2023年6月16日(金)に公開予定の長編アニメーション『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』(アクロス・ザ・スパイダーバース)。
特殊なクモに噛まれ超人的な能力を手に入れたヒーロー・スパイダーマン“たち”の活躍を描いた人気アニメ映画がパワーアップし、続編の公開を控えている。
今回、試写会の感想&見どころを、映画好きのライター・友野辰貴が紹介する。『スパイダーマン』史の重みと「新世代にも届けたい!」という意思を感じる、最高のスパイダーマン映画だった。特にスパイダー・グウェンの活躍と心理描写にはぜひとも注目してほしい。
『スパイダーマン:スパイダーバース プレミアム・エディション』(Blu-ray)の購入はこちら(Amazon.co.jp) 『スパイダーマン:スパイダーバース ブルーレイ&DVDセット』の購入はこちら(Amazon.co.jp)前作『スパイダーバース』は予習しておこう
「前作を観たほうがいいか?」問題についてだが、絶対に観ておくべきだ!
本作はわざわざ口で説明するような描写は少なく画で魅せる作品なので、テンポが早い。ボーっとしているとすぐに置いていかれるほどだ。
だからこそ、前作から登場している重要人物や単語など、知っておかないと物語についていけないこともあるので、メインキャラクター&重要ワードは押さえておきたい。Hulu、アマゾンプライムビデオ、Disney+など各種配信サービスにて視聴できるので、未試聴の方はぜひ公開前に観てみてほしい。
『スパイダーマン:スパイダーバース』の視聴はこちら (Amazon Prime Video)前作『スパイダーマン:スパイダーバース』は公開から4年ほど経っているので、ストーリーがぼんやりしている人も多いはず。そんな人に向けて前作を軽く紹介しよう。
持ち前の超人的な能力と化学力を駆使してニューヨークを守る親愛なる隣人・スパイダーマン。主人公はおなじみピーター・パーカーを思い浮かべる人も多いだろうが、『スパイダーバース』はその後継者“マイルス・モラレス”の物語だ。
裏の権力者・キングピンの計画を阻止するため、放射性のクモに噛まれ力を得た13歳の少年・マイルスが、新生スパイダーマンとして覚悟を決め立ち上がっていく姿が描かれた。
別の次元(ユニバース)から別のスパイダーマンたちが現れる怒涛の展開、アメコミ特有の絵がそのまま動いているかのような凝ったアニメーションや演出など、さまざまな要素で話題となった人気作だ。
※以降、『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』のネタバレを多少含む箇所がございます。
カオス度300%の超展開
前作から1年4ヵ月後、すっかり一人前のスパイダーマンになったマイルス。昔の友達・スパイダーマンたちに思いをはせながら街を守っていたが、謎の敵が現れ状況は一変。やがてマルチバース中を巻き込む大事件に発展していく。
それを止めるためにやってきたのは、あらゆる宇宙から選抜されたスパイダーマンたちの組織“スパイダー・ソサエティ”。しかしスパイダー・ソサエティが隠す秘密を知ったとき、マイルスは残酷な運命やスパイダーマンたちと対立すること選ぶ。
アニメだから、マルチバースだからとなんでもアリのカオスさも売りだった前作『スパイダーバース』。続編はよりカオスさが増した作品だった。
なにせ、今回交わるユニバースは10程度では済まない。あらゆる宇宙からあらゆるスパイダーマンネタがぶち込まれており、次から次へと目まぐるしく話が進んでいく。情報量3倍のスパイダーマンのアクションになんとかしがみついてる感覚が、最初から最後までずーっと続く。
あらゆるスパイダーマンにあらゆる世界。席に座り画面を見ているだけで、「これがスパイダーマンだ!」と無理やり頭に情報を叩き込まれたうえ気絶させられる、そんな作品だった。
本作の魅力はなんといっても「先の予想がまったくできない」これに尽きる。カオスな情報量だけに予想外の展開がさらに予想外の展開を生み出し、それが連鎖していくので物語の終着点がまったく想像つかず、ずっとどうなるかドキドキしていた。にもかかわらず、カオスの中でしっかりと伏線を引いており、予想外の展開なのにちゃんと納得できるのは、見事としかいいようがない。
マイルスの成長
何よりもマイルスの成長に感動した。
壁への張り付きやスイングもおぼつかなかった13歳の少年の姿はもうどこにもない。ニューヨークのビル群をスイングしながら悪党を捕まえ、街の人に明るく挨拶する、一人前のヒーローになっていた。
きっと前作を見た人なら「あの子がちゃんとヒーローやってる!」と、親のような気持ちになれるはずだ。
異能バトルモノのようなドリームバトル
ヒーローVSヒーローの戦いほど心躍るバトルはない。
スパイダーマンズとのバトルも注目ポイントのひとつだ。前作でも登場した個性的なスパイダーマンたちが、より強烈になって登場する。
パンクロックだったり、バイクを乗りこなしたりと多種多様なスパイダーマンたちがスクリーンを飛び回る。それぞれ戦い方もかなり個性的なので、スパイダーマンの異能バトルモノみたいで激アツだった。
また、それぞれのデザインも注目してほしいポイントだ。あらゆる宇宙から来たスパイダーマンたちは各々が各コミックの主人公。色の使われ方、印刷の質、雰囲気などそれぞれ違っており、「原作コミックではこんな感じなんだ」と一目で分かる凝ったデザインになっている。
きっと本作を見たあとはお気に入りのスパイダーマンを見つけて語りたくなること請け合いだ。
ちなみに筆者のお気に入りはパンクロッカーボーイ“スパイダー・パンク”こと“ホービー・ブラウン”。彼の粋な言動には要注目だ。
グウェン推しには最高の映画
今作のグウェンは本当にすばらしいキャラクターに仕上がっている。グウェン推しの自分としては最高の仕上がりだった。
前作にも登場し、今作でも重要な役割を果たすことが明らかになっている“スパイダー・グウェン”こと“グウェン・ステイシー”。
孤独感や責任感の苦悩など、心の闇を描くダークな部分もあるのがスパイダーマン。今作ではグウェンのヒーローとしての苦悩にも注目している。
グウェンは非常にカッコいいヒーローではあるが、それでもやはり人間。クールなヒーロー像に隠れた哀しい過去や想いが露わになる。アニメならではの演出、背景描写や音楽などで心の中を丁寧に表現しており、グウェンのシーンは非常にエモーショナルだった。
マイルスがヒーローとして成長する表の主人公なら、グウェンは心理的に成長を遂げる裏の主人公と言えるだろう。きっと誰もが観たあとにグウェンを大好きになれる、そんな作品だと思う。
多すぎるネタの数々
この記事を読んでいる人の中でスパイダーマンのあらゆるコンテンツを追っかけてきた生粋のファンはいるだろうか? もしいるならこの作品はあなたのためにあるといってもいい。絶対に楽しめる。というのも、スパイダーマンに関するネタがかなりの数仕込まれているからだ。
なんでもありの“マルチバース”をテーマにした本作にしかできない、さまざまなネタが登場する。アニメ、ゲーム、コミック、映画などいろんなところからサプライズが用意されている。
特に、マルチバースのスパイダーマンたちが集まる“スパイダー・ソサエティ”のシーンは、ネタがありすぎて1回の視聴では拾いきれないほどだ。
予告にもあったお互いを指さすスパイダーマンたちのシーンにクスっと来た人も多いはず。あのレベルの細かいネタがあまりにもハイペースで登場するため、感情と情報処理が追いつかないほど高ぶりまくった。
知識を詰め込んだオタクたちよ。君たちはこの映画を楽しむためにスパイダーマンを追っかけていたのだ。
もちろん、元ネタが分からなくとも楽しめる作品になっているので、『スパイダーマン』初心者の方もご安心を。
豪華声優陣が集結
日本語吹替版は主人公のマイルス・モラレスを小野賢章さん、グウェン・ステイシーを悠木碧さんが務めたほか、人気声優陣が集結している。また、『スパイダーマン:スパイダーバース』公開記念特番“スパイダーバース特別授業~小野くんと悠木さんと宮野先生!~”がYouTubeにて公開されているので予習ついでに視聴してみるてもいいだろう。
- 日本語吹替版声優
・マイルス・モラレス/スパイダーマン:小野賢章
・グウェン・ステイシー/スパイダー・グウェン:悠木碧
・ミゲル・オハラ/スパイダーマン2099:関智一
・ピーター・B・パーカー/スパイダーマン:宮野真守
・ジェシカ・ドリュー/スパイダーウーマン:田村睦心
・パヴィトル・プラパカール/スパイダーマン・インディア:佐藤せつじ
・ホービー・ブラウン/スパイダー・パンク:木村昴
・ベン・ライリー/スカーレット・スパイダー:江口拓也
『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』は、2023年6月16日(金)より全国の映画館にて公開。ヒーローが抗えなかった“運命”に、若き新生スパイダーマンがどう立ち向かうのか。その結末はぜひ劇場で!
作品概要
『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』
- 日本公開:6月16日(金)全国の映画館で公開
- 監督:ホアキン・ドス・サントス、ケンプ・パワーズ、ジャスティン・K・トンプソン
- 脚本:フィル・ロード&クリストファー・ミラー、デヴィッド・キャラハム
- 声優:シャメイク・ムーア、ヘイリー・スタインフェルド、ジェイク・ジョンソン、イッサ・レイ、ジェイソン・シュワルツマン、ブライアン・タイリー・ヘンリー、ルナ・ローレン・ベレス、ヨーマ・タコンヌ、オスカー・アイザック
- 日本語吹替版声優:小野賢章<マイルス・モラレス/スパイダーマン>、悠木碧<グウェン・ステイシー/スパイダー・グウェン>、宮野真守<ピーター・B・パーカー/スパイダーマン>、関智一<ミゲル・オハラ/スパイダーマン2099>、田村睦心<ジェシカ・ドリュー/スパイダーウーマン>、佐藤せつじ<パヴィトル・プラパカール/スパイダーマン・インディア>、江口拓也<ベン・ライリー/スカーレット・スパイダー>、木村昴<ホービー・ブラウン/スパイダー・パンク>
- 日本語吹替版音響監督:岩浪美和
- 日本語吹替版主題歌:LiSA 「REALiZE」