ロンドン・カンファレンスwebプレビュー  Vol.4 オーディオディレクターが語る、本作の音の意味

シリーズ最新作『アサシン クリード シンジケート』発売!! この週末は、19世紀のロンドンに没入するのにぴったり。さて、そんな今回は、ロンドンで開催されたメディア向けのプレミアム・カンファレンスリポートから、オーディオディレクターさんが語ったサウンドへのこだわりについてのお話をお届けします。さらりとお読みいただくだけで、本作に込められた音へのこだわりを感じていただけるはず。プレイの合間に、ぜひどうぞ。

公開日時:2015-11-15 08:00:00

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▲リディア・アンドリュー(オーディオディレクター):『アサシン クリード シンジケート』のサウンドを統括。

 私はロンドン出身なのですが、ロンドンに住んでいると、この街が未だにヴィクトリア時代の建造物や、音楽、埠頭などに囲まれていることがわかります。

 19世紀のロンドンには、世界中から人が集まりました。宮殿の中だけでも、女王からキッチンで働く人たち、配達する人たちなど多様な職業があり、コントラストが際立っていました。

 労働者のための住宅も多数ありましたが、自分も、そのような歴史の上に作られた住宅に住んでいたんですよ。

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 そんな風にロンドンで育ったので、『アサシン クリード シンジケート』のサウンド担当として、19世紀のロンドンの様々な面に触れることが出来るのは、とてもワクワクしました。

各地区のパーソナリティを音で表現する

 今作の音楽を考える際には、やはりプレイヤーはロンドンの様々な地区に行くことになるので、各地区のパーソナリティを、音でどう表現するかを考えました。

 貧民街である“ホワイトチャペル”のパブ界隈。そして金融街の“シティ・オブ・ロンドン”、あるいはロンドンの西側にある美しい公園や庭と、スラムにある市場で聴こえる音は、いったいどのように異なるのかを検討したのです。

 環境音、人々の住居、出身地、声、話し方、さらには、どんな音楽を聴いていたのかなどについても、同様に研究しました。

 この時代には中産階級が登場し、余暇の時間が生まれたため、劇場やミュージック・ホールへ行ったり、公園で音楽を奏でたりするなど、音楽を積極的に楽しんでいた時代でもあったのです。

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 音楽担当として、こうした“音楽の考古学”を深く掘り下げるような仕事は、とても楽しい作業でした。ちょうど私は、1970~80年代にロンドンで育ったのですが、この時代の曲は過去30年ほど聴いてきていたので、いまでもずっと覚えています。

 そうして慣れ親しんだ音楽の伝統が、改めてどのようなものだったのかを考えていったのです。

19世紀の音を背景音にも取り入れる

 当時のロンドンの音楽というのは、英国内の各地からだけではなく、世界中から移住してきた人々の影響を受けています。

 なので、今作の音楽を作るに当たっては、コンポーザーのオースティン・ウィンタリー氏と密に連携しながら、新しくモダンでペースの速い、“アサシンの背景となる音楽”を作曲し、19世紀のロンドンで当時聴かれていた音楽と、どう融合させるかを検討しつつ努力をしてきました。

 それぞれの地区のパーソナリティに合った音源、楽曲を選び、各地区の人々の性格、人々の生活の特徴、産業などを考慮しました。

 これまでの『アサシン クリード』シリーズと同様に、街角でバンドが演奏していたり、人が歌っていたりするといった要素のほかに、『アサシン クリード シンジケート』では、これを背景のすべての音にも取り入れようと考えたのです。

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▲戦闘中の楽曲は、ヴァイオリンの速弾きによるものが使われている。こうした楽器のチョイスも19世紀のロンドンという時代を考慮したもの。かっこいい!

貧富の差を音で描く『シャンペン・チャーリー』と『サム・ホール

 今回、『シャンペン・チャーリー』という曲を金融の中心街である“シティ・オブ・ロンドン”地区で使いました。この『シャンペン・チャーリー』は、私も子どものころから知っていた、とても有名なものです。銀行家や投資家がシャンペンを楽しんでいる様子を彷彿とさせる楽曲で、自分が子どものころなどには、隣人がパブでこの曲をピアノ演奏していたものです(楽譜は何も見ずに、記憶だけで弾いていたくらいに有名でした)。

 その逆に、対照的な曲として、貧民街“ホワイトチャペル”地区で使ったのが、『サム・ホール』という曲です。17世紀に作られ、ジョニー・キャッシュが『バラード・オブ・サム・ホール』として晩年のアルバムに入れたこの曲は、殺人の罪を着せられ、絞首刑となり、人々を呪う男の悲哀を歌っています。

【アサシン クリード シンジケート 特設サイト】 スペシャルムービー前編  ロンドン・タウン・ガイド編

 こちらのエリア紹介動画にて、“シティ・オブ・ロンドン”と“ホワイトチャペル”部分で、それぞれ『シャンペン・チャーリー』と『サム・ホール』が流れます。

“音”にも歴史的に正確なものを

 楽曲は歴史的に正確であるだけでなく、ロンドンの生活を的確に表現していることが大切なのです。

 『アサシン クリード』シリーズ、そして本作のサウンドでも変わらず重要なことは、歴史的に正確なものを基本として、そこからキャラクターと、彼らの生活を理解する助けとなるものを引き出すこと。

プレイヤーは『アサシン クリード シンジケート』で、ジェイコブ・フライとエヴィー・フライとなって19世紀のロンドンを歩きます。この都市の各地区を巡りながら、耳を澄ませてもらうことで、よりこの時代についての発見に満ちたゲームプレイになってくれたら、こんなにうれしいことはありません。

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『アサシン クリード シンジケート』特設サイト “Inside Syndicate 1868”

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※本ソフトはCEROにより“18歳以上のみ対象”の指定を受けておりますが、掲載にあたっては、週刊ファミ通の掲載基準に従い考慮しております。