バンダイナムコエンターテインメントより配信中のアイドル育成&ライブ対戦ゲーム『アイドルマスター シャイニーカラーズ』(以下、『シャニマス』)。本作のシナリオ演出を手掛けている、シナリオ演出チーム所属の鷺郁美氏と、制作プロデューサー・高山祐介氏の対談をお届け。

 アイドルたちを魅力的見せるために、シナリオ演出としてこだわっているポイントなどを聞いた。

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鷺 郁美(さぎ いくみ)

『シャニマス』シナリオ演出チームのリーダー。2019年8月よりチームに参加。現在リリースされているシナリオの大半の演出を手掛けている。(文中は鷺)

高山祐介(たかやま ゆうすけ)

『シャニマス』制作プロデューサー。(文中は高山)

シナリオを最大限魅力的に見せるため、283プロのアイドルひとりひとりが実際に生きているということを認識しながら演出を手掛ける

――まずは、プロデューサー(※『アイドルマスター』シリーズのファンのこと)の皆さんへの自己紹介として、鷺さんがこれまでどのようなお仕事をされてきたのか教えてください。

シナリオ演出チームのリーダーの鷺です。

 2019年8月ごろから『シャニマス』チームに合流し、リリースされているシナリオの1/2から2/3くらいのシナリオ演出を行っています。アイドルでは、透、円香、にちかのカードのコミュのほぼすべてを担当して、最近だと霧子や凛世のカードも担当することが多いですね。

 ほかにも、2019年12月以降のユニットの越境イベントのシナリオ演出や、2022年からリリースされているプロデュースエリア“S.T.E.P.”については、摩美々から甜花まで全員分、そして“G.R.A.D.”のにちかと美琴のシナリオをはじめ、シーズのお話の演出も行っています。

――相当な数を担当されているのですね。もともと『アイマス』シリーズはお好きだったのですか?

存じておりました。ニコニコ動画をきっかけに765プロの『アイドルマスター』を知り、楽曲も好みのものが多く、よく聴いていました。また、リズムゲームが好きだったので、『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』などをよくプレイしていました。

 とくに、星井美希ちゃんと一ノ瀬志希ちゃんがお気に入りで、ソーシャルゲームで彼女たちのガシャが登場したときは、熱心に引いていました。そうしたこともあり、当時『アイマス』シリーズの最新作に関わることができると聞いたときは、とてもうれしかったですね。

――いちプロデューサーとして『アイマス』作品に親しまれていたのですね。自己紹介いただいたところで、続いてシナリオ演出についてお聞きしますが、『シャニマス』において、シナリオ演出とはどのような役割を果たしているのですか?

簡単に説明すると、シナリオチームの手掛けたシナリオをゲームに落とし込んで、視覚化する仕事ですね。シナリオ中のアイドルにモーションや表情を付けてあげたり、適切な効果音やBGMを挿入して盛り上げたり、背景の選択や遷移、テキストフレームの色、セリフ間の秒数の指定などもシナリオ演出チームが調整しています。

――シナリオをよりよく見せるためのまさに演出を皆さんが行っているのですね。

はい。ひとつのシナリオに対して、ひとりの担当者がいま挙げた演出をすべて行っています。

――なるほど。シナリオ演出のときに鷺さんがもっとも大事にしていることや、意識して行っていることを教えてください。

まずは「シナリオチームの皆さんが制作したシナリオを最大限魅力的に見せたい」という気持ちがあります。そこで、283プロのアイドルひとりひとりが実際に生きているということを認識しながら、それぞれの個性や魅力を引き出せるようにすることを心掛けることはもちろん、ストーリーの流れや展開など、お話自体のおもしろさも伝えられるように意識しています。

 また、効果音やBGMの違和感や、誤字脱字があるとシナリオを読む手が止まってしまうので、そこは入念にチェックします。そのほかにも、ひとつのセリフに対してのアイドルのひとつひとつの表情やしぐさ、効果音や背景の選択など、すべてに気を配って演出しています。

アイドルたちの表情などの演出はパターン化せず、そのときどきの心情を踏まえて制作

――確かに『シャニマス』のシナリオを読んでいると、ひとつひとつのセリフや動作にたくさんの演出が行われている印象があります。これは、アイドルの魅力を引き出すためにチームの皆さんが抜かりなく演出されているからなのですね。

そうですね。アイドルたちの表情にしても、たとえば笑うシーンがあった場合“笑ったらこの動き”とルール化しているわけではありません。アイドルたちが実際に生きているということを踏まえて、このシチュエーションのときは、どんな顔でどんなしぐさをするのだろうということを深く考えて表情や動きを付けています。

 ですので、笑うシーンでもシチュエーションによって動きや表情が違うものになっていて、アイドルの動きをパターン化するのではなく、物語中のアイドルたちの心情に合わせて、随時異なるアプローチを行っています。

高山シナリオチームは、物語の中でアイドルが僕たちと同じ世界に存在しているような“実在感”を大事にしてくれています。それをもとに鷺さんをはじめ、シナリオ演出チームの皆さんは、ひとつひとつのカットを重要視して、セリフの間やモノローグの置きかたなど、とことんこだわってくださっています。

 ですので、映像づくりをしているような感覚で作られているのかなと感じています。それゆえ、ひとつのシナリオをじっくりと楽しみ、より物語に没入できるようになっていると思いますし、アイドルにより愛着が持てる、より好きになれる要因になっているのかなと。

――プロデューサーさんに愛されているのは、ただ単にシナリオを流しているのではなくて、シナリオ演出チームの皆さんが随時演出を加えて、より物語を魅力的に見せていることも理由のひとつかもしれませんね。

高山おっしゃる通りだと思います。シナリオチームの皆さんが“脚本”だとすると、シナリオ演出チームの皆さんは“撮影班”というような役割なのかなと。

 名作映画などでも、脚本を読んだだけでは必ずしも名作にはならないですよね。しっかりと撮影をして絵作りをして世に出すことで評価されると思います。

 シナリオチームとシナリオ演出チーム、そして美麗な背景やアイドルたちの立ち絵イラスト、スチールイラストを作るスタッフたち、皆さんの連携がアイドルたちの物語を支えているのかなと思います。

――プロデューサーの皆さんから『シャニマス』のシナリオが好評を受けていることについて、どのように受け止められていますか?

私自身も『シャニマス』のシナリオのファンなので、とてもうれしいです。解釈や読みかたは人それぞれかと思いますが、意図して行った演出がプロデューサーさんたちに伝わったときは、やはりうれしいですし、こだわってよかったなと思いますね。

アイドルひとりひとりの個性を踏まえて細かく演出を行う

――いま、シナリオ全体の演出で大事にしていることをお聞きしましたが、アイドルごとにとくに気を付けている演出などはありますか?

たとえば摩美々は、照れたときに髪の毛を「ポヨン」と触るしぐさを付けることで、彼女のかわいさを演出しています。美琴がにっこりとした目で笑う表情はすごくレアで、ごく限られたときにしか演出していませんし、雛菜は物怖じしない子なので、対プロデューサーのときは、こちらを真っすぐ見て目をそらすことのないようにしています。

 ほかにも、にちかは怒りの表情が複数あって、にちかの感情の度合いによって使いわけています。挙げはじめるとキリがありませんが、みんなそれぞれのかわいさを持っているので、それを最大限に引き出せるお手伝いをするようにというのを心掛けています。

――そうした彼女たちの表情の演出というのは、自然と頭の中で浮かんでくるものなのですか?

私は基本的にお話を読みながら演出を組んでいくことが多いのですが、セリフを読んだときにその様子が脳内再生されるんですね。

 まずはそのイメージで演出を組んで、その後、実際に声優さんが演技してくださったボイスと比べて、ボイスに乗っている表情や感情に合わせて調整しています。

――なるほど。鷺さんが担当されたシナリオイベントの中で、演出においてたいへんだったものや苦労されたものはありますか?

担当したものすべてに真摯に向き合っているのでどれも苦労しましたが、強いて挙げるなら、2020年5月から開催したイルミネのイベント“くもりガラスの銀曜日”ですね。

『シャニマス』開発スタッフインタビューシナリオ演出編。アイドルたちを魅力的に見せるために、0.1秒単位で間の取りかたを意識
イベント“くもりガラスの銀曜日”。

このイベントは、コロナ禍の影響で予定通りにボイスの収録が行えず、やむなく一度ボイスなしでリリースして、その後ボイスを入れて作り直したので、ひとつのシナリオの演出を2回制作したことになるんです。

 先ほどお話したとおり、私はストーリーの流れとアイドルの声に乗っている感情どちらも見ながら表情選びをしているため、ボイスのない状態で演出を行うのはすごく苦戦しました。シナリオ中、アイドルが会話をするときに口は閉じたままにしたほうがいいのか、ちょっとだけ動かしたほうがいいのかなども、かなり悩みました。

 ボイスなしでリリースされた状態でもシナリオのよさを引き出すために、逆に静かなよさを出せればと思いながら、ボイスがないことが完全にデメリットだけにならないように工夫しましたね。そこでしっかりとこだわって作ったことで、しばらくしてボイス収録されて届いた素材をもとに改めて演出を組み込んだときに、当初作った演出から大きくズレたものにはならなかったので、安心した記憶があります。

高山その際は、たいへんご苦労をおかけしました。シナリオのリリースを遅らせるとカードの実装など、あらゆる制作物に影響が出てしまうので、コロナ禍で苦しい状況の中でゲームまで停滞してしまうのはよくないだろうという判断でした。ですので、収録が難しくても提供できる形はないかなということで、ボイスなしで実装をお願いすることとなりました。

 ですが、鷺さんはじめ、皆さんのご尽力もあり、 “くもりガラスの銀曜日”の静かな雰囲気を演出でバッチリと表現してくださっていて、ボイスなしというところを逆に評価してくださる方も多くいらっしゃいました。望んでやろうと決めたわけではないですが、結果的にはよいチャレンジをしていただけたのかなと思いますね。

そう言っていただけると、チャレンジした甲斐があります。それと、ほかにも苦労した演出について、これは個人的に苦労した時期の話になるのですが、2021年の3~4月、3周年の近辺ですね。

 その時に担当したのが、新アイドルとして追加されたにちかと美琴の“W.I.N.G.”のシナリオと、イルミネのイベント“青のReflection”、その紐づけとなる【Scoop up Scraps】八宮めぐるのシナリオ、エイプリルフールシナリオのお手伝い、4月12日”シャイニーの日”のミニコミュ、“G.R.A.D.”の透、円香、雛菜のシナリオ、【PEEPS!】市川雛菜のシナリオ、【つづく、】浅倉透のシナリオ、3周年コミュの全ユニット分、それらの作業すべてを並行して行っていたので、ものすごくたいへんでした。

 ですが、ひとつひとつに向き合うことをあきらめずに仕事をして、無事にすべてリリースされてプロデューサーさんがボリューミーな更新内容を楽しんでくれている様子を見て、すごく満足感があったことを覚えています。

――短期間にとんでもない量の演出を担当されていたのですね。ひとつのシナリオイベントの演出を作るときは、どれくらい時間がかかるものなのですか?

演出はまず初稿を作って、それをシナリオチームの担当者に共有して、フィードバックをもらい、随時修正を加えていくのが基本的な流れとなるのですが、私の場合は1話あたりだいたい1~2日ほど要しています。イベントシナリオ8話なら一度全体を組み上げるのに10日前後かかることが多いですね。

――……となると、さきほどの作業量は相当苦労されたのが想像に難くありません。

そのときは、1話に1日かけていると期日までに間に合わないので、1時間当たりの思考量を限界まで引き出して制作しました。頭が煮えるような感覚でしたね(笑)。

0.1秒単位の調整を行った“The Straylight”

――いま、苦労した演出についてお聞きしましたが「この演出はうまくいったな、手ごたえがあった」というものはありますか?

これも挙げるのがなかなか難しいですが、あえて選ぶとするなら、ふたつあります。ひとつ目は、2021年の1月から開催したストレイライトのシナリオイベント“The Straylight”です。

 このシナリオのエンディングをオート再生で見たときに挿入歌として流れる音楽BGMの終わりと、選択肢の表示のタイミングがバチっとハマるように間を0.1秒単位で調整しています。

 BGMの音ハメというのが初めての挑戦でしたし、シナリオをオートではなく自分のペースでタップしながら読む人もいらっしゃるので、「この演出はどうかな?」と思っていましたが、感想を見ていると私の意図に気付いて、「みんな、ぜひオートで見てくれ」と言ってくださっている方とかもいて。それがすごくうれしかったですね。

『シャニマス』開発スタッフインタビューシナリオ演出編。アイドルたちを魅力的に見せるために、0.1秒単位で間の取りかたを意識
イベント“The Straylight”。

ふたつ目は、2021年3月にリリースされた【ロー・ポジション】杜野凛世のシナリオです。

 お話の3話目で凛世に朝早い仕事があって、午前5時30分にプロデューサーが凛世をクルマで迎えに来るというシーンがあるのですが、その際の背景の送りかた、間の取りかた、セリフとセリフの間隔、BGM、SE全部こだわって時間を掛けて微調整をしました。

 そうすることで、冬の早朝の静かで冷たい、だけど、プロデューサーと凛世の温かな関係性や、カードのムービー演出のお味噌汁の香りがふわっと漂ってくるような雰囲気というものも表現できました。それが、プロデューサーさんに「間を含めて全部最高」ということを言ってくださっているのを見つけたときはうれしかったですし、達成感がありました。

エイプリルフールイベント“Secret×Rose”では、ホラー演出にも果敢に挑戦し、非日常感を楽しんでもらえるように制作

――0.1秒単位で調整することもあるほど“間”に気を使っているというのは驚きです。高山さんはシナリオイベントの中でこの演出はおもしろいな、斬新だなと思ったものはありますか?

高山最近の演出面を見ると、空を映したり、天井を映したり、いわゆる映像的な絵の運びを考えてくださっている印象があります。空を映すときもセリフを紐づけるだけでなく、シーン切り替えの場を作っているとか。新しい発想のもと、シナリオをより膨らませていただけているなと思います。

 そうした演出がありつつ、ひとつ斬新だなと思うものを挙げるとすると、2021年のエイプリルフールイベント“Secret×Rose”でしょうか。

 開催からかなり時間が経っているのですこしネタバレをしてしまいますが、学生になったアイドルたちの通う学園でひとつの事件が起こり、最終的に事件は未解決のまま解決すべく奔走していたはづきが何者かによって階段から突き落とされるというシーンがあります。

 ホラー的なお話はテキストだけではうまく怖さが伝わってこないという課題があるのですが、急にテキストを差し込んだり、落下して赤い背景が広がったりというふだんは行っていない演出を盛り込んで、ホラー的な驚く要素や後味の悪さなどを見事に表現していただけて印象深かったですね。

『シャニマス』開発スタッフインタビューシナリオ演出編。アイドルたちを魅力的に見せるために、0.1秒単位で間の取りかたを意識
エイプリルフールイベント“Secret×Rose”。

いま高山さんに挙げていただいた“Secret×Rose”は、私が担当させていただいたものですね。お話のとおり、はづきが薔薇に気づいた瞬間、「バン!」と衝撃を受けて、そのままじわっと背景が赤くなって、クスクスと誰かの笑い声で終わるというようなホラーの演出ですが、じつはこれもすこし苦労した部分でもあるんです。

 というのも、当時ホラーな内容のシナリオがあまりリリースされていなかったので、どの程度怖くしたらいいのかがわからず、手探りで緊張しながら作った思い出があります。

 「バン!」と衝撃を受けた後、背景がそのままフェードで遷移するとあまり衝撃感を感じられないので、効果音といっしょに背景が遷移するように調整したりなど自分なりの挑戦がありましたが、それがむしろ印象に残る形になって、チャレンジしてよかったと思います。

――そこはいつものアイドルたちのシナリオ演出とは作りかたも違うし、苦労されたポイントとも異なるのですね。

そうですね。日常のシーンでは殴られるような怖いシーンはないので、せっかくならと怖い方面に振り切りました。そして、エイプリルフールということで、日常ではなく非日常を楽しんでもらうことを意識して作りました。

 ふだんの283プロとは関係性も異なるし、みんなが同じ学園に通っているという設定だったので、パラレルワールド感があり、ふだんは見られない表情や心情もあり、作っていてすごく楽しかったです。

BGMや効果音を指定する際は、現実に近い音を採用し、アイドルたちの実在性を表現

高山シナリオの内容によって、当然演出の方向性は大きく変わると思いますが、それが実現できるのは自分の中で演出の引き出しがないとできないと思うんです。鷺さんは、どのようにインプットを行っているのですか?

ドラマや映画、アニメを鑑賞したりゲームをプレイしたりしているときに「暗転をこの速度で使うんだな、この効果音の使いかたいいな」というふうに学ぶことがあります。アウトプットとしてはそれらを脳の端に保存した状態で、感覚で作ってしまっている部分が多いです。

 283プロの事務所でアイドルやプロデューサーたちが会話している様子を思い浮かべて、その瞬間を切り取って演出しているような感覚です。

 音の演出は“私たちと同じ世界でアイドルたちが生きているということ”を考えながら作ります。ある程度リアルな音のほうが、実在感というか彼女たちの生きている感覚が表現できると思います。ですので、BGMや効果音を指定する際は、現実に近い音を採用するようにしています。

 現時点では、BGMは音楽系と環境音系合わせると300種類以上、効果音については1700種類以上ありまして。たとえば、風の音でも10種類ありますし、歩く足音は90種類以上、走る足音は100種類以上、室内用、室外用でもわかれています。そうしたすべての音の中から物語に没入できるものを選ぶようにしています。

高山なるほど。確かに日常に近いリアルな効果音を採用していただいているから、僕たちが過ごしている時間と同じ時間が経過しているようなシナリオの読み心地になっているなと思いました。

 一方でBGMについては、いま僕らが過ごしている日常では、耳にBGMって流れていないじゃないですか。どういった考えかたでBGMは指定されているのですか?

BGMについては、ドキュメンタリーを見ているような感覚で制作しているかもしれません。現実では、悲しい思いをしたときに物哀しいBGMは流れないので、現実を再現するというのは難しいです。

 そのため、映像としてストーリーを見て、そのときのアイドルの感情がダイレクトで伝わるようなBGMを選んでいます。

高山感情を知覚化して、アイドルたちの内にある感情を音楽で補助してあげるというようなイメージなのですね。納得がいきました。

――先ほど、BGMや効果音は膨大な量があるというお話がありましたが「こういう音があったらいいのに、こういう素材があったらいいのに」と思ったときには、どのように対応されているのですか?

それ専用に新しく効果音やBGMを作ってくださるときがあります。作れない場合は、既存のもので表現します。たとえば、スマホを机に置く音という専用の効果音がない場合はコップを置く音で代用したりとか。リリースから約4年半が経過していて、効果音やBGMのレパートリーも豊富になったので、ほとんどは既存の音で制作することが多いですね。

――音が追加されているということですが、シナリオ演出チームの皆さんから「こういう音が欲しい」と提案をされることはあるのですか? それとも、音楽の制作チームに完全にお任せという感じなのでしょうか?

現時点での制作体制ですと、基本的に音の発注はシナリオチームが担当していて、それで発注されたものを演出に組み込んでいるという感じです。シナリオチームさんが指定してくださった効果音の中で、「こっちのほうがよいのでは?」というものは提案したりしますね。

――なるほど。それでは最後にシナリオ演出担当として、お話を読む上でチェックしてほしいポイントや、さらに楽しめるようなアドバイスなどがあれば教えてください。

『シャニマス』のシナリオは、サクサク楽しく読めるようにテンポのよさにこだわったものと、高山さんがおっしゃってくださったような、間などにこだわって映画のように仕上げたものがあり、それぞれのタイプにあった調整を行っています。

 とくに後者については、オートで見たときにいちばんきれいになるように間の調整を0.1秒や0.5秒単位で調整しているので、「これは雰囲気を大事にしてそうだな」というものはぜひオートで楽しんでいただけたらうれしいです。

 ほかにも、演出においてセリフの前後で目線を泳がせていたり、ログに残らない特殊なボイスを実装していたり、細部までこだわっています。

 ですので、一度読んだことのあるシナリオも改めて細かいところまで注目すると、また新しい発見があるんじゃないかなと思うので、ぜひ、音ありで見てもらえたらなと。そうして、引き続きかわいいアイドルたちのいろいろな感情や姿を楽しんでいただけたらと思います。今後ともよろしくお願いします!

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