2020年11月12日にプレイステーション5(以下、PS5)が発売されてから丸2年が経過した。全世界的なコロナ禍での発売に半導体の不足など、これまでに体験したことがない状況でのリリースとなったこともあって供給不足に陥ったPS5だが、半導体供給の改善やさまざまなリスクヘッジの効果で生産状況は改善傾向にあるという。

 そんな3年目を迎えたPS5は、2023年2月22日にVR周辺機器のプレイステーション VR2(以下、PS VR2)を発売予定。前機種よりも高解像度になり、PS5のスペックを活かしたVR体験ができるという点が特徴だ。

3年目を迎えるPS5とPS VR2について、SIE ハードビジネス責任者 ・西野秀明氏に聞く。PS5の生産状況、PS VR2への期待、そして勝負の年
『PS5』招待リクエスト(抽選)販売のページはこちら (Amazon.co.jp)
3年目を迎えるPS5とPS VR2について、SIE ハードビジネス責任者 ・西野秀明氏に聞く。PS5の生産状況、PS VR2への期待、そして勝負の年

 今回、PS5の2年間の振り返りと3年目の展望、そして発売を迎えるPS VR2について、SIEの商品企画および開発の責任者を務める、SIE プラットフォームエクスペリエンスSVPの西野秀明氏にお話を伺う機会を得た。

 PS5発売当時の苦労点から、PS VR2を含めた今後の生産状況、そして、昨今のSIEのワールドワイドを重視した展開に対して日本市場軽視ではないか、と一部で挙がる声への印象についても率直に伺った。

西野秀明氏(にしの ひであき)

ソニー・インタラクティブエンタテインメント プラットフォームエクスペリエンスSVP(シニア・ヴァイス・プレジデント)。

SIEのプラットフォームとしての商品企画および開発の責任者。ハードウェアからシステムソフトウェア、PlayStation Plusなどのネットワークサービスまで、プラットフォームビジネスのグローバル統括を務める。

PS5発売2年を振り返って。生産状況の改善も

――2020年11月12日のPS5発売から2周年を迎えましたが、この2年間を振り返ってのご感想をお聞かせください。

西野パンデミックの中でローンチ(編注:発売、立ち上げの意)を迎えたこともあって苦労もしましたが、この2年間でアップデートを進め、外付けストレージやM.2 SSD、1440pへの対応など、発売当初にご提供できなかった機能をご提供することができました。加えて、PS Plusについても夏にリニューアルを行い、PS5やPlayStation Network(PSN)の使いかたに関する選択肢を増やすことができた2年間だったかな、と思っております。

――発売年にコロナ禍に陥り、体験会が実施できないといった影響があったほか、半導体不足なども問題となっていたと思います。それらについてはどのように対応されてきたのでしょうか。

西野ローンチ前で苦労したことという意味では、いちばんたいへんだったのは工場の立ち上げですね。こちらはリモートカメラを導入することで、日本からでも生産ラインを確認できるようにしました。また、多くの開発会社さんと同様に開発キットを従業員の家に送って自宅で開発をできるようにしましたので、そのあたりのサポートも注力した部分です。

――ソフト開発だけでなくハードの生産もあるぶん、影響はさらに大きそうですね。

西野ただ正直に申し上げますと、ローンチよりもその後がたいへんだったかな、と思っております。半導体不足や上海のロックダウンなど、これまでに経験したことがない不測の事態がつぎつぎと起こりまして……、それらの影響がとても大きかったですね。

 製造面の対策に関しては複数のパートナー企業様にご協力いただき、リスクがひとつに集中しないようにしました。あらゆる部分で問題が起きてしまうことを前提に、そのリスクを分散するように対応していたのがこの2年間でした。

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――半導体不足は世界中のさまざまな業界に影響を与えましたが、現在は状況も改善されていると聞きます。先日のPlayStation Partner Awardsでも、年末年始からはPS5の供給が増えるというお話がありましたが、実際に生産台数などは増えているのでしょうか。

西野11月の初旬にソニーグループの業績発表をさせていただいた中で、7、8、9月の3ヵ月間で650万台超の製造を終えたと報告をしておりますが、12月に入った現在もそのペースを下げることなく製造を続けている状況です。

 船便などで輸送する都合上、生産したものが販売店に届くまでのタイムラグはあるのですが、少なくとも製造の部分ではかなりの量を確保できましたので、今後店舗などに並ぶ数が増えるであろう、というのは自信を持って申し上げられると思います。

――製造が安定してきたのは、やはり半導体不足の改善や先ほどのリスク分散などが功を奏しているのでしょうか。

西野そうですね。ただ、一概に半導体不足が問題だったというわけでもなく、上海のロックダウンも含め、複数の要因が重なることで困難な状況となっていました。この夏からはそれらが改善され、とにかく台数を確保しよう、と思って製造を進めてきましたので、年末年始にはその結果が出てくるかと思っております。日本市場という意味では、11月から供給を増やしており、今月(12月)も継続予定ですし、2023年に入るとさらに状況は大幅に改善する見込みです。

――PS5は転売対策として店頭での抽選販売などが行われていますが、PS5が店頭で当たり前に購入できるようになれば、転売の問題も解消されていきそうですね。

西野まず、生産数が足りなかったことでご希望のお客様に物が行き渡らず、高額転売といった事態が発生してしまったことについては、非常に心を痛めています。今後、安定して店頭に並ぶようにできれば、このような事態は徐々に解消されていくと考えています。

――2023年2月22日に発売を迎えるPS VR2では、抽選応募の際にソニーアカウントに記録されたプレイ時間を条件にする(※)といった対応が取られました。こういった対応をPS5本体にも適用できるとよかったとも思うのですが、それは難しかったのでしょうか?

西野PS5の販売時から、どうすればご希望のお客様に届けられるかという点について販売店さんとできるだけ連携できるように努めてきまして、そういった学びからも、PS VR2のローンチは、できる限りの工夫をさせていただきました。

 現状ではPS VR2の先行予約に関しましては一定のご評価をいただいている一方で、PS5にも同様の対応はできないのかというお声もいただいております。ただ、お客様の利用履歴は、データの保全や安全の問題もありますので、広く使っていくのは難しいところがございます。

※公式サイトで行われた先行予約応募(2022年11月27日で受付終了)には、“ソニーアカウントでサインインしたPS5またはPS4で2021年11月1日から2022年10月31日までの期間に20時間以上のゲームプレイがあること”が条件となっていた。

――販売店でPS5を販売する際に同様の対応を取るのは難しいと。

西野今回はあくまで予約販売においてソニーストアを通じて購入手続きや商品の発送を行うことで、厳密に予約者様の情報を管理させていただいています。そもそもの原因として、生産数が不足していたことが問題の原因ですので、それを解決できるよう、いち早く数を増やすことに注力し、お手に取っていただきやすい状況を作っていきたいと考えております。

――そうなると、PS VR2の生産数が気になるところですが……?

西野PS5のローンチ時に数が不足してしまいましたので、今回は私どものなかで必要であろうという数字は満たせるように生産を進めております。やはり数が足りないことで転売が発生してしまうと思いますし、その状況は不健全だと思っておりますので、まずは数を揃えていきたいと考えています。

ゲーミングPC市場への意識とPS5を選ぶ利点

――昨今では日本でもゲーミングPCの人気が高まっており、これまで家庭用ゲーム機で遊んでいたユーザーがPCを活用する場面も増えてきています。ゲーミングPCの市場についてはどう思われますか?

西野ゲーミングPCの市場については、ユーザーは増加しつつあると認識していますし、日本に限らずグローバルで見ても大きなものだととらえておりまして、我々としても以前から注目しています。

 また、PCではキーボードやマウスのようなインターフェースが主流でしたが、昨今ではゲームコントローラーでお遊びいただくケースも増えてきていると理解しております。その点も踏まえて、SteamのアカウントとPSNのアカウントをリンクする機能をご用意し、PSならではの機能をPSNを通じてご提供していければ、と考えています。

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SteamアカウントのPSNリンクの説明ページ(PlayStation公式サイト)

――プラットフォームとしてはライバルでもありますが、仲間というイメージもあると。

西野ゲームで遊んでいただけるお客様の数が増えるというのは、業界全体にとっていいと思っておりますし、単純なライバルというよりは少し違う位置づけのものだという風に考えています。

 先ほど申し上げました通り、これまではPCゲームではマウス、キーボードをメインにしていた方が、最近はDUALSHOCKやDualSenseなどを使ってPCゲームを遊んでいます、といった声も届いていますので、そういった需要やご希望に対して、我々としてもきちんとした体験がご提供できるようにしたいと考えています。

――なるほど。一方で多くのタイトルがPCも含めたマルチプラットフォームで展開するようになったいま、ユーザーにPS5を選んでもらう利点はどこにあるとお考えでしょうか。

西野PS5に限らずですが、ゲームコンソールはとてもシンプルでわかりやすいシステムであり、そのわかりやすさがとても大きい部分だと考えています。パフォーマンスの面に関しても、たとえばPCで同じものを実現しようとすると、ゲームコンソールよりももうちょっとお金が必要になるかと思いますので、お得に楽しめるというのもメリットとしてあると思います。

――自分でパーツを買って組み立てればコストも抑えられますが、それはそれでハードルが高いですからね。

西野そうですね。PS5などの場合、複雑な設定なども必要ありませんので、手軽にパフォーマンスの高いゲームが遊べるという点で、ゲームコンソールを選択していただくメリットはあると考えています。

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PS VR2はPS5との同時設計

――そして、2023年2月22日にPS VR2が発売されます。PS VR2について、発売の意気込みを伺えますか?

西野PS VR2はハードウェアとしてのクオリティー、そしてコンテンツの準備状況に関しても非常に整ってきておりますので、正直なところ私も発売が待ちきれない状況です。

――前機種のPS VRが2016年10月の発売で、約6年を経て後継機が発売されるわけですが、開発などの準備にはどれほどの時間がかかったのでしょうか?

西野PS VR2は、PS5を設計し始めたころから計画に組み込まれておりまして。ハードウェアとしてはPS5とは別のチームが制作しているのですが、PS5の性能をフルに活用する形でPS VR2を作るということで、設計などはいっしょに考えていきました。

 PS5の前面にUSB-Cのポートがひとつありますが、あれはじつはPS VR2の接続を見越して用意していたものなんです。PS5発売当時のインタビューで、「あのポートはVR用ですか?」とご質問をいただいたこともあるのですが、やっと言えるなと(笑)。6年越しの発売と言っていただきましたが、ほぼ6年間かけて制作を行ってきたので、発売を目の前にして非常に感慨深いですね。

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PS5の前面にはUSB-Cのポートがひとつ。

――なるほど! PS5とセットで考えられていたんですね。前機種のPS VRは家庭用ゲーム機初のヘッドマウントディスプレイとして話題になりましたが、販売数や評判はいかがでしたか?

西野非常に新しい領域での取り組みということで、500万台(※)を超える販売数を記録し、体験を評価いただけたことが、PS VR2を実現することにつながったと思っております。PS VRはPS4のシステムとのつながりという部分でまだ課題がありましたので、そういったところをクリーンにするためにも、今回は最初からPS5といっしょに考えていきました。

※2020年1月に発表

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前機種となるプレイステーション VR。

――やはり、最初から並行して考えるとシステム的にも楽なのでしょうか。

西野そうですね。誤解を恐れずに言うと、PS VRにはプロセッサーユニットという追加のボックスを接続する必要がありましたが、今回はPS5とセットで設計をしたため、ケーブル1本だけで接続できるようになっています。そういった部分も含めて綺麗に設計するには、やはり最初からセットでデザインを進めるのが大事だと思っています。

PS VR2の魅力と今後のソフトラインアップ

――前機種では『ASTRO BOT: RESCUE MISSION』(アストロボット:レスキューミッション)や『サマーレッスン』が話題になりましたが、西野さんの中ではどんなソフトが印象に残りましたか?

西野PlayStation VR WORLDS』というコンピレーションソフトがありましたが、その中の『Ocean Descent』(オーシャンディセント)という深海の檻の中でサメと遭遇する体験は、とてもゾクゾクしてVRならではのものでした。

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『PlayStation VR WORLDS』内の『Ocean Descent』。

 ほかにも、立って体験するものだけでなく、座ってローラーコースターに乗りながら銃を撃つようなものもあって、非常に楽しく新しい体験が味わえたと思います。

 そういった経験を経て、PS VR2を最初に被ったときには、没入感のレベルがまったく違ったんです。これは次世代だ、という感覚があり、ものすごくうれしかったですね。

――この6年でVRデバイスも増え、スマートフォンに対応するものやワイヤレスのオールインワンのものも多く登場しています。そんななか、PS VR2はシングルケーブルでPS5と接続する形になっていますが、この形式になったのはなぜでしょうか。ワイヤレス形式なども試して、これがもっともいい、となったのでしょうか?

西野PS VR2とPS5の性能をフルに引き出すという意味で、現状ケーブルを超えるものはないと考えております。ワイヤレスにすることでまた別の体験ができる、ということも理解しておりますので、あらゆる可能性を検討し、技術的な研究もつねに行っています。ただ、やはりケーブルだからこそ実現できる性能をどこまでワイヤレスに置き換えられるのか、という部分にはまだ課題があるという状況ですね。

――PS VR2の没入感に驚かれたということですが、やはり注目のポイントは体験のリアルさにあるのでしょうか。

西野そうですね。何と言っても高解像度のビジュアルは、非常に驚いていただけると思っております。加えて、今回専用に作り上げたコントローラーもあるので、前機種と比べても圧倒的な没入感を味わっていただけるかと思います。

 私自身、『Horizon Call of the Mountain』を試作段階から体験させていただいているのですが、ボートに乗ったときにまわりを見まわしたくなるビジュアルや、壁をよじ上るシーンでの体験が非常にナチュラルなんですね。それが自然なゆえに、VRでここまでできるのか、というのは強烈な驚きでした。

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『Horizon Call of the Mountain』
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船から覗くところ。
崖を上るシーン。

――強烈な没入感というのは楽しみですね。一方で74980円[税込]という価格は、VRデバイスに詳しい人からは「この性能でこの値段ならお手頃」とも言われていますが、ユーザーとしては気軽に手が出せる金額ではないとも思えます。こちらは機能としては相応の設定なのでしょうか。

西野そうですね。お値段に相応の機能や体験をご提供できていると考えておりますので、ぜひ手に取っていただければと思います。

――なるほど。コストパフォーマンスを考えると、長く使うためにも今後のソフトのラインアップも気になるところです。すでに発表されているタイトル以外にも、SIE、サードパーティーともに今後も継続的に作品が出てくるのでしょうか。

西野まだ具体的なお話はできませんが、発表済みのものだけでなく、私自身デモ版を体験させていただいている未発表のタイトルがまだまだありますので、ご期待いただければ。

――前機種ではVRに積極的なメーカーもあれば、手を出さなかったメーカーもあったように感じますが、今回はそのあたりについても広がっていくと考えてもよろしいのでしょうか?

西野前機種の段階では、そもそもVRに対する知見がそう多くは溜まっていないこともあり、各社さんが試行錯誤を重ねていた部分があったと思います。ですが、いまは他社さんのプラットフォームも含めて業界としての理解が進んできたと感じていまして、PS VR2のローンチタイトルラインアップを見たときにも、正直こんなにあるのか、と驚かされました。“継続は力なり”ではありませんが、前機種から引き続きやってきてよかったと思いましたし、今後に期待できるかなと考えております。

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――カプコンはVR版の『バイオハザード ヴィレッジ』のインタビューで、「とても開発がしやすかった」とお話されていました。このあたりはサポートなどの変化があったのでしょうか。

西野カプコンさんがVRをとても気にしてくださっていたのは我々としても把握しておりましたので、早い段階からサポートをさせていただきました。やはりコンテンツあってのハードウェアですので、『バイオハザード ヴィレッジ』も大切なタイトルだと考えております。一方でSDKなどの開発ツールに関しては大きく変えたわけではなく、前機種からの継続性があることで開発の経験を活用していただけているのかと思います。

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PS VR2版『バイオハザード ヴィレッジ』

――ソフトと言えば、前機種でリリースされたタイトルの後方互換性がないことも明言されていましたが、移植の可能性などについてはいかがでしょうか。

西野今回、コントローラーのトラッキングも新しくなっているほか、“フォビエートレンダリング”という、目のフォーカスが合っている部分の解像度を高めるレンダリング方法を取り入れており、システム自体が前機種とは大きく異なっています。ですので、単純な移植作業とはならず、移植がしやすいかどうかはコンテンツ次第になりまして、実際に移植されるかはメーカーさん次第になるかと思います。

――それだけ中身が変わっているということですね。

西野前機種ではカメラが外側にあり、そこからPS VR本体やPS Moveの動きをトラッキングしていました。今回はヘッドセット自体にカメラが付いており、それによってコントローラーをトラッキングしています。この部分だけでも、だいぶ違う形になっています。

――ヘッドマウントディスプレイの外見だけを見ると前機種に近い印象ですが、これは敢えてそのようにしたのでしょうか。

西野外見に関しては、肌に触れる部分や重心のバランスなど、前機種の設計が非常によくできていたと思いますので、継承しつつ進化させることを選択しました。写真だけを見ると似た印象を受けるかもしれませんが、全体のシステムとしてはかなり違ったものになっています。

2023年は勝負の年。日本市場軽視との声への印象

――少しきびしい質問になりますが、昨今SIEはワールドワイドでの展開を重視する一方、ユーザーからは「日本市場を軽視しているのではないか」という声もあります。こういった声が挙がる要因や状況をどのように感じていらっしゃいますか?

西野私自身、ハードウェア、システムソフトウェア、プラットフォームの企画、開発に携わっているのですが、多くのメンバーは日本ベースとなっています。そういった観点でも、商品作りには日本のチームも大きく関わっており、「日本を軽視しているのでは」というお言葉には、非常に悲しい気持ちになるところがありますが、ユーザーの皆さまの声は真摯に受け止めたいと思っています。

 PS5の供給に関しては、日本のみならず世界的に供給不足が続いたことに関してご説明が不十分だったというところもあり、そういったご心配から日本の優先度が低いと感じられてしまう部分もあったのでは、と考えております。

――そういった声は届いているが、日本を軽視するようなことはない、と。

西野くり返しになりますが、そういったご不満も、全体的な生産数が不足しているからこそ出てくるものだと思っております。1台でも多く作って日本の皆さまにお届けすることで、そういったご指摘の声から「改善してきたね」といった印象に変えていただけるよう、注力していきます。

――いま、PS5は3年目に突入しました。PS4では発売から3年後にPS4 Proがリリースされましたが、今後の展望についてお話しいただければと思います。

西野2022年度末には累計販売台数が3700万台を超え、プラットフォームとしても非常に重要な時期になってくると考えております。今回具体的なことに関してはお話することはないのですが、来年(2023年)にさらにご期待いただきたいと思っています。

――期待できる何かがあるということですね……! 2023年にはPS VR2もありますし、ソフトでも『ファイナルファンタジーXVI』を始め、期待の新作が並びます。

西野勝負の年になると認識を持っております。PS VR2の発売も控え、日本での人気の高いタイトルも多数発表されていますし、PS5自体についても気軽にお買い求めいただけるような供給の状態にして、潤沢なコンテンツも用意していきます。

 PS5を買いたいと思っていただいていたものの、「手に入らないから、もう諦めようかな」というお客様にもお届けできるように昨年から進めてきた準備の結果が見えてくるかと思いますので、これからもご注目いただけますと幸いです。

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