志倉千代丸氏が企画・原作を手掛ける、科学アドベンチャーシリーズの最新作『アノニマス・コード』。プレイステーション4とNintendo Switchで、2022年7月28日にリリースされる本作の発売まで、ついに1ヵ月を切った。

 “メタ科学アドベンチャー”と銘打たれた『アノニマス・コード』の舞台は、デジタルの恩恵を受ける近未来、2037年の東京・中野。この街を拠点に活動する若きハッカー・高岡ポロンが、仲間たちと数々の事件やこの世界の存在意義さえも揺るがす陰謀に立ち向かう。

 ポロンたちの活躍がやっと体験できるとうれしく思う一方で、これまで何度も発売を延期してきただけに、果たして予定通りリリースされるのか、不安を感じているファンも少なくないだろう。そこで、MAGES.の代表取締役会長を務める志倉千代丸氏を直撃。ストーリーの見どころや科学アドベンチャーシリーズとのつながりなど、気になるポイントを通して、志倉氏が本作で描いた2037年の未来に迫る。

 なお、志倉氏へのインタビューを実施するにあたり、記事担当者たちは『アノニマス・コード』をある程度プレイしているが、インタビューにネタバレはないのでご安心を。

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志倉千代丸氏(しくらちよまる)

MAGES.の代表取締役会長として会社を経営しながら、クリエイターとしても活躍。その才能はゲーム原作に留まらず、作詞や作曲など、幅広い分野で発揮されている。最新作『アノニマス・コード』では、企画・原作を担当。

最新の世界情勢や科学に合わせてギリギリまでシナリオを修正

――まずは、多くの方がいちばん気になっていることから伺います。『アノニマス・コード』は2022年7月28日に発売……されますよね?

志倉マスターアップギリギリまで作業をしましたが、大丈夫だと思います。ただ、できたわけではなくて。ここまでにしようと。

――え!? それはどういう意味で……。

志倉科学を扱っている科学アドベンチャーシリーズは、終わりがないんですよ。僕たちが想定科学として、こんなことがあるかもよとゲームに登場させようと思ったネタが、開発期間中に実現してしまうことがあって。都市伝説も同じで、開発当時は謎に包まれていたことが、解明されてしまうこともある。『アノニマス・コード』は開発期間が長かったので、ゲームに登場させるには古くなった科学ネタや都市伝説がとくに多かったんです。

――泣く泣くカットしたネタがあったと。

志倉たとえば、『ロボティクス・ノーツ』では“ポケコン”と呼ばれるタッチパッドデバイスの拡張現実(AR)の機能を使って、キャラクターの衣装の着せ替えなどを行っていますが、発売して間もなく現実世界でも似たようなアプリがいくつも登場しています。

 あと、科学アドベンチャーシリーズでは、“ニューワールドオーダー”という言葉を、シリーズの企画段階である13年ほど前から使ってきましたが、こんなところもここ数年のあいだに日常用語になってしまったり。

 『アノニマス・コード』の話に戻すと、いちばん影響が大きかったテーマが金融に関してです。2037年はどのような決済をしているのか。当たりをつけてシナリオに書いていたのですが、新型コロナウイルスの感染拡大で経済状況が大きく変わってしまい、触れにくくなってしまいました。また、本作でテーマに扱っているハッカーを取り巻く状況もこの4、5年で大きく変わっています。

 日本のサイバーセキュリティは世界的に見ればザルだと言われていて、専門家らはずっと警鐘を鳴らしていましたが、近年は日本政府も対策に乗り出しています。とは言え、それでも大きく差をつけられているというのが現実です。今回の作品に登場する3人組“サイバーフォースドール”は、れっきとした警察官で、「もしかしたら未来の政府はイメージアップキャンペーンの一環として、アイドル警官を世に送り出したとしてもおかしくないのでは?」と。

 そうなると、恐らく作曲にはつんく♂さん、作詞には秋元康さんレベルの規模であるに違いない。そんな未来を予測したわけです。きっと相場も知らずに多額の税金を投じることでしょうね。実際の作詞や作曲は僕が担当した楽曲なので税金は投じていません。ご安心ください(笑)。そういった世界情勢の変化やテクノロジーの進化に、僕らは作品をアジャストさせないといけないので、振り回された感じでした。

『アノニマス・コード』志倉千代丸氏インタビュー。本作は貧弱なオタクたちへの挑戦状!? 『シュタゲ』など科学アドベンチャーシリーズとのつながりも明らかに!

――ほかに苦労したことや意識したことは?

志倉意識したのは、なるべくわかりやすく作ろうとしたことです。というのも、『シュタインズ・ゲート』のときに、この作品だけでお腹いっぱいという人が、想像していた以上に多くて。『シュタインズ・ゲート』は、その後リリースした『シュタインズ・ゲート ゼロ』とセットでひとつの作品と考えていたので、僕としてはどちらも遊んでほしいんですが、どうしても続編イメージが強いのか、無印の『シュタインズ・ゲート』ほどは伸びませんでした。

 初代『シュタインズ・ゲート』の主題歌『スカイクラッドの観測者』でも、しっかりと“「0」が過去で 「1」が未来”と「無印を0とし、それと対になる作品が未来に」と歌詞でも予言していた通り完全にセットなんですが、伏線としては難解すぎましたね(笑)。ただ、最近は短いまとめ動画も流行っていますし、なかなか難しいのかなと。あ、またいつのまにか話が質問内容から脱線し始めてる。この辺カットしてもらって、ファミ通.comのほうでなんとか、ぜひ(笑)。

 ということで、話を冒頭に言った“『アノニマス・コード』のわかりやすさ”へと無理やり戻しますが、要するに物語の展開や演出もそうですが、作中に出てくる言葉もなるべくわかりやすいものにしていますし、わかりにくい言葉はTipsで解説してフォローしています。

 たとえば、本来のハッカーどうしの戦いは、パソコンの前に座った状態でくり広げられるので動きがありませんよね。みんな、神代フラウ(※1)のような状態になってなきゃおかしいんですが、それだとゲームとしては盛り上がりに欠けますし、アニメ化するのも難しい。そこで作中に登場するハイハックやフェイスハックのクエストのように、ポロンたちが動きながらじゃないと解決できないデジタルバトルを考えました。

※1:神代フラウ……『ロボティクス・ノーツ』の登場人物。引きこもりの天才プログラマーで、PCの熱暴走を防ぐために冷房がガンガンに効いた部屋で生活している。

――それでポロンが使うキーボードが、グレイパー(※2)を運転しながらでも使えるような入力デバイスになっているのですね。

※2グレイパー……作中に登場する自律走行が可能なバイク。

『アノニマス・コード』志倉千代丸氏インタビュー。本作は貧弱なオタクたちへの挑戦状!? 『シュタゲ』など科学アドベンチャーシリーズとのつながりも明らかに!

志倉持ち運びの問題もありますが、キャラクターに個性を持たせるためにも、アスマはルービックキューブ型のキーボードを使っているなど、入力デバイスをそれぞれ変えています。キーボードのアイデアはピアノみたいなものなど、いろいろと出しましたが、ボツになったものも多いですね。傘や巨大な十字架を入力デバイスとして使用するキャラクターなんかもいますので、ぜひ楽しみにしていただければ(苦笑)。

『アノニマス・コード』志倉千代丸氏インタビュー。本作は貧弱なオタクたちへの挑戦状!? 『シュタゲ』など科学アドベンチャーシリーズとのつながりも明らかに!

――十字架(笑)。

志倉でも、2037年になってみないとわかりませんからね。さすがに、巨大な十字架をキーボードとして使っている人はいないと思いますが(笑)。ちなみに、プレイヤーの入力デバイスはゲームのコントローラになります。実際にゲームのコントローラにコードを全部割り当てれば、キーボードにすることもできるんですよ。

――なるほど。ちなみに、『アノニマス・コード』の内容をわかりやすくした理由とは?

志倉あくまで個人的な感想なのですが、以前と比べて僕らオタクたちの考察機会が減ってしまったと感じていて。要は考察オタの弱体化です(笑)。テーマ自体が複雑なので状況の理解をわかりやすくしたのですが、もちろん考察の余地はしっかりと残っています。未来は確定しないので、ぜひそれぞれの未来予想や、同時に作品の考察コミュニティが少しでも広がればうれしいですね。そのときは僕も健全なオタクとして参戦します。プロモーション面でもわかりやすさを重視する理由で、「この世界はデジタルである」という作品のネタバレとも言えるようなコピーを、初期から多く使っています。

――以前のインタビューでも、世界層の説明でそんなお話を伺いました。地球シミュレータのレイヤーの上に現実世界の我々のレイヤーがある。だけど、そこが本当にいちばん上の層なのか? じつは現実だと思っている世界もデジタルで、さらに上に我々を見ている層があるんじゃないか、という話ですね。

志倉はい。それで作中の2037年はデジタルで、地球シミュレータによって作られた世界なんだよって。この世界層のネタを公開し、作品自体をわかりやすくしたとはいえ、驚くようなどんでん返しも、きっとあるので期待してほしいです。

収録した都市伝説や陰謀論のせいでバチカンが悪者扱いに!?

――今回、都市伝説や陰謀論といったネタが、これまでの科学アドベンチャーシリーズの作品以上に多いなと感じたのですが。

志倉そうですかね? たとえばここ数年、YouTubeなどで都市伝説や陰謀論などのネタ解説をわかりやすく教えてくれる、情報品質の高いチャンネルが増えましたよね? それに合わせてその種の知識が多くの人にとって“ふつう”になっているせいもあり「あー。あれか」と、知識とリンクする機会が増えたのでは? という気がします。

 最近はその手のチャンネルのYouTuberさんに、科学シリーズ会議に出席願いしたいくらいです。あ! ダメか。ネタバレかまわずにカメラ回されちゃうかもしれませんね(笑)。そういったことも含め、数多く登場していると感じているひとつの理由なのかもしれません。シナリオを書いたときは、これらのネタをいちばん早く扱ったという自負があったのですが、発売が延期されるうちにあれも出ちゃった、これも出ちゃったという状況でした(苦笑)。

『アノニマス・コード』志倉千代丸氏インタビュー。本作は貧弱なオタクたちへの挑戦状!? 『シュタゲ』など科学アドベンチャーシリーズとのつながりも明らかに!

――確かに、都市伝説系YouTuberさんの動画や都市伝説関連の番組などによって、ここ数年で数多くの都市伝説を知ったところはありますね。

志倉そうでしょう? でも4年以上前に初めて作った『アノニマス・コード』のPVにも、まるでお品書きのように扱うネタはけっこう広めに書いてあるんですけどね。要するに「このあたり、ネタにしますー」という、ネタの予約的な意味で(笑)。ちなみにどんな都市伝説をYouTubeなどで観たんですか?

――アレシボ・メッセージ(※3)とか、Cicada3301(※4)とか……。あと、ドラマなどで扱われていたので事前に聞いたことはありましたが、ファティマ第三の預言(※5)なんかもよく見る都市伝説ですね。

※3:アレシボ・メッセージ……1974年にアレシボ天文台から宇宙に送信された電波によるメッセージ。
※4:Cicada3301……2012年のネット掲示板に、「非常に知的な人材を探しています」というメッセージとともに暗号を投稿した謎の人物。
※5:ファティマ第三の預言……1917年、ポルトガルの小さな村に聖母マリアが現れ、3人の子どもに3つのメッセージを伝えたとされるもの。ローマ教皇庁により公に奇跡として認定されたものの、あまりにも衝撃的な内容だったためバチカンの手で秘匿された。

『アノニマス・コード』志倉千代丸氏インタビュー。本作は貧弱なオタクたちへの挑戦状!? 『シュタゲ』など科学アドベンチャーシリーズとのつながりも明らかに!
『アノニマス・コード』志倉千代丸氏インタビュー。本作は貧弱なオタクたちへの挑戦状!? 『シュタゲ』など科学アドベンチャーシリーズとのつながりも明らかに!

志倉なるほど。まぁ人それぞれでしょうね。SF好きな人、ファンタジー大好物な人、皆さんの属性はさまざまですからね。でも、これだけは譲れないという、僕なりのスタンス? いや、生きざまかな? が、とにかくありまして。これがYouTubeなどで都市伝説や陰謀論テラーを展開するチャンネルの皆さんを、大きく引き離すポイントだと思っています。フゥーハハハ! ……じゃごまかせませんね(笑)。

 簡潔に言うとこの種の“語り手”には2種類あると考えています。ひとつ目はさまざまなエピソードを語る者。ふたつ目はさまざまなエピソードを語り、自分なりの見解を語る者。僕は後者であり、さらに“科学的な根拠縛り”というリスクの高いハードモードで語り、それを作品にしているんです。だからどんなエピソードを知っていても、先にテーマを公開してもまったく問題ないのです。その答えは簡単で、都市伝説なら科学的に。陰謀論ならその動機に。と、僕なりの“科学的考察”は作中でしか公開されていないからです。

 今回はバチカン関連のエピソード多めというか、ぶっちゃけ敵対する相手としては世界最大ですからね。やりすぎ問題で、バチカンを本気で怒らせてしまうのではないか? と。いやぁ楽しみでしかたありません。もちろん念のため、毎晩のように祈りを捧げ、反省の日々を送っているのは言うまでもありません。どうかこの一文だけでもバチカンのエラい人に届きますように……。いや、待てよ? ファミ通ってバチカンでも買えま……せんか(苦笑)。

――いや、本当にそうなんですよ(苦笑)。大丈夫かなって心配になります。

志倉フォローするわけじゃないですが、バチカンって本当にすごい! デジタル化も進んでいます! 地下には巨大な書庫や、スーパーコンピューター級の施設なんかもあるんですよ! つまり、古い歴史があり、新しい未来までも!

 バチカンの枢機卿が信者の前でしゃべるときに、現在はスマホのアプリを使うんですよ? 「進化の方向どうなってるんですか?」って言いたくなっちゃうけど、とにかくバチカン様とはその外見イメージからは想像もできないくらいデジタルも進化しているということなんです。(※6)。世界でいちばん小さな国が、世界でいちばん大きなチカラを持っている。なんと美しき調和! とにかく敵役としては軽くSERN超え。えー、つまり……。恐ろしいほど素晴らしい!

――(笑)。

※6:バチカンのデジタルの進化……2018年には、教皇が毎週日曜日などに行うアンジェルス(お告げの祈り)を同時翻訳するアプリ“Vatican Audio”を公開。2019年にはスマートフォンアプリと連動する電子ロザリオ“Click To Pray eRosary”を発表するなど、デジタル化を推進している。

志倉そういえば、枢機卿のアプリの件で思い出しましたけど、『シュタインズ・ゲート エリート』(※7)のエンディングテーマ『アニーの指輪』には、『アノニマス・コード』につながる歌詞があるんですよ。

※7:シュタインズ・ゲート エリート……2018年9月発売。全編をアニメーションで再構築し、より臨場感と没入感を味わえるようにスタイルが一新された『シュタインズ・ゲート』。

――え? そうなんですか?

志倉そもそも『アニーの指輪』は、量子を安定化させてその振る舞いを一定の範囲内でコントロールする技術“量子アニーリング”のことで、そこから『アニーの指輪』という楽曲を作りました。歌詞中の「空はいつも そこにあって その向こうは 神々がいて 大司祭は 予言授かり 天の声と 声を荒らげた」というフレーズは、『アノニマス・コード』ともとれる文節として書きました。

――ああ、空の向こうに神々がいて、という下りがふつうに考えると空の上に神様がいるように感じますが、世界層の上層という捉えかたもできますね。なるほど。

志倉そうですよね。で、枢機卿のアプリの件ですが、歌詞を書いた当時は大司祭がちゃんと声を荒らげていたんですけど、いまでは先ほど言った通りスマホアプリになっちゃいましたからね。いや、素晴らしき進化(真顔)。

――(笑)。都市伝説といえば、それこそ志倉さんはSNSなどで最近“都市真実”という言葉を多用されていますよね?

志倉僕は最近、YouTubeのチャンネルを開設したので、いろいろ生配信などもしようと思っているんです。最初は適当に付けられたタイトルで、テスト配信をするだけのチャンネルだったんですが、いろいろ考えた挙げ句、いざ正式タイトルに変えようとしたのですが、なぜかそれが規制されてしまうんですよ。

――え? どんな動画を配信しようとされているのですか?

志倉もちろん、誰の得(僕は得かも)にもならないような宣伝動画ばっかりアップしようなんて思ってませんよ? チャンネル概要欄には「陰謀論は現実論へ。都市伝説は都市真実へ。刻一刻と迫る、ありとあらゆるステルスを映し出し、我ら科学アドベンチャーチームが世界の闇を暴く! 闇に隠された真実の科学を取り戻せ! ……という設定です!(笑)。ということで、温かく見守ってくださいね」こんな概要だったんですが。いま、改めて読むと……。これは審査NGで正解かも(笑)。

志倉千代丸ちゃん、作品の裏側チャン。

――審査が通らないハッキリとしたNGワードはわかりませんが、最近は都市伝説関連のチャンネルが規制されていると聞くので、その影響かもしれませんね(苦笑)。

志倉その点、我々の最新作『アノニマス・コード』ではいろいろな都市伝説が、それはもう遠慮なくほとんど実名で登場しちゃいます! なんと審査にも通ったので! たとえば Cicada3301ですね。事実としてネットに登場した人物なので都市伝説とはちょっと意味合いは違いますが、作中の事件の多くは、その存在の延長線上にある“可能性“としてストーリーを組んでいます。そのあたりのリアリティーを『シュタインズ・ゲート』で言うところのジョン・タイター(※8)同様に楽しんでいただければと。

※8:ジョン・タイター……2000年に海外のインターネット掲示板に現れた、2036年からやってきた自称タイムトラベラーの男性。

『アノニマス・コード』志倉千代丸氏インタビュー。本作は貧弱なオタクたちへの挑戦状!? 『シュタゲ』など科学アドベンチャーシリーズとのつながりも明らかに!

――なるほど。科学アドベンチャーシリーズでは、そういった都市伝説や陰謀論などが物語に絡んでくるところが、非常におもしろいポイントだと感じていますので、楽しみにしたいです。ちなみに今回のインタビューのタイミングで、バチカンの審議官たちが使う“サクラメント”という能力が新たに公開されました。サクラメントには、発火能力や肉体硬化、瞬間的な武器の生成、未来予測といった力があるそうですが、これら特殊な能力の注目ポイントも伺いたいです。

『アノニマス・コード』志倉千代丸氏インタビュー。本作は貧弱なオタクたちへの挑戦状!? 『シュタゲ』など科学アドベンチャーシリーズとのつながりも明らかに!

志倉これを言ってしまうと「おしまいじゃん」と感じるかもしれませんが、審議官たちのサクラメントは、この世界がデジタルだからこそできる奇跡なんだと思います。物質世界ではなかなか難しいトリックですからね。でも、なぜそんなことやあんなことができるのか? そんな魔法のような奇跡の能力すべてを、果たして「デジタルだから」だけで片づけていいのか? 奇跡は現実世界でも起こります。いやぁ考察がはかどりますね(笑)。ぜひ皆さんも考察しながら発売を楽しみにしてください。

セーブ&ロードが生み出すポロンとプレイヤーの絆

――続いて、物語の見どころについても伺えれば。

志倉セーブ&ロードのシステムを使った、ポロンとプレイヤーの共闘です。プレイヤーは最初、ポロンにとってはただのハッカーで、ハッキングを仕掛けてきたと疑われるんですね。「ウゼえなコイツ」と思っているところからクエストを成功させるためにセーブ&ロードをくり返すうちに、ポロンがプレイヤーのことを徐々に認めてふたりのあいだに絆が芽生えていきます。「このシーンでロードしたら絶対こうなるじゃん」というツッコミどころもたくさん用意はしていますが、ぜひポロンの気持ちを考えながら助け合ってほしいですね。こんなシーンがあるかないかは別として、たとえば、ポロンのためにセーブデータを作っておいてあげると、彼を救えるかもしれません。

『アノニマス・コード』志倉千代丸氏インタビュー。本作は貧弱なオタクたちへの挑戦状!? 『シュタゲ』など科学アドベンチャーシリーズとのつながりも明らかに!

――とはいえ、遊ぶ人の中にはちょっと意地悪なプレイヤーもいると思います。たとえば本作ではプレイヤーもセーブデータを作れますが、物語の途中でポロンが自発的にセーブデータを作ったりしますよね。それを見越して自分のデータでセーブスロットを全部埋めて、ポロンがセーブできないようにしてやろうとか。

志倉だからそういう意地悪はやめて、ポロンと共闘してねとお願いしたんです(笑)。

――すみません(苦笑)。意地悪への対策として、プレイヤーとポロンのセーブデータのスロットを別々にすることもできたのでは?

志倉もちろんセーブスロットをポロンとプレイヤーで別々にすることもできましたが、本作では主人公がセーブ&ロードのシステムに介入してくる姿をちゃんと描きたかったので、スロットは共有にしています。ほかのゲームも、主人公が気づいていないだけでセーブ&ロードは使っていますよね。でも、ポロンはセーブ&ロードを理解して使っているうえに、プレイヤーがセーブやロードをしようとすると「いまじゃないんじゃないか?」と言ってくるなどして介入してくる。これは、ゲーム史上初の試みじゃないかと自負しています。

――そういえば、物語の始まりが壊れたデータを“ロードする”ところから始まるのもユニークだなと思いましたが、何か物語的な仕掛けがあるのでしょうか?

志倉プレイヤーはハッカーなので、ゲームスタートで始まると興醒めするじゃないですか。「え、ハッカーじゃないの?」って。それで壊れた怪しいセーブデータをロードするところから始めています。これはセーブ&ロードのチュートリアルにもなっていて、まずは体験してもらいたいという思いもありますね。

――なるほど。そういう意図なんですね。また、独創的なセーブ&ロードや、マンガトリガーをゲームに落とし込むうえでとくに苦労したことは?

志倉セーブ&ロードやハッキングトリガーのように、分岐に関わるシステムを実装するのはいつも苦労しています。一般的なアドベンチャーゲームは、複数の選択肢の中からいずれかを選ぶことによってルートが分岐していきますが、中には不自然な選択肢も用意されているじゃないですか。雑誌によくある性格診断ページじゃないんだから(笑)。僕はそれがいやで、なるべく選択肢を出さないように、かつ自然な形でストーリーを分岐させたいと考えていて。もちろんできる限り、ではありますが。

 それで科学アドベンチャーシリーズでは、選択肢に代わる分岐の仕組みを生み出していて、『シュタインズ・ゲート』ではDメール(※9)の送信、『ロボティクス・ノーツ』ではツイぽ(※10)の返信によってルートが分岐するようにしています。

※9:Dメール……過去に送れる特殊なメール。
※10:ツイぽ……つぶやきを投稿できるネットサービス。

――確かにどちらも特別なルート分岐のシステムでした。

志倉ふつうの選択肢を実装できたら、作るのはちょっとラクだろうなって思いますよね(苦笑)。セーブ&ロードに関しての苦労は先ほどお話ししましたが、このシステムに付随するオートセーブの機能を実装するかどうか、どこまで便利にするかどうか悩みました。

 正直、メタフィクションを作品の中核として扱ううえで、オートセーブに関する説明を問われると、じつはかなりこじつけな回答になっちゃうんです。ポロンとプレイヤーが、その先の“何か”を感じてセーブしたり、ポロンがプレイヤーがにぎるコントローラーというハッキングガジェットを通じた、“ある種の提案?“をときに断ったり。本作の主人公であるポロンは、物語が進行するにつれ、少しずつ“ある違和感”を感じ始めます。それはプレイヤーの存在などではなく、謎のハッカーと繋がっているという感覚。この“感覚”が少しずつ“認識”へと変わる過程に、やがて崩れ行くメタフィクションとしての僕なりの美学があります。

――確かにオートセーブ機能があると、誰がセーブデータを残しているんだという疑問が生まれてしまいますよね。でも、実際にプレイしてみるとオートセーブで非常に細かくデータが残っているので、すごく助かるんですよ。シナリオのテンポがとてもよくてサクサク遊べてしまうので、ほとんどセーブせずに進めてしまったりするので。

志倉そこはもう忘れましょうよ。カットカット(笑)。

 あ、バッドエンドの話をしましょう。今回はかなり多めです! つまりフローチャートの形状的には横に広がる感じです。逆に言うと縦はそれほど長くないので、セーブ&ロードにおけるポロンとの共闘で正しく進むなら、通常のエンディングまではけっこう早く進めるハズです。

 もちろんルートは共通部分もありますが、なにより本作ではプレイヤーでなく、主人公“も”セーブ&ロードを使えるわけです。つまりプレイヤーの情報量は同じ。共通ルートに見えるのはプレイヤーだけでなく、ポロンも同様。ただポロンにとっては命をかけた共通ルート。ポロンの性格を考えれば、同じシーンでも別のセリフを言うか、場合によっては別の行動を取る。そんな小さなひとつをとっても“ループもの”という、ひとくくりの中で“可能性”を感じさせてくれる。「メタフィクションの進化系?」と言えるのかもしれません。

 グランドエンディングへの到達には、全容把握が必要条件なので少々時間はかかります。ただ同じ作品でもプレイヤーごとに「長い!」や「短い!」があると思うので、その真ん中くらいかと。

――なるほど。マンガトリガーを実装するうえでの苦労話もお聞きしたいです。

志倉マンガトリガーに関しては、トリガーというよりも“背景+立ち絵”では表現のできないシーンのために実装はしましたが、機能としては完全とは思っていません。ただ、表現手法としては、とてもおもしろいギミックとしていろいろと発見がありました。

 いちばん簡易な例で言えば“吹き出し”です。何度もくり返す中、吹き出しの内容が少し違うだけで差分が生じ、くり返し“やらされている感じ”にいい影響があるなど。ほかにも表情差分など、単なるデジタルなコミックではできない、大きな可能性を持っています。

 その中でいちばん大きな効果と言えるのが、コマのセレクトによって“差分”ではなく、完全に別の内容へと流れが変わるというもの。その分量として、完全ではないなと。でも作品作りってどんなものでも“完成”ってないんですよ……。あ、この話長くなるのでやめときます(笑)。

『アノニマス・コード』志倉千代丸氏インタビュー。本作は貧弱なオタクたちへの挑戦状!? 『シュタゲ』など科学アドベンチャーシリーズとのつながりも明らかに!
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――(笑)。マンガトリガーは、挿入されるシーンが想像していた以上に多くて驚きました。マンガトリガーで表現するシーンは、どのように選ばれているのですか?

志倉動きのあるデジタルバトルをいくら考えたところで、“E-mote”(※11)でキャラクターを動かすだけでは限界があると思いました。それとト書きでは伝わりにくいシーンなどは、絵にすることで格段にわかりやすくできます。そこで動きの激しいアクションシーンや、絵があることによってわかりやすくなるシーン、たとえば実験の解説がそうですね。そういったシーンを中心にマンガトリガーで表現しています。

 スケジュールの関係もあって残念ながらご本人に描いていただくことはできなかったんですけど、中田さん(※12)はマンガ家なので、参考資料が豊富にあるんですよ。それを参考に僕らがベースを加えていったので、マンガトリガーの作業自体は比較的順調に進みました。

※11:E-mote……2Dで描かれたイラストをそのまま動かすことができるシステム。
※12:中田さん……中田春彌氏。マンガ家。本作のキャラクターデザインを担当。

――ほかのアドベンチャーゲームに比べて、画面内にけっこう動きがあるのも印象的でした。“E-mote”で感情豊かに表現されたキャラクターもそうですが、ニュースが画面内に流れてきたり、仲間から電話がかかってくると、通話相手の顔が画面に表示されたり。

志倉科学アドベンチャーシリーズは、昔から演出にもこだわっています。『アノニマス・コード』は、おもにポロンの主観で進行するようにしていて、プレイヤーはBMI(※13)によってポロンの視界に展開するさまざまな情報を見ることができます。それでいうと、画面下に表示されているウインドーは、テキストウインドーではないんですよ。あそこには、翻訳機能付きのテキストが表示されているという設定なんです。だからポロンは、バチカンの審議官たちともコミュニケーションが取れるというわけです。

※13:BMI……ブレイン・マシン・インタフェース。視界にデジタル情報を展開させる技術。

『アノニマス・コード』志倉千代丸氏インタビュー。本作は貧弱なオタクたちへの挑戦状!? 『シュタゲ』など科学アドベンチャーシリーズとのつながりも明らかに!
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――あー、なるほど。翻訳されたテキストが表示されているから、違和感なくどんな国の人とも会話ができているんですね。

志倉ちなみに、BMIのUIはカスタマイズできるので、ポロンから別のキャラクターに視点が代わると、そのキャラクターのBMIになります。たとえば、バンビはカスタマイズしていて、テキストウインドーの色などが変化します。そういったところからもアドベンチャーゲームのいわゆるテキストウインドーのようなシステム的なものではなく、作中に登場するBMIを体験している感覚で楽しんでもらえると思います。

『アノニマス・コード』志倉千代丸氏インタビュー。本作は貧弱なオタクたちへの挑戦状!? 『シュタゲ』など科学アドベンチャーシリーズとのつながりも明らかに!
アプリのキャラクターがウインドーに表示されるのも、BMIの機能によるもの。

『アノニマス・コード』には『シュタインズ・ゲート2』の意味合いも!?

――物語の見どころで言うと、科学アドベンチャーシリーズとのつながりも気になります。クエストでの活躍を競うランキングボードにダルのハンドルネーム“DaSH”が掲載されていたり、紅莉栖を知っているリディが登場したりと、とくに『シュタインズ・ゲート』とのつながりが強いのかなと感じました。

『アノニマス・コード』志倉千代丸氏インタビュー。本作は貧弱なオタクたちへの挑戦状!? 『シュタゲ』など科学アドベンチャーシリーズとのつながりも明らかに!
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志倉本作には、アマデウス紅莉栖(牧瀬紅莉栖の記憶を持つAI)も登場しますしね。

――え!? ぜひ詳しく教えてください!

志倉詳細はお伝えできませんが、『シュタインズ・ゲート』の世界線と、『アノニマス・コード』の世界層がシンクロしないわけがないじゃないですか。いまお話しできるのは、本作にはダイバージェンスメーター(世界線の変動率を7桁の数字で示すガジェット)に表示される数字の送信元が登場します。

――数字の送信元……と言いますと?

志倉そもそもDメールは、1通6文字しか送ることができません。これは“電話レンジ(仮)”(※14)の制限であると同時に、ダイバージェンスメーターに表示される小数点以下の数字が6桁だからなんです。変動率が小数点以下20桁ぐらいのときは、世界線がほぼ収束するので分岐することはありません。

 ですが、小数点6桁までは確実に大きな変化が起こるでしょう。本作に登場するダイバージェンスメーターの数値は、Dメールと同じ仕組みで過去に送られてきている数字なんですよ。地球シミュレータと現在の地球の状況の差異が小数点以下の6桁の数字で表示されているもので、2037年は超監視社会になっていて、地球上で起きるあらゆる事象をシミュレートできる地球シミュレータさえあれば、上のレイヤーにいるこの世界の監視者たちは数字のデータが照合できるというわけです。

※14:電話レンジ……Dメールを過去に送信するタイムマシンとしての機能を備えたガジェット。

『アノニマス・コード』志倉千代丸氏インタビュー。本作は貧弱なオタクたちへの挑戦状!? 『シュタゲ』など科学アドベンチャーシリーズとのつながりも明らかに!

――な……、なるほど。

志倉ダイバージェンスメーターが出てきて数字の送信元が登場することを考えると、本作には『シュタインズ・ゲート2』のような意味合いもあるといえばある。運命を変えるために共闘するという意味でも、『シュタインズ・ゲート』の岡部倫太郎とプレイヤーの関係性も近いのかな。

 ただ、好きな時間に戻れるタイムマシンと違って、セーブ&ロードは、セーブしていないと過去には戻れません。そういう意味でもプレイヤーのサポートが重要になってくるゲームです。岡部には“リーディングシュタイナー”という特別な能力がありますが、ポロンにはハッカーの能力しかありませんしね。

 もちろん、ポロンの持ち前の正義感や熱血漢なところも大きな武器ですが、ほかのゲームのように剣を振ったり、魔法を使えたりするわけではありません。一般人……とは言えないものの、岡部やポロンのように、ちょっと変わった人たちが何かを起こして世界の運命を変えるのが、科学アドベンチャーシリーズの見どころだと思います。

――主題歌についても、科学アドベンチャーシリーズとのつながりに関してお聞きしたいことがありまして。『オカルティック・ナイン』の主題歌は『Play the game』でしたが、『アノニマス・コード』の主題歌が『GAME OVER』というタイトルになっていたので、対になっている印象を受けました。何かしらの意図を感じるのですが。

志倉ありますよ。『オカルティック・ナイン』の“9”という数字は、『アノニマス・コード』においていわゆるパワーナンバーになっています。その関連性がひとつあるのと、科学アドベンチャーシリーズは、ひとつ前の作品の楽曲に次回作の伏線を必ず入れるようにしていて。

 たとえば、『Play the game』の歌詞に出てくる「重ね合わせの世界」は世界線を表現していますし、「ステージの幕」はポロンがよくいうセリフなんですよ。これは「ステージの幕の裏にいる魔法使いの仮面を取れ」、要するに「“アノニマス(=名無しのハッカー)”たちの仮面を取れ」と言っているんですね。そして「繰り返されるPlay The Game」は、くり返されるデジタル世界のこと、すなわち『アノニマス・コード』の世界を意味しています。

――なるほどー! え? では気が早いですが『GAME OVER』にも次回作の伏線が隠されている?

志倉もちろん隠していますが、ネタバレにならない範囲で歌詞の解説を行うと、「晴れのち雨 広い宇宙 またひとつもつれあう 契約が」は、量子もつれ(※15)なんですよ。その後、「光さえも 超えてしまう 明日の科学は魔法なのか」と続きます。量子もつれのような契約があって光さえも超えるなら、科学は魔法なんじゃないか。それぐらいこの世界はおかしいぜって意味ですね。

※15:量子もつれ……量子多体系において2個以上の量子が古典力学では説明できない相関を持つこと。

『アノニマス・コード』志倉千代丸氏インタビュー。本作は貧弱なオタクたちへの挑戦状!? 『シュタゲ』など科学アドベンチャーシリーズとのつながりも明らかに!

 ほかにも「太陽のダンス」というフレーズが出てきて、急にサンバっぽいイメージになるのですが、これはファティマ第三の預言において群衆が目撃したという奇跡のことですね。

――あー、当時の新聞にも掲載されたと言われている現象のことですね。

志倉あとはPVで公開している最後の「書き換えのできない 未来ならGAME OVER」という歌詞は、岡部のように、世界を騙して世界線を動かすような力をもってしても、書き換えできない未来ならゲームオーバーだ。俺たちにはもう時間がない。ゲームオーバーの時間が迫っている、ということを表現しています。

 ちなみに、グランドエンディングテーマの『Mob's God's』の歌詞は、かなりぶっ飛んでいますよ。「政府の国債が1630兆だ インフレ率は2.2パーほどで止まるぜ 荒ぶるようにGDP跳ねるぜ」って。自分で作詞しておいてなんですが、こんな歌詞は見たことがない(笑)。

――(歌詞を見ながら)すごいですね。え? 世界征服の話をしているんですが(笑)。

志倉そうなんですよ。「世界征服したいならどうぞお早めに 世界征服の権利をお納めください 神になった景色は いかがですか」と続くのですが、この歌を亜咲花さんが歌っているんですよ。正直、申し訳ない気持ちになりました(苦笑)。

――きっとたいへんだったでしょうね(苦笑)。『アノニマス・コード』が発売していないので気が早いのですが、次回作の構想もお聞きしたいです。

志倉次回作は考えていますが、いつもファミ通さんに聞かれてしゃべっちゃうのは、よくないなと思っていて。僕自身、反応が見たいのでお話したいのですが、『アノニマス・コード』のように時間がかかってしまうと、何年後になるんだって言われそうなので(苦笑)。

――もちろん具体的なことは言えないと思うので、次回作でチャレンジしたいことなどがあれば。

志倉チャレンジしてみたいで言うと、『シュタインズ・ゲート エリート』で全シーンアニメのテキストアドベンチャーを作ったので、つぎは全シーンマンガのテキストアドベンチャーを作ってみたいですね。『アノニマス・コード』に収録しているマンガトリガーで、最初から最後までストーリーを展開するイメージです。今回、マンガトリガーを実装してみて、ちょっとした分岐ならレイヤーやフキダシを描き足すだけで、差分が作れることもわかったので。

――全シーンマンガになると、それはテキストアドベンチャーではなく、そのままマンガのような気もしますが……。

志倉全シーンマンガでも、アドベンチャーゲームの手法で作れると思いますよ。マンガトリガーでは実現できませんでしたが、セリフやコマを選んでストーリーを分岐させることもできますし。それに海外では日本のアニメだけではなく、マンガの人気も高いので、喜んでもらえると思います。

――科学アドベンチャーの次回作の発表も楽しみにしています! それでは最後に、発売を待ち望んでいるファンに向けてメッセージをお願いします。

志倉『アノニマス・コード』はゲームですが、プレイヤーが遊びで参加するというよりは、ひとりのハッカーとして参戦する、という感覚でプレイしてもらえたらうれしいですね。最終的にポロンと共闘できると、グランドエンドにたどり着けると思います。

『アノニマス・コード』志倉千代丸氏インタビュー。本作は貧弱なオタクたちへの挑戦状!? 『シュタゲ』など科学アドベンチャーシリーズとのつながりも明らかに!