『CoD:MW リマスター』プレイインプレッション

ライターのポルノ鈴木による、『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア リマスター』のプレイインプレッションをお届け!

公開日時:2016-11-25 16:00:00

リマスター化によって芯のあるタフなゲームであることを証明

 その昔ゲーム機のスペックが低かった時代は、リアルなグラフィックを描くことは難しかった。だから現代の景色よりも、誰も見たことがない過去や未来、もしくは架空の世界を描くことの方がゲームの題材としては適していた。だがやがてゲーム機が3Dグラフィック能力を手に入れ、発色数や解像度が増していくと、ゲームは本気でリアルを追求できるようになった。それは言い換えれば、現代の景色をゲーム上で再現出来るようになったということだ。

 第二次大戦を舞台とするFPSとして生まれた『コール オブ デューティ』(以下、『CoD』)が、4作目の『CoD4 モダン・ウォーフェア』(以下、『CoD4 MW』)で現代戦をテーマとする作品に生まれ変わったのは、ちょうどプレイステーション3、Xbox 360というハイスペックなグラフィック能力を持つマシンが揃ったタイミングだった。

 開発元であるInfinity Wardは、『CoD4 MW』にこれ以上ないリアルを注ぎ込んだ。ただグラフィックが写実的というだけではない、戦争や兵器が発するドライな空気感までモニターから漂うような、そんな作品だった。『CoD4 MW』のキャンペーンモードは、M1エイブラムス戦車が発するガスタービンエンジンの排気も、3万人を一瞬で蒸発させた核兵器のキノコ雲も等しく描き、ゲームが到達できるリアルのレベルがいまどこにあるのか、世界中のゲーマーに叩き付けたのだ。

 『CoD4 MW』はシリアスなキャンペーンモードだけでなく、オンラインマルチプレイも良くできていたのでギネス級の大ヒットを記録。キャンペーンモードを遊んだ後もマルチプレイヤーモードで長く楽しめるので、ゲームのライフも延びた。ここからキャンペーンとマルチプレイを両輪で、高いレベルで作り込むことが『CoD』シリーズとしての命題となっていった。
(編集部注:『CoD』シリーズが大きなフランチャイズに成長した要因についてEric Biessman氏(RAVEN)は、「多くのファンが付いてゲームを楽しんでくれているのは、『CoD』が幅広い要素を提供しているから」と語っている。⇒関連記事

CODMW Remastered_War Pig_WM
COD Modern Warfare Remastered_MP_Backlot 1_WM

 『CoD4 MW』以降AAAタイトルとなった『CoD』シリーズだが、発売元のアクティビジョンは、デベロッパーを複数社使うことでこのモンスタータイトルを毎年リリースするという驚異の量産体制を確立。これは売り上げ面におけるメリットがあるだけでなく、通常のシリーズタイトルに比べて2~3倍のスピードで、ゲーム開発のノウハウが溜まっていったことを意味する。
(編集部注:『CoD モダン・ウォーフェア リマスタード』の開発を手がけるRavenSoftwareのDave Pellas氏は、インタビュー内で「Infinity Wardには蓄積してきた知識、我々にはない知識がある」と語っている。⇒関連記事

 そのある種ドーピング的な開発体制のなか、倍速進化していった『CoD』シリーズは、ある時両輪のバランスにも変化が訪れる。キャンペーンモードは1回遊んだらおしまいだが(再プレイしたくなるやりこみ要素はもちろんある)、マルチプレイヤーモードは新作が出るまでずっと遊べるので、こちらの出来映えを重視するユーザーが増加したのだ。こうしたAAAタイトルはマーケティング結果を軽視しないので、『CoD』は新作が出る度にマルチプレイを作り込み、それを毎年のように進化させていった。
(編集部注:マルチプレイヤーモードはもちろん、新作が出るたびにキャンペーンモード、ゾンビモードも大きな進化を遂げている)

COD Modern Warfare Remastered_MP_Crash_WM

 その進化の流れの中で、ある変化も起きた。それが世界観の近未来化だ。現実世界、現用兵器で可能なことは、ゲームにとっては物足りなくなっていた。現用兵器の進化のスピードよりも、さらに早く『CoD』が進化する必要性が出てきたのだ。超人的なジャンプや壁走り、身体の透明化、瞬間移動など、現実ではあり得ないがゲームではあり得た方が楽しい要素を優先するために、『CoD』は新作が出る度にゲームの舞台をそれらのフィクション要素を許容する近未来へとスイッチ。システム上キャンペーンモードとマルチプレイヤーモードで世界観をマッチさせないわけにもいかないので、近年の『CoD』シリーズ作はその両輪をSF的世界観の作品へと変貌させた。もちろん『CoD』を名乗る以上、ある程度リアルを感じさせる形を保ったうえではあるが。
(編集部注:『CoD:インフィニット・ウォーフェア』の世界観について、Eric Monacelli氏(Infinity Ward)は、「さまざまなリサーチを行い現状の技術がどう伸びるか研究し、真実味のある未来を描いている」とインタビューで答えている。⇒関連記事

Call of Duty Infinite Warfare_ 1 WM

▲こちらは『コール オブ デューティ インフィニット・ウォーフェア』。

 最新作『CoD インフィニティット・ウォーフェア』では、キャンペーンモードは木星の第二衛星エウロパからスタートする。低スペックを言い訳に見たことが無い世界を描くのではなく、いまやハイスペックを武器に、見たことが無い世界に説得力を持たせる時代なのだ。『CoD4 MW』の登場から9年。エウロパの氷の世界すらリアルに感じさせる現代のグラフィック性能を以て、再び『CoD』が現実世界を描いたらどうなるのか。そんな試みを形にしたのが『CoD モダン・ウォーフェア リマスタード』だ。

COD MWR_E3_All Ghillied Up_WM
COD Modern Warfare Remastered_MP_Overgrown 2_WM

 これはその名の通り『CoD4 MW』をHDリマスターしたもので、キャンペーンモードもマルチプレイヤーモードも収録。『CoD4 MW』は写実的であることがゲームのテーマでもあるわけで、こうして現行スペックのマシンでHDリマスター版が出るのは非常に意義があることだ。『CoD』が一度は捨て去ったリアルを、このタイミングで取り戻しに来たというのはそれこそマーケティングの結果かもしれないが、『CoD インフィニット・ウォーフェア』本編の付録的存在とはいえ、9年前のゲームが画質アップだけで再リリースできるというのは、『CoD4 MW』がいかに芯のあるタフなゲームであるかという証明でもある。
(編集部注:ここで語られているリアルとは現代戦のこと。また、リマスター化についてDave Pellas氏は、何年も前からファンが希望しており、ファンの要望に応える方法として考えていたことを明かしている。⇒関連記事

 文学でも映画でも音楽でも、その作品を知らないと何も語れない、シーンを“以前”と“以降”に分けてしまうようなマイルストーンな一作というのが存在する。『CoD4 MW』は間違い無くそれに値する作品だ。9年前の衝撃を知る人も知らない人も、ぜひプレイしてみてほしい。

CODMW Remastered_Crew Expendable_1_WM
CODMW Remastered_Crew Expendable_2_WM
COD MWR_E3_Charlie Don't Surf_WM

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