2020年6月29日にサービス開始3周年を迎えた『アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ』(以下、『ミリシタ』)。プロジェクトを引っ張る立場である『アイドルマスター』総合プロデューサー坂上陽三氏、『ミリシタ』プロデューサー小美野日出文氏、ライブプロデューサー勝股春樹氏へのインタビューをお届け。ゲームとライブ、ふたつの面から『ミリシタ』について語ってもらった。コンテンツ作りへの思いや感謝の気持ちがそこかしこに溢れる、アツい内容となっている。

 なお、『アイドルマスター ミリオンライブ!』としては、2020年7月4日に配信された“ミリシタ3周年‼明日へチャレンジ!アニバーサリー生配信!”にて、テレビアニメプロジェクトの始動が発表されたが、本インタビューは6月上旬に実施したもので、アニメの話題は登場しない点を補足しておく。

坂上 陽三(さかがみ ようぞう)

バンダイナムコエンターテインメント
『アイドルマスター』総合プロデューサー

小美野 日出文(こみの ひでふみ)

バンダイナムコエンターテインメント
『アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ』プロデューサー

勝股 春樹(かつまた はるき)

バンダイナムコエンターテインメント
ライブプロデューサー

思わぬ事態がもたらした新たな挑戦と皆の成長

――最初に改めて『アイドルマスター』シリーズの中で、『アイドルマスター ミリオンライブ!』(以下、『ミリオンライブ!』)や『ミリシタ』はどういう位置付けにあるのか教えていただけますか?

坂上“765プロ”という事務所を舞台にした『アイドルマスター』からの流れを汲んだコンテンツとして生まれたのが『ミリオンライブ!』です。『アイドルマスター』はアーケードから家庭用ゲーム、アニメと展開していますが、基本的にはそれぞれがパラレルワールドという設定にはなっています。とは言え、全体として構築されてきた世界観もありまして、とくにアニメ以降は、アイドル個人ではなく事務所全体で物語が描かれるようになりました。『ミリオンライブ!』は、そういった歴史や世界観を受け継いで新たに作り上げられていったコンテンツです。「劇場を舞台に、みんなでがんばっていこう」というスタイルも、その流れから生まれたものですね。

――さらにその後、派生作品として『ミリシタ』もサービスが開始され、間もなく3周年を迎えるわけですが、昨年の2周年からの1年間を振り返っていかがですか?

坂上もう1年が経ちますか。昨年の記憶が吹き飛んでしまったんですよね(笑)。ちょっとずつ思い出していくと……昨年、2周年記念として秋葉原でコラボイベントを開催したりする中、『ミリオンライブ!』でというよりも、『アイマス』というプロジェクト全体が迎える“15周年”という区切りに向けて、どういうことをしていこうかと考えていました。そして、2019年末に15周年に向けての施策なども発表し、『シンデレラガールズ』、『シャイニーカラーズ』、『SideM』も含め「一致団結してがんばるぞ!」……と意気込んでいたのですが、まさかの事態になってしまいまして。

――世界の情勢が変わってしまいましたね。

坂上現実でのイベントができなくなってしまった分、この数ヵ月はそれぞれのコンテンツでゲームに注力することになりました。その中で、『ミリオンライブ!』では新たな形で生配信(※1)を実施しています。生配信は皆さんが集まって思いを語り合える場を提供したいという思いから開催しました。今後もリアルであるかネットであるかはわかりませんが、そういった場を作っていきたいと考えています。リアルなものに関しては、皆さんの健康と安全を確保できるようになってからと。

※1……5月23日、24日に生配信された“『THE IDOLM@STER MILLION LIVE!』MILLIONSTARS特別生配信~手作りのThank You!.”のこと

小美野僕は昨年の11月からバトンを受け継いで『ミリシタ』のプロデューサーになりました。ここ数ヵ月に関しては、僕たちよりもプロデューサーの皆さんのほうがたいへんだったと思います。ですが、そんな中でも情熱を持って『ミリシタ』を支えていただいて、感謝の気持ちでいっぱいです。いちばん記憶に残っているのは1月の“ミリシタ感謝祭”ですね。これまでライブを見たことがないという人にも見ていただきたいという思いで、『ミリシタ』での配信もしておりまして、ライブパートでも合間にゲーム映像を挟んだり、翌日から始まるイベントの楽曲を初披露させていただいたりしました。

※ミリシタ感謝祭のリポートはこちら

――ゲームのほうはいかがでしょう?

小美野僕がプロデューサーになる前からのプロジェクトではあるのですが、2周年記念楽曲『Flyers!!!』でシリーズが『MTG』(※2)から『MTW』(※3)に切り換わり、さらに個性的な楽曲やユニットが生まれました。ユニットも“Chrono-Lexica”を皮切りに、現在までで8組が新たに登場しています。これからもまだ新しいユニットが出てくるので、僕も楽しみですし、プロデューサーの皆さんにもご期待いただければと思います。

※2……CDシリーズ『MILLION THE@TER GENERATION』のこと
※3……CDシリーズ『MILLION THE@TER WAVE』のこと

――一方、勝股さんから見た、『ミリシタ』の2年目はどのような1年でしたか?

勝股1年前のいまごろは、ちょうど6thライブツアーの福岡公演が開催されていましたね。6thライブツアーについては、『ミリシタ』で生まれた魅力を皆さんに伝えられるようなものにしたいという思いがありまして、新しく誕生したユニットやタイプ(※4)を前面に押し出していくことにしました。もともと『ミリオンライブ!』では、そのタイトルの通りアイドルたちがライブとともに成長していけるように注力しているのですが、6thライブツアーではタップダンスだったり、弾き語りをしてみたり、ライブならではの要素で魅力をさらに高められるようにみんなで挑戦することで、ゲームとの相乗効果を狙いながら、ライブツアーでもひとつのストーリーを作っているんです。

※4…… 6thライブツアーでは、仙台・神戸・福岡で、『ミリシタ』の“Angel”、“Princess”、“Fairy”のタイプ別にキャストが出演する公演が行われた。リポート記事はこちら。

――福岡公演の2日目には、さいたまスーパーアリーナでの追加公演も発表されましたね。

勝股『アイドルマスター』シリーズ全体では、一度振替公演として追加公演を行ったことがありましたが、最初からきちんと企画を立てて開催した追加公演は今回が初めてだと思います。これまでにも、『ミリオンライブ!』は初めてのことに挑戦していくという姿勢を大切にしてきましたが、今回は追加公演という形でもそれを実行しました。キャストの皆さんも、各地方の公演で披露した内容をあえて変えず、同じものをパフォーマンスするという部分もあった中で、どうすればレベルアップできるのかを真剣に考えながら取り組んでくれました。

※6thライブツアー追加公演のリポートはこちら

――ライブについてもう少しうかがわせてください。5thライブは『ミリシタ』のサービスが開始されて初の大型ライブでしたが、ライブの演出などを考える際にも、そのことは意識されていたのでしょうか?

勝股5thライブでは、『ミリオンライブ!』5周年の積み重ねと、『ミリシタ』という新しい魅力を手に入れた“進化した私たち”を見せることを意識して製作していました。タイトルも1stライブの“HAPPY☆PERFORM@NCE!!”に対して5thライブでは“BRAND NEW PERFORM@NCE!!!”と、対になるようにしています。バンダイナムコアーツさんとキャストの皆さんの5年間の積み重ねてきた思いが形になった3曲目のソロ曲に、夜想令嬢 -GRAC&E NOCTURNE-やトゥインクルリズムなど、『ミリシタ』で生まれたユニットをお披露目したり、シャイニートリニティを衣装として採用するなど、改めての自己紹介と新しい魅力を同時に伝えられるような構成にしていました。一方で6thライブでは『ミリシタ』の新しい魅力を好きになってほしいということをテーマにして、新ユニットやタイプといった要素を前面に押し出しつつ、もっと好きになってもらえるようにエンターテインメント的な仕掛けを多く盛り込みました。

※5thライブのリポートはこちら

――なるほど。それでは7thはどういったコンセプトだったのでしょうか?

勝股今回はシリーズ初の屋外単独ライブということで、屋外だからこそのライブをしたいと考えていました。

――そう考えると、さらなる成長を見せる場でもあった7thライブの中止は残念でした。

勝股7thライブについても、企画自体はほとんどできあがっていて、あとはレッスンをして本番を迎えるだけ……という段階には来ていました。不透明な状況から中止という最終判断にいたるあいだも準備は進めており、我々としてはここまでキャスト、スタッフ一丸となって準備してきたものをプロデューサーさんたちにお届けできなかったということがとにかく悔しかったですね。そんな中、5月の生配信をライブチームに任せてもらえることになり、ふだん配信を担当しているメンバーと連携しながら企画を進めました。

――今後、ライブやイベントはどうなっていくのでしょうか?

勝股坂上の発言と同じですが、安全が第一だと思いますので、皆さんが楽しめる状況になってからまた動き出せればと考えています。今回の生配信を通じて、やはり皆でコンテンツのよさを語り合う場というものの必要性を再認識したので、またライブができるようになるまでは、何とかしてそういう場を作れるようにしていきたいと考えています。もちろん、リアルで何かできるのがいちばんですが。

『ミリシタ』3周年記念開発スタッフインタビュー。坂上陽三氏×小美野日出文氏×勝股春樹氏_02

難しいミッションに応えてくれる協力店舗やスタッフに感謝

――続いて3周年の企画についてもうかがいたいと思います。今回は、どんなことを実施する予定でしょうか?

小美野毎年実施させていただいていた、秋葉原の店舗さんとのコラボは残念ですが中止となります。しかし、皆様へお届けするべく準備してきたものを、ただ中止にするというのは僕の中でも諦めがつかなかったので、代わりに『ミリシタ3rd Anniversary in“バーチャル”秋葉原』という企画をWeb上で実施します。じつは、かなり前から店内放送の収録や専用のイラストを描いてもらうなどの準備を進めていまして、いろいろとでき上がっているんです。それらを店舗さん、キャストや事務所様の協力も得て、Web上で楽しめるようにさせていただきました。ただ眺めたり、聞いたりするだけではなく、プロデューサーとして実際にお店を見て回っているようなイメージにしています。各店舗のスタッフさんを始め、多くの方が僕のワガママに協力してくださってできたものなので、とにかく感謝です。

※『ミリシタ3rd Anniversary in“バーチャル”秋葉原』はこちら

――3周年を前に、“劇場宣伝ソング”として『Do the IDOL!! ~断崖絶壁チュパカブラ~』が配信されました。1月のミリシタ感謝祭から始まった企画ですが、これは、そもそもどういった経緯で生まれたのでしょうか?

小美野もともとは、感謝祭を皆さんに楽しんでいただくために、「『ミリシタ』内に実装されるものを作る企画はどうだろう?」ということで始まりでした。その時点から「けっこう難度が高いな」と思っていたのですが、気付いたら想像よりもずっと壮大な企画になってしまっていました……。

――テーマ選びも、まさかのワードが選ばれていきましたよね(笑)。

小美野選択肢が決まった段階で覚悟は決めていましたが、見事な楽曲に仕上げてくださった作詞の藤本記子さん、作曲の佐藤貴文さん、編曲のKOHさんには感謝しかありません。また、ご協力いただいたプロデューサーの皆様にも改めて感謝させていただきたいです。

坂上あれくらい破天荒なテーマがあったほうが作り手は“燃える”んですよね(笑)。

小美野すみません……。この楽曲の特徴は“52人分の部分歌い分け”になっているのですが、そこでアイドルの個性も出たものになっていると思っています。せっかくなので、さまざまな歌い分けを試して、楽しんでいただけたらうれしいです。

坂上ライブでは、勝股くんがプロジェクションマッピングを使ったりして、盛り上げてくれるんだよね?(笑)。

勝股なんてムチャ振りを! そんなことをやったら、予算的にも難度的にも、とんでもないことになるじゃないですか(笑)。

一同 (笑)。

勝股冗談はさておいて、もともと劇場宣伝ソングは7thライブで発表する予定の楽曲でしたので、いろいろ考えてはいました。坂上の言う通り、こういう曲が来るとライブスタッフも燃えるので「どうやっておもしろくしよう?」と盛り上がってしまって、最後まで決まらなかったんですよ。

――その結果が早く知りたいです!

勝股我々も皆さんに披露したいです! その日が来るまでまた温めておくので、楽しみにしていてください。

――では、ゲームの話に戻りまして、今後の予定はどうなっていくのでしょうか? 3周年記念衣装では、ライブ中に衣装の色が変化するという演出面での新たな試みも取り入れられていましたが。

小美野3周年イベントが終わった後も、もちろん演出面での挑戦は続けていこうと思っています。バリエーション豊かな衣装や、楽曲と合った演出なども、引き続きもっと増やしていければいいですね。3月に開催した“ツインステージ”のような新形式のイベントについては、つぎつぎ増やせるものではないので、いますぐ増やしたりはしませんが、挑戦し続けていくつもりです。

『ミリシタ』3周年記念開発スタッフインタビュー。坂上陽三氏×小美野日出文氏×勝股春樹氏_01

――新機能も気になりますが、昨年の12月には“39人ライブ”が実装されましたね。

小美野実際に実装したのは、僕がプロデューサーに就任した直後でしたね。昨年9月に公開したティザー映像では、背景は白バックで動かしていましたが、本番ではステージもしっかり描きながら動かせるようになり、『ミリシタ』制作スタッフの技術力の高さをアピールできたかなと思っています。

坂上9月の6thライブのSSA公演でティザー映像を公開した段階で、じつはほとんど完成していたんです。ただ、可能な限り多くのスマートフォンで動作させたかったので、その検証にだいぶ時間が掛かってしまいました。

――まだ開発中の新要素はあるのですか?

小美野つねに何か挑戦し続けてきた『ミリシタ』でもあるので、水面下ではいろいろ試していたりします。それらがいつ形になるかは、もしかしたら、今後の生放送などで発表できるようになるかもしれません。細かい改善点などもプロデューサーさんたちの声を聞きながら検討していければと思っています。

※インタビュー実施後に配信された“ミリシタ3周年‼明日へチャレンジ!アニバーサリー生配信!”では、アイドルたちの撮影を楽しめる新モードのほか、さまざまな情報が公開された。詳細は以下の記事をチェック。

――それでは、最後に4年目に向けての意気込みをお願いします。

勝股皆さんにとっても難しい状況が続いていますが、“同好の士の集い”の場をこれからも提供して、「『アイマス』が好きでよかった」とか『ミリシタ』をもっと好きになった」と言ってもらえるようにしたいですね。ゲームチームと連動しながら、ゲームとは違うアプローチで貢献できるよう、これからも挑戦していきたいと思います。

小美野プロデューサーさんたちの温かい言葉に、日々救われ、元気をもらっています。そんな中、皆さんに今後も『ミリシタ』を楽しんでもらえるよう邁進していきます。この後3周年イベントも控えておりますし、さまざまな施策も盛り込んでおりますので、応援よろしくお願いいたします。

坂上今年は『ミリシタ』では3周年、『ミリオンライブ!』では7周年、『アイマス』全体では15周年を迎える年となります。これもひとえに全国のプロデューサーさんのおかげだと思っています。本当にありがとうございます。いろいろな苦難はありますが、一歩ずつ皆さんと『アイドルマスター』を育てていって、これからもより楽しめるコンテンツにしていきたいと思います。体調だけにはお気を付けて、これからも応援よろしくお願いいたします。

[2020年7月13日12時記事修正]
本文中の一部表記を修正いたしました。