2020年9月に『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』(以下、『デレステ』)が5周年を迎えたことを記念して、佐久間まゆ役の牧野由依さんにインタビューを実施した。まゆの印象変化やライブの思い出などをうかがったので、最後までチェックしてほしい。

牧野 由依(まきの ゆい)

1月19日生まれ。三重県出身。3歳から子役として芸能活動を開始。2005年に『ツバサ・クロニクル』のサクラ役で声優デビューし、同年にはアーティスト活動も開始。代表作は『プリパラ』(黒須あろま役)、『恋と嘘』(真田莉々奈役)など。(文中は牧野)

『デレステ』5周年記念インタビュー牧野由依さん(佐久間まゆ役)。「まわりの子たちのことも考えられるように成長しているのかなと思います」
『デレステ』5周年記念インタビュー牧野由依さん(佐久間まゆ役)。「まわりの子たちのことも考えられるように成長しているのかなと思います」

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  • Q.好きなアイドルは?
    メアリー・コクラン
  • Q.好きな楽曲は?
    Vast world
  • Q.好きなユニットは?
    Masque:Rade

人として成長しているまゆの姿を歌や芝居に反映して取り組む

――まゆとの出会いとなったオーディションのことは覚えていますか?

牧野もちろんです。当日にほかのアイドルもやってほしいと言われることもなく、私はまゆちゃんを受けさせていただきました。そして、オーディションの2、3日後には合格の連絡があり、その週の週末にはキャストの発表があると聞いて、「ものすごいスピード感で物事が進んで行くんだな」と思った記憶があります。また、オーディション当日の段階ですでに、スタッフさんから「ライブではこういう衣装を着ていただきたいのですが、大丈夫でしょうか?」という確認がありまして。マネージャーさんと「やっぱり大きいコンテンツだから、こういった細かな確認もちゃんとしてるね~」なんて、話しながら帰った思い出があります(笑)。

――そうして、まゆ役が決まったわけですが、彼女の第一印象はいかがでしたか?

牧野演じることになって間もない時期にいただいたディレクションでとても印象に残っているのが、“すごくゆっくりなスピードで、近くまでにじり寄ってくるような女の子”というものです。いまでもソーシャルゲーム版『シンデレラガールズ』で描かれるまゆちゃんは、その色が強く残っていると思います。でも、『デレステ』のコミュでは、ほかのアイドルたちとの横のつながりという点にも焦点を当てて描かれているとも感じていて、コミュを通じて、まわりのアイドルたちのことも考えてあげられる子になっているのかなと気づいた部分もありました。それこそ、2年ほど前に録った “魅惑のショウタイム”のコミュあたりから、仲間に対する想いや、「自分ひとりじゃなくてみんなで作り上げるんだ」みたいなものが増えたような気がしています。

――歳月によって変わっていくというのは、成長が見えるみたいでいいですよね。

牧野そうですね。すごくうれしかったです。演じている本人が言うのは変な話ですが、やはり最初のころは危うげな部分がクローズアップされていて、少し心配だったんです。でも、仲間の大切さにも気付けたことで安心できました。

――7年の月日が経って変わっていった部分なのでしょうね。牧野さんの演技については、以前といまとで変わったと思うところはありますか?

牧野当初はゲームの収録の際にディレクターさんから「顔は笑っているけど、目の奥は笑っていない、女の“圧”のようなものを言葉尻に入れていきましょう」と言われていたんです。ですが、まゆちゃんのまわりの子たちに対しての思いというのが描かれるようになってからは、彼女のそもそもの性格を把握しながら、もともと持っている“ねっとり感”をどのくらい表現するのかを少しずつ塩梅を変えながら演じています。

――そのバランスはどのように調整しているのでしょうか?

牧野コミュの内容や関わるアイドルによって変えていますね。『デレステ』はほかのアイドルと会話することが多いのですが、ひとりのカードボイスのときと、誰かと会話するときとでは、演技の方向性も異なるので。ただ、ひとりのボイスのときからイメージが離れ過ぎないようにしつつ、人と会話できるくらいに“圧”を弱めるようにしていたりします。

――なるほど。 歌いかたのほうはいかがでしょう?

牧野技術的な面ですと、メロディーや言葉尻が少し跳ねるような、アイドルらしい歌いかたを意識しています。というのも、私の中でまゆちゃんは“王道のアイドル”というイメージがあったので、そういう歌いかたをしたほうが、聞いてくださった方がすぐに「あ、この子は正統派なんだな」と連想していただけると思ったんです。もうひとつ意識しているのは、まゆちゃんの声から離れないように、自分で歌うときよりも、喉は締めて歌うようにしています。

――キャラクターとしての声を作ったままで歌われるということを意識されていると。

牧野そうですね。あと、ひとりのアーティストとして歌唱するときもそうなのですが、どのような曲でも、同じ声で歌い続けていると、その曲と声が合わなくなってしまったりすることがあるんです。ですので、曲に寄り添って歌いかたを変えてみるというチャレンジを歌唱のたびに行っているのですが、まゆちゃんとして歌うときも同じで。まゆちゃんのレコーディングのときは、きっとプロデューサーと打ち合わせをすると思うので、そのときに感じるであろう彼女の歌への思いというのを意識して、毎回歌いかたを変化させるように歌っています。

――まゆがアイドルとして、どうやって歌うのかということまで考えられているんですね。

牧野私たちも怒っているときと、喜んでいるときとでは、同じ人だとは思えないほど、声の高さや太さがまったく違いますよね。『シンデレラガールズ』では、アイドルたちが、より人間らしい存在であってほしいと思っているので、幅を持たせるように意識しています。

『デレステ』5周年記念インタビュー牧野由依さん(佐久間まゆ役)。「まわりの子たちのことも考えられるように成長しているのかなと思います」

――では、まゆとしてステージに立たれたイベントやライブなどで印象に残っているものはありますか?

牧野すべて印象的ですが、とくに記憶に残っているのは2ndライブと4thライブです。2ndは初めて参加させていただいたライブで、私はそれまでひとつのコンテンツとして、集団でステージに立ったこともなかったので、わからないことばかりで。私が参加する前から『シンデレラガールズ』に関わられている方もいらっしゃったので、あとから入って来た私を受け入れてもらえるだろうかと心配でした。じつは、いまとなっては笑い話なんですが、勝手に体育会系のような縦社会になっているのかと思っていて、ほかのキャストさんたちに「ブーツの紐がほどけていて危ないので、私が結んでおきます」というようなことをしようとしていましたね(笑)。

――失礼があってはいけないと(笑)。でも、確かにある程度コミュニティができているところに参加していくのは不安だったりしますよね。

牧野そうなんです。しかも、皆さんは私のほうが芸歴的に先輩ということで気を遣ってくださっていたみたいで。

――牧野さんは『シンデレラガールズ』としては後輩なので失礼がないようにしていて、ほかの皆さんは芸歴的に先輩である牧野さんに対して気を遣っていたと。

牧野そうです。だから、私が「ブーツの紐を結びますよ」と言ったときに、「いやいやいやいや」となったりもして、すれ違いがあったんです。でも、それがわかってからは打ち解けることができました。

――では、4thライブはどのようなところが印象に残っているのでしょうか。

牧野私は3rdライブには出演していなくて、ちょうど3rdライブの時期にテレビアニメの放送があったのですが、アニメの収録にも抜き(※ひとりのセリフを抜き出して収録すること)でしか参加できず、皆さんともあまりお会いできていない状況だったんです。そんな中で4thライブの参加だったので、コンテンツのルールみたいなものがわからなくて。たとえば、トロッコのことを馬車と呼ぶとか。『シンデレラガールズ』は世界観をすごく大切にしているので、MCで役者として話しているときにも守らなくてはいけない暗黙の了解のようなものがあるんですよね。ただ、明確なルールがまとめられたものがあるわけではないので、リハーサルのときに「なるほど。これは言っちゃいけないのか」と覚えていった記憶がありますね。

――2年も経てば変わっていることもありますしね。でも、そのぶん、ほかのキャストの皆さんとの距離は近づいたんじゃないですか?

牧野とくに近付いたと感じたのは5thライブツアーでしたね。ツアーだったので、複数回出演しているということもありましたし、石川公演ではセンターを担当させていただいたので。公演ごとの色を出すために、トークの内容などキャストにまかせてもらえている部分もあったのですが、その意見の取りまとめをセンターの人が担当したので、より皆さんとコミュニケーションを取ることができました。

――リーダー的な役割も担っていたわけですね。

牧野だから台本を見たときはギョッとしましたね。やっぱり、『シンデレラガールズ』では、(島村)卯月ちゃんが不動のセンターみたいなものがあったので。宮城公演では(諸星)きらりちゃん役の松嵜麗ちゃんがセンターを担当したのですが、初期からのメンバーのひとりですし、彼女の性格もあって、みんなが「麗さん」と慕っていて。コンテンツへの理解力もあるので、センターを務めるのは納得だったのですが、石川公演では何も知らない私がセンターを担当することになったんです。たまたま立ち位置が真ん中というだけだったら、すぐに受け止められたのかもしれないですが、宮城公演で麗ちゃんががんばっているのを見ていたので。たとえば、とある曲の間奏中にセリフを入れましょうと提案して、そのセリフまで考えていて。彼女ならそのアイドルが言いそうなセリフも理解していると思いますが、私は圧倒的な知識不足と『シンデレラガールズ』としての経験不足で、何もわからない私に務まるのかなと思ってしまって。

――そこからリーダーとしてどういう方向性にすることにしたんですか?

牧野みんながひたすら楽しければいいかなと。プロデューサーの皆さんはそれをいっしょに楽しみたいという気持ちを持ってくださるやさしい方々なので、私たちが思いっきり楽しむことが、ステージの楽しさになるのかなと思いました。だから、とくに何をしたということではなく、「何か楽しくしゃべれたらいいな」とか、ツアーなので「ご当地のネタを盛り込めたらいいね」とか漠然としたことですね。ただ、各公演にはその地方にちなんだアイドルやキャストさんが出演することになっていて、石川公演では(新田)美波ちゃん役の洲崎綾ちゃんがメンバーに入っていたので、「あやっぺ(※洲崎さんの愛称)を先生として、金沢弁のクイズをやろう!」と提案したりして、その公演らしさを出せるといいなと考えていました。あと、何かをいっしょにすることで連帯感が出るかなと思って、一部のメンバーだけですが筋トレをやったりもしましたね。

――ライブというと今年2月に行われた7thライブツアー大阪公演のアコースティックで披露された『エヴリデイドリーム』と『マイ・スイート・ハネムーン』には驚きました。

牧野私も台本を見て驚きました(笑)。昨年9月に行われた7thツアーの千葉公演で『エヴリデイドリーム』を歌わせていただいていたので、大阪公演ではソロはないだろうと思っていて、『Love∞Destiny』とかで新しい面を見せてきたまゆちゃんが何かにチャレンジするという意味で、ロックがテーマの公演のメンバーとして選ばれたのかなと。でも、台本を見たら『エヴリデイドリーム』からの『マイ・スイート・ハネムーン』と書いてあったんです。台本は最初はセットリストだけが書かれている状態から、どんどん情報が更新されていくのですが、第2稿を見たときにピアノと歌だけでスタートするようなことが書かれていたので、演出の方に確認したところ、アコースティックで歌うということでした。

――なるほど。戸惑いとかはありませんでしたか?

牧野私の中でライブであっても役者として関わらせていただいているということは変わらず、与えられたお仕事に対して、内容を膨らませていくために意見を出すことはありますが、基本的にはいただいたことに対して応えるだけなので。

――やれと言われことに全力で答えると。

牧野そうですね。ずっとそのスタンスです。

――とは言え、これまでの『シンデレラガールズ』のライブでもあまりなかった演出ですよね。

牧野本当にビックリしました。歌い終わったあとに、長い時間にわたって拍手をしていただけたのがすごくうれしかったです。ピアノの滝澤(俊輔)くんとはもともと知り合いだったのですが、めちゃくちゃ緊張していて。

――そうですよね。ピアノと歌だけでしたからプレッシャーもすごかったと思います。

牧野「ふたりの世界観で『エヴリデイドリーム』をやってください」ということだったので、クリックと呼ばれるリズムを取るための音を消してもらって、私のイヤモニには私の歌と滝澤くんのピアノの音しか聞こえていなかったんです。だから、最初はピアノに歌がついていくのか、歌にピアノがついていくのかという、どちらが主導権を握るのかを、演出家や音楽監督の方と綿密に打ち合わせをしました。

――最終的にはどちらに決まったのですか?

牧野歌にピアノがついてくることになりました。なので、ふつうはピアノの気配をうかがったりしながら歌うのですが、あのときはまったく後ろを振り返らずに歌いました。『マイ・スイート・ハネムーン』もクリック音を消していたのですが、こちらはパーカッションの方がリズムを作ってくださっていました。でも、『マイ・スイート・ハネムーン』でも溜めを作って無音になるところもあって、この2曲は静寂を楽しむようなパートでした。

『デレステ』5周年記念インタビュー牧野由依さん(佐久間まゆ役)。「まわりの子たちのことも考えられるように成長しているのかなと思います」
『デレステ』5周年記念インタビュー牧野由依さん(佐久間まゆ役)。「まわりの子たちのことも考えられるように成長しているのかなと思います」
『デレステ』5周年記念インタビュー牧野由依さん(佐久間まゆ役)。「まわりの子たちのことも考えられるように成長しているのかなと思います」

“シンデレラ”たちが叶えていく夢をプロデューサーとともに

――『デレステ』はプレイされていますか?

牧野家で寝転がりながらプレイしているのですが、そのときに何回か顔の上にスマートフォンを落としたことがあります(笑)。

――危ない!(笑)。まゆ以外でお気に入りのアイドルはいますか?

牧野メアリー・コクランちゃんですね。私と同じ1月19日生まれなので、勝手に親近感を持っています。

――では、ユニットはいかがでしょうか?

牧野Masque:Radeです。まゆちゃんと加蓮ちゃんがちょっとバチッとしたり、よきライバルであったりという関係性は、Masque:Radeから始まっていると思っていて、初めて見たときにそれがすごく心地よかったんですよね。その後も総選挙のコミュでふたりの組み合わせがあって好きだなと。

――続いて、『デレステ』のコミュでとくに印象に残っているものを教えてください。

牧野昨年の総選挙メンバーの“夢をのぞいたら”のコミュです。このときはゲームの収録としては珍しく集まって録ったのですが、新しく入った子たちもいっしょでした。収録では人数が多ければ多いほどノイズが入ってしまいやすいので、注意しながら録っていたのですが、急に「ビビビビビビッ!」とアラーム音が鳴ったんです。その原因が、新しく入った子のひとりがノイズを立てないように息を止めていたら、付けていたスマートウォッチが危険だと察知して鳴ってしまったみたいで、それがめちゃくちゃかわいくて抱きしめてあげたくなりました(笑)。

――先輩の演技を自分のせいでNGにするわけにはいかないと緊張されていたんでしょうね。では、よくプレイする曲も教えてください。

牧野Vast world』です。昨年9月の7thライブツアーの千葉公演で歌ってから、よくプレイするようになりました。

――改めて魅力に気づいた?

牧野そうです。あとは、3Dで歌って踊っているまゆちゃんは、プロデューサーの皆さんがふだん見ているまゆちゃんなんですよね。ですので、私たちのライブの中に、パフォーマンス中のまゆちゃんの表情や仕草などを活かせないかなと観察しながらプレイしているところもあります。

――牧野さんのパフォーマンスへの並々ならない努力をお聞きしていると、ライブでのステージがいっそう楽しみになります。

牧野私は『シンデレラガールズ』に参加させていただいたのが2年目ぐらいのタイミングだったのですが、当時には想像できなかった凝った演出や、ドームのような大規模なライブを実現できるようになりました。それはやはり、プロデューサーさんがいてくださるからこそだと思います。これからもきっと、たくさんの奇跡をアイドルたちが起こしていくと思うので、その隣りには必ずプロデューサーさんがいていただければうれしいです。

『デレステ』5周年記念インタビュー牧野由依さん(佐久間まゆ役)。「まわりの子たちのことも考えられるように成長しているのかなと思います」
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