて、さまざまな経緯から人間側につく“死者の王”。エルフ、ドワーフといった種族だけでなく、こうした意外すぎる存在も多数登場する展開はまさに波乱万丈で、古臭さなど微塵も感じさせない。

あらゆる勢力による、かつてない規模の戦争†

　このように、すさまじいスケールを誇る映画『ロード・オブ・ザ・リング』。今回紹介するゲーム『ロード・オブ・ザ・リング：戦いの幕開け』は、その物語のうちアラゴルンを中心として描かれた、指輪戦争の部分にフィーチャーしたストラテジーゲームとなっている。

　まずプレイヤーは、自分が所属する勢力を選択する。ここで選べる勢力の中には、人間たちのさまざまな勢力はもちろんのこと、エルフやドワーフの陣営、さらには闇の勢力まで含まれている。

最初に選べる10の勢力は、当然ながら原作に登場し、重要な役割を果たした陣営ばかりだ。

闇の勢力に属するオーク族の戦士たちや、サウロンの配下である恐るべき追手“ナズグル”なども、当然登場する。

　プレイヤーは力ある指輪のひとつを所有する人物として、部隊を編成し、本作の世界を構成するフィールドのマスを支配していく。マスを支配するとそのマスが生み出す資源を定期的に入手でき、さらに強力な部隊を編成できるようになっていく。

この世界を構成するマスの総数は、数百万にも及ぶという。とてつもなく広大な世界だ。

　部隊の中核となる“指揮官”は、贈り物を酒場で渡すことによって自陣に迎えることができる。指揮官キャラクターはすべて、原作に登場した主要人物たちだ。

エルフのレゴラスやドワーフのギムリなど、原作で活躍した有名キャラクターがこぞって登場し、指揮官として戦ってくれる。

指揮官にさまざまな兵種の配下を与えて部隊を編成することで、すでに支配しているマスと連結しているマスへと派遣できる。

　こうして自身の支配領域を広げていきつつ、マスを支配しているNPCやほかの勢力と戦いをくり広げていくことで、自身のみならず勢力全体にも貢献できる。

　マスは数百万あるとはいえ有限であり、そこから産出される資源もまた有限だ。ひとつでも多くのマスを支配するだけでも、勢力全体への十分な貢献となるわけだ。

領土での徴税や、マスから手に入れた資源を用いて、自分の拠点や兵舎などを強化していく。

　そして本作はシーズン制となっており、シーズン終了時点でもっとも成長し、一つの指輪を手に入れた勢力が勝者となる。その場そのときだけではなく、シーズン全体と勢力全体を見据えた長期的な戦いをどう進めていくかという、かなりスケールが大きいシミュレーションゲームなのだ。

　その戦いをより有利に進めるために重要なのが、プレイヤーどうしで結成する“仲間”の存在だ。こちらはいわゆるギルドのような集まりなのだが、仲間が支配しているマスに行軍できたり、支援を受けることができたりと、所属しているだけでもさまざまな特典が得られる。

　仲間というミクロなつながりと、勢力というマクロなつながり。ふたつのつながりをどう活用するのかも、本作を楽しむうえで重要な要素となる。

　ここまでの解説からは、本作が複雑な経営ゲームのように思えるかも知れない。しかし実際にプレイしてみると、序盤はチャプター仕立てになっている任務を順番にこなしていくだけでゲームの基礎が学べるようになっているほか、プレイ自体はかなり分かりやすく、進行は簡単になっていた。

　本作でのプレイヤーの手腕の見せ所は、仲間との連携や、どの方面のマスへと支配領域を伸ばしていくかといった部分に重きが置かれると思われる。とはいえ、とくに急がされるゲーム性でもないので、日々こつこつと、ゲームプレイ自体も長期的な視野で進められるようになっていた。

ストラテジーや軍勢の経営といったものに難しいイメージを持つ人は多いだろうが、本作ではそこまで複雑な要素はなく遊びやすい。まずはチャプター任務を進め、本作の基礎を学びつつ雰囲気を味わおう。

　10もの勢力がリアルタイムで競い合いつつ、シーズン制の壮大な戦争を繰り広げる本作。そこには間違いなく、原作映画も顔負けのドラマティックな展開や、仲間たちとの結束が生まれるだろう。ストラテジーゲームとしてはかつてないほどの規模で、新たな指輪戦争が始まろうとしている。

　どのような物語が生まれるにしろ、実際にこの世界に飛び込んだほうがその物語により没頭できることは間違いない。ぜひ歴史を刻む一員として、本作をプレイしてみてほしい。