ネクソン×Qremo“みらいクリエイターズプロジェクト”とアイドルオーディションの共通項を発見

公開日時:2014-09-17 00:00:00

 前回の記事のテーマは“研究”で、今回は“教育”。アカデミックな内容が続いたことに自分でも驚いている。そんなに真面目なブログだったのか、これ。

★クリエイターの卵はここから生まれる

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▲けっこうまじでプログラミングします。

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 2014年9月15日、ネクソンさんは小中学生を対象にしたプログラミング体験イベント“Scratchでメイプルストーリーのミニゲームを制作しよう”を開催した。

 これはIT×ものづくり教室Qremo(クレモ)さんと共同で発足した“みらいクリエイターズプロジェクト”初のイベント。子どもたちにゲーム作りの楽しさを体験してもらうのが目的だ。

 初回のテーマは“プログラミング”。MMORPG『メイプルストーリー』のキャラクターを題材に、対戦型のアクションゲームを作る。所要時間は約90分。

 いきなりハードルが高い気がする。「ちょっとコンビニ行ってくる」くらいの感覚というわけでもないだろうが、そんなに気楽に作れるものなのか、アクションゲームって。

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▲みんなそのハードルをぽんぽん飛び越えていく。

 ゲーム制作には教育用にも使われている“Scratch”というプログラミング言語を使用。ブロックを組み合わせる感覚でプログラミングできる。

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▲ユーザーは全世界に200万人以上。日本語訳もされている。

 このScratch、開発はなんとMITメディアラボなのだ。MIT! マサチューセッツ工科大学! 東大に引き続き、僕の人生に今度はマサチューセッツ工科大学が関わってきたぞ。

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▲『メイプルストーリー』の日本運営プロデューサーの中西さんは、完成したゲームにコメントする役割で登場。人気プロデューサーと紹介されるプレッシャーたるや。

★子どもたち、すごい

 イベントには30人ほどの小中学生が参加した。会場の端では親御さんたちが我が子のゲーム制作を見守る。僕は年齢的には保護者寄りなので、自然と親戚のおじさん目線になってしまう。がんばれ!

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▲知らないおじさんからエールを送られる子どもたち。

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▲まずはネクソンさんの会社紹介から。

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▲各テーブルにはひとりずつ先生がついている。

 参加者は用意されたテキストに沿ってゲーム制作を進め、分からないところは先生に質問。時間が余ったらアレンジを加えてもオーケー。

 Scratchが初心者用の言語とはいえ、ある程度の慣れは必要だ。だけど、みんなそんなことは関係なく、ぐいぐい進めていく。迷いがない。困ったら先生に聞く。素直だ。

 きっと子どもは発想がシンプルだから、正解に向けて突っ走るパワーの純度が高いのだ。“プログラミングは難しい=自分にはできない”という常識にとらわれがちな大人とは違う。

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▲けっこう複雑な構文組んでる。

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▲小学校中学年くらいのグループにすごく作業が早い子がいて、「きみすごいなー。やるじゃん」と声をかけたら、「すごくないですよ。ふつうですよ」と謙遜された。

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▲テーブルごとに代表者を決め、自分のゲームについてプレゼン。僕が苦手なプレゼンを丁寧にこなす子どもたち。尊敬する。

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▲「対戦ゲームを作る」というテーマなのに、ボスモンスターを倒すゲームを作った子もいた。時間が足りずに未完成だったが、ボスに接触するとHPが減るギミックも制作。応用力がすごい。

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▲ロッテファンの外国人がいるなーと思ったら、

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▲ネクソンさんの偉い人みたいだった。

 最後は質疑応答のコーナー。ステージに登壇した中西さん(『メイプルストーリー』運営プロデューサー)とグレゴリーさん(千葉ロッテマリーンズファン)に、参加者が質問をぶつける。

 どんなかわいい質問が出るんだろうと思ったら、最初がいきなり「プログラムにはどういうソフトを使っていますか?」。そういうの聞く!?

 中西さんは「『メイプルストーリー』に使っている言語はここでは言えないんですけど、C言語などがベースになっています」と丁寧に回答していた。

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▲たじたじ。

★ジャニーズジュニア候補生との共通項

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▲保護者のみなさんに話を聞きました。

 Qremoさんは渋谷でプログラミングやロボット制作に関する教室を運営している。要は学習塾のIT版である。

 その教室も今回のイベントもそうだが、子どもが自分から「行ってみたい!」と言い出すものなのだろうか。それとも、子どもをクリエイターにしたいゲーム好きの親御さんが申し込むものなのだろうか。

 気になったので数人のお父さんお母さんに話を聞いてみた。

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●Aさん(お父さん)
・学習の一環としてお母さんが応募
・こういった教室に参加するのは初めて
・みんなスムーズに進めているけど、うちの子はうまくいってないみたいで心配
(最終的にはわりと作れていたようでした)

●Bさん(お母さん)
・このイベントはたまたま新聞で見つけた
・子どもがゲーム好きだから勧めてみた
・私自身はゲームはさっぱり

●Cさん(お母さん)
・ゲームが大好きな子なので、その気持ちが将来につながればいいと思っている
・ふだんは集中力がないんだけど、ゲームを作るときはすごく集中しているみたい

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 たまたまかもしれないが、お母さんがきっかけになるパターンが多かった。ジャニーズ事務所のオーディションと同じだ。「お母さん(もしくはお姉ちゃん)が勝手に応募したんです」という、よく聞くエピソードだ。

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▲未来がきらきら輝いているという意味ではジャニーズジュニア候補生と同じである。

 「ユー来ちゃいなよ」と誘われたかどうかはさておき、「ゲームのことはよくわからないけど、子どものためを思って勧めた」という意見を聞けたのは純粋にうれしかった。僕が子どもの頃とは時代が違う。

 Aさんが言うように、単純に“学習の一環”として割り切って参加するのもいいことだと思う。プログラムを組むには要素を筋道立てる必要があるので、論理的思考を鍛えるトレーニングになる。完成図を考えながら作業すれば創造性も高まる。

 今回のように筋道が用意されたものではなく、子どもたちが自由な発想で作ったゲームも見てみたい。きっと自由が暴動を起こしたような作品だろうから。

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▲保護者のみなさんも、子どもが作るゲームが気になる。

★プロジェクトはこれからも続いていく

 “みらいクリエイターズプロジェクト”はネクソンさん主導の企画だ。

 これまでに小中学生を対象にした“ネクソン社員1日体験イベント”を開催したこともあり、そのときに「ゲームを作りたかった」という意見がたくさん上がったという。

 ゲーム制作がテーマのワークショップを開きたいが、ネクソンさんにはノウハウがない。いろいろとパートナーを探し、もっとも理念が近かったQremoさんに運営をお願いすることにしたそうだ。

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▲ゲームがきっかけで親子のコミュニケーションが生まれるのもいいですね。

 Qremoさんの母体である株式会社LITALICOでは、学習塾の運営や障害者の就労支援等を行っている。

 活動方針のポイントとして“子どもが達成感を得る”ことを考えているそうだ。詳しく話を聞く時間はなかったが、幼いころの成功体験は成長後にもいい影響を及ぼすらしい。たしかに、“自分でゲームを作った”という興奮は自信につながる気がする。

 “達成感を得る”という点では、ゲームそのものにも共通する部分がある。「地道なレベルアップを重ねて強いボスを倒した」や「試行錯誤を繰り返して難関を突破した」という経験は、前向きな達成感として心に残ると思うのだ。

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▲イベントをいちばん楽しんでいたのはグレゴリーさんなんじゃないか。

 今後、ネクソンさんはプログラミング以外の教室も検討しているとのこと。子どもたちと企画を考えるようなワークショップがあったら僕も参加したい。

 できれば出てきたアイデアをパクりたいので、申し込み時の規約欄に「ミス・ユースケにアイデアを提供する」という一文を追加してほしいです。

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▲質疑応答の際、近くの少年に「彼女いますか? って中西さんに質問してよ」とお願いしたらやってくれた。大人たちは大爆笑。こういう場で笑いを取ったという経験は、きっと彼の心を豊かにするだろう。

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▲おつかれさまでした。

『メイプルストーリー』公式サイト

IT×ものづくり教室Qremo公式サイト

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ファミ通グループでおもにPCのオンラインゲームを担当。企画記事を作るのが好き。
『まいにちがβテスト』は、ミス・ユースケがPCオンラインゲームで遊んだり考えたりしたことをテーマにしたブログです。タイトルには「つねにβテスト時のわくわく感を抱きながらゲームを遊び、実験的な企画もやっていきたい」という意味を込めていると、後付け設定的に考えました。

『PCオンラインゲームのブログ まいにちがβテスト』ブログ