『FF4 ピクセルリマスター』レビュー。カインの気持ちも大人になったいまならよくわかる……。都市伝説だったアダマンアーマーにもいま会いにいきます

byリプ斉トン

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『FF4 ピクセルリマスター』レビュー。カインの気持ちも大人になったいまならよくわかる……。都市伝説だったアダマンアーマーにもいま会いにいきます
 『ファイナルファンタジー』(以下、『FF』)の第1作から『VI』までの6作を、グラフィックを一新して移植した『FF ピクセルリマスター』。本稿では、ピクセルリマスター版『FFIV』のプレイレビューをお届けする。
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※本記事にはネタバレ要素がありますので、ご注意ください。

 自由度の高い編成が楽しめた前作までとは打って代わり、キャラクターの個性やストーリー展開に重点を置いた作品。

 クリスタルを巡る戦いからはじまり、月にまで冒険の舞台が広がるという壮大なストーリー展開が魅力となっている『FFIV』は、大人になったいまプレイすると当時とは違った感想を持つことも?

 「いまならカインの気持ちがよくわかる」と豪語する、オリジナル版の発売当時にリアルタイムにプレイしていたオジサンライターが、過去を振り返りつつピクセルリマスター版『FFIV』の特徴や魅力をご紹介します。

[IMAGE]サントラ『FINAL FANTASY II PIXEL REMASTER Original Soundtrack』の購入はこちら(Amazon.co.jp)ほかの『FF ピクセルリマスター』シリーズのレビューはこちら

『FF ピクセルリマスター』シリーズ紹介

 『FF ピクセルリマスター』シリーズは、オリジナル版のドット絵を現代風にリファインし、さまざまなシステムに改修を行って現世代機に移植したタイトル。

 『FFI』~『FFVI』の6タイトルともにファミコンとスーパーファミコンで発売されたオリジナル版の内容がベースとなっており、キャラクターやモンスターのドット絵、背景、攻撃や魔法などのエフェクトなど、すべてのグラフィックが現代クオリティーに一新されている。
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 BGMはオリジナル版の作曲を手掛けた植松伸夫氏が全曲監修を務めるアレンジ版が収録されているほか、オリジナル版にいつでも変更できるのがポイント。アレンジ版で楽しみつつ、印象深いBGMが流れるシーンではオリジナル版に切り換えたりと、2種類のBGMを自由に変更して楽しむことも可能だ。
※Nintendo Switch、PS4、Steam版のみの対応で、スマホ版は非対応[IMAGE]
 そのほか、ゲームを快適にプレイするための便利システムの追加搭載も見逃せない。バトル終了後に手に入る経験値やゴールドなどの倍率を任意に増減できるブースト機能や、敵とのエンカウントをオンオフできる機能、移動速度をアップする機能、バトルスピートをアップしつつ自動でコマンドを入力させるオートバトル機能などが用意されている。

 上記機能を利用すれば、ゲームを非常にサクサク進められる。「改めてプレイしたいけど、もう一度イチからやるだけの時間は……」という人は、この機能を利用して育成などはサクっと行い、ストーリーだけを追体験するといった遊びかたもできるわけだ。
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『FFII』の熟練度や『FFVI』の魔法修得値などの獲得倍率も、しっかりと変更できる。

 『FF ピクセルリマスター』シリーズは、スマホ(iOS/Android)/Steam版が2021年に、Nintendo Switch/プレイステーション4(PS4)版が2023年に発売。

 エンカウントのオンオフや経験値とギルのブースト機能といった一部機能はNintendo Switch/PS4版から追加されたもので、後日のアップデートによって、スマホ/Steam版にもエンカウントのオンオフ、ブースト機能が追加された。

 ちなみに経験値やギルのブーストは2倍、4倍といった増加に加え、0.5倍、0倍とあえて減らすこともできる。これは低レベルクリアーなどを目指したい人向けの機能。オリジナル版では難しかったやり込みに挑戦するチャンスでもあるわけだ。

 さらに、Nintendo Switch、PS4、Steam版のみ、オリジナル版のイメージに近いピクセルフォント(ドットのようなフォント)やオリジナル版BGMへの切り換え機能を実装。スマホ版の追加要素としては、ゲームパッドでプレイできる機能が加わっている。

 細部は異なるが、基本的なゲーム内容やお助け機能は共通なので、好きなハードのものを購入していいだろう。

『FF ピクセルリマスター』注目機能一覧(一部)

  • ダッシュ機能:通常時の移動速度がアップできる機能。作品によっては“ダッシュ”や“ダッシューズ”をセットするとさらに加速
  • エンカウントのオンオフ:オンにすればボスやイベント戦闘以外のエンカウントバトルが発生しなくなる(一部例外あり)
  • ブースト機能:経験値やゴールドなどの獲得倍率を0倍、0.5倍、1倍、2倍、4倍から選択できる
  • オートバトル:前回入力したコマンドを自動入力させつつ、バトルスピードをアップさせる機能
  • ピクセルフォント:オリジナル版のフォントと、今回用に作成されたピクセルフォントを好きなタイミングで切り換えられる
  • BGM切り換え機能:オリジナル版とアレンジ版のBGMを好きなタイミングで切り換えられる
  • マップ機能:好きなタイミングで世界地図や街・ダンジョンのマップを確認できる。そのマップで獲得できる宝箱や隠されたアイテムも表示される
  • モンスター図鑑:バトルで出会ったモンスターの詳細データが確認できる
  • サウンドプレイヤー:その作品に登場するBGMが聴ける機能
  • イラストギャラリー:設定資料などのイラストがチェックできる。天野喜孝氏監修
  • オートセーブ:画面が切り換わったタイミングなどでオートセーブが行われるように。バトルで全滅した場合、そこから再開できる。ちなみにセーブデータの個数は各タイトル最大20個まで
『ファイナルファンタジー ピクセルリマスター』公式サイトはこちら

*カインの気持ち……いまならわかる

 『FFIV』は、『FFI』や『FFIII』などのカスタマイズ性の高いシステムではなく、ストーリードリブン(シナリオを中心に楽しむタイプのコンテンツ)なRPGへと変化したのが非常に印象的でした。

 ストーリーの進行によってパーティメンバーがガラリと変わるシステムや、ハードがスーパーファミコンになったことでパワーアップしたグラフィックなど、「すごいゲームが登場した!」という印象の強いゲームだった記憶があります。
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大人リディアが合流するシーン。絶体絶命のイベントバトル中にリディアが登場し、バトルBGMが変わって一転攻勢に打って出るという激アツ展開。衝撃的でした。

 『FFIV』発売当時はたしか小学校低学年だったため、リアルタイムでは友だちのお兄ちゃんがプレイしたのを見せてもらい、高学年になってから改めてプレイしてクリアーしたことも懐かしいです。
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イベントシーンの表現が強化され、映像作品のようにハラハラドキドキの展開が続くのも印象深いです。

 そんな『FFIV』では、イベントシーンがゲームの名場面として語られることが多いかと思います。『FFII』や『FFIII』でもキャラクターとの別れは描かれていましたが、表現力が増した『FFIV』ではそんなシーンの数々が少年心にクリティカルヒットしたものでした。
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 しかし、子どものころと現在では感じかたがまったく異なるシーンがありました。

 ゲーム序盤にテラが娘のアンナの死に直面したときに居合わせたギルバートに襲いかかりましたが、当時は「ギルバートのせいじゃないしそんなに怒らんでも」と思っていました。

 ですが、一児の父となったいまプレイすると、かなり共感できるものがあります。テラは何かに八つ当たりしないと感情が追いつかなかったんじゃないかな……。
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 あと、カインといえば2回も裏切ることで有名ですが、これも当時は「何回裏切っとんねん!」と突っ込まずにはいられませんでした。
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 ですが、カインはローザに思いを寄せていて、その恋心は絶対に成就されることがありません。ローザは自分の親友であるセシルと両思いなのですから。

 そんな心の隙があれば、不本意とはいえゴルベーザに操られてしまうのはしかたがないかも……と、大人になった現在は考えてしまいます。

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そんなカインの前でイチャイチャするのは、死に直面していたからとはいえ、やりすぎだろと。気を使えと。まあ、ふたりも若いからね、ある程度はしかたないね。

 自分と同じ30~40歳の世代なら、同じような感想を持ってもらえる人もいるのでは。ふつうとはちょっと違うゲームの感想だとは思いますが、過去からリバイバルしたゲームタイトルなので、こんなふうに遊んでみるのもありかもしれません。

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ただ、ギルバートがカイポでサハギンと戦うイベント戦闘は、いまでもよくわからない。おのれの弱さと戦った……のかな?

細やかなバランス調整にかなり驚く!

 前述のとおり、『FFIV』ではキャラクターのカスタマイズ要素は装備を変更するくらいで、過去作のようなパーティのカスタマイズ要素はありません。

 また、のちに
『FF』シリーズの代名詞となるアクティブタイムバトル(ATB)が初めて登場したこともあり、それ以外のゲームシステムについては、あまり印象に残らなかったという人もいるのではないでしょうか。

 しかし、ピクセルリマスター版では、いぶし銀のように細かく渋いバランス調整がいくつも施されており、非常に遊びやすいRPGへと進化しているんです。

 そのなかでもローザはかなり強化されています。専用コマンドの“いのり”は回復量がローザの能力に影響しているらしく、序盤から終盤まで頼れるようになりました。

 第1作のいやしの杖やピクセルリマスター版
『FFIII』の吟遊詩人の歌のような無限回復役として活躍してくれます。
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序盤はもちろん、終盤でも活躍。MPの節約になってうれしい。

 また、矢が消費するものではなくなったので、弓矢での“ねらう”がどんどん使っていけるのも強い。オリジナル版では矢の消費が勿体ないから積極的に使えませんでしたが、攻撃特化の装備で固めると、ローザは状況によってはエッジに匹敵するダメージを叩き出すことも。

 終盤にアルテミスの弓と矢(弓のほうは超レアアイテム)を手に入れれば、アタッカーとしてもかなり活躍できます。
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オリジナル版では矢が消費制だったため、アルテミスの矢はドロップアイテムとしては比較的楽に入手できました。そのなごりか、[:NOLINK:]ピクセルリマスター版『FFIV』[/:NOLINK:]も矢のほうはボロボロ手に入るのがちょっとおもしろい。1本でいいっす。

 そのほかにも、パロムとポロムの合体技“ふたりがけ”が超強化されています。当時けっこう苦労した記憶のあるスカルミリョーネ戦があっさりと終わってしまったのは衝撃的です。
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ここすごい苦労した記憶があるんですが……。

 また、これは
『ピクセルリマスター』すべての作品に言えることなのですが、装備の効果がわかりやすくなったのもうれしい点。装備を取捨選択することで、キャラクターの長所を引き出しやすくなっています。

 子どものころには付加効果なんて難しいことは考えず、ただ攻撃力と防御力の高いものだけを装備しがち。ですが、魔法使いには知力や精神が伸びる装備で固めるべき。

 セオリーを守れば、弱々しいステータスで活躍しにくかったテラも、魔法役としてばっちり活躍してくれます。ステータス大事。
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ちなみに、テラや大人リディアの主力だった“バイオ”の、一度聞いてたら忘れられないSEは若干大人しめになって残念。

 そういえば、オリジナル版では、道具欄のアイテムをなんやかんやして好きなアイテムを増やすバグが有名でしたが、皆さんはご存知でしょうか。個数が“た5”になるやつです。

 エクスカリバーを増やしてエッジが投げまくる戦法が強力でしたが、本作ではそのバグはもちろん修正されています。ちょっと残念? 順当?
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うっかりラグナロクを増やしてしまい、処分できなくて困ったのもいまとなってはいい思い出。本作では風魔手裏剣で我慢しましょう(高価だけど)。

今度こそ手に入れたい! レアアイテム!

 もうひとつの重要なバランス変更点として、一部のモンスターのレアドロップ率がアップする調整があります。具体的には隠し召喚獣とピンクのしっぽです。

 まだインターネットがなかった時代、これらのアイテムがゲーム中には存在するという噂があったものの、レアすぎるドロップ率だったため、本当は存在しないんじゃないか、怪しい方法で入手したのではないかと都市伝説と化していた地域もあったのではないでしょうか。

  
ピクセルリマスター版『FFIV』ではこれらのアイテムのドロップ率がかなり上がっているため、かなり楽に入手できるようになりました(それでも若干のやり込みは必要)。自分のプレイでは、なんとゲーム開始直後の1戦目のゴブリン戦で“ゴブリン”の召喚獣をゲットしてしまいました。

 PS4版のトロフィーやSteam版の実績には“隠し召喚獣をすべて入手する”という条件のものがあるので、達成しやすいのがうれしいところ。
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まだリディアも仲間になっていないのに……。隠し召喚獣は4つあるので、探してみて。

 また、
『FFIV』のなかでもレア中のレアとして語られているのが、ピンクのしっぽです。これは、ラストダンジョンに出現するレアモンスターのプリンプリンセスが低確率でドロップするアイテムで、エクスカリバーを作るのに必要なアダマンタイトをくれるキャラクターに渡すと、最強防具のアダマンアーマーと交換してもらえます。

 レア中のレアということで入手できる人が少ないですし、そもそも存在を知らない人も多数。オリジナル版では装備してしまうとバグっぽい効果が発生してしまうので、「本当は入手しちゃいけない装備なんじゃ……」といった憶測も出回っていました。
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こいつがピンクのしっぽを落とします。

 プリンプリンセスは、ラストダンジョンのとある部屋でアラーム(使うとその場所に設定されたレアモンスターが出現するアイテム)を使うと戦えるというのは、わりと有名な話。

 ちなみに、オリジナル版ではアラームは一部のモンスターから“ぬすむ”を使って量産するしかなかったのですが、
ピクセルリマスター版『FFIV』ではなんと、月にあるハミングウェイの住処で販売されるようになっています! もうバブイルの巨人にこもる必要はありません!
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すごい良調整!

 アラームの入手も楽だし、ドロップ率もアップ。しかも、本作にはオートバトル機能があるので、ある程度のパーティの強さがあれば、戦闘も楽々です。

 あのころはとてもじゃないがゲットできなかったアダマンアーマーをゲットするために改めて
ピクセルリマスター版『FFIV』をプレイするのも、ありではないでしょうか。
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念願のピンクのしっぽをゲット! プリンプリンセスは同時に5体出現するので、入手難度はそれほど高くない印象です。
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アダマンアーマーは本当にあった! オリジナル版を踏襲しているので、尋常じゃない性能。ちなみに、[:NOLINK:]ピクセルリマスター版『FFIV』[/:NOLINK:]では装備してしまうとキャラクターが弱体化するバグは修正されている模様です。
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ステータスの伸びがやばい。

 そのほかにも、飛竜の槍や、ガラスのマスク、クリスタルリングなど、
『FFIV』には強力なレアドロップアイテムがたくさん存在していました。残念ながらそれらのアイテムのドロップ率はオリジナル版と同じなので、ピクセルリマスター版『FFIV』でも入手難度は高いようです。

 レアアイテムのゲットを目指して戦い、パーティ全員のレベルが99になってしまったのも、懐かしい思い出(それでも入手できないことも)。

 あのころの青春を取り戻すように、レアドロップを求めてラストダンジョンにこもってみてはいかがでしょうか?
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ラストダンジョンに初めてめて到達したとき、そのフロアにある隠し通路までほぼ無意識に操作して移動したことに我ながら驚き。頭では忘れていたけど、体は隠し通路を覚えていた!
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『FFIV』でもっとも有名なセリフ(?)。「いいですとも!」でお別れです。

ピクセルリマスター版『FF』シリーズレビューはこちら

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