ここまでやれるのかPS VR2!

 2022年9月7日、PlayStation VR2(以下、PS VR2)のメディア体験会が実施された。本稿では、体験会で試遊したPS VR2専用『Horizon Call of the Mountain』(ソニー・インタラクティブエンタテインメント/発売日未定/価格未定)のプレイリポートをお届けしよう。さらに記事末では、本作を開発したゲリラのクリエイターにお話をうかがっているので、ぜひ最後までご覧いただきたい。

 また、PS VR2全体の所感をまとめた記事と、『バイオハザード ヴィレッジ』PS VR2版のプレイリポートも別途公開している。興味のある方はそちらもご覧いただければ幸いだ。

 本作は、PS VR2専用タイトルとして開発されている、『Horizon』シリーズの最新作だ。プレイヤーは、元シャドウ・カージャの主人公“レイアス”となって機械獣と戦い、ときには険しい山々を越えていきながら、まだ見ぬ大地を冒険していく。道中ではアーロイたちおなじみのキャラクターとの出会いも待ち受けているという。

 今回の体験会でプレイできたのは、ゲーム冒頭から20~30分程度の内容。以前公開されたゲームプレイ映像で一部紹介されているが、クライミングや弓を使った戦闘などが体験できる内容となっていた。

PS VR2『Horizon』試遊リポート

明るく美しい世界で瑞々しい体験が待っている

 今回は、タイトル画面でゲームモードを選択するところからプレイさせてもらったが、このタイトル画面の美しさからして、予想を大きく超えるものだった。PS VR2のパネル解像度は4000×2040ピクセル(片目2000×2040ピクセル)で、PS VRと比較すれば4倍以上に相当するわけだが、その違いは比較するまでもなく一目瞭然。山々のパノラマが一望できるような見事な景観に眼を奪われて、しばしメニューを選択する手を止めて見入ってしまったほどだ。明るい日差しのもとで、遮るものもない開けた場所の描画は、ハードウェアの能力が試される部分だと思われるが、まさにメニュー画面から、PS5&PS VR2の性能を実感させられる。

 メニュー選択は、視線トラッキングが活かされており、選びたい項目に目線を合わせてボタンを押す仕組みになっている。このあたりは、さほど利便性が上がっているというほどではないものの、新機能を体感できて楽しい仕掛けだ。

 メニューでは、ゲームモードや難易度のほか、“座って遊ぶか立って遊ぶか”、“利き手は右か左か”、“ジェスチャー操作を使うか”などを選択してスタート。

PS VR2『Horizon』試遊リポート
モニターで擬似的に表示している画像ではまったく伝わらないが、実際には視界いっぱいに雄大な景色が広がっている。

多彩なインタラクションも楽しい川下り

 冒頭は、舟に乗って川を進んでいくシーンから始まる。ここは半ばイベントシーンのようなもので自由に動くことはできないが、周囲を見回したり、物に触れたりすることができる。オブジェクトに触れると、Senseコントローラーからしっかり触覚フィードバックがあるため、世界の実在感はかなりのもの。舟から身を乗り出して川面に手を突っ込んでみると、水しぶきがあがるあたりもじつによくできている。

PS VR2『Horizon』試遊リポート
PS VR2『Horizon』試遊リポート
ボートから身を乗り出して水をすくってはしゃいでいるところ。PS Cameraの範囲から外れると「プレイエリアの外です」となってしまった先代PS VRと比べて、インサイドアウト方式のPS VR2なら姿勢や移動の自由度が段違いだ。

間近で見た機械獣の迫力は圧巻!

 また、両岸に姿を表す機械獣の迫力も見ものだ。ウォッチャーやグレイザーは従来の『Horizon』では雑魚もいいところだが、VRで見ると、その大きさ、迫力に気圧されて、「これをラクラク狩っちゃうアーロイってやっぱり英雄だわ……」と痛感させられること請け合いだ。さらに、水中からスナップモウが現れて船の同乗者を襲うシーンなどは、間近で見ると見がすくむほど。そしてシリーズでも屈指の人気機械獣であるトールネックが悠々と眼前を横切っていくシーンもあり、その巨大さを間近で実感することもできる。

PS VR2『Horizon』試遊リポート
PS VR2『Horizon』試遊リポート
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途中で舟から投げ出され、水中を進む場面も。思わず呼吸を止めてしまうほどの臨場感!

 しばらく舟で進んだ後、陸に上がって先に進むことに。ジェスチャー操作を選択している場合、右コントローラのXボタンと左コントローラの△ボタンを押しながら、両手を交互に振ることで前進する(イメージとしては、競歩するときに腕を大きく振るような仕草)。後退は、両手を手前に引き付けた状態から、Xと△ボタンを押しながら手を突き出すという操作だ。言葉では説明しにくいが、実際にはゲーム中の動きの方向と、腕の操作のイメージが一致しているため、戸惑うことなく操作できた。この地上での移動については、ジェスチャー操作を選ばなければ、左スティックで代用することもできる。

PS VR2『Horizon』試遊リポート

クライミングは体感的でじつにスムーズ

 そして本作のキモのひとつであるクライミング。コントローラのグリップ部にあるL1、R1ボタンを押したり離したりすると(イメージとしてはコントローラのグリップを握る動作)、ゲーム中のレイアスの手も握ったり開いたりする。これを利用して、絶壁を、木の足場や岩、木の根などの手がかりを伝って登っていくわけだ。

 従来の『Horizon』シリーズと同様に、掴むことができるポイントはゲーム的にわかりやすくデザインされており、迷った場合には△ボタンを押せば行くべき道がガイドされるため、行き詰まることはない。コントローラの感度も良好で、かなり思い通りに動いてくれる。うっかり高所で手を離してしまうと、落下してゲームオーバーになってしまうそうだが、今回のプレイでは操作ミスをすることもなく、気持ちよくクライミングを楽しむことができた。

PS VR2『Horizon』試遊リポート
周囲をよく見れば、進むべき道がわかるようにデザインされている。
PS VR2『Horizon』試遊リポート
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ロープを伝って移動中、ふと下を見ると……!
PS VR2『Horizon』試遊リポート
Senseコントローラーを使って感覚的にプレイできる。
PS VR2『Horizon』試遊リポート
ロープをよじ登って進む場面も。

 あちこちにあるオブジェクトは、今回の範囲ではあまり意味のあるものはなかったが、拾ったり投げたり叩いたりして遊ぶこともできる。途中、大きな銅鑼の脇にゴツいハンマーが配置されているところがあり、もちろんハンマーを手にとって(両手でないと持てなかった)、思い切り銅鑼を叩くことができたが、「ゴワーン……」と威勢のいい音が響き渡るのみで、とくに特別なことは起こらなかった。製品版では何か仕掛けが加えられるのだろうか?

PS VR2『Horizon』試遊リポート
ハンマーで銅鑼を叩きまくるの図。
PS VR2『Horizon』試遊リポート
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かごの中にはリンゴが。掴んで口元に持っていくと、レイアスがガシガシ食べていく。製品版では、これによって体力を回復できるとのこと。

熟練の弓使いになりきれる体感的操作システム

 観光気分でも楽しめる本作ではあるが、機械獣とのバトルも楽しみのひとつだ。今回の試遊範囲では、弓を使った戦闘が体験できた。弓は背中に収められており、左手を背中に伸ばしてつかむ動作をすると取り出すことができる。同様に矢も背中から掴んで取り出すことが可能だ。弓に矢をつがえて、引き絞って放つ……という一連の動作は、体をその通りに動かすことでスムーズに行えるようになっている。レティクル(照準)などは表示されないが、狙いをつけて放てば、ある程度補正が働いて、的に命中する仕組みになっているようだ。

PS VR2『Horizon』試遊リポート
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戦闘はかなりガチ! 避けて狙って白熱の戦い

 機械獣との戦いでは、敵の攻撃をかわすことも重要となる。右コントローラのXボタンを押しながら横に薙ぎ払うように腕を動かすと、横にステップして回避する動作ができる。また、実際にしゃがんで頭(ヘッドセット)の位置を下げれば、ゲーム中のレイアスもしゃがんで、高い位置の攻撃を回避することができる。

 避けながら弓を放つのはなかなかに忙しく、また『Horizon』プレイヤーならご存知の通り、弱点を狙わないと有効なダメージを与えにくいため、きちんと狙いをつけることも重要。△ボタンを押して弱点部位がハイライト表示させ、敵の猛攻をかいくぐりつつ、有効な部位に矢を打ち込んでいく……このあたりは、VRタイトルにありがちなアトラクション的な体験ではなく、しっかりゲームを攻略している感覚が味わえる。

PS VR2『Horizon』試遊リポート
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倒したウォッチャーの残骸から、ウォッチャーの壊れたレンズを回収。なるほど、アーロイはこうやって素材を集めていたんだな……と感心しつつ観察。

 ちなみに記者は、ウォッチャーはなんとか撃破することができたが(あまり弱点の眼に命中させることはできなかったが……)、別メニューから対戦できたサンダージョーは、2度チャレンジしたが倒すことはできなかった。銃火器による猛烈な攻撃を、横ステップや障害物に隠れてやり過ごし、しっぽを振り回す攻撃をしゃがんで避け、ブレイズキャニスターや機関砲といった弱点部位を狙ってひたすら射つ!! ……という攻略法を見出し、外装や部位がボロボロ落ち、漏電(?)でバチバチするところまでは追い詰めたが、あと少しのところで力尽きてしまった。発売されたら、すぐにでもリベンジしたい!

PS VR2『Horizon』試遊リポート
ミサイルや機関砲による苛烈な攻撃は、いままでのシリーズ作品で登場したサンダージョーそのもの。容赦なく攻撃をしかけてくる。
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△ボタンを押すと、弱点がハイライト表示される。ちなみに武装を攻撃して体から剥がしても、使うことはできなかった。
PS VR2『Horizon』試遊リポート
もうひと息? しかしサンダージョーはここからもなかなかにタフ。
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なにしろデカいので、狙いをつけるとこんなふうに上に向かって弓を射つ姿勢になる。

開発者に気になるアレコレを訊いた

 試遊を踏まえて、本作を開発したゲリラのおふたりにお話をうかがった。ここからはその内容をお伝えしていこう。

ベン・マコー氏

ゲリラ ナラティブディレクター

フェリックス・ヴァンデンバーグ氏

プロジェクト アートディレクター

PS VR2『Horizon』試遊リポート

――ゲーム全体のボリュームはどれくらいになりますか? 収集要素はありますか?

ベン『Horizon』の世界をVR化するにあたって、ゲーム性を保つことは非常に重要視しました。『Horizon』の最大の特徴である機械獣や、壮大な自然はもちろんですが、重厚なストーリーテリングも重要視していて、大きな危機を乗り越えるといったミッションも用意しています。ゲームの長さは、プレイスタイルにもよりますが、約7時間くらいになっています。その道中で、収集物を集めたりといった要素もありますよ。

――『Horizon』といえば三人称視点のアクション・アドベンチャーゲームでしたが、これを一人称のVRにするにあたって、注力している点を教えてください。

ベン『Horizon』の最大の特徴をVRに活かすことを考えました。つまり、クライミングアクションや機械獣、美麗なグラフィックといった要素ですね。それをVRにフィットさせることができたと思っています。移動に関して言えば、ジェスチャーを利用した移動が可能になっていますし、戦闘では、機械獣との戦いにフォーカスを置いた戦闘システムが実装されています。

フェリックス今作においてはふたつの要素が重要だと考えています。ひとつは、上下の動き。高さを利用したゲーム性ということで、壮大な景色を眺めたり、クライミング中に下を見ることで高さを楽しんだり、といった部分です。

 もうひとつはスケールで、とくに機械獣の大きさを目の当たりにすることができます。今回のデモで体験できる冒頭の川下りでは、スナップモウと対峙して、その大きさに驚くことと思います。

 いままでの『Horizon』でアーロイと機械獣の戦いを見てきた人にとっても、実際にVRで機械獣を目の当たりにする体験は、非常におもしろいものになると思います。

――物語の時間軸について教えてください。本作は、いままでのシリーズ作品より後のお話なのでしょうか?

ベンまず前提として、本作は独立した作品となっていて、キャラクター設定もストーリーもいちから展開していきますので、“シリーズを知らないけれどVRに興味があるからプレイしたい”という人でも、問題なくプレイすることができます。

 それを踏まえてですが、本作の物語は、『Horizon Zero Dawn』と同時期のお話となります。ですので、道中でアーロイと出会うこともあるでしょう。かつ、シリーズのファンの方でしたら、『Forbidden West』とのつながりも感じられると思います。

――今回体験したデモでは、決まったルートを進む構造でした。本作は、従来の『Horizon』シリーズのようなオープンワールド型のゲームではないのでしょうか?

ベンはい。本作は、VR化するにあたって、リニア(一本道)に進行するタイトルとなっています。とはいえ、探索するようなルートや、隠された場所などもありますし、場所によっては、どちらかの道を選んで進まなければいけない場所も出てくるでしょう。

――機械獣について教えてください。新しい機械獣はいますか? また、VR化するにあたって、既存の機械獣にも変化はありますか? お気に入りの機械獣を教えてください。

ベン申し訳ありませんが、今回のデモ以外で出てくる機械獣についてはお話しできないんです。

フェリックス既存の機械獣については、VRで間近で機械獣を見ることができるようになりましたし、PS VR2の“フォービエイテッドレンダリング”を活かして細かく描写していますので、『Horizon』でもっともディテールの凝ったものになっていると思います。

 個人的に好みの機械獣は、トールネックですね。大きすぎて、最初はスケールの設定を間違えてしまったかと思ったほどです。『ジュラシックパーク』の中にいるみたいで非常に興奮して、これを見た瞬間に、このゲームはとてもおもしろくなるぞ、と思いました。

ベン私が個人的に好きな機械獣はスナップモウですね。ワニのような外見で、非常に恐ろしく、かっこいい機械獣だと思います。

※“フォービエイテッドレンダリング”(Foveated Rendering):視線トラッキングの情報をもとに、視線が向いている中心部分を精密に描写し、視線から離れた部分ほど解像度を抑えることでパフォーマンスを上げる技術。

――デモでは、クライミングや弓の操作が印象的でした。調整にあたっては、かなり研究されたのでしょうか?

フェリックスPS VR2のプロトタイプを手に入れた瞬間から、現実感、没入感のある体験を実現しようと、ずっと調整を続けてきました。また、気持ちよさも重要視しています。ある意味超人的なパワーを持ったような体験ができることが爽快感につながると思いますので、クライミングや弓の体験には、非常に力を入れています。

ベン主人公がクライミング、弓の達人であるという設定なので、ふつうの人間である自分なら登れないようなところを、いともたやすく力強く登れるというのが、非常に気持ちよさに寄与していると思います。また一方で、登っているときにふと下を見ると、非常に高い崖で、「手を離したらどうなるだろう?」という足のすくむような怖さも体験することができて、それはキャラクター性にもつながっています。

――クライミングや弓のモーションを制作するにあたっては、実体験を参考にされたりはしているのでしょうか?

ベン資料を参照して研究することは、いつも開発において重要なことです。多くのクライミングのドキュメンタリー映像を研究したり、アーチェリーに関連する資料を読み込んだりしました。

――舞台となるマップの広さやバリエーションなどについてもう少し教えてください。

ベンデモで体験していただいた範囲のほかは、深くお話しすることはできません。ただ、クライミングして進んでいくにあたって、深い森などはありますし、それもファンなら見慣れた景色になるだろうと思います。

――PS VR2だからこそできる要素について教えてください。

ベングラフィックの観点では、細かいディテールを描写できるようになったのが大きい要素だと思います。PS VR2のヘッドセットのテクノロジーを最大限に活用するとともに、PS5の能力を使用し、かつSenseコントローラーを両手に持って遊べるということで、非常によいプラットフォームで開発できたと思います。

フェリックスフォービエイテッドレンダリングを生かした描写はもちろん、クライミングではハプティックフィードバックで手に感触が返ってくるので、現実味のあるエクストリームな山登りが体験できます。また、PS VR2は視野角が広くなったことで、非常に開けた視界を実現できたことも大きいですね。

――最後に、日本のファンにひと言お願いします。

ベン『Horizon Zero Dawn』と『Horizon Forbidden West』では多くの反響をいただいていて、日本のファンは、熱量のこもった最高のオーディエンスであり、すばらしいコミュニティーだと思っています。いつもフォトモードで撮影した画像や、ファンアートを投稿してくれていて、とてもうれしく思います。そんな日本の皆さんに、PS VR2でお届けする『Horizon』の新しい形、まったく新しい体験を楽しんでいただきたいです。とても驚きに満ちた体験になるだろうと思いますよ。

フェリックスこの作品に携われて非常に光栄です。そして、ベンと重複してしまいますが、ファンの皆さんのサポートにいつも感謝しています。アートやコスプレの画像などを投稿してくださったり、プレイスルー動画や、TwitterのTweetもいつも楽しみに見ています。日本の皆さんに、ぜひこのゲームも手に取って、楽しんでいただきたいと思います。

PS VR2『Horizon』試遊リポート