2022年8月6日、7日、日本最大規模のインディーゲームの祭典BitSummit X-Roads(ビットサミット クロスロード)が京都市勧業館 みやこめっせにて開催。ここでは、会期2日目に行われた、“LayerQによるスペシャルインタビュー!”と題して行われた、インディーゲーム大好きストリーマーとしておなじみのLayerQ氏と、インディーゲームパブリッシャーであるRaw Furyの共同創設者、ゴードン・ヴァン・ダイク氏とのやり取りを紹介しようかと思う。

 まずは、BitSummitが大好きだというLayerQ氏が、BitSummitの大きな魅力のひとつとして、「販売会社や開発者のことを知るチャンス!」があると説明。その言葉を体現するかのごとく、Raw Furyが2015年にスウェーデンのストックホルムで創業されたスタジオで、「開発者ファーストであり、開発者の情熱を世界中のユーザーに伝えるべく設立された会社である」と説明した。

Raw Furyの共同創業者が語る。気鋭のインディーゲームパブリッシャーが放つ『Kingdom』シリーズと日本との深い関係【ビットサミット クロスロード】
BitSummitが大好きだというLayerQ氏が、BitSummitの魅力の一端を紹介。
Raw Furyの共同創業者が語る。気鋭のインディーゲームパブリッシャーが放つ『Kingdom』シリーズと日本との深い関係【ビットサミット クロスロード】
2015年に設立されたRaw Fury。設立以降複数のタイトルをリリースしている。最近だと『Sable』あたりでもなじみ深いかも。

 続いて、Raw Furyの代表作である自社開発タイトル『Kingdom』シリーズを説明。横スクロールでの、シンプルな操作が特徴的な戦略ストラテジーとなる『Kingdom』シリーズだが、これまで3作リリースされており、最新作となるのが、BitSummit X-Roadsがプレイアブル世界初出展となる『Kingdom Eighties』。これまで中世などを舞台にしてきた『Kingdom』だが、本作は1980年代のアメリカでの出来事が描かれるという新機軸の一作だ。

Raw Furyの共同創業者が語る。気鋭のインディーゲームパブリッシャーが放つ『Kingdom』シリーズと日本との深い関係【ビットサミット クロスロード】
これまで3作リリースされている『Kingdom』シリーズ。

 と、ここで今回の主役であるゴードン・ヴァン・ダイク氏が登壇。2003年にD.I.C.E.(当時)に入社し、『バトルフィールド2142』などを手掛け、のちにストラテジーゲームなどでおなじみのパラドックスインタラクティブに転職したなどといった経歴が紹介されたあとで、パラドックスインタラクティブでジョナス・アンダーソンと出会い、「いいパブリッシャーになりたかった」との思いから、Raw Furyを創業したといういきさつが語られた。

 Raw Furyは、いまいろいろなことがうまくいっているとのことで、ゴードン・ヴァン・ダイク氏の、ゲームは絵画などと同じようにアートだと思っていて、「同じようなリスペクトを得られるように、開発者をサポートしていきたい」とのコメントが印象的だった。

Raw Furyの共同創業者が語る。気鋭のインディーゲームパブリッシャーが放つ『Kingdom』シリーズと日本との深い関係【ビットサミット クロスロード】

 といったところでトークのテーマはRaw Furyの看板タイトル『Kingdom』シリーズに。シリーズ1作目がリリースされたのは2015年。当時大学生だったトーマス・ファン・デン・バーグ氏が大学生のときに開発したタイトルがもとになっている。最初は馬のピクセルアートだったものが、少しづつ実験を重ねていまの形になったのだとか。

 その後、『Kingdom: New Lands』(2017年)、『Kingdom: Two Crowns』(2018年)と、シリーズは3作を重ねたが、その間の変化をゴードン・ヴァン・ダイク氏は、「すごく変わった」と述懐。スタッフも最初は3人だけで作っていたものが、『Kingdom: Two Crowns』から増えて、いまは10人くらいで開発しているという。

 「『Kingdom』シリーズと言えば、音楽が魅力的ですが……」とのLayerQ氏の質問には、「すべてのゲームに言えることですが、『Kingdom』はとくに絵がきれいなので、世界観にぴったりマッチするような音楽でなければならないと思ったので、慎重に選定してきました。これまですばらしい音楽家と仕事をしてきています」という、こだわりぶりがうかかえる発言が聞かれた。

 2019年の『Kingdom: Two Crowns』の有料DLC“Norse Lands”を経て、シリーズ最新作として先日発表されたのが『Kingdom Eighties』。いままで中世だったりを舞台にしてきた『Kingdom』シリーズが、いきなり1980年代を描くことになるのはいささかびっくりだが、その理由に関してゴードン・ヴァン・ダイク氏は、「たくさんの人が1980年代のアメリカに親しんでいます。かくいう私も1980年代のアメリカで育ってきたひとりです。ゲームに取り入れたくて、そのような設定にしました」とのこと。ゴードン・ヴァン・ダイク氏が子どものときに見た風景なども、『Kingdom Eighties』には盛り込まれているようだ。いったいどのような内容になるのか……、気になるところ。

Raw Furyの共同創業者が語る。気鋭のインディーゲームパブリッシャーが放つ『Kingdom』シリーズと日本との深い関係【ビットサミット クロスロード】
Raw Furyの共同創業者が語る。気鋭のインディーゲームパブリッシャーが放つ『Kingdom』シリーズと日本との深い関係【ビットサミット クロスロード】
アメリカ中部の田舎町が謎多き闇の怪物“グリード”に襲われ、小さな子どもたちが自分たちの家族や友だち、町を守るために過酷で壮絶な戦いへと巻き込まれていくことに。現時点で発表されているプラットフォームはPCで、発売日は未定。
『Kingdom Eighties』Steamサイト

 そしてインタビューの話題は『Kingdom』シリーズと日本との関係になった。シリーズは『Kingdom: New Lands』から日本語のサポートが入っているが、1作目はPCのみのリリースで、予算も少なくてやりたいことができなかったとのこと。それが成功して、2作目を制作することになり、コンソールやモバイルにも展開。「とてもいいゲームなので、日本のゲームファンにも最高のゲーム体験を提供したかったんです。それで、最高のローカライズとサポートを提供してくれる架け橋ゲームズに頼みました」とコメントすると、架け橋ゲームズのスタッフでもあるLayerQ氏と、インタビューで通訳を担当する同じく架け橋ゲームズの桑原頼子氏は照れくさそうな表情に。

 『Kingdom: Two Crowns』の日本語版がリリースされたときの日本のユーザーからの反応を聞かれたゴードン・ヴァン・ダイク氏は、「とても好意的でした」とうれしそうにコメント。ゲームプレイはもちろん、世界観やビジュアルがとくに好評だったという。そしてゴードン・ヴァン・ダイク氏は、日本での思い出深い出来事として、東京ゲームショウでファンの人が、ファンアートと折り紙を持ってきてくれたというエピソードを披露してくれた。いままでになかったことで、とてもうれしかったとのことだ。

 日本関連で言うと、『Kingdom: Two Crowns』には、日本をモチーフにした“ショーグン”というステージが含まれている。これに対してゴードン・ヴァン・ダイク氏は、もともとサンフランシスコとハワイで育ったので、日本人の友だちもいて、アニメもたくさん見ていたという。日本の文化が好きなので、『Kingdom』の設定と日本の中世の世界観がマッチしているのではないかと思い、盛り込んだのだという。

 最後にメッセージを求められたゴードン・ヴァン・ダイク氏は、「私は、日本、日本の文化、そして日本に住むすべての人たちにとても感謝しています。日本がなかったらゲーム業界はここまで発展していなかったと思うので、とても感謝しています。皆さんありがとうございます」との、日本人にとってはちょっぽり照れくさくなるが、とても光栄でもあるコメントを残してインタビューを締めくくった。今後のRaw Furyのタイトルに期待したい。

Raw Furyの共同創業者が語る。気鋭のインディーゲームパブリッシャーが放つ『Kingdom』シリーズと日本との深い関係【ビットサミット クロスロード】
ゴードン・ヴァン・ダイク氏(中央)、LayerQ氏(右)、桑原頼子氏(左)。
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