『ファイナルファンタジー』シリーズの最新作である、プレイステーション5(PS5)用タイトル『ファイナルファンタジーXVI』(以下、『FF16』)が2023年6月22日に発売日を迎えた。

 重厚かつ壮大なストーリー、アクションRPGとしてのバトルの爽快感など、その魅力はさまざまだが、中でも物語を彩るキャラクターたち、そして本作の重要な要素である“召喚獣”の造形は大きな見どころと言える。

 そこで本記事では、『FF16』のキャラクターデザインを手掛けた髙橋和哉氏にメールインタビューの形で取材を実施。各キャラクター、召喚獣のデザインコンセプトや、本作に対する想いを回答していただいた。

 なお、現在公開の『FF16』特設サイトでは、このインタビュー以外にもさまざまな情報を掲載している。あわせてチェックしておくと、より『FF16』の理解が深まるはずだ。

▼『FF16』攻略&解説まとめ

【FF16インタビュー】デザイナー高橋和哉氏が語るキャラクター&召喚獣誕生秘話。初期には“銀髪のクライヴ”の案も?
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高橋和哉(たかはしかずや)

『ファイナルファンタジーX』、『ファイナルファンタジーXI』、『ファイナルファンタジーXIV』などの開発に携わる。『ファイナルファンタジーXVI』ではキャラクターデザインやメインビジュアル、パッケージデザインなどを担当。

※高橋氏の“高”の字は、正しくははしごだかです。

リアルな召喚獣をデザインできたことが本当に楽しかった

――まず、今回の『FF16』で髙橋さんが手がけたお仕事の内容を具体的に教えてください

高橋メインキャラクターとNPCやエネミー、召喚獣、メインビジュアル、コンセプトなど、さまざまなものをデザインしています。細かなところではチョコボ、ロザリア公国の国旗やシドの組織のマーク、召喚獣の壁画、クリスタル自治領外観なども描いています。

――主人公クライヴには、少年期、青年期、壮年期の3つの年代があります。それぞれのデザインコンセプトと、デザインするうえで意識したことを教えてください。

高橋ロザリアは財政的に豊かではない小国、服装や剣は普通の中世設定というオーダーをもらっていました。なので、王子とはいえ派手ではなく堅実な戦闘ができそうな、兵士の中でも浮かないスタイルを考えました。

 少年期のクライヴは思いやりが強く、面倒見のよい性格をイメージしています。ジョシュアとお揃いの耳飾りもクライヴのプレゼント、という想定でつけています。また精神面ではクライヴの一歩引いた意識を表すため、弟の服より少し控えめな赤を差し色に選んでいます。

 壮年期のスタイルは年月を経てクライヴ本来のイメージに戻るようにロザリアの赤を基調にしました。そして少年期に薄かった赤は本来の濃い赤に変えています。

 筋肉質な身体は、海外を意識しています。いままでだと、もう少し細目にしていたと思います。あと初期のクライヴの案としては髪を上げた銀髪も考えていました。しかしプロットが決まってから見直してみると困難が多いキャラクターだとわかり、ストーリーに寄ったダークな黒髪と陰りのある雰囲気に変わっていきました。

【FF16インタビュー】デザイナー高橋和哉氏が語るキャラクター&召喚獣誕生秘話。初期には“銀髪のクライヴ”の案も?
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ジョシュア・ロズフィールド/召喚獣フェニックス

――つぎに、クライヴ以外の各ドミナントと召喚獣、そしてトルガルのデザインコンセプトを教えてください。

高橋ジョシュアは守りたいと思えるように意識してデザインしています。制作側にもそう伝えていました。イメージとしてはフェニックスの雛という感じです。赤を多く使いロザリアにとって大事な存在であることを示しています。

 フェニックスは奇をてらわず巨大さのみを強く出しています。そのままで十分強い存在感をもったキャラクターだったからですが、初めに出る召喚獣はプレイヤーが世界に入り込みやすいように、あえて普通にしたかったという面もあります。

【FF16インタビュー】デザイナー高橋和哉氏が語るキャラクター&召喚獣誕生秘話。初期には“銀髪のクライヴ”の案も?
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ジル・ワーリック少年期/青年期/召喚獣シヴァ

高橋ジルは辛い過去を抱えたキャラクターです。少年期と青年期で目の厳しさ、眉の表情などを変えています。

 青年期は戦える者として凛とした姿にしています。お洒落は腰の布だけですが、これはタルヤのコーディネイトであり、ジルの希望はあくまでシンプルで戦える軽装です。ただ、そのままなのは気に入っているからという設定です。

 シヴァは氷の女王をテーマにしました。表現するためケープとティアラを纏わせました。極端に大きなケープは風格と美しさを出すために、また空中でも存在感を出すための華やかなシルエットとして利用しています。

【FF16インタビュー】デザイナー高橋和哉氏が語るキャラクター&召喚獣誕生秘話。初期には“銀髪のクライヴ”の案も?
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シドルファス・テラモーン/召喚獣ラムウ

高橋カッコいい大人です。ドミナントと召喚獣の年齢の違いについて悩んだキャラです。精神面を反映して姿を変えることもおもしろいと思い、シヴァは若くしたのですが、ラムウはさすがにできませんでした。自分の中では、シドは精神年齢が非常に高いということにしています。

【FF16インタビュー】デザイナー高橋和哉氏が語るキャラクター&召喚獣誕生秘話。初期には“銀髪のクライヴ”の案も?
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ベネディクタ・ハーマン/召喚獣ガルーダ

高橋ベネディクタはガルーダと同時に作りました。そのため悩むことが少なく素直に出来たキャラクターです。

 ガルーダは翼につけた鉤爪で殴りつける荒々しい姿が見たいと思いデザインしました。そのため4つの鉤爪を大きくし、脚も長く目立つようにしています。ガルーダとイフリートは初めにデザインしたので、他の召喚獣の基本になっていると思います。印象的な舌だし表情は開発側のアイディアだったりします。

【FF16インタビュー】デザイナー高橋和哉氏が語るキャラクター&召喚獣誕生秘話。初期には“銀髪のクライヴ”の案も?
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フーゴ・クプカ/召喚獣タイタン

高橋ディレクターから「身体能力の強い奴が強い世界にしたい」といわれて出来たキャラクターです。ドミナントと召喚獣が非常にマッチしているので、シンプルな力強さをとても楽しく描けました。

 タイタンの脚に生えた棘は、敵を容赦なく踏み刺し攻撃するという彼の精神面を想像してデザインしています。

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ディオン・ルサージュ/召喚獣バハムート

高橋じつは少々短気な王子、という設定をもらっていたキャラクターです。最終的には結構マイルドな見た目になりました。

 バハムートは当初もっと巨大な設定だったのでひたすら巨大感を追求していました。遠くからでもわかる長い尾と巨大な翼のシルエットはそのためです。

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バルバナス・ザルム/召喚獣オーディン

高橋デザイン上の自分設定ですが、バルバナスは自信が大きく、しかし戦いに虚無感をもっているような内面を想像して作っています。

 なのでオーディンは非常に堂々としているのですが、その頭部は虚ろな髑髏と兜を合わせた、死をイメージしているような姿にしています。

【FF16インタビュー】デザイナー高橋和哉氏が語るキャラクター&召喚獣誕生秘話。初期には“銀髪のクライヴ”の案も?
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トルガル幼体/成体

高橋思った以上にかわいい幼体イラストが出来ました。じつは最初は日本犬をオーダーされたのですが、難しかった……。バトルの関係か、のちに戦える大きな狼系に変更されました。

【FF16インタビュー】デザイナー高橋和哉氏が語るキャラクター&召喚獣誕生秘話。初期には“銀髪のクライヴ”の案も?

――クライヴやドミナントはどのような順番でデザインをしていきましたか?

高橋当時、召喚獣戦の検証のためにイフリート、ガルーダとシヴァ、タイタンを先に欲しいと言われていました。なので、じつはベネディクタとフーゴが初めに出来たキャラクターです。

 そのあとに少年のクライヴ、ジョシュア、ジルでしょうか。大人のクライヴは初めからデザインを開始していましたが、途中でデザイン変更をしています。なので、クライヴのデザインが決まったのは開発の中頃でしょうか。

――出身国による身体的特徴の違いなど、各キャラクターの造形全般については、どのような基本設定がありましたか?

高橋質問とは少し違うかもしれませんが……。『FF16』では服装や剣は中世を基準で、というオーダーを貰っていました。その中でファンタジー感をどこで出すか悩んだのですが、今回は人と召喚獣を同時に描き進められたので、人間側は抑えた中世風にしたぶん、召喚獣で一気にファンタジー感を出す、という見せかたを初めに決めていました。

――キャラクター以外も含めて、髙橋さんから開発チームに対しては、どのような要望を出されましたか?

高橋モデル側には多くは伝えていません。ガルーダの脚をもう少し長くとか、途中で気になった部分をその時々で伝える感じです。が、クライヴの顔に関してはモデルのリーダーと長い期間に渡って試行錯誤をさせてもらいました。

――パッケージイラストのコンセプトや意識した要素を教えてください。

高橋コンセプトは“立ち向かうクライヴ”です。立ち向かう姿とその術を表すのに大事なものとして、少しダークな半顕現の左手と、炎の赤いラインを印象的に入れることを、ラフ段階から決めていました。主人公を表すのに一番わかりやすいファンタジー要素だったので。

 画面全体では、動きを感じさせるために手描きのタッチをあえて残すようにしています。タッチを残すことはプロデューサーである吉田(直樹氏)の要望でもありました。

【FF16インタビュー】デザイナー高橋和哉氏が語るキャラクター&召喚獣誕生秘話。初期には“銀髪のクライヴ”の案も?

――髙橋さんがいちばん気に入っているキャラクターは誰ですか? またデザインする際に、もっとも筆がノッたキャラクターと、その理由も教えてください。

高橋いちばん気に入っているのはジル/シヴァです。あと敵ですがテツキョジン、結構気に入っています。

 もっとも筆がノッたのはクライヴの立ち絵です。クライヴは一度服を変更しているのですが、じつはあれが変更後に描いた最初のデザイン画です。好きに変更してほしいといわれてノリだけで描いたのですが、側面からデザインしてこれでいけると思ったのはあれが初めてでした。

【FF16インタビュー】デザイナー高橋和哉氏が語るキャラクター&召喚獣誕生秘話。初期には“銀髪のクライヴ”の案も?

――逆にもっとも苦労したキャラクターと、その理由を教えてください。

高橋ジルの服装でしょうか。彼女の服は与えられたものなのですが、隠れた組織があまり豪華な服を所持しているのも浮きますし、かといって素朴過ぎても役に合いません。また、肌の露出もベネディクタより抑えてほしいとオーダーがでていました。結果、時間の許す限りいろいろと試行錯誤してしまいました。

――髙橋さんにとって、本作のデザインで注目してほしい部分を教えてください。

高橋どれも気に入っていますが、あえて細かい部分で上げると剣でしょうか。ベネディクタの剣は気に入っていますし、クライヴのさまざまな剣は普通なものから、徐々にファンタジーも感じるように工夫しています。

【FF16インタビュー】デザイナー高橋和哉氏が語るキャラクター&召喚獣誕生秘話。初期には“銀髪のクライヴ”の案も?

――クライヴはトルガルという相棒とともに旅を続けていますが、髙橋さん的にデザイン作業の相棒となるものはありましたか?

高橋よく映画を流しながら絵を描きます。SFとかファンタジーが多いですが、好きなものは日を置いて繰り返したりします。

――最後に、本作をすでに楽しんでいる人、これからプレイしようと考えている人に向けてメッセージをお願いします。

高橋今回、リアルな召喚獣をデザインできたことが本当に楽しかったです。どんな形になったのか、召喚獣戦の迫力を一緒に見ていただけたらと思います。

▼『FF16』攻略&解説まとめ

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