2020年4月21日、テニスゲーム『テニス ワールドツアー』のプレイステーション4版を使ったオンライン大会に、日本人プロテニスプレイヤー・錦織圭選手が出場することが発表された。

 その大会とは、“ムトゥア・マドリード・オープン・バーチャル・プロ(Mutua Madrid Open Virtual Pro)”。新型コロナウイルスの影響によって中止となった“ATP1000 マドリード”の主催者が創設したものだ。

 4月27日~4月30日の4日間にわたって実施され、男女合わせて32人の選手が自宅からもうひとつのマドリード・オープンに参戦する。試合の模様は公式SNSなどで配信される模様。

 大会の目的のひとつは、ツアーの中止によって経済的なダメージを受けた選手への支援だ。優勝者は賞金15万ユーロのうち一部を仲間たちに寄付するほか、それとは別に5万ユーロが感染症対策に寄付されるという。

 出場にあたって、錦織圭選手は「ユニークな形式で大会を支援できることを楽しみにしている」とコメント。また、「すぐにでもコートに戻ることを望んでいるが、いまは自宅で安全に過ごしている。(ゲームを使った大会で)ファンに前向きなエンターテインメントを提供できる」と期待を寄せる。

 ATP1000 マドリードが属する“ATPツアー・マスターズ1000”は、4大大会やATPファイナルにつぐ規模の大型大会群だ。錦織圭選手はリアルのATP1000 マドリードでは2014年で準優勝。2013年大会では史上トップクラスと称されるロジャー・フェデラー選手に勝利しており、自身も思い出の大会として挙げている。

 “ムトゥア・マドリード・オープン・バーチャル・プロ”の出場選手は32人中28人が発表済み。世界ランク1位に君臨した経験のあるラファエル・ナダル選手にカロリーナ・プリスコバ選手、ATP1000 マドリードで2度の準優勝経験を誇るドミニク・ティーム選手など、ビッグネームが並ぶ。残る4枠に入るのは誰なのか、期待が高まる。

出場選手(4月22日現在)

【男子】
ラファエル・ナダル(スペイン)
ドミニク・ティーム(オーストリア)
アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)
ガエル・モンフィス(フランス)
ファビオ・フォニーニ(イタリア)
ディエゴ・シュワルツマン(アルゼンチン)
ダビド・ゴファン(ベルギー)
カレン・ハチャノフ(ロシア)
ジョン・イズナー(アメリカ)
錦織圭(日本/日清食品)
ルカ・プイユ(フランス)
フランシス・ティアフォー(アメリカ)
アンディ・マレー(イギリス)
ダビド・フェレール(スペイン)

【女子】
カロリーナ・プリスコバ(チェコ)
エリナ・スビトリーナ(ウクライナ)
ビアンカ・アンドレスク(カナダ)
キキ・バーテンズ(オランダ)
ベリンダ・ベンチッチ(スイス)
マディソン・キーズ(アメリカ)
ジョハナ・コンタ(イギリス)
アンジェリック・ケルバー(ドイツ)
クリスティーナ・ムラデノビッチ(フランス)
フィオナ・フェロ(フランス)
カルラ・スアレス ナバロ (スペイン)
ビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)
ソラナ・シルステア(ルーマニア
ユージェニー・ブシャール(カナダ)

リアル志向のテニスゲーム『テニス ワールドツアー』

 『テニス ワールドツアー』はBreakpointが開発したテニスゲーム。日本では、2018年8月20日にオーイズミ・アミュージオがプレイステーション4版とNintendo Switch版を発売している(PC版とXbox One版も存在)。

 本作の特徴は、ジャンルを“テニスシミュレーション”と称するほどリアリティーにこだわっていること。選手の動きや試合の環境、ボールの弾み具合までを再現しているほか、30人以上の選手が実名で登場するのもポイントだ。

 錦織圭選手は残念ながら未実装。仮に次回作や今後のアップデートで追加されるとしたら、ぜひ“エア・ケイ”を再現してほしい。

Tennis World Tour Trailer JPN

『テニス ワールドツアー』(プレイステーション4)の購入はこちら (Amazon.co.jp) 『テニス ワールドツアー』(Nintendo Switch)の購入はこちら (Amazon.co.jp)

ゲームとスポーツのすてきな関係

 今回の“ムトゥア・マドリード・オープン・バーチャル・プロ”と似たような施策として、バスケゲーム『NBA2K』のチャリティー大会“NBA 2K プレイヤー・トーナメント”が挙げられる。現役NBA選手16名が参加し、その中には日本人プレイヤーの八村塁選手も名を連ねていた。見事に1回戦を突破し、勝利に歓喜する姿は記憶に新しい。

 “ムトゥア・マドリード・オープン・バーチャル・プロ”も“NBA 2K プレイヤー・トーナメント”も、プロ選手が同じ競技のゲーム版をプレイする施策だ。ゲームを使う意義も理由もわかりやすいが、こういったものとは別の動きもある。

 2月に開催されたテニスの“全豪オープン”では、バトルロイヤルシューター『フォートナイト』の国際チャリティー大会“全豪オープンサマースマッシュ2020”を併催。出場したのはテニス選手ではなくゲーマーだ。10代を中心にゲーム配信の視聴時間が伸びている昨今。若年層に注目してもらいたい、テニスにいいイメージを持ってもらいたい。そんな主催者側のメッセージも読み取れる。

 ゲーム好きを公言するスポーツ選手は少なくない。テニスの大阪なおみ選手は『Overwatch』プロリーグの決勝大会を現地観戦するほどゲーム好きで、フィギュアスケートの宇野昌磨選手は各種メディアのインタビューでたびたびゲームの話をする(※)。

※いまの好みは変わっているかもしれないが、『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』ではプリンが好きと聞いたことがあります。

  ちなみに、錦織圭選手もゲーム好きだ。4月17日にはファンと『マリオカート』対決をする様子をインスタライブで配信。途中から加わったテニスのダニエル太郎選手に『ファイナルファンタジーVII リメイク』の魅力を語るなど、その熱量はけっこうなもの。

 スポーツ選手には凝り性が多いだろうし、自分の努力が勝利に直結するという意味でも、ゲーム(eスポーツ)は相性がいいと思う。

 また、つい先日は、野球の田中将大選手や卓球の水谷隼選手が『クラッシュ・ロワイヤル』で大会を開催して話題になった。ふつうにプレイするだけならともかく、大会を主催するとは。

 プロスポーツはファンに楽しんでもらってなんぼの世界。ファンからしたら、好きな選手がゲームで一喜一憂する様子を見られるのはうれしいはず。ゲームが選手とファンをつないでくれる。ゲーマーとしては鼻が高い。

 遠く離れた場所でもいっしょに遊べるのはオンラインゲームの長所のひとつ。なかなか大人数で集まれないご時世だから、スポーツ界によるゲーム活用の波が広がるのはいいことだと思う。気晴らしでも何でもいいから、ゲームやろうぜ。