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【特別企画】『新サクラ大戦』メインキャラクターデザイン・久保帯人氏が新生・花組を語る! “リブート”に感じた難しさ、楽しさとは?

新サクラ大戦』発売に向けた特別企画第4弾。メインキャラクターデザインを手掛けた久保帯人氏に、オファーの経緯や、デザイン時のエピソードなどを語っていただいた。

公開日時:2019-12-12 00:00:00

メインキャラクターデザイン・久保帯人氏に聞きました!

 多くのファンからの熱い声に応え、『サクラ大戦』シリーズの完全新作『新サクラ大戦』が14年の時を経て始動し、ついに発売の時を迎える。この連載では、同作に関わるさまざまなキーマンに話を伺ったり、プレイインプレッションを通じて『新サクラ大戦』の魅力を紐解いていく。

新サクラ大戦』発表時にもっとも大きな驚きをもって迎えられたのが、一新されたキャラクターデザインだろう。メインキャラクターデザインを担当した久保帯人氏は、いかにして新しく、個性的で、魅力溢れるキャラクターたちを生み出したのか? 久保氏の仕事場へお邪魔して行われたこのインタビューでは、久保氏へのオファーの経緯や、デザイン時のエピソードなどを語っていただいた。

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久保帯人氏(くぼ たいと)
 広島県出身、漫画家。代表作は週刊少年ジャンプ(集英社刊)で15年に渡って連載され、アニメや舞台、ゲーム化もされたバトルマンガ『BLEACH』(単行本全74巻)。かなりの速筆でも知られている。

新しさを求められた起用 早く仕上がったキャラクターは意外にも……

――まずはオファーが来たときのことを教えてください。いつごろのことでしたか?

久保帯人氏(以下、久保) 確か『BLEACH』の連載が終わってすぐ、くらいのタイミングだったと思います。2016年の9月とか10月くらいですね。編集部(週刊少年ジャンプ)を通じてお話をいただきました。ただ、そのときは連載が終わったばかりで体調を崩していて……。それですぐに取り掛かることができないので、断ってほしいと編集部に伝えたんですよ。

――そんなことがあったんですか。それでも、セガさんはあきらめなかったんですよね?

久保 そうですね。セガさんのほうから「体調が戻るまで待ちます」とおっしゃっていただいたので、それならばときちんと体調を回復させてから引き受けることにしました。けっきょく、動き始めたのはその年の11月ごろになっていたと思います。

――『サクラ大戦』のオファーだと聞いて、どのように思われましたか?

久保 長期連載が終わると、そのタイミングでキャラクターデザインのお仕事が舞い込んでくることがよくある、と以前から聞いていたので、僕のところにも来るかなと思ってはいたんですよ。ただ、『BLEACH』のイメージがあるので男性キャラクターがメインの作品だろうなと。そうしたら、『サクラ大戦』だと言われて、「えっ!?」って(笑)。

――まさかの女性キャラクターメインの作品が舞い込んできたわけですね。

久保 それで興味が湧いて、お話をうかがってみようと思ったんです。そうしたら、最初の打ち合わせでセガさんから何人もいらっしゃって具体的な説明があって……。やはり大きなプロジェクトなんだなと感じました。

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――かなりやりがいがありそうだと。

久保 ただ、じつは僕は『サクラ大戦』というゲーム自体は知ってはいたものの、遊んだことはなかったんですよ。だから、最初に「やりたい気持ちはあるのですが、それではファンの方にも失礼ではないですか」ということを伝えました。そうしたら、「今回はシリーズをもう一度新しく始める作品にしたいから、イメージを一新するためにもそのくらい新鮮さを出せる方のほうがいい」とおっしゃっていただいて……。

――それで心置きなく参加されたというわけですね。最初から、具体的にどのくらい描いてほしい、というお話もあったんですか?

久保 確か何人かの方にチーム分けをしてオファーをするので、帝都関連のキャラクターをお願いしたいと言われたはずです。その時点で、各キャラクターの名前やストーリー、背景などの大まかな部分から、イメージカラーや髪の長さ、色などディテールもある程度決まっていました。

――セガさんが考えているイメージがあって、そこからビジュアル化していったわけですね。

久保 そうですね。僕はいただいた設定をもとにビジュアルを起こす作業を担当したので、キャラクター作りの根幹から関わっているというわけではありません。ただ、設定以降については自由に描かせてもらいました。

1_設定画_神山誠十郎

設定ラフ:神山誠十郎・通常服(画:久保帯人氏)

――描く際に、セガさんからもらった設定以外に、ご自身の中で何かテーマを決めたりされていましたか?

久保 求められる自分の色を出しながら、そのうえであまり奇抜すぎないデザインにしようとは気を付けていました。あとは先ほど、「僕は『サクラ大戦』を遊んだことはない」と言いましたが、じつは中学生のころ週刊ファミ通を読んでいて、『サクラ大戦』のことも、そのころ掲載されていた記事で知ってはいたんですよ。

――そうだったんですか(笑)。ありがとうございます!

久保 歴史あるシリーズであることは知っていましたし、やはりリブートとは言え、これまでのファンの方にも親しんでもらえるようなものにしたかったんです。ですので、当時の空気感を少しでも取り込めればと、記憶を呼び起こして反映させていったつもりです。さくらの袴姿も、大正時代に流行ったものを調べて、そのフォルムを取り入れています。

――服装に関しては指定はあったんですか?

久保 たとえばさくらだったら「ピンクをベースに」とか、初穂だったら「巫女さん風」というイメージを伝えていただいただけですね。あざみの「忍者だけど黄色がイメージカラーです」というのだけは、思わず「は?」と驚きましたが(笑)。

4_設定画_望月あざみ

設定ラフ:望月あざみ・通常服(画:久保帯人氏)

――設定の時点で、まったく忍ぼうとしていませんね(笑)。

久保 でもやるだけやってみようと、かなり試行錯誤しましたね。もっとも、最初に描いたものをセガさんに渡したら、一発オーケーが出たんですが。

――一発ですか! ほかの花組メンバーはいかがでしたか?

久保 アナスタシアや初穂も早く決まりましたね。クラリスは、何回かやり取りしました。セガさんでこだわりがあったみたいで(笑)。じつは最初、クラリスはもっと胸が大きかったんですよ。僕が巨乳好きなので、自然と大きめに描いてしまったのですが、そうしたら「もう少し小さくしてください」と言われて。「そんなオーダーがあるのか!」と驚きました。

4_設定画_アナスタシア

設定ラフ:アナスタシア・通常服(画:久保帯人氏)

3_設定画_東雲初穂

設定ラフ:東雲初穂・通常服(画:久保帯人氏)

――巨乳のクラリスも見てみたかった……。なぜ巨乳じゃダメだったのでしょう?

久保 「太ももを目立たせたい」ということでしたので、「なるほど」と。

――そんな理由が! 花組5人の中で、唯一生足なのはそういうことだったんですね。

久保 太ももを見せるにも、ニーソックスを始めいくつかデザインを提案しましたが、セガさんは「生足がいい」ということだったので。

5_設定画_クラリス

設定ラフ:クラリス・通常服(画:久保帯人氏)

――花組メンバーの中ですと、さくらはいかがでしたか?

久保 いちばん手間取ったのはさくらでしたね。やはりメインヒロインだけあって細かい設定が多く、セガさんと何度もイメージを擦り合わせていってようやく作り上げました。とくに私服姿に苦戦したのですが……けっきょくゲームには出てこないようです(笑)。

2_設定画_天宮さくら

設定ラフ:天宮さくら・通常服(画:久保帯人氏)

――それは残念です。追加配信に期待ですね。花組以外はいかがでしたか? たとえば、男性キャラクターは苦労されませんでしたか?

久保 デザインとしては男性キャラクターのほうがスムーズに進んだ気がします。修正もほとんどありませんでしたし。唯一、さくらのお父さん(天宮鉄幹)だけは1回描き直しています。当初、お母さん(天宮ひなた)とおなじくらいの年齢で描いてしまったのですが、それだと10年前の姿になってしまって、現在の17歳のさくらの父親にしては若すぎてしまうので……。現在の姿とはだいぶ違うものになっています。

1_天宮鉄幹_1

天宮鉄幹

新サクラ大戦_ひなた

天宮ひなた

WLOFの名付け親は久保先生 クラリスもじつは○○だった!

――久保先生と言えば“刀”というイメージを勝手に抱いてしまっているのですが、神山やさくらの刀はやはりカッコいいですよね。

久保 このあたりは楽しんでデザインをしていました。刀を抜くとこういう感じになるとか、ギミックもメモ書きで渡したりして。

――そういったアイデアは、キャラクターをイメージする中で生まれるのでしょうか?

久保 描きながら自然と出てくる感じですね。キャラクター自体ができると、持っているもののイメージも湧き上がってくるんですよ。じつはさくらの刀の“天宮國定”という銘であったり、世界華撃団連盟の略称“WLOF”などの名称は、デザインする流れの中で名前があったほうがイメージしやすくなるので、僕が仮で付けて提出したものなんですが、ゲームでもそのまま採用されていて驚きました。

――デザインだけではなく、ネーミング料も請求したほうがいいんじゃないですか?(笑)

久保 いやいや、それは(笑)。でも、 いただいた設定には名前が決まっていない部分も多かったんです。名前だけでなく、設定そのものも「こうしたらもっとおもしろくなるのでは?」と提案させていただいたりしています。たとえば戦闘服では、イメージカラーが入っているラインの部分が、霊子戦闘機に搭乗しているときに光るようにしてもらいました。

――久保先生のアイデアだったんですか!

久保 もともと『サクラ大戦』で、光武が搭乗者から霊力を吸収してエネルギーにする、という仕組みになっていたので、そのギミックが戦闘服にもあったらいいなと思いまして。それで霊力の流れと連動して服が光るようにするとおもしろいかなと。

0_花組戦闘服集合

――戦闘服と言えば、今回は全員共通のデザインではなく、メンバーそれぞれで個別のデザインになっていますね。

久保 従来作品では全員共通だったと知らなくて、深く考えずに作っていました。僕は同じデザインのものを、個人に合わせてカスタマイズするのがすごく好きなんです。今回も、ベースのデザインだけを決めて、それぞれに違うものを着せるのは楽しい作業でした。

――とくにアナスタシアの戦闘服は話題になりましたよね。アシンメトリーのスカートとか……胸元とか(笑)。

久保 私服のほうと違う形で胸を見せたいと思って、この形になりました。スカートについては、花組全員長さを変えようと思っていましたが、ただ長さを変えるだけでは変化の幅がないですよね。アナスタシアは太ももを見せたいのと、アクションするうえではロングすぎると動かしづらそうだということで、斜めにカットしてみました。

――実際にCGで動くときの姿をイメージして描いたりしているのでしょうか?

久保 いや、どういう風にCGを作っていくのかもわかっていませんでしたし、どう動くかも想像できないので意識することはありませんでした。ただ、ゲームなのでパーツがアップで表示されることはあるだろうと思って、細かいところもアップになるとこんな構造になっています、という説明は入れました。

――さまざまなアイデアを出されている久保先生ですが、反対にセガさんから要望を出されたことというのはあるのでしょうか?

久保 じつはクラリスは胸を小さくしただけでなく、最初は眼鏡を掛けていたんです。もともとそういうオーダーが来ていて、それで描いてみたら「やっぱり眼鏡はナシで」と。実際に見てみたらイメージと違ったのかもしれませんね。それで「眼鏡を外すとメインヒロインみたくなってしまうのですが大丈夫ですか?」と言ったら「『サクラ大戦』のヒロインは全員主役という扱いなので大丈夫です!」と力強い返事がありました。

――そんないきさつがあったんですね。クラリスの眼鏡は、ダウンロードコンテンツで配信されるようなので、楽しみです。さて、今回ほぼすべてのキャラクターが新登場である中、唯一神崎すみれが前シリーズから引き続き登場しています。彼女については、どういったアプローチでデザインされましたか?

久保 彼女については、けっこう悩んだかもしれませんね。もともとすみれについては、シリーズ内で統一性を持たせるためにも、僕ではなく藤島康介先生に頼んだほうがいいのでは、という話をしていたくらいです。前シリーズのビジュアルを参考にして、もとの感じを残しつつ、今回の世界観になじむようにしようと考えながら試行錯誤して描きました。

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――服装も十数年の時を経て、だいぶアダルトな雰囲気が増したなと思いました。

久保 そうですね。年齢的にもそうですし、ほかのキャラクターよりも落ち着いて見えるようにと、オプションを入れたりしています。

――設定画では、杖を持った姿が描かれていますね。

久保 最初はもっと渋めのキャラクターで考えられていたんです。それから、降魔大戦を生き残った、という背景もあったので、脚をケガしている設定を僕が考えて、それで杖を持たせてみたんですよ。ただ、その後開発が進んでいくうちに、少し巻き戻ったというか、若さが入ってきたようで、杖ではなく扇子を持つようになったみたいです。

――ちなみに、今回デザインされたキャラクターの中でいちばんのお気に入りを挙げるとすると、誰になりますか?

久保 アナスタシアか初穂でしょうか。僕は、基本的にゲームのキャラクターは、巨乳かどうかだけで選ぶので(笑)。

――そこはブレませんね!(笑)

久保 巨乳巨乳って言い過ぎて、セガさんに怒られないか心配です(笑)。

――ここまででも何度かセガさんとのやり取りについて言及されていましたが、今回のお仕事では、これまでやっていた漫画連載と「ここが違うな」と思ったことはありますか?

久保 ずっと週刊でやってきていたので、スピード感というか、進めかたが違うというのは感じました。プロジェクトも大きいですし、こちらが出した案に対して、社内で慎重に検討を重ねることになって、返答まですごく時間が掛かるんですよ。僕は何でもすぐにやってしまうので、最初は戸惑いましたね。

――セガさんが久保先生との打ち合わせに行って、会社に戻ってきたときにはもうラフ案のFAXが届いていた……というエピソードを聞いたことがあります。

久保 最初のころはそのくらいのペースでやっていました。ただ、大きな案件についてはそのくらいのペースでしたが、設定の質問など細かいところは、LINEなどを使ってすぐに確認を取れるようになっていました。夜中でも対応していただけたときは驚きましたが。

――質問はけっこうされていたんですか?

久保 そんなにたくさんではなかったと思います。あまり根を詰めてもセガさん側が眠れなくなってしまうので、そこはこちらもムリをし過ぎないようにしていました。

――具体的に、どんな質問をされたのでしょうか?

久保 たとえば、「ブーツを描くとしたらこのタイプとこのタイプが考えられますが、どちらがいいでしょうか?」といったことですね。実際の大正時代とは違う世界ですが、基本的には大正になぞらえたほうがいいかなと考えていたので、そのあたりの時代の文化風俗なども調べて、それを盛り込むようにしていたんです。だいたい、やりたいことは自分の中では決まっているのですが、念のため確認を取る、という意味合いが強かったです。

――現状ファンのあいだでもかなり盛り上がっていますが、もしまた続編が出ることになって依頼が来たら、受けてくださいますか?

久保 続編が出るということになれば、ぜひ!

――それでは、最後にファンに向けてメッセージをお願いします。

久保 作業自体はもう2年前の話だったりするので、じつは僕も最近の新しく出てくる情報は、いちユーザー目線で見ていて、楽しみにしているんです。皆さんも僕と同じように待ちわびていると思うのですが、いっしょにゲームを楽しんでいただけたらうれしいです。

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『新サクラ大戦』購入案内

『新サクラ大戦』2019年12月12日(木)発売

タイトル
新サクラ大戦
メーカー名
セガゲームス
価格
通常版・ダウンロード版 8800円[税抜](9680円[税込])
初回限定版・デジタルデラックス版 14800円[税抜](16280 円[税込])
ジャンル
アクション・アドベンチャー
CERO
15歳以上対象
備考
メインキャラクターデザイン:久保帯人、ゲストキャラクターデザイン:堀口悠紀子、BUNBUN、島田フミカネ、杉森建、いとうのいぢ、副島成記、音楽:田中公平、ストーリー構成:イシイジロウ、原作:広井王子、脚本:鈴木貴昭、キャラクタービジュアル設定:工藤昌史、メインメカニックデザイン:明貴美加、プロデューサー:片野 徹、ディレクター:大坪鉄弥、製作総指揮:里見治紀

©SEGA