“最上の切なさ”をユーザーに届けるスマートフォン&PC(Steam)向けRPG『ヘブンバーンズレッド』(以下、『ヘブバン』)。Keyの麻枝 准氏が手掛ける儚いストーリーが魅力の本作は、2024年2月10日にサービス2周年を迎え、2月23日にはメインストーリーの最新章となる第五章前編が追加された。

 そんな本作のキャラクターデザインやメインビジュアル、キャラクター原案を担当するゆーげん氏にインタビューを実施。3月8日まで開催された『Angel Beats!』コラボ(※)やメインストーリー第五章前編のメインビジュアルについてうかがいつつ、『ヘブバン』に懸ける想いを語っていただいた。

※2024年3月8日まで期間限定で開催された。

『ヘブバン』ゆーげん氏インタビュー。茅森月歌の内情を表すメインストーリー第五章前編のメインビジュアル。『Angel Beats!』コラボなど、メインビジュアルに込めた思いを訊く
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 なお、本記事は週刊ファミ通2024年3月7日号(No.1838/2024年2月22日発売)に掲載されている『ヘブバン』2周年記念特集内のインタビューを改訂したもの。誌面では本作の魅力を改めて紐解くとともに、総回答者数約2500人のプレイヤーアンケートや、プレイヤーから募集した質問を開発メンバーにぶつけたスペシャルQ&Aも掲載中。こちらも要チェックだ。

※インタビューは2024年1月中旬に実施。

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ゆーげん氏

フリーランスのイラストレーター。おもな代表作は、『アトリエ』シリーズや『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』など。文中はゆーげん。

お客さまに対してつねに本気だからこそともに歩んでいける

――『ヘブバン』がサービス開始から2周年を迎えますが、いまの感想をお聞かせください。

ゆーげんベタですけど“早い”のひと言です。『ヘブバン』の制作に携わり続けてきましたが、2周年まであっという間でした。

――早いというのは、2年間が濃密だったからでしょうか?

ゆーげんそうですね。僕はフリーなのでほかの仕事も受けているのですが、中にはお断りさせていただいたものもありました。それも『ヘブバン』に集中したかったからです。まさに『ヘブバン』に埋め尽くされた2年間でしたね。

――サービス開始後はどのようなイラストを描かれていたのでしょう?

ゆーげんアトレ秋葉原とのコラボビジュアルやストーリーのメインビジュアルなどを描き、屋外広告にもなりました。『ヘブバン』というブランドを広げていく役割を担いましたね。

――ローソンでゆーげんさんのイラストを目にする機会も多かったです。そんな2年間を振り返ってみて、とくにうれしかったことは?

ゆーげん僕はもともとライトノベルの挿絵から業界に入ったクリエイターです。そこからさまざまなお仕事させていただき、ついにアトレさんやローソンさんのような大きな企業とのコラボでイラストを描かせていただけたのはうれしかったですね。ゲーム内のイラストにはある程度の制約がありますが、コラボのイラストではそういった点を気にする必要がなく、オフの状態のキャラクターを描けるので楽しかった、というのもあります。

――反対にたいへんだったことは?

ゆーげん納期が目前、という状況に何度もなったことでしょうか。『ヘブバン』は運営型のタイトルということもあってイラストをスピーディーに仕上げなければならないことが多く、なおかつクオリティーは下げられない。これはやはりたいへんです。

 ライトフライヤースタジオのスタッフとは意見がぶつかることもありますが、柿沼さん(※1)、下田さん(※2)、小沼さん(※3)たちといつも本気で話し合うことができます。そのたびに、満足のいくものをお客さまに届けたいという本気度がライトフライヤースタジオさんから伝わってきて、それがいまでもともに歩み続けている理由です。

※1:柿沼洋平氏。本作のプロデューサー。
※2:下田翔大氏。本作の開発統括とゲームデザインを担当。
※3:小沼勝智氏。本作のディレクター。

――これまでに描いたイラストで、とくに印象に残っているものを教えてください。

ゆーげんサービス開始前に部隊ビジュアルを描けたのはよかったな、と。サービス開始前のゲームでは複数人のキャラクターが集合するイラストを描く機会は少ないんです。なので、キャラクターのつながりをイメージできるイラストをサービス開始前に描けたのはありがたかった。期間が短くたいへんでしたが、満足のいくものに仕上げられてよかったです(笑)。

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思い出を壊さないよう注意した『Angel Beats!』コラボ

――2024年3月8日まで『Angel Beats!』コラボ第2弾が開催されます(※)。ゆーげんさんにとって『Angel Beats!』とはどのような作品ですか?

ゆーげん自分のイラストを初めて人に見ていただいたのがコミックマーケットで、そのときの題材がビジュアルアーツさんの作品でした。なので、『Angel Beats!』にも思い入れがあります。こんな再会のしかたがあるのかと、僕自身かなり驚きましたし、感慨深いです。

※2024年3月8日まで期間限定で開催された。

――第1弾に続いて、第2弾のコラボビジュアルを描いた感想をお聞かせください。

ゆーげん『Angel Beats!』を知っている方にはそれぞれの思い出があります。なので、好き勝手にその思い出を壊さないように意識しつつも、『ヘブバン』の絵柄に寄せて描きました。描くときはつねに緊張していましたね。

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――ライトフライヤースタジオさんやKeyさんからビジュアルについてオーダーはありましたか?

ゆーげんラフで構図を提案した際に「『ヘブバン』の未来を照らすような“光”を感じられるビジュアルにしたい」という意見をもらい、新たに構図を描き起こしました。

――となるとコラボビジュアルの注目ポイントは、やはり光でしょうか?

ゆーげん実際に描かれている光もそうですが、キャラクターたちの関係性という意味での“光”にも注目してもらいたいです。ふたつの作品のキャラクターが混ざって同じ場所にいる風景を、自然に描けたと思っていて。皆さんにもそう思っていただければうれしいです。

――キャラクターの関係性に注目すると、キャラクターが向いている方向や視線などにメッセージが込められているように感じます。

ゆーげんキャラクターたちがその場面でどのようなことを考えているか、想像して描いているので、それぞれ向いている方向や視線が変わります。それぞれに意図を込めて描いています。

――仲村ゆりと立華かなでの新たなスタイルイラストも、ゆーげんさんが描いていますよね。

ゆーげんはい、会議で意見を出し合って新スタイルの衣装を決めました。かなでは白いワンピース、ゆりは制服ですが、新鮮な気持ちで見てもらうために構図を工夫しました。

――2枚の新スタイルイラストの注目ポイントを教えてください。

ゆーげん全力で描いたところに注目してほしいです(笑)。ゆりのイラストは、誰かを引っ張るような構図がこれまでのスタイルイラストとは違うので、その“誰か”というのが誰を示しているのか、プレイヤーごとに想像してもらえるようなイラストにしています。かなでは羽を広げていますが、顔や体が隠れないように、かつ、かわいく見えるように気をつけています。

『ヘブバン』ゆーげん氏インタビュー。茅森月歌の内情を表すメインストーリー第五章前編のメインビジュアル。『Angel Beats!』コラボなど、メインビジュアルに込めた思いを訊く
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第五章前編のメインビジュアルのテーマは“茅森月歌の内情”

――メインストーリー第五章前編のメインビジュアルを描いた感想をお聞かせください。

ゆーげんふだんと比べてすんなりできたという印象があります。メインビジュアルを描く前に必ず話し合うのですが、麻枝さんが「第五章前編は茅森(茅森月歌)が主役だから、その内情が伝わってくるといいよね」と話していて、会議中に茅森の家族に対する思いや愛が籠もった歌をその場で歌ってくださったんです。それが心にすごく響いて、イメージをすんなりとメインビジュアルに落とし込めました。

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――麻枝さんが会議中に歌ったんですか!?

ゆーげん麻枝さんが歌ったのは第五章前編のキーとなる楽曲なのですが、アカペラで歌いながら「この場面にこれが入って」、「この場面はこういう風になって」と説明してくれました。麻枝さんはふだんクールな方なのですが、作品に対する想いや楽曲に込めた想いを語るときは、すごく熱が入って胸に響きますね。

――ゲームで聴くのが楽しみです。第五章前編のメインビジュアルのテーマを教えてください。

ゆーげんテーマは“茅森月歌の内情”です。砂浜に打ち上げられた木馬や光の流星など、現実にありそうだけどないものを描いています。太陽が沈むのか、それとも登っていくのか。夢と現実、過去と未来がわからないように描きました。

――どこか現実離れしていますよね。メインビジュアルでとくに注目してほしいのは?

ゆーげんふだんは見せない茅森の表情です。いつもは気さくに笑って冗談を飛ばす茅森ですが、泣き崩れるような表情で海に浸かって座っている。ここに大事なテーマがあって、第五章前編をプレイした後に見返したときに「そういうことだったのか」と感じてもらえるようなイラストに仕上がっていると思います。

――ありがとうございます。ゆーげんさんのイラストにはよく鳥が描かれていていますが、どのような意図があるのでしょうか?

ゆーげん第五章前編のメインビジュアルでは、茅森の内情を表しているので、ちょうど5羽飛んでいます。それが何を指しているかは、皆さんで考えていただいて……。

――いろいろ考察できそうですね。5羽という数が重要そうです! では、ゆーげんさんの今後の目標をお聞かせください。

ゆーげんサービス開始から2年ということは『ヘブバン』はまだ2歳。「どの立場で言ってるんだ」って話なのですが、ライトフライヤースタジオさんはすごく成長されましたが、つねに新たに生まれる課題と向き合い続けながら前に進んでいます。外部のフリーのイラストレーターとして関わることで、成長に対していい影響を与え、起爆剤のような存在になれればいいですね。

――最後に『ヘブバン』をプレイされているファンの方々へメッセージをお願いします!

ゆーげん『ヘブバン』はキャラクターをできるだけ増やさずに深掘りして、いかにキャラクターを愛してもらうかに注力している作品です。アニメは1クールや2クールの放送が終わると喪失感のようなものを感じるかもしれませんが、スマートフォン向けゲームなら長期的に続けていくことができる。道筋が見えるのは希望でもあります。その道筋を感じてもらえるような作品作りをしていきたいので、プレイしながら引き続き応援をよろしくお願いします。

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