9月15日~18日に千葉県・幕張メッセで開催された“東京ゲームショウ2022”。ValveのポータブルゲーミングPCである“Steam Deck”(スチームデック)の試遊ができるKOMODOブースが展開された。
発売済みのアメリカを追う形で日本などでも予約が開始されており、KOMODOブースではいち早くSteam Deckを体験することができた。
そんなSteam Deckについて詳しいお話をうかがう機会をいただいたので、日本での展開を決めた理由など気になることを聞いてみた。
エリック・ピーターソン
Valve所属。Steamでのビジネスを担当する。
リッキー・ウーイ
日本でSteam Deckの展開などを担当するKOMODO代表取締役社長。
ローレンス・ヤン
Valve所属。デザイナーだが、ほかにもいろいろなことをやっているとのこと。
日本での展開を決めた理由などに迫る
Steam Deckの日本展開を決めた理由や発売に至る経緯をはじめ、今年もビッグイベントであるSteamセールが開催されるのかといったことも聞いてみた。
――日本のPCゲーマーやSteam愛好家にはビッグニュースであるSteam Deck上陸ですが、ずばり日本での展開を決めた理由は?
エリック今のタイミングで申し上げますと、日本はPCゲーム市場が拡張している世界トップ10の中のひとつです。この勢いにのって日本を含め、アジアで展開することになりました。
同時に日本は、世界にポータブルゲーム機器を展開した聖地だと思っていますので、私たちが来日してSteam Deckを展開できることをすごく光栄に思っています。
――TGS2022では非常に素敵なブースを出展されていますが、このような規模感で展開されることは最初から予定していたんですか?
リッキーはい。Steam Deckを日本に持ってきていろいろな人たちに触っていただき、いかに手軽でおもしろいものか感じてほしかったんです。それにSteam Deckにはすごく自信を持っていますので、なるべくひとりでも多くの人に遊んでもらおうと思いました。
ローレンスTGSのブースのサイズに関しては私たちの気持ちの現れで、日本でこれだけ大きなものを出したかったですし、日本に対する愛の象徴でもあります。
――なんだかうれしくなりますね。実際にTGSの会場でSteam Deckを遊んでいる人から反響などは聞かれましたか?
エリックたくさんのフィードバックをいただいております。印象に残ったフィードバックは、思ったよりも軽い、軽快に遊べるということですね。
Steam Deckは、Steamアカウントさえあれば、『デス・ストランディング』、『モンスターハンター』、『エルデンリング』なども簡単に遊べますよ。
リッキー例えば、ハイスペックなゲームをこんな小さい機器で遊ぶことに、コアゲーマーの方々はナーバスな印象を受けたと思います。ただ、実際に遊んでもらうとSteam Deckでハイスペックなゲームができるんだという驚きや感動の瞬間が見られて、とてもワクワクしますね。
――Steam Deckというプロジェクトが始まった当初のお話を聞かせてください。Steam Deckの着想を得たのは約10年前とのことですが、発売に至るまでの経緯をお伺いしてもよろしいでしょうか。
10年ほど前にSteamコントローラーをValveの方で開発していまして、快適だけど真ん中に画面があったら、もっとおもしろいかもしれないっていうことに気づいたんです。
しかし、残念ながら当時はテクノロジーがまだ追いついていなくて、発想自体は素晴らしかったと思ったんですが、ちょっといまは作れないと感じでした。そういう状況が続いて、このアイデアは少し保留にしていたんです。
その間は、ValveとしてはSteam Linkだったり、Valve Indexだったり、ハードやソフトを含めてさまざまな製品を展開しました。そうしているうちに、いろいろな知識が深まっていきました。
その結果、保留にしていたアイデアを実現するためにはどういうものが必要なのか、ようやくわかるようになりました。
そして、ここ3~4年でAMDと開発したチップがパズルの最後のピースのようなものになって、ようやく作れるということになったんです。
――そうだったんですね。ハード面ではサウンド表現にも力が入っているそうですが、このあたりのこだわりを教えてください。
ローレンスSteam Deckのスピーカーについては、Valve Indexに搭載されているヘッドホンを開発した人間が手掛けているので、音に対するこだわり、ハイクオリティなサウンドを実現するためにかなり力を入れてもらいました。
音というのはゲーム体験において非常に重要な要素なので、そこをないがしろにするという考えはありませんでした。ヘッドホンの状態で音がいいのはもちろんですが、スピーカーの状態でも音がいいようにこだわっていますよ。
Steam Deckで快適に遊べるタイトルの数は約5000、プレイするだけなら約30000タイトルが対応
――現在は3つのストレージなどが異なるモデルが用意されています。規格をひとつにまとめず、モデルが違うものを用意した理由を教えてください。
ローレンス顧客の皆さんは幅広いので、なんらかの選択肢を用意したいと思いました。もちろん、最高モデル(512GB(NVMe SSD))が最もハイスペックなのは間違いないのですが、そこまで必要じゃないというユーザーもいると思い、違う選択肢を用意しています。
エリックValveとしては、やっぱり手に取ってくれた人をすごくハッピーにさせたいという気持ちで動いています。いちばんストレージが小さいデバイスを購入したとしても、micro SDカードを挿入することで容量を拡張できますよ。
――現在、Steam Deckで遊べるタイトル数について教えてください。
エリックSteam Deckと完全に互換性がある“確認済み”(※)タイトルは現状で約5000タイトルです。日々、その数は増えているんですが、詳しくはDeck Verifiedを確認してみてください。
ただ、普通に動作を確認しているタイトルだけで言えば、約30000タイトルありますよ。そのすべてをValveのスタッフが実際にプレイして確認しています。
※現在、Steam Deckには互換性カテゴリーがあり、タイトルは“確認済み”(快適に遊べるもの)、“プレイ可能”(プレイにユーザー側で調整が必要なもの)、“非対応”、“不明”(互換性未チェック)というものに分類される。なお、遊べるタイトルの数は随時更新されていく。
――え、何かシステムのようなもので判別しているわけではなく、1タイトルごとにプレイして手作業で確認しているんですか!?
エリックもちろんです。私たちもゲームが大好きですし、Steam Deckを手に取ってくれた方がハッピーになれるように自らで確認しています。
――なるほど……! ここ数年では日本のゲームメーカーも、最新作の対応ハードにSteamが含まれることが多くなりましたが、こちらはどう思いますか?
エリック私たちからすると、すごくエキサイティングで光栄なことです。先ほども言いましたが、実際にそれだけPCゲーマーの方も増えてきたのではないかなと思います。
開発側からの視点で見てみると、自分で作ったゲームを簡単にSteamで販売できて、Steam Deckで手軽に遊んでもらえるというのが、さらにわかってもえるんじゃないかと考えています。
また、ユーザー側からすれば、Steam Deckを手に入れれば最初からこんなにたくさんのゲームがあって、それを購入して遊べるんだというのがありますよね。
――すでにアメリカでは発売中のSteam Deckですが、アメリカのユーザーさんがおもしろいカスタムをしたり、予想外な遊び方をしたりしていることはありましたか?
ローレンスやはり最初に購入してくれた人たちはPCゲームに精通している人たちなんですが、彼らがバスの中やボートの中、飛行機の中でも遊んでくれていたのがすごく印象的でしたね。
それにSteam Deckは、ただのゲーミング端末ではなくポータブルのPCなので、ノートパソコンの代わりに使っている人たち、これを使ってDJをやっている人たち、あるいはこれで動画編集をやっている人たちがいてクールだと思いました。
――今後、Steam Deckに改良を加えるとしたら、こうしてみたいといったものはありますか? 本当のことは話せないかもしれないので、冗談半分などでも構わないんですが……。
ローレンスたしかにあまりそういうことは言えませんね(笑)。ただ強いて言えば、買ってくれた方のフィードバックを取り入れたいです。それに最新のテクノロジーは進化していくわけなので、そういったものは導入したいですね。
そして、製品のサービスをアップデートしていくのは、弊社のスピリットです。ユーザーインターフェース、OS、ファームウェアなどは、日々よい状態に持っていくのが私たちのミッションなので、これはもう間違いなくどんどんよいものが出てくると思っていてもらえるとうれしいです。
――現在はSteam DeckでVRのゲームをプレイすることができませんが、将来的にはそういうものも遊べる未来を考えたら楽しいですよね。
エリック同感です。もし遊べたら非常にクールですよね。
ローレンスそうですね。現在は技術的な制限があるので難しいですが、将来的にはそういうものが遊べたらいいですね。
――ただ単に聞きたいだけというのもありますが……Steamで恒例のハロウィンセールやオータムセール、ウィンターセールは今年も開催されますか?
エリック間違いなくやりますので、ぜひ待っていてください!
――ありがとうございます。楽しみにしています! それにしても皆さんが着ている法被も素敵ですね。
リッキーありがとうございます。ローレンスは言っていませんが、法被に描かれたマスコットキャラクターのPal(パル)は、彼のデザインをもとに日本のデザイナーさんがアップグレードしてくれたものなんですよ。
「Steam Deck(スチームデック)」のマスコットキャラクターに就任した「Pal(パル)」です!
「Pal」は、英語で【友達】や【仲間】という意味があります。#TGS2022 では、「Pal(パル)」を使用したノベルティーもご… https://t.co/VdBuT53YFy
— Steam Deck (@OnDeckJP)
2022-09-09 20:00:03
法被を着ている理由ですが、日本でお祭りというのは喜びと祝福を爆発させるようなものと聞き、私たちはSteam Deckを日本で展開することをお祭りのようなものだと思っているので、ユニフォームとして採用しています。
――最後にSteam Deck到着を待ちわびる日本のユーザーにメッセージをお願いします。
ローレンス日本のゲーマーの皆さんのなかには、Steam DeckでPCゲームを遊び始める初心者の方もいるかもしれませんが、安心してください。それと私たちのゲームを愛している気持ちが、日本の皆さんにも伝わってくれたら光栄です。
エリック日本に来られて本当に光栄だと思っています。ぜひ、Steam Deckを手に入れた方々は感想をフィードバックしてくださいね!
リッキーSteam DeckはPCゲーマーたちはもちろん、それほどPCゲームに詳しくなくとも手軽にPCゲームを楽しめるものになっています。たくさんのゲーマーの方々によりよいゲーム体験を提供できれば、私も幸せです。