ブラックすぎる。労働者階級の衝撃の仕事  “ノッカー・アップ”

壮大な歴史を体験する暗殺アクション『アサシン クリード』シリーズ最新作、『アサシン クリード シンジケート』。舞台となるのは、19世紀に世界の中心とまで言われたロンドンだ。だが、産業革命で大きく発展を遂げた裏側には、貧民たちの過酷な労働がありました。今回は、そうした貧民たちの、現代からは考えられない……とある職業についてのお話。

公開日時:2015-11-19 12:00:00

悲惨すぎる。産業革命期の労働環境

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 “アサシン・クリード シンジケート”の舞台である、ヴィクトリア朝時代のイギリス・ロンドンに暮らす大多数、労働者階級のヘビーな仕事をご紹介します。ゲーム中に街中で見かけるほとんどの人は、この階級にあたります。

 19世紀のロンドンは、産業革命によりもたらされた工場の仕事を求めて、労働者階級の人口が爆発的に増えた時代だったのです。それにより都市部の住居は不足し、貧困も伴い住む家を持たない人も少なくありませんでした。嗚呼、悲惨!

 ちなみに、当時は工場で雇われていた体力自慢や経験豊富な人も、病気や怪我で働けなくなれば、すぐにクビを切られてしまうという……超ブラック企業が蔓延していました。

 ゲーム中でもロンドンを支配する実業家にして、テンプル騎士団長である宿敵“スターリック・クロフォード”の息のかかった悪徳会社がいくつも登場しますが、ガチでどす黒いブラックな企業だったのです。

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 こんな状況ですから、この時代のロンドンには、定職を持たずにその日暮らしの生活をする、いわゆる日雇い労働者も多かったのです。
そうした労働者たちは、日々の食事にありつくためにも、あらゆる需要に応えて、そこに労働力を供給することにより金銭を得ていました。

 たとえば、靴や傘、鍋の修繕、籐椅子の編み直しなどのリペア業。私たち現代人には予想がつきにくい“ノッカー・アップ”と呼ばれる職業があったのです!?

人力目覚まし

 ノッカー・アップ……それは、なんと寝ている人の目を覚ます“目覚まし屋”という職業! いったい、どうしてそのような職業が生まれたのか。当時ノッカー・アップに依頼したのは、工場勤務者たちでした。なぜならば、工場へ決まった時間に出社しなければ、罰金を取られてしまう、という事例が数多くあったため! 要するに、寝坊による遅刻は、収入にとって深刻な問題だったのです。嗚呼、悲惨!

 そんな状況だったため、確実に時間に起こしてくれるノッカー・アップへの需要は高まったのでした。


 ちなみに、当時のノッカー・アップたちは、効率よくに依頼者たちを起こすべく、毎日毎日、早朝から市内を何10キロも歩き回りながら家の窓を叩いていたのです。

 竹竿を使って、窓をノックしていく形が主流だったそうですが、こんな職業があったなんて、おそらく普通に人はまったく知らなかったのではないでしょうか。

 なぜなら、我々が生まれた時代には、すでに“目覚まし時計”がありますから、こんな風に人力で起こしてもらわなくても大丈夫ですよね。
(今も家族に起こしてもらう人もいるかもしれませんが)

 どちらにせよ、今も昔も決まった時刻に目を覚ます、ということは近代生活においては、重要な問題だったことは変わらなかったようです。

 ちなみに、我々現代人にとって欠かせない存在となっている目覚まし時計は、1851年のロンドンで開かれた万国博覧会で出展されて誕生しました。そのころのものは、だいぶアバウトに作動するものだったようですが……1920年代後半になると、かなり精度の高いものが入手しやすくなりました。

 こうして目覚まし時計の普及に併せて、1920年代になるとノッカー・アップの数は激減し、その姿を消すことになります。

 便利になることで、失われていく職業やモノがあるということは、どんな時代にも共通した悲しい宿命なのかもしれません。

 それにしても……突然のクビ切りや罰金制度など、あらゆる技術が発展した現代でも、わりと起きていそうな、19世紀のロンドンのヘビーにブラックな状況をみると、ますます、近代化が人間の生活に与えた影の部分について、なんだか考えさせられてしまいます。

 おそらくあなたも、『アサシン クリード シンジケート』をプレイしながら、まさにジェイコブとエヴィーを操作してロンドンを歩く中で、労働者階級の人たちの姿を眺めているはず。
どうですか、なんだか「お疲れ様です……」と声を掛けたくなってしまいませんか?

 ですが、そんな労働者たちにも誇りはありました。産業革命という新たな時代の波を受け、新たな物事に対し疑念を抱きながらも、労働者階級間の団結力は非常に強くかった。それは、ギャング“ルークス”の団結力の強さに通ずる精神なのかもしれません。

 ところで、もうゲームをクリアーした方もいらっしゃるかもしれませんね。こうして当時の労働者の実情を垣間見てしまうと、ぜひともアサシンとして、この19世紀のロンドンの、極めてヘビーにブラックな労働環境を強いるテンプル騎士を暗殺していただいて、労働者たちに自由を与えてほしいものだ、などと願ってやみません。

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『アサシン クリード シンジケート』特設サイト “Inside Syndicate 1868”

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