2023年8月12日、東京・J:COMホール八王子にて『大逆転裁判 -成歩堂龍ノ介と朗読の会-』が催された。こちらは人気ミステリーアドベンチャー『大逆転裁判』シリーズのキャスト陣が、ゲームのシナリオをもとに再構成された物語を朗読するというもの。さらに、『逆転』シリーズのディレクター巧舟氏が書き下ろした新エピソードも披露された。

 本公演は昼公演・夜公演の2部が上演され、Rakuten TVにてライブ配信も実施。本稿ではその昼の部の模様をお届けしよう。なお、重大なネタバレは避けているが、これから見逃し配信を観ようという方はご注意を。

 ちなみに、「昼公演、夜公演どちらを観ようかな?」と迷われている方には、両方をおすすめしたい。

 ただし、ぜひ昼公演を先に観ていただきたい(その理由は記事の最後で!)。また、可能なら『大逆転裁判2 -成歩堂龍ノ介の覺悟-』のゲームを手もとに置きつつ、トンカツ弁当を用意しておくとなおよしかと。

アドリブ炸裂『大逆転裁判 -成歩堂龍ノ介と朗読の会-』をリポート!! 初の朗読劇に声優陣が集結。アノ感動がボイスで蘇る!
配信『大逆転裁判 -成歩堂龍ノ介と朗読の会-』(Rakuten TV)
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 『大逆転裁判 -成歩堂龍ノ介と朗読の会-』出演キャストはこちら。

  • 下野紘さん(成歩堂龍ノ介 役)
  • 花澤香菜さん(御琴羽寿沙都 役)
  • 川田紳司さん(シャーロック・ホームズ 役)
  • 久野美咲さん(アイリス・ワトソン 役)

【特別ゲスト】

  • 近藤孝行さん
  • 竹本英史さん

『大逆転裁判2』下宿の幽霊事件・探偵パートをキャストが熱演!

 開演に先立ち、客席に公演中の諸注意の陰ナレーションが流れる。昼の部を担当したのは川田紳司さん(シャーロック・ホームズ 役)と、久野美咲さん(アイリス・ワトソン 役)。おふたりの掛け合いで会場が和やかな雰囲気に包まれた後、舞台の幕が静かに上がった。

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 最初の演目は『大逆転裁判2 -成歩堂龍ノ介の覺悟-』の第2話より“吾輩と霧の夜の回想”。夏目漱石が同じ下宿先に住むペテンシーの事件に巻き込まれてしまう“下宿の幽霊事件”の一幕だ。

 近藤孝行さんのナレーションにより、これまでの成歩堂龍ノ介の経緯が語られた後、ホームズの部屋に龍ノ介、アイリス、そしてホームズの3人が顔を揃える。

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 下野紘さん(成歩堂龍ノ介役)は、龍ノ介の学ランを思わせる黒いジャケットとツンとハネさせた髪、久野さんはアイリスらしいローツインテール、川田さんはホームズっぽいトレンチコートとパイプのブローチといういで立ちで登場。

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下野紘さん
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久野美咲さん
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川田紳司さん

 ここで龍ノ介宛てに届いた御琴羽寿沙都の手紙により、彼は過去の事件をもう1度振り返ることになる。その回想の中の“下宿の幽霊事件”は、ケガから回復したビリジアン・グリーンに話を聞くところから始まる。これまでボイスのなかったビリジアンを演じるのは久野美咲さん。アイリスの少女らしい声から一変、ビリジアンの暗めなトーンに驚かされると同時に、「ああ! ビリジアンのしゃべりかたって、そんな感じかも」とうなずいてしまった。 

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 また、このシーンからは御琴羽寿沙都役の花澤香菜さんも登壇し、品のあるお声と大きな身振りで物語を進めていく。リアル寿沙都さんが舞い降りたかのようだ。

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 ビリジアンとの面会を終えようというとき、「ミスター・ナーホドー!」と妙になまった……というか、ナルホドウと言いづらいんだろうなという警察官が、夏目漱石からのメッセージを携えてやってくる。この警察官を演じたのは近藤さんで、短い台詞ながら濃いキャラクターになっていた。

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花澤香菜さん
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 夏目漱石を演じるのは竹本英史さん。

 なんと付けヒゲを仕込んでの登場だ。蝶ネクタイも身に着けているあたり流石である。なお漱石もゲーム中ではボイスがないため、今回初めてその声を聞いたはずだが、竹本さんの芝居がマッチしすぎていて、以前からこのボイスがゲームで流れていたような気さえしてくる。え……? この漱石と、『逆転裁判』・『逆転検事』シリーズの御剣怜侍の声が同じ人……? それは……異議あり!

 ここからは竹本さんによる漱石ショウの始まり。

 「言・語・道・断!」。

 など、ゲーム中の夏目漱石がことあるごとに叫ぶ四字熟語を、ゲームで見たあのポーズをキレッキレに再現してくれるばかりか、震えて目が泳いでいる表情、ムキーッと歯を食いしばる顔など、じつに細かい演技をされていた。しかし、このアドリブというのか、豊かな表現が後の夜公演に大きな影響を及ぼすことになろうとは……。

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 さて、舞台はこの一幕の山場、ホームズの“論理と推理の実験劇場”に差し掛かる。

 これまでもゲームと同様の効果音が挿し込まれていたが、このホームズの推理のシーンは、彼の指パッチンやら、「ピン!」やら、「ビシーン!」という効果音が川田さんの芝居とピッタリ合わさって臨場感たっぷりだった。

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 この幕のラストでは、連行されることになった漱石の「吾輩のニャンコに、朝ゴハンをどうかッ!」という泣きのひと言が沁みた。そういえば、竹本さんのジャケットのボタン、猫の肉球の形をしていた……!

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巧舟氏による新作エピソード開幕! 朗読劇の会場で事件勃発!?

 休憩明けの後半は、この日のために巧舟氏が執筆されたという新作“朗読の会の《怪》”が上演された。こういった特別な催しにふさわしく、大日本帝国で開催する朗読会に、ホームズとアイリスが出演者として招かれたという筋書きで始まるのだが、早速事件が発生する。現場はこの朗読会の劇場で、ホームズの楽屋弁当がなくなってしまったのだとか。

 ホームズは楽しみにしていたトンカツ弁当を盗った犯人を、夏目漱石だと告発。突如として裁判が始まった。裁判長役は近藤 孝行さんが務められたのだが、思わせぶりな登場の仕方や、木槌を叩くときの小芝居で客席を沸かせる。

 さらに、ここで“中の人”ネタが放り込まれた。近藤さんは『逆転裁判』の主人公・成歩堂龍一を演じている。そして、下野さんは龍一の祖先である成歩堂龍ノ介役を担当。つまり、舞台上で成歩堂一族の邂逅が相成ったということで、双方とも何か感じ入るものがあったようだ。

 そうして開廷した裁判に、被告人として呼び込まれた夏目漱石。ここへきて、ゲーム中では触れられることがなかったと思しき「アノシャーロック・ホームズ」の問答など、カオスな場面を経て、やっと本題の犯行についての尋問が始まるが……。

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 このエピソードでは画面(スクリーン)に、セリフウィンドウ風のテロップが表示されたりと、ゲームをプレイしている感覚にもなる演出が盛り込まれていた。

 漱石は証言にて犯行を否定するものの、怪しい動きをしていたようで、ますます疑惑は深まるばかり。しまいには、龍ノ介も弁護を諦めそうになるほど(依頼人を信じ抜く心はどこへ!?/笑)。

 そんな絶体絶命(?)のとき、物語は急展開を迎えることに。そこでのポイントはある“アクション”なのだが、公演終了後、その動きについて調べてみたところ、ちゃんと実際と同じものだった。そこに結びつけてくるあたり、巧舟氏らしいセンスだなと実感する。ここのアクションはぜひ、見逃し配信で確認してほしい。

 龍ノ介の推理、そして寿沙都さんのフォローが実を結び、裁判は決着を見せる。最後は恒例の「異議あり!」でフィナーレ。と、その前に竹本さんがファンサービスとして、ミツルギの名台詞「そのようなアレは、困る」を挟んでくれたりして、客席からは歓声があがっていた。

和気あいあいのトークコーナー! そこで明かされる真実とは

アドリブ炸裂『大逆転裁判 -成歩堂龍ノ介と朗読の会-』をリポート!! 初の朗読劇に声優陣が集結。アノ感動がボイスで蘇る!

 続いてのトークコーナーでは、キャスト陣が口々に「久々に集結してキャラクターを演じられて楽しかった」、「会場の熱量がすごかった」と朗読劇の感想を語る。

 また、今回の演目の中心となった夏目漱石の演技やセリフは、竹本さんのアドリブが炸裂したものと思いきや意外にもほぼ台本通りだという。むしろ、本当にアドリブが多かったのは、さまざまな役を演じられた近藤さんだとか。

 ただ、この何でもアリな空気はリハーサルの時点ですでにあったらしい。それを生み出したのは、やはり竹本さんだったようで、竹本さんがその鍛えられたボディで四字熟語のポーズを取れば、周囲に風が巻き起こったという証言も飛び出した。

 キャスト陣は今回のような朗読劇をぜひまた実現したい、『逆転裁判』シリーズのいろんな展開を待ち望んでいる、とも語ってくれた。ファンとしても切に願うところだ。

 そんな楽しいひとときはあっという間に過ぎていき、昼公演も締めくくりの時間に。今度は「異議あり!」ではなく、「異議なし!」と会場全員で叫び、ひとまずの結びとなった。

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まとめ

 さて、それでは最後に簡単なまとめを。

 まず、今回の朗読劇について、『大逆転裁判』ファンは必見だと言える。

 見逃し配信は、8月20日まで何度でも視聴が可能なので、ゲームの『大逆転裁判2 -成歩堂龍ノ介の覺悟-』の第2話をプレイしながら観るという手もある。

 ちなみに、夜公演では昼公演以上にアドリブが飛び交っていた。竹本さんが「アドリブ多すぎ!」とツッコミに回るほど、キャスト全員のサービス精神が暴走していたのだ。

 というわけで昼公演のほうが、新エピソード“朗読の会の《怪》”の話の筋がわかりやすいので、先に観ておくのが吉。そして、夜公演の役者魂を感じるアドリブバトルを、法廷バトルゲームのノリで舌戦を堪能してみては。

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