『Flowery』や『風ノ旅ビト』を手掛けたスタジオ“thatgamecompany”がNintendo Switchとスマートフォン向けに展開中の『Sky 星を紡ぐ子どもたち』(以下、『Sky』)。2022年3月27日に開催された“AnimeJapan 2022”内のステージイベントでは、アニメ映像化が発表され話題を呼んだ。そんな同作の開発スタッフにインタビューを実施。初の運営型タイトルに懸ける思いや今後の展開について聞いた。

水谷立(みずたにりつ)

リード・オーディオ・デザイナー/ジャパン・ブランド・リード。文中は水谷。

田邊裕一朗(たなべゆういちろ)

ビジュアル・デベロップメント・リード。文中は田邊。

椎名貴恵(しいなきえ)

ジャパン・コミュニティ・マネージャー。文中は椎名。

『Sky 星を紡ぐ子どもたち』開発スタッフインタビュー。初の運営型タイトルへの想いやアニメ化などの今後の展開について聞いた
写真左から、椎名貴恵氏、田邊裕一朗氏、水谷立氏。

――2021年6月にNintendo Switch版が配信されましたが、反響はいかがですか?

水谷おかげさまで、リリースした国や地域では、すごく喜んでいただけたと言いますか、「大画面で遊んでみたかった」、「こんなに綺麗な映像や音楽だったんだ」というような新しい発見や驚きを受け取っていただいているように感じています。

田邊僕が個人的に見聞きしているのは、やっぱり慣れ親しんだコントローラで遊べるのがうれしいという声ですね。エンジニアチームががんばった甲斐がありました。

――確かにこれまでthatgamecompanyの作品をプレイされている方からすると、コントローラで遊びたいという人が多かったのかもしれませんね。ちなみにスマホ版とSwitch版でプレイヤーの遊びかたの違いなどはあったりするのでしょうか?

椎名私が感じている大きな違いはスクリーンショットです。Switch版のスクリーンショットは本体機能を使用しているので、どうしてもUIなどが映ってしまうんです。そういったことも関係しているのか、SNSなどへの投稿はスマホ版で遊ばれている方のほうが多い印象があります。

水谷それから、Switch版とスマホ版の両方を遊ばれている方も多い印象です。たとえば、外ではスマホ版、家ではSwitch版の大画面で遊ぶという方もいらっしゃいます。また、「コンシューマー版を待っていて、ようやくプレイできる」という声もいただいて、Switch版を心待ちにされていた方も多くいらっしゃったようです。

田邊じつはリリース前はドキドキしていたんですよね。まったく新しいタイプのユーザーがドッと入ってくるので、『Sky』の中の空気が変わるのかなと思っていました。ただ、結果そんなに変わらなくて、『Sky』の世界観というか、ユーザーの温かさみたいなものが保たれていてすごく安心しました。

――温かさはそのままに、さらにコミュニティーが拡大したという感じですね。AnimeJapan 2022のステージでは、ゲーム内イベント“表現者たちの季節”と“花笑む日々”の最新映像が公開されましたが、こちらはそれぞれどのような内容になっているのでしょうSか?

水谷“表現者たちの季節”は、本当にthatgamecompanyの『Sky』チームが実現したかった季節の内容になっていて、こちらはぜひ田邊のほうからその想いを存分に、語ってもらえれば。

田邊“表現者たちの季節”は、開発メンバーが学芸会や演劇部の活動の思い出や経験をもとに制作したシーズンです。彼らは自分たちの思い出の中にある、共同で作業する楽しさ、いっしょに物作りや演技する楽しさを『Sky』で表現しようとしています。また、ステージ上で何かを作るとなると、いろいろと役割ができてくると思いますが、どんな存在にもスポットライトが当たる瞬間があって、どこかで輝けます。そういうメッセージをこのシーズンに込めたいというところから開発が始まりました。あともうひとつ、『Sky』のプレイヤーの皆さんはすごく想像力豊かなんですね。だから、SNSなどにアップされているイメージやイラスト、創作物がすごくクリエイティブで楽しくて、いつも感動をもらっています。そのクリエイティブのエネルギーをゲームの中で発揮できる場所を作れないかというところも、このシーズンの目標のひとつになっています。ですので、このシーズンを通して、溢れんばかりの想像力やクリエイティブエナジーを発揮してもらえたらうれしいです。

水谷本当に皆さんすごいものを作ってくださっているので、今回も僕たちを驚かせてほしいですね。

開発情報:新シーズン『表現者たちの季節』

『Sky 星を紡ぐ子どもたち』開発スタッフインタビュー。初の運営型タイトルへの想いやアニメ化などの今後の展開について聞いた

――情報が出ているところもありますが、“花笑む日々”(※) についても改めてご紹介いただけますか?

※開催期間:3月28日~4月11日15時59分

水谷“花笑む日々”は昨年に続いて開催されるイベントになりますが、かなりパワーアップというか、内容を変えています。

椎名昨年はホームに大きな木がありましたが、今回は雨林に入ってすぐの交流広場に移っています。また、前回は花が咲き始めてから枯れるまでを描いていましたが、今回は咲き始めて満開になって花が散っている様を楽しみながら、散った後の余韻に浸るというような4段階のフェーズになっています。さらに、過去の“光の探求者の季節”から精霊たちがいっしょにお祝いをしに来てくれていて、プレイヤーたちも精霊たちとインタラクションができるようになっています。昨年のアイテムも復刻されていますし、新しく登場したお花と光の探求者の季節から着想を得た、アートチーム渾身の新アイテムも登場します。公式ブログなどでも情報を公開していますので、詳細はそちらをチェックしていただければ。

Sky 星を紡ぐ子どもたち『花笑む日々』ミニトレーラー

『Sky 星を紡ぐ子どもたち』開発スタッフインタビュー。初の運営型タイトルへの想いやアニメ化などの今後の展開について聞いた

――季節に合わせたイベントなどが行えるのは、運営型タイトルの魅力ですよね。『Sky』は、スマホ版が2019年7月にリリースされました。今年で3周年を迎えますが、改めて振り返ってみて、運営型タイトルであることがよかった点や逆に苦労した点などはありますか?

田邊苦労は多かったです(笑)。運営型にするか、これまでの作品のようにひとつのストーリーを完結させて終わるのかは、かなり悩みましたし、チームで議論やテストも重ねました。でも、”AnimeJapan 2022”のスペシャルステージのようなイベントを通して、プレイヤーの皆さんと直接関わらせていただくと、個人的な意見にはなりますが、運営型タイトルにして本当によかったなと感じました。「サービス開始から継続して、いまも遊んでいます」、「つぎの展開も楽しみにしています」と言ってくださって、それを受けて制作チームも「よし、もっといいものをつくろう!」という意欲が湧いてきます。そういった意味では、運営型タイトルは皆さんからのフィードバックを受けて、つねにつぎの展開を考えたりと忙しくもありますが、すごく幸せな循環になっていると思います。

水谷住んでいる場所や話す言語、性別、年齢などを越えて、多くの人に楽しんでいただける作品を作りたいという想いで、『Sky』を開発していましたが、リリースするまではそれが受け入れてもらえるのかわからなかったです。2022年7月には3周年を迎えますが、3年前のリリース日のドキドキと、自分たちの想いを受け入れてもらえるのかという怖さがあったことをいまでも鮮明に覚えています。thatgamecompanyは小さなスタジオということで、配信初日からたくさんのプロモーションができたわけではなかったのですが、このタイトルを見つけて遊んでくださったプレイヤーの皆さんが、感想をSNSに投稿したり、身近な友人などに「いっしょに遊ぼう」と誘ってくださったり、口コミで広がっていきました。本当にひとりひとりがこの作品がもっとたくさんの方に届くようにさまざまなことをしてくださって、プレイヤーの皆さんがいっしょに育ててくれたタイトルだと思っています。“AnimeJapan 2022”では、プレイヤーの皆さんに直接お会いすることができて、これまでの出来事が一気に蘇ってきました。

――“AnimeJapan 2022”のステージイベントでは、スペシャルサポーターとして、thatgamecompany作品の大ファンだという声優の梶裕貴さんが就任したことも発表されました。ステージではトークを展開されていましたが、実際にお会いしていかがでしたか?

水谷決して信じていなかったというわけではないのですが、本当にthatgamecompanyの作品を好きで楽しんでいただけているんだなということが、すごく伝わってきて、本当にうれしかったです。すごく気さくな方で、控室などでも『Sky』のお話をたくさんさせていただいていて、時間さえ許すのであれば、ずっとお話ししていたかったです。椎名さんはいかがですか? 椎名さんは日本のコミュニティーとして、日本のプレイヤーの皆様のサポートを担当されているのですが、最初に梶さんがプレイされているのを発見したのは椎名さんなんです。

椎名もともと梶さんがゲーム実況などをされていることは存じていたのですが、『Sky』をプレイされているのを知ったのは、Twitterがざわめいていたからでした。何がきっかけかサーチしてみたところ、梶さんの投稿にたどり着いたのです。けっこう進んでいらっしゃる画面を投稿されていて、本当にプレイしてくださっているんだという衝撃を受けつつ、「公式アカウントで“いいね”や“RT”をしたほうがいいですかね?」と相談したんです。

水谷そこからお声掛けさせていただいて、本当に快く引き受けてくださいました。ステージイベントでは、“暴風域”というステージでの思い出を語っていただいて、本当に楽しい時間でした。

――本当に好きなんだなということがすごく伝わってきました。

水谷梶さんは、スペシャルサポーターのお声掛けさせていただく前から、『Sky』のコミュニティーのことを気にしてくださっていて。というのも、梶さんがプレイを始めたという投稿をされたときに、いっしょに始められたファンの方もいらっしゃって「一緒にプレイをはじめられた皆さん、ほかの星の子たちに迷惑をかけないように楽しみましょうね!」と注意喚起までしてくださって、なんてやさしい方なんだと思いました。

田邊ステージイベントのコメントからも、私たちが『Sky』で伝えたかったことをしっかり汲み取って遊んでくださっていることを感じて、とてもうれしかったです。

――そして、ステージイベントではアニメーション映像化も発表されましたが、いまの心境を伺えますか?

水谷なぜ、『Sky』がAnimeJapan 2022に出展したのかと疑問に思われていた方もいらっしゃったかもしれませんが、じつはこのアニメーション映像化というニュースを発表するのが目的のひとつでした。このステージイベントでの発表が世界で最初で、そこからほぼ同タイミングで全世界に情報が発信されたのですが、正直まだ反応を見られていないです。どう答えていいのか難しいところですが、AnimeJapan 2022という舞台で梶裕貴さんというスペシャルなゲストの方といっしょに発表できたことをうれしく思います。じつは梶さんもかなりビックリされていたんですけどね(笑)。

椎名私もすごくビックリしました。じつは映像を見たのが今日が初めてで。台本の「アニメ映像化決定」の文字しか見てないまま連れて来られました(笑)。

水谷(笑)。本当に極秘で発表の準備を進めていたので、無事に発表できてほっとしています。

Sky 星を紡ぐ子どもたち『Sky アニメーションプロジェクト』ティザー

――アニメーションについて現時点でお話できることは何かありますか?

水谷昨年、Switch版のリリース記念でトレーラーを制作しました。その映像では『Sky』で描かれている時代よりも遥か昔の様子を断片的にお見せしています。まだ文明が栄えていた時代でして、今回の発表したアニメーション映像はそのころのお話になります。つぎの情報公開に向けた準備もどんどん進めておりますので、続報を期待していただければと。

――楽しみにしています。最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします。

椎名私はもともと『風ノ旅ビト』と『Sky』のファンから入ったので、運営型タイトルでなければ、いまここに居ない人間なんです。いまもお話を聞いていて、ここまで作ってくださったことに改めて感謝しているほどです。本当に私はもともとファンなので、どちらかというとファンサイドにいると思い込んでいて、開発側としてお話をするということが今回初めてだったので「大丈夫かな?」と心配していました。でも、AnimeJapan 2022で実際にプレイヤーの皆さんにお会いして、日本のプレイヤーの皆さんが遊ぶために必要な日本語訳をちゃんと届けられているのかということに少し自信を持てた、というわけではないですが、ちょっとだけ思ってもいいのかなと。もっとこういう機会を作っていきたいですし、もっと喜んでもらうためにはどうしたらいいんだろう、とより深く考えていきたいなと感じました。

田邊先ほど(水谷)立さんからもお話がありましたが、『Sky』のリリース直後は、あまりマーケティングなどを行っていなくて、プレイヤーの皆さんの口コミのおかげで広まったゲームです。実際に遊んでくださる方々のお顔を拝見しながら、感謝の言葉を伝えられたので、すごく胸がいっぱいです。こういったイベントを通して、僕たちもエネルギーをいっぱいもらって、もっともっと『Sky』の世界を多くの人たちに繋げていきたいなと思っています。

水谷今回、AnimeJapan 2022に出展をして、『Sky』を実際に遊ばれている方とたくさんお会いしてお話することができましたし、本作を知らなかった方にも興味を持ってもらえたのかなと思います。また、『Sky』というタイトルを遊ばれている方が、現実世界でも作品のことを肌で感じられる場を作れたのは、すごく有意義でやりがいのあることだと感じました。今回のために瞑想の石像やメッセージボードを制作したので、現実世界とゲームの世界を繋ぐような体験をたくさんの人に味わってもらえる機会をもっと作れるようにがんばっていきたいと思います。

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