2022年5月8日、中央競馬でGIレースのNHKマイルカップが開催される。同レースに勝利した歴代の競走馬の中から、シーキングザパールについて紹介する。

 『ウマ娘 プリティーダービー』におけるシーキングザパールは、最近注目が集まっているキャラクターと言えるだろう。2022年4月28日のガチャ更新にて初のSSRカードが追加。また根性のSRカードのほうはレースボーナスが5%と低いとはいえ根性育成で使われることもあり、イベントの“言葉はノンノン♪ ボディで語るの!”では、高速でステップ(イベントスキップ時)を踏みながら体力を30も回復してくれる聖人としてトレーナー諸氏に愛されている。

【ウマ娘・元ネタ解説】シーキングザパールは欧州GI初制覇の偉業を成し遂げた女傑。競走馬のエピソードやゲームの元ネタを紹介

 育成ウマ娘としてはまだ実装されていないが、ほかのウマ娘のストーリーに出てくることも。言葉の端々で“世界”をアピールするイロモノかと思いきや、じつは持ち前のポジティブさで相手を受け入れ、親身になって話を聞いてくれるメチャクチャいい人であるということが明らかになっており、育成ウマ娘になった際の物語が非常に楽しみなキャラクターである。

 本記事では、そんなシーキングザパールの競走馬としての生い立ちや競走成績について解説しよう。

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アメリカで誕生し日本へ

 競走馬のシーキングザパールは、1994年4月16日にアメリカで生まれた牝馬だ。当歳(0歳)のときにセリで日本人オーナーによって購入され、生まれたときとは別のアメリカの牧場に移動。1歳になると来日し、北海道のノーザンファームで調教を積んだ。『ウマ娘』のシーキングザパールの“海外を転々としながら育った”という設定は、幼いころにセリなどでアメリカ国内の牧場を移動し、また競走馬時代もフランスやアメリカなどに遠征したことから来ているのかもしれない。

 同い年のタイキシャトルやメジロドーベル、メジロブライトとはレースでしのぎを削った仲。また、サイレンススズカ、マチカネフクキタル、ステイゴールド(ゴールドシップの父)らも同い年である。

 シーキングザパール(真珠を探している)という彼女の名前は、一族の名前から連想されたもの。パールの曾祖母がゴールドディガー(金鉱掘り)で、祖父がミスタープロスペクター(試掘者・探鉱者)、父はシーキングザゴールド(金を探している)と、それぞれ親から連想した名前がついている。ちなみにパールの息子はシーキングザダイヤ(ダイヤモンドを探している)だ。

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デビュー後、才能の片鱗は見せるが……

 シーキングザパールは、1996年の7月に小倉競馬場の芝1200メートル戦でデビュー。動きがよく評判馬となっていたパールは武豊騎手を背に、2着に7馬身差をつける圧勝劇を演じ、単勝1.2倍の1番人気に応える。

 次戦のGIII・新潟3歳ステークス(代替開催として中山競馬場で行われた)でも勝利は確実……と思われたが、結果は3着。スタート直後に外側に向かって走ってしまうというアクシデントがたたったのだ。

 この悪い流れを引きずることはなく、3戦目のGII・デイリー杯3歳ステークスではメジロブライトに5馬身差をつける圧勝。GIの阪神3歳牝馬ステークスでも大本命と見られた。

 だが、このレースでも2戦目と同様に不可解な負けかたをする。前目につけておきながら終盤に突如として手応えが悪くなり失速。勝ったのは、新潟3歳ステークスでは先着していたメジロドーベルだった。

NHKマイルカップで初の戴冠

 年が明けて3歳となったパール。彼女は外国産馬のため、当時はクラシックレースに出られなかった。そのため、春の目標となるのは前年にGIに昇格した“マル外ダービー”ことNHKマイルカップである。

 2歳時は不安定なレースをくり返していたパールだったが、3歳になると走りに安定感が出た。1月のシンザン記念では、後にスプリンターズステークスを制するダイタクヤマト(ダイタクヘリオス産駒)などを抑えて勝利。続く3月のフラワーカップ、4月のニュージーランドトロフィー4歳ステークスを連勝し、本番のNHKマイルカップに臨む。

 ここでは中団からじわじわと前方に進出し、直線でスパート。早めに先頭に立って押し切る横綱相撲で、危なげなく優勝を果たした。

 秋は秋華賞を目標に調教が進められ、前哨戦のローズステークスでは桜花賞馬キョウエイマーチがいる中で1番人気に推された。しかしレース中に喉の病気を発症してしまい、結果は3着。手術と治療のために休養に入ることとなった。

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世界レベルの女傑に

 復帰戦は1998年4月のシルクロードステークス。ここを4番人気ながらも制し、GI・高松宮記念では本命とみなされるが、やや重の馬場で伸びきれず4着。さらにつぎの安田記念は記録的な土砂降りとなり、やっぱり伸びずに10着大敗。パールは雨が苦手だったのかもしれない。一方、勝ち馬のタイキシャトルは不良馬場を物ともしないパワーを持っており、後にJRAのCMで“大雨のなかの無敵”とうたわれた。

 勝ったタイキシャトルはこの後、フランス最高峰のマイルレースのひとつである“ジャック・ル・マロワ賞”への参戦に向けて旅立つのだが、じつはフランスへの参戦を表明した馬がもう1頭いた。それが誰あろうシーキングザパールである。

 しかし日本メディアがおもに取り上げるのはマイル王者のタイキシャトルであり、パールはその影に隠れがちだった。シーキングザパールが出走するモーリス・ド・ゲスト賞(またはモーリス・ド・ギース賞)は仏短距離界最高峰のレースのひとつでありながら、当時は日本での知名度が低く、さらにレース日程がタイキシャトル出走のちょうど1週間前ということも相まって、前座感が出ていたのである。筆者も当時「タイキシャトルは勝ち負けになるだろうけど、シーキングザパールはさすがにムリじゃない?」などと思ったものだ。

 そして迎えた8月9日。モーリス・ド・ゲスト賞の本番である。パールは5番人気と低評価だったが、彼女にとって幸運だったのは、雨が多い時期にも関わらず晴天でレースが行われたことだった。

 パールはスタートを切ると、スローペースのせいで押し出されるように先頭へ。差し戦法を得意とする彼女にとっては不利な展開と思われたが、鞍上の武騎手がパールを導いて先頭のままでゴール。1分14秒70のコースレコードで優勝し、“日本調教馬初の欧州GI制覇”という偉業を達成したのである。これには筆者を始めとした多数の競馬ファンが驚き、パールの強さを思い知ったのだった。

 この翌週にはタイキシャトルがジャック・ル・マロワ賞で優勝。さらに翌1999年にはエルコンドルパサーがサンクルー大賞で勝利し、アグネスワールドもアベイ・ド・ロンシャン賞を制覇。アグネスワールドは2000年にもジュライカップで優勝するなど、この時期は日本調教馬が欧州競馬界で大きな存在感を見せた。その先鞭をつけたのがシーキングザパールだったのだ。

【ウマ娘・元ネタ解説】シーキングザパールは欧州GI初制覇の偉業を成し遂げた女傑。競走馬のエピソードやゲームの元ネタを紹介

引退、そして繁殖へ

 モーリス・ド・ゲスト賞を制したシーキングザパールは、9月にフランスのマイルGI“ムーラン・ド・ロンシャン賞”に挑戦。しかしここは5着に敗れ、帰国後のマイルチャンピオンシップでも8着に敗北。暮れのスプリンターズステークスでは、引退を決めていたために太め残りだったタイキシャトルには勝ったものの、前にいたマイネルラヴを捉えきれずに2着に終わる。

 明けた1999年は1月にアメリカ遠征をするも敗れ、その後は再び国内へ。5月の高松宮記念ではマサラッキに次ぐ2着、6月の安田記念ではハナ差の死闘を演じたエアジハードとグラスワンダーから遅れること0.4秒差の3着。惜しいレースを続けていたが戴冠は叶わなかった。

 この後はアメリカに戻ってGIIIで2戦走るが、いずれも1番人気ながら勝てず。そのまま引退、そして繁殖入りが決まった。

 アメリカで繁殖生活を送っていたパールは、2005年6月に11歳の若さで亡くなった。正確は死因は不明だが、落雷に遭ったものと推測されているという。早すぎる死だった。

 パールの代表産駒はシーキングザダイヤだろう。デビューから数戦は芝で活躍し、海外遠征で負けてからはダートに転向。GIでの勝利こそならなかったものの、交流戦を含むダートGIで9度の2着を記録した。ステイゴールドもびっくりのシルバーコレクターぶりである。

 このころのダート業界はカネヒキリ、メイショウボーラー、タイムパラドックス、ユートピア、アジュディミツオー、ヴァーミリアンなどなど錚々たるメンバーがいたため、シーキングザダイヤにとっては時代が悪かったのかもしれない。だが、息長くダート戦で活躍する彼は、母同様にファンに愛された馬だった。

 シーキングザダイヤは現在、南米のチリで種牡馬として活躍中。昨年(2021年)の10月に、産駒のヴィータダマンマがチリのGIで3勝目を挙げたというニュースが届いている。まさに世界レベルの活躍。こんなところも母ゆずりなのだろう。

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