2023年9月14日にNianticとカプコンからリリースされたスマートフォン向けアプリ『モンスターハンターNow』。人気のハンティングアクション『モンスターハンター』の位置情報ゲームで、配信から約1ヵ月で1000万ダウンロードを突破するほど注目のタイトルとなった。

 本稿では、現在はNianticから独立してシンガポールから仕事をしている総合ディレクター野村達雄氏をはじめとしたNianticのメンバーと、開発協力として携わったアングーのメンバーにインタビューを実施。『モンスターハンターNow』開発秘話からアクションゲームとしてのこだわり、今後展開される大型アップデートなどについて話を伺った。

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野村達雄(Niantic)

『モンスターハンターNow』総合ディレクター。Googleマップのエンジニアを経てNianticに入社。『ポケモンGO』と『Pikmin Bloom』の立ち上げとディレクターを担当。2023年にNianticから独立。

菅野千尋(Niantic)

『モンスターハンターNow』ゲームディレクター。ソニー・インタラクティブエンタテインメントのジャパンスタジオにて『人喰いの大鷲トリコ』のレベルデザインとフィジックスを担当。Niantic入社後は『Pikmin Bloom』開発に携わる。

浅川浩紀(Niantic)

『モンスターハンターNow』エンジニアリング。Googleマップのエンジニアを経てNianticに入社。『Pikmin Bloom』の開発を担当。

安達奉元(アングー)

『モンスターハンターNow』開発協力でアングーサイドのディレクター。カプコンにて『モンスターハンターフロンティア』の開発を担当。

橋本拓馬(アングー)

『モンスターハンターNow』ではインゲームのリードを務める。アングーにて『スマッシュ&マジック』を開発に携わる。

『モンスターハンターNow』開発者インタビュー。すべての人類がターゲット層な『モンハン』を作った執念、冬の大型アプデ“雪華散らす碧雷”のこだわりも
写真左からNianticの菅野千尋氏、浅川浩紀氏、野村達雄氏、アング―の安達奉元氏、橋本拓馬氏。

タップだけでもしっかり『モンハン』なゲーム体験

――実際にプレイしてみて、スマホ操作でもしっかりとファンにとってなじみのある『モンスターハンター』のアクションになっていたことに驚きました。

橋本ありがとうございます。原作『モンスターハンター』はコントローラーで遊ぶのでたくさんあるボタンの組み合わせでいろいろと技が出せたり、コンボを繋げたりできます。しかし、『モンスターハンターNow』ではタップとフリック、長押しだけで組み合わせを作らなくてはいけません。

 なのでコンボルートは既存のシリーズ作のものは踏襲せずに全部考え直しました。また、外でプレイするのに操作が複雑過ぎても大変なのでタップしただけで自動で近づけるみたいな操作感での調整は結構しています。

野村「バーチャルパッドはやらないんですか」という質問を受けることもありますが、やっぱり外でプレイするとなると厳しい部分は多いです。片手で操作できることが大事なので、そこはアングーさんと初めから同じ認識で取り組んでいました。

『モンスターハンターNow』開発者インタビュー。すべての人類がターゲット層な『モンハン』を作った執念、冬の大型アプデ“雪華散らす碧雷”のこだわりも
『モンスターハンターNow』開発者インタビュー。すべての人類がターゲット層な『モンハン』を作った執念、冬の大型アプデ“雪華散らす碧雷”のこだわりも
片手剣とライトボウガンを使った狩猟時のスクリーンショット。

――狩猟の時間が75秒に設定されています。簡単なモンスターだとサッと終わって、手強いモンスターだとギリギリで討伐できるかどうかという、絶妙な塩梅だと思います。こちらは試行錯誤のうえに導かれた数字なのでしょうか?

菅野いろんな時間を試してましたよね。

安達最初は3分に設定されていて、早く狩れて75秒とか90秒くらいになるように作っていたんですけど……。

菅野デバッグ時は、椅子に座って3分やるぶんには全然問題なかったんです。でも、外で遊ぶと3分はきついなとなりました。冬のめっちゃ寒い日に外でやったらベンチで凍えながらの3分になるわけですよ。もう二度とやりたくないと思いました(笑)。先にモンスターがたくさんいても全然歩く気にならなかったんですよね。

安達また、初期のバージョンはマップに出現するモンスターの数も少なかったんです。出現する数と狩猟の時間も考えて調整しました。

――遊んでいて歩くテンポが取りやすいように作られているなと思います。たとえばマップに表示されているプケプケを全部倒そうと思ったら、できなくはないですから。どんどん歩いちゃいます。

菅野ありがとうございます。位置情報ゲームなので狩猟する時間以外の体験も大事です。ダウンロード時間やモンスターをタップして実際に狩猟に入るまでの遷移の時間などもできるだけ短くできるように開発しました。足を止める時間なども考慮して、狩猟の時間が75秒に行き着いたのです。

『モンスターハンターNow』開発者インタビュー。すべての人類がターゲット層な『モンハン』を作った執念、冬の大型アプデ“雪華散らす碧雷”のこだわりも

――“一狩りいこうぜ”で4人プレイヤーがリアルタイムでサーバー上で狩猟できることが『モンスターハンターNow』の肝の部分だと思います。モバイルゲームでプレイヤー同士の位置関係も表示されてアクションが展開されるのは技術的に難しかったのではないでしょうか?

浅川エンジニアリング的に言うと、ユーザーが少ないなら簡単に作れます。それを何百万人ものプレイヤーが同時に遊べるようにすることがチャレンジでした。

 “一狩りいこうぜ”でのグループハントの動作については、プレイヤーが自分の位置情報や大剣を振るなどのアクションをサーバーに送りサーバー側でモンスターのAIが動いてどう対応するかを計算しています。

 そして、その情報をサーバーからゲームクライアント(※)に返すという作業をしています。それを4人のプレイヤーがそれぞれ行い、ほかのプレイヤーの位置情報やアクションの情報を受け取って再生しているという感じです。なので頻繁に通信をして同期を取りながら、同じモンスターとの狩猟を実現しています。

※ゲームクライアントとは、プレイヤーがゲームプレイに使用するソフトウェア、ハードウェアデバイスのこと。本稿では『モンスターハンターNow』のゲームアプリと使用するスマホがそれにあたる。

野村これを実現するには、遅延の問題が大きかったです。プレイヤーそれぞれのスマホで回線速度が違うので、サーバーだけじゃなくてクライアント側での工夫も必要でした。まだサーバーから来ていない情報を予測する処理をしています。

橋本たとえば、ダメージを与えて尻尾の部位破壊が起きた場合、攻撃を与えて、その結果がサーバーから部位破壊として表示されるとかなり遅く感じてしまいます。

 これだとゲームの手触りとして気持ちがよくないので、クライアント側で先に部位破壊できるぞと予測させて表示するみたいな工夫をしています。

菅野そういう意味では『モンスターハンターNow』はNianticがサーバー、アング―がクライアントの処理と2社がよくコラボレーションできてますよね。

安達何気ないところに職人の技が入っています。

『モンスターハンターNow』開発者インタビュー。すべての人類がターゲット層な『モンハン』を作った執念、冬の大型アプデ“雪華散らす碧雷”のこだわりも

――狩猟中にスマホ自体の電波状況はいいのに「通信状況が不安定です。」といった表示が出てしまうことがあるのですが、この事象に対してのコメントなどもいただけますと。

浅川グループハントを4人で遊ぶには同期を頻繁に取る必要があります。それぞれの人が持つスマホの状態も異なるため、通信の遅延が起きやすく、その遅延が大きいとどんどんズレて、あるところでリカバリーが間に合わなくなることがあります。とくに都心の大きな駅周辺のように人が多い場所だと遅延が大きくなりがちです。

――人口が密集していたり、通信の時間帯がピークだったりすると遅延が起きやすくなると。

浅川そうですね。アンテナが3本立っていたとしても、実際はけっこう遅延が大きくなっているっていうのはあります。とくに複数人でプレイするリアルタイム性のアクションゲームだと遅延を感じてしまいます。

――ローンチ後も通信に関しては改善しているのでしょうか?

浅川ハンターの皆様の狩猟中のデータを見て、どのくらい通信エラーが発生しているのかを分析しています。いろいろとエラー制御や調節をして、遅延が出ていても狩猟が成立するように工夫しています。

 あとローンチ後に改善したのが、“一狩りいこうぜ”の表示人数です。最初は最初は20人までしか表示できなかったのですが、思った以上にユーザーさんがいろんなところに集中していたので、100人以上見えるようにしました。

『モンハンNow』開発の危機!? このゲームはすべての人類がターゲット層

――開発時のエピソードについても伺えればと思います。まず、本作でアングーがどのようなかたちで携わっているのかを教えていただきたいです。

野村カプコンさんと『モンスターハンターNow』を作るお話がまとまって、2018年の10月くらいから開発が始まりました。Niantic東京スタジオはまだ小さかったので開発に協力してくれる会社さんを探していたところアングーさんと出会いました。代表の中川さんは元カプコンの方でもあり、アクションゲームが得意な会社です。お話をしてすごく馬が合ったので初期からいっしょに開発しています。

――Nianticとアングーで仕事を進めるにあたってカルチャーの違いなどはありましたか?

浅川『モンスターハンターNow』の開発はずっと毎日新しいビルドを作ってその機能を試して、手触りやゲームデザインについて議論しながら進めていきました。最初から完璧なデザインはできないので、思いついたゲームデザインをまず実装して反省するという開発スタイルをNianticは取っています。で、僕の印象なんですけど、アングーさんはあらかじめ決まったもの、順序立てて作りたいのかなという印象が最初あって。そこでちょっと……なんかね(笑)。

安達そうですね。位置情報ゲームということで僕らも初めて開発するジャンルだったので戸惑いもありました。日々の生活でプレイするものなので、そこの認識を得るのに1年くらいかかりました。そこのコミュニケーションのズレというか、認識の違いを感じて、そこの波長のバランスが取れてからは順調に進んでいったかなと思います。

――開発にあたっての技術的な違いなどもありましたか?

安達ほとんどの処理をサーバーで行っていたことに驚きました。

菅野ほかのタイトルは分からないんですけど、僕はもともとコンシューマー向けゲームを作っていたので、こんなにありとあらゆるものをサーバーに置くんだっていうのはNianticに入ってからけっこう驚きました。

安達とにかく全部、モンスターも狩猟もサーバーでしたから。

野村Nianticの中だと常識の話になってしまうんですけど、ひとつの世界でみんなで遊ぶっていうのが大事なので、クライアントの中に閉じこもっちゃうとひとりでしか遊べなくなっちゃいますから。みんなで同じ世界を見て、いっしょに狩りを楽しんだりできるようにするためにはサーバーで処理することは必須になってきます。

 いつだったか、「これはいつサーバーになるんですか?」って聞いたら「これサーバーに動かすんですか?」って返ってきて、「え?サーバーで動かさないの?」ってやり取りがあって(笑)。お互いの当たり前の認識が違うっていう。

安達そうですね。ゲーム開発文化の違いもダイレクトにありました。

『モンスターハンターNow』開発者インタビュー。すべての人類がターゲット層な『モンハン』を作った執念、冬の大型アプデ“雪華散らす碧雷”のこだわりも

――聞くところによると開発を進めていく中でプロジェクトが危機にあったそうですね。どういった状況だったのでしょうか?

野村Nianticでは進行中のプロジェクトの定期的なレビューを開催しています。じつは全員の意見ではありませんが、2022年の3月くらいのレビューで「けっこうまずいんじゃないか」という声が出るくらい迷走していた時期があったのです。さきほども話していたいろんな文化のぶつかり合いですとか、コロナ禍もあって外でゲームをする楽しみ方を見い出せなかったからです。

 かなり危機感があったので、まずプロジェクトの問題点を挙げて整理しました。まず、日常生活の中で遊べるものではなかったことが大きな問題でした。

浅川コロナ禍で外を出歩きにくかったというのもあって、自宅やオフィスでデバッグすることが多かったのですがそれでは位置情報を使ったゲームは作れませんでした。実際に外に出て遊んでみると「全然遊べないじゃん」っていう部分を見つけて改善していきました。

野村さっきお話した狩猟の時間や、マップから狩猟に移るときの移行時間をブラッシュアップしたんです。「ここの時間は0.2秒でお願いします!」みたいにこだわりました。

菅野たとえば小型モンスターはすぐ狩り終わるじゃないですか。あれがストレスにならないくらい、行って帰ってが短くなったのはすごく大きかったですね。

――前はもっと時間がかかっていたのですか?

菅野正直に言うと、よそのゲームと比べるとそんな非常識なほど遅いわけではないです。ふつうのゲーム開発ではかっこいい演出を入れたり、余韻としてあえて間を作る場合があります。ただし、そういったものは外で遊ぶゲームにとってことごとく邪魔になることを痛感したのでどんどん削りました。

野村さらなる大きな問題点ははじめて体験する方々に向けた『モンスターハンター』のおもしろさを教えるプロセスがちゃんとできていなかったということ。

菅野Nianticはいろいろな文化や背景を持った社員がいる会社です。なので社内でテストプレイをするとさまざまなフィードバックが返ってきます。その結果、初めて『モンスターハンター』に触れる人に対しての見せかたができていなかったことがわかりました。

野村Nianticとアング―どちらの開発陣も『モンスターハンター』のファンが多いので、『モンスターハンター』の常識や楽しさを知っていることを前提に作っていたからです。なので、初めて触れる人には、何が起きているのかまったく分からないという部分もあったのかなと。これをどうにかするために導入の部分をもっと丁寧にしました。

『モンスターハンターNow』開発者インタビュー。すべての人類がターゲット層な『モンハン』を作った執念、冬の大型アプデ“雪華散らす碧雷”のこだわりも
『モンスターハンターNow』開発者インタビュー。すべての人類がターゲット層な『モンハン』を作った執念、冬の大型アプデ“雪華散らす碧雷”のこだわりも
プレイ序盤の画面。『モンスターハンター』シリーズおなじみのことでも丁寧にチュートリアルで解説してくれる。

――ゲームを開発する際には“20代から30代の男性”向けといった形である程度ターゲットを絞る企業も多いと思います。でも、その『モンスターハンター』を知らない人に何がなんでも楽しんでもらおうとするのはNianticならではの悩みのように思えます。

菅野僕はほかのゲーム会社から移ってきたのでふつうだったら絶対に取らない層を取りにいくなとは感じました。子ども向けのゲームとかは考えたことはありますけど、高齢の方をターゲットにしようなんて意識がこれまでなかったので。でも、多くの高齢の方も『ポケモンGO』を熱心にプレイするというのは実際に起きていることです。「これゲームやらない人でも分かる? 」っていう議論が社内で度々起きるのがいまでも新鮮です。

――そういう考えは、『ポケモンGO』などの成功体験から来ていたり、もともと社内の文化としてあるものなのでしょうか?

菅野会社というよりは、野村のフィロソフィー(哲学)だと思います。

野村僕が作ってきた『ポケモンGO』と『Pikmin Bloom』はできるだけ広く、いろんな国や地域のいろんな人に触ってもらえるようにしています。『モンスターハンターNow』の開発が始まったときも『モンスターハンター』が好きな人だけじゃなくてもっと多くの人に遊んでもらうことを強く意識していました。だから、よくミーティングで菅野さんに「これで奥様は遊べるようになりましたか?」って聞いてました(笑)。

菅野社内の身内も開発中のゲームのテストプレイに参加できる制度があるからです。うちの妻は超カジュアルゲーマーでふだんはパズルゲームしかしないタイプでして。

野村大事なことなので毎週聞いていました。『モンスターハンター』の文脈が分からない人でも楽しんでもらう必要があったんです。開発初期は最初から武器種が選び放題でいろんな種類のモンスターが登場するという自由度の高い仕上がりでした。

 でも、正式リリースされているバージョンは最初は片手剣だけ持って、クエストをこなして、まずはドスジャグラスだけを討伐して……と、順序立てて理解して遊んでもらえるようにしました。ファンにとってはすぐ自分の好きな武器種を使いたいかもしれませんが、まずは『モンスターハンター』というゲームを知ってもらうことも大切なのでこういう作りなのです。

菅野結果、妻はリリースしたあとも遊んでくれています。ペイントボールで持って帰ってきたモンスターを息子といっしょに狩っています。野村にも「いやうちの妻は正直やらないと思いますよ」って言っていたんですけど、やってくれていることに驚きました。

『モンスターハンターNow』開発者インタビュー。すべての人類がターゲット層な『モンハン』を作った執念、冬の大型アプデ“雪華散らす碧雷”のこだわりも

――アクションの難度も絶妙ですよね。初心者にも優しい操作の取っつきやすさもありつつ、『モンスターハンター』が好きな筆者からしたら立ち回りを工夫できる場面もあるので。

橋本『モンスターハンター』を長く楽しんでいらっしゃる方々にも、はじめて触れる方々にもお楽しみいただけるように、難度の調整はかなりしています。たとえばモンスターの攻撃の前には赤く光ったり、家庭用/PCゲームの『モンスターハンター』よりもモーションをゆっくりにして避けるタイミングを作ってあげたりとか、ある程度プレイしやすいように調整しました。

 上級者向けに、モンスターの攻撃がプレイヤーのチャンスにもなってるタイミングを用意しています。あるポイントに避ければ攻撃中ずっとこっちのチャンスタイムになるだとか、部位破壊をしてそこを狙っていれば状態異常で有利に進められるとか、そういうのは各所に散りばめられています。

――X(Twitter)とかに上がってる、魅せプレイな動画ってまさにそういう部分を活用していますよね。

安達あと、モンスターがシステマチックな動きにならないようにしています。あえてプレイヤーに当たらない攻撃やどこかに突進したりと、本来モンスターが持っているであろう野性味みたいな部分を考えています。そこが狩猟体験の深みにもなっているし、プレイして気持ちがいい部分にもなるのかなと思います。

菅野そういった調整の甲斐あって『モンスターハンターNow』は全世界の全年齢にゲームを届けたいという野村のフィロソフィーと、『モンスターハンター』ファンである開発チームのこだわりが上手くコラボレーションできていると思います。

冬到来、大型アプデで新武器種と新モンスターが登場

――リリース1ヵ月で1000万ダウンロードを達成するなど好調な発進となりましたが、反響はいかがでしょうか?

野村リリースしてまず、街中でほかの人とマッチングしていっしょに狩りをできることがとてもうれしかったです。また、すごく多くのみなさんに楽しんでいただいていると思います。思った以上に『モンスターハンター』らしいと思っていただけたり、『モンスターハンターNow』で初めて『モンスターハンター』に触れていただいた方もけっこういて、ここは狙い通りだったかなと。

菅野データを見てみるとアジア地域を始め、いくつかの地域で特に人気が高いですね。たくさんグループハントをしてくれているアジアのある地域があるのですが、その方たちって実際のプレイ時間やハンターランクの成長の仕方も群を抜いて高い傾向にあります。

――いっしょに遊ぶハンターがいるとモチベーションになるんですかね。

菅野そうですね。こういったデータを見ると、"いっしょに遊ぶこと"にこだわって舵を切ったのはいい判断だったと思えます。

――プレイ中にハンターランク100超えの方とかも多く見かけますが、リリースから2ヵ月ほどでそれほどやり込むプレイヤーがいることは想定外だったりしましたか?

菅野そこはさすがに想定外でした。いまのところハンターランクは200が上限ですけど、そこに到達している方もいらっしゃいますから。最初は1日30分くらい遊ぶくらいの想定をしていて、原作に比べたらだいぶカジュアルに遊ぶ方が多いのではと想定していました。でも、データを見ると比べものにならないくらいみなさんがたくさん遊んでくれていて、外でやるゲームをこんなにやり込んでくれることに驚きました。

――発表された冬の大型アップデートについてもお話を伺えればと思います。

菅野大型アップデートで大型モンスターは新規で4体追加されます。まずジンオウガですね。あと冬なので、冬らしいモンスターを入れたいなと思って、ベリオロス、バフバロ、ラドバルキンです。ラドバルキンは冬関係ないんですけど(笑)。他に小型モンスター2種も登場します。

 そして、武器にランスと双剣が追加予定です。それに合わせてイベントクエスト、スペシャルなクエストが追加されます。あと、フィールドも冬景色になります。

――まずは追加されるランスと双剣の特徴を教えてください。

橋本双剣は、やっぱり鬼人化を75秒の狩猟でどう落とし込むのかに大変苦労してます。SPアクションで“空中回転乱舞”を用意しています。そのモーション時は専用のカメラアングルも作ったりしたのでそこも楽しんでいただければと。

 ランスはガードが主体でカウンターも楽しい武器です。タップ操作でカウンターが気持ちよく決まるように調整しています。

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菅野今回の大型アップデートに際して、新しいモンスターと新しい武器種も入るのでバランス調整が入ります。既存の武器でもう少し武器の強みを出してあげたり、逆に想定より強い使われ方をしているものあるので全部ひっくるめたバランス調整です。新しいモンスターが入ってくるとメタも変わるので、そこを直したいなと。事前にそれらの調整は個別でアナウンスする予定です。サイレントでの調整はないです。

――「最強武器種はコレ」みたいな偏りがあったりするようにも思えるので調整で日の目を見る武器種もあるかもしれませんね。

菅野そうなんですよね。でも、国や地域によって好まれている武器のランキングはけっこうバラつきがあるみたいで。捉えかたによって地域差があるらしいというのは聞いています。

――追加モンスターの話なのですが、ジンオウガやベリオロスは人気モンスターですけど、バフバロやラドバルキンは『モンスターハンター:ワールド』のモンスターです。サービス開始初期から『モンスターハンター:ワールド』のモンスターが多いのは、カプコンさんから要望や、何か狙いがあるのでしょうか。

菅野いや、カプコンさんの要望というのはないですね。

野村単純に開発を始めたころは『モンスターハンター:ワールド』が最新作だったので。最新のモンスターたちを『モンスターハンターNow』でも触ってもらえるように開発したからです。

菅野バフバロは『モンスターハンターワールド:アイスボーン』からじゃないですか。だから僕たちとしては『モンスターハンター:ワールド』じゃないところから選んでいるという意識です。『モンスターハンター:ワールド』からまだまだ引っ張ってこれるモンスターがいるんですけど、冬らしさということでバフバロを選びました。

安達追加モンスターについては、ラドバルキンが初の睡眠属性持ちなのでそこも楽しみにしてもらいたいです。

菅野モンスター選びはいつも難航します。“俺の考えた最強のラインアップ”とかをみんな言いたがるので(笑)。大変なんですけれども、カプコンさんも含めてみんなどこかちょっと楽しそうなんですよね。

『モンスターハンターNow』開発者インタビュー。すべての人類がターゲット層な『モンハン』を作った執念、冬の大型アプデ“雪華散らす碧雷”のこだわりも
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ジンオウガ
ラドバルキン
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バフバロ
ベリオロス

――『ポケモンGO』だと国や地域によってこのポケモンが出るみたいな仕様がありますが、そういう地域差みたいなものは『モンスターハンターNow』で設定していますか?

浅川いまのところないですね。地域差が出ないように遊びやすさを重視しているので、データを見ても同じくらいの出現率を見てますので。

――将来的にはそういった要素は考えていますか?

菅野個人的には出したいですね。モンスターの出し分けとかじゃなくて、どこかに行ったから〇〇に出会えた、〇〇をもらえた。みたいなそういう体験は位置情報ゲームならではなので作りたいとは思っていますね。

――最後に読者やプレイヤーのみなさんにひと言お願いします。

橋本新しいモンスターと武器はどれもこだわって作っているので楽しみに待っていただければと思います。

安達今年最後のアップデートで、年末はお休みがある方も多いと思うのでハンターのみなさんは家族や実家で親戚の方とかにも勧めてください。『モンスターハンターNow』は人といっしょにやっているときがいちばん楽しいので、初詣に行くときにでもみんなで遊んででいただければと。

菅野大型アップデートもそうですが、季節ごとのイベントも展開していくのでそちらもぜひ楽しんでいただければと思います。

浅川こんな機会なので、最後にNianticの採用の話もさせてください。クライアントのエンジニア、サーバーのエンジニアを募集中です。いっしょに『モンスターハンターNow』を盛り上げてくれるかた、ご応募お願い致します!

野村昔『ポケモンGO』をローンチしたときに「やりたいことどれくらいできました? 」って聞かれて、1割くらいですかねって言ったらものすごい叩かれました(苦笑)。だから今回は何割とかは言わないですが、『モンスターハンターNow』を企画したときから温めてきたものがたくさんあります。今度のアップデートでそのうちのいくつかは実装できそうなんですが、まだ始まったばかりなので今後もご期待ください。

 『モンスターハンターNow』は『モンスターハンター』ファンにも楽しんでいただけますし、『モンスターハンター』を触ったことなかった人でも遊びやすいタイトルです。本作を未プレイの方はぜひ一度インストールして、年末年始楽しんでいただければなと思います。

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