Nintendo Switch、プレイステーション5(PS5)、プレイステーション4(PS4)、PC(Steam)向けソフト『Fate/Samurai Remnant(フェイト/サムライレムナント)』。TYPE-MOON×コーエーテクモゲームスで描く『Fate』シリーズ最新作だ。

 江戸時代を舞台とした本作では、願いを叶える願望機“盈月(えいげつ)”を求めて新たな聖杯戦争“盈月の儀(えいげつのぎ)”が勃発。七人の願いし者“マスター”が、七騎の歴史上の英雄“サーヴァント”とともに、最後のひと組になるまで相争う。

 今回は、デザイン監修担当の武内崇氏、キャラクターデザイン担当の渡れい氏、プロデューサーを務める庄知彦氏、アートディレクターを務める鈴木利治氏の4名にインタビューを実施。デザインを中心としたお話に加え、貴重な設定画を大公開するのでお見逃しなく!

 なお、本稿は週刊ファミ通2023年10月5日号(No.1816/2023年9月21日発売)に掲載した、発売直前特集内のインタビューに加筆・修正を行ったもの。特集では、『Fate』シリーズファンのライター陣による、オープニングアニメーションから紐解く本作の予想やプレイレビューなど、読み応えのある企画をお届けしている。こちらも要チェックだ。

※インタビューは2023年8月下旬に実施しました。

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『Fate/Samurai Remnant(サムライレムナント)』インタビュー。武内崇氏&渡れい氏が描いた初期イメージなど、貴重なイラストを多数公開! キャラクター制作秘話やこだわりを訊く
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武内崇氏(たけうちたかし)

TYPE–MOONの代表でイラストレーター、プロデューサー。キャラクターデザインなど、ビジュアル面で同ブランドを支える。本作ではデザイン監修を担当。文中は武内。

渡れい氏(わたるれい)

『Fate/Grand Order –Epic of Remnant– 英霊剣豪七番勝負』のコミカライズを担当しているマンガ家。本作では、キャラクターデザインなどを担う。文中は渡。

庄知彦氏(しょうともひこ)

コーエーテクモゲームス執行役員でω-Forceブランド長を務める。代表作は『真・三國無双』シリーズなど。本作のプロデューサーを担当している。文中は庄。

鈴木利治氏(すずきとしはる)

コーエーテクモゲームスで、 おもに2D&3Dビジュアルの統括を担当しているクリエイター。本作ではアートディレクターとして開発に携わっている。文中は鈴木。

『Fate/Samurai Remnant』は『Fate/Grand Order』との出会いで生まれた

――『Fate/Samurai Remnant』がまもなく発売です。いまのお気持ちをお聞かせください。

武内Fate Project 大晦日TVスペシャル 2022』で初報が出てから約9ヵ月。お待たせいたしました。最新のシリーズ作品でありながらどこか原点回帰を感じさせる、この新しい『Fate』をいよいよ遊んでいただけると思うと、楽しみな気持ちでいっぱいです。

放送で発表されたときの反応を見て、 視聴者の皆さまからの期待をひしひしと感じました。私もいち『Fate』ファンとして発売されるのが楽しみでしかたありません。これからどんな旅が展開されるのか。じつは私も全容を知らないので、ドキドキしています。

鈴木ようやく発売できそうで感無量です。そして、ついに遊んでいただけるということで、ほっとしている気持ちがあります。

ありきたりですが、感慨深いなと......。 武内さんに初めてお会いした2016年から7年が経過しましたが、ようやく手に取って遊んでいただける段階まで来られました。

――7年も前から動いていたのですか!? TYPE-MOONさんとコーエーテクモゲームスさんのタッグで贈られる本作。開発の経緯を教えてください。

7年前は、あくまでも私が奈須さん(※1)と武内さんに初めてお会いしたタイミングになります。大きく動くきっかけになったのは、当社のシブサワ・コウ(※2)が『Fate』シリーズのゲームをTYPE-MOONさんと作りたいという話を、社内の会議でしたときでした。シブサワ・コウは『Fate/Grand Order』(以下、『FGO』)をよく遊んでいて大好きなんです。

 その後、アニプレックスの岩上敦宏社長を通して奈須さん&武内さんとのお食事の機会をいただき、その場でシブサワ・コウからゲームをいっしょに作りたいと伝えました。後日、 企画書をシブサワ・コウと私で作成し、TYPE-MOONさんに正式な提案をしました。結果、「やりましょう」というお返事をいただけまして、本格的に企画が動き始めました。

※1:奈須きのこ氏......TYPE-MOONの創立メンバーのひとりで、シナリオライター、小説家。本作では総監修を担当している。
※2:シブサワ・コウ氏......コーエーテクモホールディングス代表取締役社長。『信長の野望』や『三國志』などを生み出した。

武内業界の大先輩、レジェンドと言っても過言ではないシブサワ・コウさんとは、食事の席で初めてお会いしまして、いまだにゲームを楽しく遊ぶことに全力な方だなという印象を受けました。

 そんな方が『Fate』をとても気に入ってくれているという話も、食事の場で初めて知りまして。 具体的な話はありませんでしたが「『Fate』のゲームを作りたい」ということを聞かせていただきました。この企画はそのときから始まっていたのだなと、いま振り返ると思います。

――シブサワ・コウさんが『FGO』好きであったことがプロジェクトの始まりだったのですね。

武内はい。シブサワ・コウさんには『FGO』自体を気に入っていただいているのですが、なかでも『英霊剣豪七番勝負』に登場する武蔵が印象に残っていると、お食事の際にお聞きしました。

 確かにコーエーテクモゲームスさんとゲームを作るのであれば、『英霊剣豪七番勝負』で描いているような江戸の世界観・時代感がお互いにとってシナジーがあるはず。どうせ作るのであればお互いのいいところをいちばん伸ばそうと、『英霊剣豪七番勝負』が本作の土台となりました。

『Fate/Samurai Remnant(サムライレムナント)』インタビュー。武内崇氏&渡れい氏が描いた初期イメージなど、貴重なイラストを多数公開! キャラクター制作秘話やこだわりを訊く

――武内さんが本作の企画をうかがった際の第一印象をお聞かせください。

武内企画書の段階からいろいろなものが詰まっていて、やりたいという想い、熱意に圧倒されたのが印象として残っています。具体的にゲームがどうなるのかは正直わかっていませんでしたが、いろいろと作って、説明してもらっていくなかで、コーエーテクモゲームスさんがやりたいこと、イメージされているものをだんだんと受け取った。そんな形でした。

――武内さんは本作ではデザイン監修を担当されています。デザイン監修とは、具体的にどういった部分を監修されているのでしょう?

武内『FGO』でも同じような役割をしているのですが、ライターチームと相談しながら、キャラクターのコンセプトや、どういう見た目を作っていくのかという方向性を定めています。そして、それに沿った形のデザイナーさんに発注して、完成したキャラクターデザインを監修しています。

 また、本作では、すべてのデザインを監修していて、ここまでは『Fate』らしい、ここまでいくと『Fate』ではない、といった『Fate』らしさのアドバイスもしています。

――キャラクターデザインの話があがりましたが、本作では渡さんが担当されています。こちらはどのように選ばれたのでしょうか?

武内TYPE-MOONとコーエーテクモゲームスさんから、本企画に合いそうなデザイナーの案がいろいろ出ました。どの方も第一線で活躍されているデザイナーさんだったのですが、何がいちばん重要なのかを改めて考えたときに、土台となった『英霊剣豪七番勝負』という作品を、コミカライズですばらしい作品に仕上げてもらっている渡さんにお願いするのが、もっともこの作品の世界を表現するのに適しているだろうとなりまして。マンガの連載中ではあったのですがキャラクターデザインを依頼し、ご快諾いただきました。

――『英霊剣豪七番勝負』と本作の太いつながりを感じました。渡さんが本作のお話をうかがった際の第一印象はいかがでしたか?

マンガの連載が始まって、そこまで巻数が経ってないときにお話をいただいたんです。TYPE-MOONさんとコーエーテクモゲームスさんが長いあいだ話し合って作ってきた作品の会議に、突然私が入っていいのかなという不安がものすごくありました。

 今回の企画に関しては、突然背後から刺されたみたいな感じでしょうか(笑)。どうしよう、こんな話が来てしまって......みたいな。時の流れに任せて引き受けましたが、こんな大きな企画になっているとは正直思っていませんでした。

サーヴァントを引き立たせる、渡氏のデザインへのこだわり

――各キャラクターはどういった手順でデザインされたのでしょうか?

初めにキャラクターの設定をTYPE-MOONさんから文章でいただいて......。

そうですね。マスターとサーヴァントで制作の工程が異なるのですが、キャラクターの設定そのものはTYPE-MOONさんのほうで作っていただきました。ただ、マスターに関しては、キャラクター設定も渡さんに肉付けしていただきましたね。サーヴァントに関しては、TYPE-MOONさんからデザインの原案をいただき、渡さんのテイストで改めて描いていただいています。

――なるほど。となると、とくにマスターはデザインの調整が発生していそうです。

いえ、そうでもなかったかと思います。微調整はありましたが、デザインの自由度自体はけっこう高かったです。

――どういったところが自由でしたか?

伊織は主人公でゲームの顔ですから、修正がたくさんありました。私もこの子とどう付き合ったらいいのかと、たいへんだったことを覚えています。

 ですが、ほかのマスターに関しては、私の色が強く出たところも許容していただきました。我を出してしまった部分もところどころあったのですが、それを取り入れていただけたのはうれしかったです。

鈴木開発チームとしても、渡先生のイラストに惚れこんでお願いしているので、そこは基本的におまかせにさせていただきました。渡先生の魅力を最大限生かすことを意識して、開発チームは進んでいましたね。

 表情差分もすごい数を描いていただいて......。一応これだけ描いてくださいという希望は送ったのですが、それ以上に描いていただきました。

――マスターのデザインは渡さんのテイストが色濃く反映されているのがわかりました!

はい。ゲームのキャラクターデザインはマンガと違って一枚絵で見せるタイプが多いので、すごく派手にしなければいけないのかなとか、視覚的に覚えやすくしないといけないのかなとか。あと、アクションゲームなので、もっと動きやすいキャラクターにしなくてはいけないのかなみたいな、そういう部分を考えたりもしました。

 ですが、ゲームのコンセプトからその考えは違うと返されたことがありまして......。求められているデザインを読み取るのが難しかったです。

――マンガとゲームでは勝手が違うと。キャラクターデザインにアクションゲームらしさは求められていなかったのでしょうか?

鈴木そういうわけではないのですが、 伊織に関しては、江戸の日常に自然に溶け込んでほしいという想いが開発チームにありました。最初に渡先生にいろいろなデザインを描いていただいたのですが、その時点では『無双』シリーズを連想させるケレン味が強い衣装だったんです。

 そのあたりは何度かリテイクをさせていただき、いまのシンプルな服装、袴と着物という江戸の剣士らしいスタイルに落ち着いたという背景があります。

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宮本伊織 ラフイラスト

――江戸を舞台とした本作で違和感が生じないようにしたのですね。マスターのデザインでこだわったポイントをお聞かせください。

ほかの『Fate』作品のマスターとサーヴァントの関係は、バディ感が強くて共闘するイメージですよね。そういう関係性を上手く表現できるようにこだわりました。

――バディ感の演出をこだわったと。

はい。また、サーヴァントは『Fate』の目玉だと思うので、彼らに添えられたときによりサーヴァント魅力が引き立つよう意識してデザインしました。

鈴木マスターのデザインをいただくときは、サーヴァントを横に置いていただいて、必ずふたりセットの状態でいただきました。

そうですね。私の好みになってしまいますけど、身長の高低差があったらかわいらしいかなとか、こういう武器を使うのかなとか、想像しながらデザインを合わせた感じです。

――TYPE-MOONさんがもとのデザインを描いたサーヴァントについてはいかがでしょう?

武内各デザイナーさんのほうでこだわりを持ってデザインしていただきました。自分で言うと、セイバーのデザイン原案を担当させていただきまして。セイバーは『Fate』シリーズでは定番となっている“アルトリア顔”にしています。今回は江戸が舞台なので、黒髪のアルトリアにしようというのは、ライターチームとの会議で決まっていました。

 黒髪のアルトリアのインパクトは強いと思っていたのですが、いざ書いてみると難しくて。何度か試行錯誤をし、細かい微調整を加えていまの形になりました。いろいろなアルトリア系のキャラクターたちの要素を少しずつ集めていって完成しましたね。

 こだわりというほどでもないのですが、見ていただいてわかる通り、いままでのアルトリア系のキャラクターたちよりもグッと精悍な印象になるように心がけてデザインしています。

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セイバー 初期イメージ

――伊織とセイバーが初めて出会うシーンなど、本作では『Fate/stay night』らしさを感じさせる要素が盛り込まれています。キャラクターデザインでも『Fate/stay night』を意識した部分はありますか?

武内『Fate/stay night』のセイバーと印象が近いなど、原作を知っている人にとって「これこそ『Fate』だよね」と思える要素は入れています。しかし、デザイン面で言うと、『Fate/stay night』から引っ張ってという部分はほぼありません。

そうですね。『Fate/stay night』からというのはあまり。ですが、おそらく儀式の裏側にいると思われるキャスターのマスター・土御門泰広は、少しだけ言峰綺礼っぽいというか……。手を広げたポーズから伝わったらいいなと。

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土御門泰広

開発陣の思い入れがとくに強い、主人公・伊織のデザイン

――デザインでとくに苦労したキャラクターを教えてください。

武内アーチャーに関しては、どういうキャラクターにするのかをライターチームと悩みました。劇中にひとりは、コーエーテクモゲームスさんの作品を彷彿とさせるキャラクターがいたほうがおもしろいだろうということで、あの英雄が選ばれています。

 仕掛けるなら「これはコーエーテクモゲームスさんからやってきたね」と、しっかりと伝わったほうがいいので、デザイナーの森井しづきさんに相談したところ、彼から少年のようなキャラクターがあがってきました。アーチャーの真名とそのイメージは有名なので、初見時はかなり面食らってしまったのですが、この人物をあえて少年の姿にするというところが、発想として『Fate』らしいなと感じられて。ぜひこれでいきましょうと、このような少年になったのが印象に残っています。

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――アーチャーを名乗る英雄が誰なのか気になります! マスターはいかがでしょうか?

いちばん手間取ったのは、 やはり主人公の伊織です。TYPE-MOON作品の主人公たちと並べたとき、 最初に描いたデザインでは印象が薄いなと思ってしまって。どうやって作っていったらいいのかわからず、完全に迷ってしまいました。

 そんなときに武内先生から参考となるイラストをいただいて、デザインの方向性が見えてきました。それからは徐々に時間をかけて仕上げていった感じです。

武内すばらしいデザインになっています。

ありがとうございます(笑)。じつは、武蔵と何か共通点があったらいいなと思い、少し目の描きかたを似せています。色は濃いめとなっていますが......。

武内あまり直接的にデザインしてしまうと、血縁関係のようになってしまいますから。

鈴木初期デザインだと目の中も武蔵といっしょでしたね。

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セイバー&宮本伊織 初期イメージ
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宮本伊織 初期イメージ

結果的にいろいろな人から助けをいただいて、伊織が主人公として胸を張れるいいキャラクターに仕上がってよかったです。

武内デザインができあがったときに「このキャラクターならいける!」と思いましたよ。

私もまったく同じように思いました(笑)。

本当にいろいろな人の期待というか、伊織をなんとかしないとみたいな想いが伝わってきて。プレッシャーを感じながらデザインさせていただきました。

――そんな伊織ですが、もともとは主人公ではなかったと聞いて驚きました。

武内始めはサーヴァントの中のひとりとして、コーエーテクモゲームスさんから提案をいただいていました。それを見た奈須が「やるんだったら伊織が主人公でしょ」と言い、セイバーと組ませようとなりました。まさに本作の柱が決まった瞬間ですね。なので、伊織にはかなり思い入れがあります。

TYPE-MOONさんから出ていた伊織の情報は、武蔵が名乗っているくらいのものだったので、どういう人物になるのかは私も探り探りでした。

武内たぶん奈須の中では、伊織に対してぼんやりとしたイメージがあり、それを今回しっかり深めていったのだと思います。伊織がどういう男で、物語としてどういう結末にたどり着くのかまで、彼の中では見えていて......。

――奈須さんの中では伊織のざっくりとしたイメージがあったのですね。

武内おそらく。ただ、設定全振りで作ってしまうと、平面的なキャラクターになると思うんですよね。いい感じに渡先生の魅力というか、色気が表現された最高のデザインになったなと感じています(笑)。

 ここまで色気のあるキャラクターの内面がいったいどういうものなのか。そこに奈須の描くキャラクターらしさが詰まっていて。そういった部分は本当に楽しんでもらえるのではないかと思っています。

伊織は落ち着いているのかなと勝手に想像しまして、若干ダウナーな感じの目にしたんですけど、それがよかったみたいです。

細かい描き込みが光る装飾品と注目のマスター

――劇中ではほかにも多くのマスターが登場します。どのような順番で描いたのでしょうか?

鈴木確かいちばん最初にデザインしたマスターは高尾太夫でしたよね?

そうですね。でも伊織が最初に完成し、マスターを全体的に仕上げていくという流れになりました。鄭成功は少し男らしくしたのを覚えています。

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高尾太夫 初期イメージ
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鄭成功 初期イメージ

――とくにデザインに注目してほしいマスターもいたり?

強いて挙げるのであればドロテア・コイエットでしょうか。初期デザインでは思い切り趣味を出して強そうな女性を描きましたが、 やりすぎでNGをいただきました(笑)。

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ドロテア・コイエット 初期イメージ

鈴木その後、見た目を幼くする方向にも行きましたよね。けっきょく武内先生から「年齢はもう少し上です」と監修いただき、いまの形に落ち着いたという。

いただいた設定を読んだときに、彼女はいろいろな印象が出てくるキャラクターでした。唯一海外出身のキャラクターですし、時計塔に所属する魔術師だったので。

鈴木ドロテア・コイエットは渡先生のテイストが、いちばん強くでているキャラクターだと私は思っています。デザインがとにかく凝っていて、帽子に小さいスズランが付いていたりと。

魔女らしさがでたらかわいいだろうなと意識してデザインしました。でもいちばんたいへんだったのは足なんですけどね(笑)。

武内これは作画泣かせですよね。コミカライズするときは省略しないと描けない(笑)。

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ドロテア・コイエット ラフイラスト

――作画のカロリーが見るからに高そうです(笑)。

でも、コートを脱いだり帽子をなくしたりしたらそうでもないので、それはそれでやりやすいのかなと思います。

――コートを脱いだときの印象はがらりと変わりそうです。少女らしさがでるというか……。

やはりコートは武器だと思っていて、脱いで可憐になったらかわいらしいなと。これは完全に趣味が出ていますけれど(笑)。

――劇中でも可憐でかわいらしい姿を眺められるかもしれないと思うと楽しみです! そのほかのマスターはいかがでしょう?

ほかのキャラクターでいうと、ランサーのマスターである地右衛門に旗を持たせたのも注目してほしいポイントです。和風の旗はかっこいいですし、江戸時代の日本が舞台なので、せっかくだから出したいなと。

鈴木地右衛門は、天草島原で起こった大乱の生き残りということで、その戦場に打ち捨てられた旗をかき集めて衣装にしているという設定で描いていただきました。

――ランサー陣営のふたりを並べてみると、不思議と共通点があるようにも見えますね。

そうですね。槍を持っているランサーと並べたときに強い印象を与えたいと思いまして、真っ赤にしました。色も上手くまとまり、よかったです。

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地右衛門 初期イメージ
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『Fate』の顔とも言えるサーヴァントたち

――ランサーといえば、あのアヴェンジャーとかなり似たデザインですよね。『FGO』にも登場する武蔵は、バーサーカーに変化したということもあって衣装ががらりと変化していますが、こちらはどうしてほぼそのままの形で登場するのでしょうか?

武内設定の段階で「『Fate』だとわかりやすいキャラクターがひとりいたほうがいいんじゃないか」となったからです。そこでランサーが選ばれました。デザインとしてはそういう理由ですが、設定やクラスといった疑問は物語で補完されています。

――そのような事情があったのですね。“逸れのサーヴァント(はぐれのサーヴァント)”にはシリーズおなじみのキャラクターが多数いますが……。

武内逸れのサーヴァントに関しては、ファンサービス的な要素として、それぞれのクラスの顔といえるようなキャラクターたちを登場させています。中でもいちばん話題になっているのは、タマモナインのひとりであるタマモアリアでしょうか。

 9人で構成されるタマモナインですが、「いろいろな作品でひとりずつ出そう!」という方針があるんです。それに従い、本作でも新しいタマモが登場しました。じつはライダーがタマモになるとは思っていなくて、デザインが上がったときはびっくりしました。

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――タマモナインにそのような方針があったとは!(笑)

武内そうなんです(笑)。あと、逸れのセイバーにも注目してほしいですね。こちらは『FGO』で登場しているキャラクターに因縁のあるサーヴァントとなっています。舞台が江戸ということでまさにうってつけというか、おいしいキャラクターになっているのかなと。デザインが開発サイドからすごく好評だったのが印象的でした。

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聖杯戦争を実際に体験して、セイバールートのエンディングを迎えてほしい

――武内さんと渡さんは、本作を先行プレイしているとお聞きしました。実際に遊んでみていかがでしたか?

町中をサーヴァントといっしょに歩いていく体験が楽しくて! ついて来てくれるし、勝手に走り出すし。ふたりで歩いているというのが最高です。セイバー以外のキャラクターとも歩けたらうれしいなと思いつつ江戸を堪能しました(笑)。

――ファンにはたまらない体験ですね! 武内さんはいかがでしたか?

武内もともと、まあまあハードなゲームにすると聞いていました。ですが、この作品はわりとカジュアルに楽しめて、遊ぶハードルは低くなっているなと。

 アクション以外にもいろいろな遊びが入っていて、つぎからつぎへと提供される遊びをプレイするゲームとしての手ごたえ、その中で先へ引っ張っていく物語があって、非常におもしろいゲーム体験になっていると感じています。

――ありがとうございます。皆さんが思う本作の魅力、見どころを教えてください。

武内いろいろあると思いますが、TYPE-MOONとしてはセイバールートと呼ばれている最後に解放されるストーリーがいちばんの魅力だと思っています。奈須からプロットが上がってきたときに、内容を読んで鳥肌が立ったのを覚えています。長い物語の先に待つ剣鬼(セイバー)ルートのエンディングをぜひ皆さんにも味わってほしいです。

新しい『Fate』のストーリーをプレイする機会ができたというのは、ものすごくいいことだと思うんです。『FGO』ユーザーなど、『Fate』ファンみんなが新しいものに触れたいと思っているはずなので。それがこういう形で実現できたというのがもう見どころと言いますか……。素敵なサーヴァントたちがたくさん出てきますので、キャラクターたちが紡ぐストーリーに注目していただきたいです。

『Fate』の魅力のひとつである聖杯戦争を、マスターの視点で遊べることです。もちろんいままでの作品でも描かれてきたことではありますが、アクションや探索などで、サーヴァントとのバディ感をしっかりと楽しみながら、プレイを通して聖杯戦争を実体験できます。ぜひそこを楽しんでいただきたいです!

鈴木ストーリーのプロットを初めて読んだとき、その完成度の高さに感動しました。これをしっかりと表現しなければと、イベント演出などに自然と力が入ったんです。カットシーンもそうなのですが、何気ない会話シーンにもこだわりが詰まっているので、スキップせずに遊んでいただけるとうれしいです。

――それでは最後にファンの皆さんへのメッセージをお願いします!

武内2022年大晦日の初報から9ヵ月。ついに発売です。物語には『Fate』の魂が、ゲームにはコーエーテクモゲームスさんの技術が、グラフィックには渡さんの美意識が詰まった作品となっています。

 舞台は江戸。そこで描かれる聖杯戦争は最新のものでありながら、『Fate』を知っている方には原点回帰のようなものも感じていただけると思っています。もっともメジャーな『Fate』作品というと『FGO』になりますが、『FGO』とは明確に異なる、個人の想いがぶつかり合うTHE・聖杯戦争と言える本作を、多くの方に楽しんでいただきたいです。

長い期間、たくさんの方々が持っている力を尽くして作り上げられた作品です。すごくおもしろいものになっていると思いますので、 隅々まで楽しんでいただければ幸いです。

鈴木チーム内に『Fate』シリーズのコアなファンがたくさんいて、そのメンバーとも意見を出し合いながら作ってきました。たいへんなことも多かったですが、その分メンバーのモチベーションは終始高く、やりがいのあるプロジェクトだったと感じています。開発陣の熱のこもった作品をお楽しみください。

アクションRPG作品として、どんな方にでも楽しんでいただけるように丁寧に作ってきました。『Fate』が好きな方を始め、初めて『Fate』に触れる方、興味を持った方など、幅広い方にお楽しみいただけたらと思います。

 また、本作に関しては発売後も楽しんでいただけるようなことをいろいろと計画していますので、長く遊んでいただければうれしいです。

プロデューサー&ディレクターインタビューも公開中!

 開発のキーマンであるプロデューサーの庄知彦氏と、ディレクターの松下竜太氏へのインタビューも公開中。アクションへのこだわりや“霊地争奪”の誕生経緯、気になる周回要素などについてうかがっている。こちらもチェックだ。

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