『ファークライ5』において、すべての元凶であり、プレイヤーにとっては最強の敵となる、“ファーザー”ジョセフ・シード。“崩壊”を止めるために、人々を救う。その想いでカルト教団のエデンズ・ゲートを率いるジョセフは、カリスマ性溢れる数々の敵を生み出してきた『ファークライ』シリーズの中でも、突出した魅力を持つ人物だ。狂気と理性を併せ持つ複雑な役を見事に演じきったのは、百戦錬磨の名俳優である、てらそままさきさん。てらそまさんは、どのようにしてジョセフの声を表現したのか？　直撃する！

てらそままさき：俳優、声優、ナレーターとして、数々の洋画の吹き替えやアニメ、ドラマに舞台など、幅広い分野で活躍。5月8日生まれ、大阪府出身。『NARUTO –ナルト－ 疾風伝』、『仮面ライダー電王』など声優としての代表作も多数。

――『ファークライ5』でてらそまさんが演じられたジョセフ・シードは、ある意味で本作の“主役”とも言えるキャラクターですが、どのように演じようと考えられたのでしょうか？

てらそま　“動”と言うよりも“静”ですね。ただの“静”ではなく、そこにすべてが内包されていると言いますか……大きな動きではなく、あくまで静かな動作で、彼のカリスマ性をどれだけ表現できるかを考えました。カルト教団の教父ですから、その部分には重きを置きましたね。

――周囲からは悪と見られるかもしれませんが、自分は「正しいことをしている」と信じているという、複雑なキャラクターです。

てらそま　本人にとっては自分が正義で、世界が間違っているわけですよね。僕らも生きていて、自分は正しい、周囲が間違っていると思うことはあります。それでも、なぜジョセフはそこからカルトに行きついてしまったのか？　そこがポイントだと考えながら、演じさせていただきました。

――日本語版をプレイして、理性もありながら狂気をはらんでいて、かつ色気のある声という印象を受けました。

てらそま　まず、理知的であることは大前提でした。また、彼は物事を断定するんですよね。迷っている人を導くために、「これはこうだ、だからこうしなさい」と言う。それは教団を率いる者として必要なことです。声を聴いた方が、そこで違和感を感じないよう、威厳と優しさを意識しました

――遊んでいると、だんだん魅力的な人物に思えてくるのは、てらそまさんの声の力だと思うのですが、実際に演じてみて、いかがでしたか？

てらそま　感情が流れるところは、自分の感情のおもむくままに演じました。ゲームはひとりで遊ぶものなので、そこは素直に演じたほうが届くと思いましたから。テクニックを活かしてああしよう、こうしようとは思わずに、感情に任せてみました。ただ、収録はなかなかたいへんでしたね（笑）。分量も多くて、何度もスタジオに通って収録しました。

――「この声じゃないと、ジョセフじゃない！」と、プレイヤーは皆、思うはずです。

てらそま　そう言っていただけるとうれしいですね。

――プレイヤーには本作のジョセフを通して、何を感じ取ってほしいですか？

てらそま　僕も含めて、みんなが21世紀はもっといい時代になると、昔は思っていましたよね。でも、ベルリンの壁が壊れたり、いまやトランプさんが大統領になったりと、信じられないようなことが世界では起こっています。そんな世界を見ていると、ゲームでジョセフが言っていることは嘘じゃない、むしろ真実なんじゃないかと思うこともありました。その複雑さを感じ取って、人間が懸命に生きていくことはどういうことなのか、このゲームを通して感じていただけるとうれしいですね。ジョセフを演じた人間として、ゲームを遊んだ方が考えて、その結果、少しずつでも世界がよくなっていくといいな、と思います。

　取材は2018年3月27日に行われた発売直前生放送の会場にて実施しました！　この日はてらそまさんによる生アフレコも披露されたので、気になる方はYouTubeの動画（https://youtu.be/v1_MVMMo6CI）をチェック！