ベセスダ・ソフトワークスより2021年9月14日発売予定のプレイステーション5(PS5)とPC向けソフト、『DEATHLOOP』(デスループ)。
本作は、超常能力と暗殺アクションを組み合わせた『Dishonored』(ディスオナード)シリーズや、閉鎖された宇宙ステーションで緊張感溢れる戦闘が展開する『Prey』(プレイ)などを手掛けたArkane Studiosが開発する完全新作だ。Arkane Studiosの特徴と言えば、プレイヤーの発想次第で攻略ルートが拡張される一人称視点のアクション、過去から未来まで時代を超えたあらゆるモチーフを巧みにミックスした独特のデザインセンスなどが挙げられる。
公開されてきた『DEATHLOOP』の情報を見ていると、本作にはArkane Studiosがいままで開発してきたタイトルのノウハウがすべて注ぎ込まれている、いわば“集大成”と言える作品になるのでは? と思っていた。そして今回、『DEATHLOOP』のPS5版を先行でプレイしたところ、その思いはまちがっていなかったと確信した。その理由を、プレイレビューという形で説明したい。
『DEATHLOOP』の基本要素
まずは『DEATHLOOP』の基本をおさらいしておこう。長くなるが、これを把握していると本作の革新性がより深く理解できる。
舞台は謎の島・ブラックリーフ
主人公のコルト・ヴァーンが冒頭に目覚める島、それがブラックリーフだ。この島は同じ1日を永遠にくり返すという、タイムループに囚われている。この“ルール”を守るのは、8人の“ヴィジョナリー”と呼ばれる人物たち。コルト=プレイヤーはタイムループを打ち砕くべく、島の住人“エターナリスト”を敵に回してヴィジョナリー全員の暗殺を狙うことになる。
ブラックリーフは研究所、フリスタッドロック、ウプダーム、カールスベイの4つのエリアに分かれており、朝・昼・午後・夜の各時間帯によってその様相を変える。朝には開いていなかった扉が、昼には開いていたりする。エターナリストやヴィジョナリーの行動も変わり、午後は閉じこもっていた人物が、夜には外に出ていたりする。いつ、どのエリアに訪れるか……この選択で、コルトのプランも変化するというわけだ。
同じ1日をくり返すタイムループ
コルトが死ぬとループがリセットされ、1日の始めからリスタートすることになる。基本的には集めた装備や能力は失われ、初期状態に戻ってしまう。しかし、ある程度物語を進めると、“レジドゥム”を好きな装備・能力に注入することで保持できるようになる。また、死ぬことなく目的を達成して拠点に戻ることができれば、その時間帯に入手した装備・能力はつぎの時間帯に持ち込める。
もうひとつ、過去から未来へ流れる時間のルールを打ち破る術がある。それが“リプライズ”だ。リプライズは“スラブ”(アビリティのようなもの)の一種で、死亡しても少しだけ時間を巻き戻して2回まで復活する能力を持つ。敵に囲まれて死んだとしても、その囲みから離れた位置で復活し、しかもわずかな時間はほぼ透明になって行動できるので、敵の背後から逆に敵を急襲できるのだ。とはいえ、3回死ぬとその効力は失われ、裸一貫で1日の始まりに戻されることになる。
行動をサポートするアビリティ“スラブ”
リプライズも含めたスラブは、移動やステルスを強化したり、攻撃手段の幅を広げる効果を持つ心強い“武器”だ。スラブを習得するにはヴィジョナリーを倒して能力を奪う必要がある。
スラブはアップグレードできるが、アップグレードには対象のスラブを持つヴィジョナリーをふたたび倒して入手しなければならない。
【スラブの例】
- リプライズ:死んだ瞬間から時間を巻き戻す。2回までは復活可能だが、3回目にはリセットされる
- シフト:目標の地点を目指して短距離をテレポートする
- エーテル: 体を透明化し、敵やセンサーから認識できなくする
- ハヴォック: 敵から受けるダメージを吸収し、それを強力な衝撃波として放てる
- カーネシス: 敵をさまざまな方向に自由に投げ飛ばせる
- ネクサス: 敵どうしをリンクさせ、同じ体験を共有させられる
選択と強化がカギとなる武器
戦闘においてメインとなるのは銃火器。近接格闘用のマチェット、両手持ちが可能なハンドガンにマシンガン、ライフルにショットガンなど、豊富な種類が用意されている。射程や安定性、装弾数などを考慮して、自由に選択すればいい。
武器にはレアリティがあり、レアリティが低い武器だと弾詰まりを起こしたりエイム(照準)がぶれたりと、挙動が不安定になる。そんな弱点をフォローするのが、“トリンケット”。トリンケットを武器に装備することで、銃撃の精度アップやエイムを速くするといったメリットが生まれる。状況に合わせた武器の選択、プレイスタイルに合ったトリンケットの装着は、タイムループを生き抜くうえで重要なポイントとなるのだ。
【トリンケットの例】
- 射撃の名手:エイム(照準)動作が高速化
- ショック・アブソーバー:銃のリコイル(反動)が減少
- 魂食い:敵を攻撃した際に、ライフだけでなくパワーも減らす
- ヒップスター:腰だめ状態になり、銃撃の精度が上がる
- 猫の着地:落下ダメージを軽減する
- 忍び寄る死:移動時に発する音を減らす
- ビルドアップ:パワーの最大値が増加する
驚きと興奮が押し寄せる衝撃のタイムループ
では、『DEATHLOOP』のPS5版のプレイレビューを書いていこう。つらつらとゲームの基本要素を解説してきたが、正直に言うと、この要素をプレイ前に知っていても、「やりたいことはわかるけれど、ゲームに落とし込んだときにおもしろくなっているのか? 頭でっかちでただ難しいだけのゲームになっているのではないか?」と思っていた。が、実際にプレイしてみて、それは杞憂だったことがわかった。
まずは、今回体験できた部分のごく一部ではあるが、プレイ動画をお届けしよう。
細かく説明するとネタバレに直結するゲームであり、ひとつひとつのネタが事前に知ってしまうと衝撃度が下がるので、ストーリーに関しては詳細を省かせていただく。
ただ、フィールドの各所に、ループを重ねた過去のコルトからのメッセージが浮かび上がっており、それが攻略のヒントになったり、謎めいた内容が物語を進めることであらためて理解できるようになる。ゲームを先に進めたくなるこのユニークなメッセージ機能は、“発明”と言っていいだろう。
リプライズやレジドゥムといったループを有利に進められる要素は、ゲーム序盤で入手できる。そこからが本番だ。どの時間帯に、どのエリアに行くのかはプレイヤーの自由。道中で情報を入手していくことである程度は物語の指針が示されるが、その通りにする必要はない。
最初はどこに行けばいいのか迷うかもしれないが、目的をマーキングすることで向かう場所が表示される。そこに向かうまでのルートや手段は完全にプレイヤーの手に委ねられることになる。ステルスに徹するのか、敵をことごとく殲滅するのかでルートは変わるし、レジドゥムを溜める、トリンケットの種類を増やすなど、その目的で行動は大きく変わっていく。
敵のAIも優秀で、銃声を耳にしたら集まってくるし、仲間の痕跡(倒されたエターナリストは消滅するが、死体の跡は残る)を見つけたら警戒度が上がる。意外と攻撃のダメージが大きく、油断していると集団で襲われてあっという間に倒されてしまう。筆者はステルスメインだが、気づかれたらダッシュで逃げる、ダメージ覚悟でマチェット片手に突っ込む、連射できる武器で弾をばらまく……と、行き当たりばったりで行動した。
それでも、リプライズで自分の行動が正しかったのか、間違っていたのかを判断して、その経験がつぎのプレイにすぐ繋げられるのは本作ならではの要素だろう。
ただし、3回死んで、貴重なユニーク武器、まだレジドゥムを注入していない=つぎのループに持ち込めないトリンケットやスラブを失ったときのショックはかなりデカい。海岸で目覚めて「やってしまった……。つぎは慎重に行こう」と、そのたびに後悔する。でも、こちとら敵の位置や行動をすでに知っているのだ。自分が死んだ場所までスムーズに到達し、死の経験を乗り越えて目的を果たせたときの達成感たるや!
この達成感は、大事な情報を入手したときにも当てはまる。たとえば、金庫を開けるコードをゲットしたけれど、中には目的のブツがすでになかった、という事態が起こる。ふつうのゲームならブツを探す旅に出るのだろうが、本作では「それならブツがなくなる前の時間にループで戻れば解決!」となるわけだ。こんな仕掛けがエリアのあちこちに配置されているので、探索に飽きることがない。
時間帯を進めない限りは同じエリアに留まれるので、自然と探索する時間が長くなる。それでも、ライフを回復するアイテムやステーション、弾薬を無償で入手できる装置が各所に用意されている。じっくりと探索できる配慮が成されているのは、うれしいポイントだ。
敵の倒しかたもひとつではない。ある時間帯では標的のいる場所まで苦労してたどり着いたのだが、ループ後に試しで物音を立ててみたら気づいた敵がのこのこと姿を現したことがあった。突然遭遇したジュリアナを倒したらシフトを習得できた……おかげで、前の時間では苦労した場所を難なく突破した。こんなことが頻繁に起こる。
敵の位置や行動、移動ルートなど、ループで蓄積したプレイヤーの経験と知識は確実な武器となり、自分のプレイも回を重ねるごとに洗練されていくことがわかる。それでも、ふと訪れる偶然の出来事が“自分なりの洗練されたプレイ”を崩し、急に判断力やプレイスキルを求められる瞬間が生まれる。実際にプレイしたのはまだまだ前半もいいところだが、この油断ならないゲーム性こそ『DEATHLOOP』最大の魅力だ。作業感覚で「ザコしかいないし、ここはサクッと行きますか」などと気の抜けたプレイをしていると、確実にやられるだろう。
各エリアの構造は複雑で広大だが、ルートさえ決めてしまえば目的まではスムーズに到達できるはず。とはいえ、不慮の事態で倒される場合が多く、思い通りに行かずにリトライすることは必至となる。でも、PS5のロードの速さはリトライのストレスを確実に軽減してくれる。タイムループを重ねて体験を更新していく本作のゲームシステムは、PS5のSSDありきで生まれたのではないか? と邪推したくらいだ。家庭用ゲーム機ではPS5のみ対応というのは大きなハードルだが、ロードにかかる時間を考えると、その選択は致しかたないと思う。
とにかくゲームの展開が、ドラマチックでダイナミック。直感が成否を左右するアクションなだけに操作性もよく、PS5のDualSenseとの相性もいい(弾詰まりでトリガーが固まったときには超あせる)。タイムループという特性を活かしたストーリーでも、集めた断片がつながって未来への道筋が見えたときの興奮と開放感は格別だ
「ここはキビしいな」と思う場面に遭遇しても、別エリアに行ってトリンケットを集めたり同じエリアの別時間で探索を進めていると、パッと「これなら最低限の装備でも行けるはずだ」という攻略ルートを思いつく。試してみたら、見事に戦略がハマって大成功。このときの高揚感は、何物にも代えがたい。
本記事の冒頭でArkane Studiosの特徴を挙げたが、『DEATHLOOP』は『Dishonored』や『Prey』で培ってきたゲーム性をとことん煮詰めて、さらに味を変えたまったく別の料理になっている。進化という言葉では物足りない。これは革新だ。
60年代にインスピレーションを受けたデザイン、軽妙でユニークなセリフ回し、ぶっ飛んだ性格のヴィジョナリーたち。破滅的で退廃的なブラックリーフ。ゲームを彩る魅力的な要素はふんだんにあるが、本筋はプレイヤーの体験。ここに関しては、「いままで味わったことのないメシが食えるよ」と断言しよう。
最後にひとつだけ。プレイ動画でもお見せしたが、自動タレットを配置して、敵を呼び寄せてタレットといっしょに大量殲滅するのは爽快なのでオススメです!
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