2022年6月30日に発売予定のNintendo Switch、PC用ゲームソフト『モンスターハンターライズ:サンブレイク』。本稿では試遊やこれまでに出た情報を踏まえたさまざまな質問に対して、プロデューサー・辻本良三氏とディレクター・鈴木佳剛氏にお答えいただいた。

 本作は翔蟲(かけりむし)を使った立体的な移動アクションや大型モンスターを操る操竜などが特徴的な『モンスターハンターライズ』の超大型拡張コンテンツで、新拠点で始まる新たな物語を始め、新フィールドや新モンスター、新アクション、そして上位クエストの上へ位置するMR(マスターランク)も登場。もはや続編と言ってもいいほどの大ボリュームに仕上がっている。

『モンスターハンターライズ:サンブレイク』(Switch版)を予約する(Amazon.co.jp) 『モンスターハンターライズ:サンブレイク』(Steam)を予約する(イーカプコン)
『モンハンライズ:サンブレイク』辻本P&鈴木Dインタビュー。疾替え、先駆けの注目ポイントや新要素の調整で注力したことについて訊く
『モンハンライズ:サンブレイク』辻本P&鈴木Dインタビュー。疾替え、先駆けの注目ポイントや新要素の調整で注力したことについて訊く

辻本良三氏(つじもと りょうぞう)

『モンスターハンターライズ:サンブレイク』プロデューサー。
※“辻”は、正しくはしんにょうの点ひとつになります。

鈴木佳剛氏(すずき よしたけ)

『モンスターハンターライズ:サンブレイク』ディレクター。

よりインパクトを、新しさを、驚きを目いっぱい詰め込んでみました

――『MHRise:SB』の全体的な開発テーマ、コンセプトについてお聞かせください。

鈴木“イメージの切り換え”ですね。『MHRise』が持つ“和”のイメージから、今回は“西洋”に思い切ってシフトしています。これは、ユーザーの皆さんに見た目でのインパクト、そして遊びでの新鮮さを味わっていただきたいという考えからです。開発チームとも連携し、より大きな驚きと新鮮さをお届けできるように制作を進めました。

辻本過去のシリーズ作でもそうなのですが、いわゆるG級作品を作るときは、元になる作品のシステムがあるので、その部分をより深く遊び込めるように、そしてゲーム自体もより深く楽しんでもらえるような伸ばしかたが制作においての主軸になっています。

 そのうえで、ユーザーさんにはインパクトやワクワク感を味わってもらいたいという思いもあって、今回は和のテイストを伸ばすのではなく、洋への変更という形をとりました。一方で、『MHRise』の“妖怪をモチーフ”にするというテーマは引き継いでいるので、一部のテーマは伸ばしつつ新鮮さを出す、といった形にしています。

――新規モンスターのメル・ゼナ、ガランゴルム、ルナガロンそれぞれの制作コンセプトをお聞かせください。ストーリーにはどのように関わってくるのでしょうか。

鈴木今回登場する新モンスター3体は、基本的には西洋の妖怪がモチーフになっています。メル・ゼナが吸血鬼、ルナガロンが狼男、ガランゴルムがフランケンシュタイン、ですね。彼らは“王域三公”と呼ばれ、人々から恐れられている存在で、『MHRise:SB』のストーリーにも密接に関わってきます。具体的にどういったストーリーかはまだお話できないのですが、ぜひ楽しみにお待ちください。

――この3体がストーリーの主軸になると。

鈴木そうですね。『MHRise』では日本の妖怪をモチーフにしたモンスターや、それに紐づけた演出などを用意しましたが、『MHRise:SB』では西洋に紐づいた演出や登場シーンなどを用意させてもらっているので、そちらにもぜひ注目してほしいですね。

『モンハンライズ:サンブレイク』辻本P&鈴木Dインタビュー。疾替え、先駆けの注目ポイントや新要素の調整で注力したことについて訊く
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――復活モンスターでは、セルレギオスが久々の登場となりました。復活の経緯や、『MHRise:SB』での調整コンセプトなどがあれば教えてください。

鈴木復活モンスターの選定としては、作品全体のコンセプトや、ユーザーに体験してもらいたい遊び、シリーズのモンスター登場傾向、ユーザーの声など、さまざまな要素を元に選んでいます。

 『MHRise』を遊んだユーザーさんからは、シリーズ作品のモンスターにおいても個性を強く感じられ、攻略しやすいバランスに調整されている、という声が多く聞かれました。今回、セルレギオスを選定し、実装する中で、そういった遊び応えに関するところについては気を付けながら開発を進めました。

――裂傷状態も、今回は(過去作に比べて)回復が容易だなと感じたのですが、そこもストレス軽減のためなのでしょうか。

鈴木まさにその通りで、今回は裂傷の仕様を若干変更しております。裂傷状態時に、実際にダメージが入るまでが予約のような形になっていて、そこが有効になった瞬間に体力が減る仕様なので、以前のようにどんどん体力が減ってピンチになるという状況になりにくくなっています。

 また、従来のアイテム使用やしゃがみなどに加え、抜刀状態で待機していても裂傷を解除できるようにしています。方向性としては緩和になるのですが、ストレスなく、それでいて状態異常の緊張感も味わえるような調整を入れております。

『モンハンライズ:サンブレイク』辻本P&鈴木Dインタビュー。疾替え、先駆けの注目ポイントや新要素の調整で注力したことについて訊く

――ほかにも亜種モンスターや復活モンスターがいくつか公開されています。これらの総数はどれくらいになるのでしょうか……?

辻本そうですね……さすがにはっきりとした数は言えないのですが(笑)、いままでの経験も踏まえ、登場モンスターを選ばせていただいております。また、発売後の無料タイトルアップデートも考えていますので、そちらにもぜひご期待ください。

――その辺の情報は、これから追々……?

辻本はい。現状は数回のアップデートを予定しているということしかお伝えできていませんが、ソフトの発売までにはもう少し情報をお出しできる予定です。

ユーザーのニーズに答え、おもしろくすると同時に遊びやすく

――観測拠点エルガドについてお聞かせください。和のカムラの里に比べて西洋風のイメージですが、こういった世界観にしたのはどういった理由からなのでしょうか。

鈴木世界観に関して、企画当初は『MHRise』の和のテイストを受け継ぐ方向性も検討されていたのですが、登場モンスターの種類の幅を広げることで、アクションそのものの幅も広げられるのでは……と考えたのと、ユーザーの皆さんが受けるインパクトなど、いろいろな考えをすり合わせていった結果、今回は西洋風にしようと。

 新拠点のエルガドは、カムラの里から遠く離れた異国の地にあります。古龍メル・ゼナをはじめ、周辺のモンスターの異変を調査するために、王国領内に築かれました。エルガドでは王国騎士や調査隊、物資を運ぶ船乗り、雇われのハンターなどさまざまな人間が生活しています。

 拠点は作品コンセプトでもある西洋のイメージを多く採り入れており、そこに暮らす人々の衣装デザインは『MHRise』に登場した交易窓口担当のロンディーネをもとにしています。彼女は王国の騎士であり、サンブレイクの主要人物であるフィオレーネの妹でもあります。

『モンハンライズ:サンブレイク』辻本P&鈴木Dインタビュー。疾替え、先駆けの注目ポイントや新要素の調整で注力したことについて訊く
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辻本ロンディーネに関して、あらかじめネタを仕込んでおいたというわけではなくて、和から洋へ変更し、キャラクターデザインなどをしようとなった際に自然とそういったデザインや設定になっていった感じですね。

――なるほど。エルガドはいわゆる集会所と街部分が分かれていない作りになっているようですが、それはどういった理由からなのでしょうか。

鈴木今回は、『MHRise』での里クエストに相当するものが存在せず、マスターランクはすべて集会所クエストという位置付け。それ以外だとシングルで楽しめる盟勇クエストが存在するというクエスト構成になっていますので、マスターランク=集会所進行を主体とするうえで、拠点のエリア構成をなるべくまとめ、ユーザビリティを向上させたいという考えから、そういった作りの拠点になっております。

――ちょうど話が出た盟勇クエストなのですが、こちらを実装するに至った経緯を教えてください。

鈴木モンスターハンター』は、マルチプレイが大きな魅力のひとつです。しかし、中にはシングルプレイを中心に遊ぶユーザーの方々もいらっしゃるため、そのニーズに応えたかったことと、『MHRise』では百竜夜行で、里の仲間たちがハンターの助けとなる「里のツワモノ」という要素がありました。

 そこから派生して、個性的なキャラクターたちをクエストに同行させられたら、より楽しんでいただけるのではないかと考えたこと、これらのふたつの理由から盟勇クエストを考案しました。

――盟勇同行クエスト以外に、重要調査クエストというものもあるようですが、こちらは……?

鈴木重要調査クエストでは、盟勇を最大で2名同行させられます。プレイヤーはオトモを2匹まで、盟勇はそれぞれオトモガルクを1匹連れていけるので、最大7体のキャラクターでクエストに挑むことができます。盟勇は、それぞれに得意武器がひとつ設定されていますが、どの武器を持たせるかはプレイヤーが自由に選択できます。

――プレイヤーが任意で選べるんですか?

鈴木はい。その武器選択によって、同じクエストであっても全体の立ち回りが変化するわけです。例えば、フィオレーネは片手剣が得意武器ですが、ほかにも数種類の武器からお好きな武器を選択して装備させることができますので、プレイヤー次第でさまざまな遊びかたできるようになっています。

――特殊なクエストとして、イメージ的には依頼クエストに近い感じでしょうか?

鈴木そうですね。そういったイメージで問題ないかと思います。

――同行させられる盟勇の人数調整で何か悩まれた部分はありますか? 例えば、盟勇を3人まで連れていけるとか。

鈴木同行可能な盟勇についてはかなり苦労した部分ですね。盟勇は、クエスト中にかなりの量の会話をしてくれるのですが、それゆえに同行する盟勇が多過ぎると、会話の流れが悪くなってしまうんです。なるべく盟勇との協力プレイ部分と、キャラクター性を活かす部分、これらを両立させていくにあたり、最大で2名までという構成がベストという結論に至りました。

『モンハンライズ:サンブレイク』辻本P&鈴木Dインタビュー。疾替え、先駆けの注目ポイントや新要素の調整で注力したことについて訊く
『モンハンライズ:サンブレイク』辻本P&鈴木Dインタビュー。疾替え、先駆けの注目ポイントや新要素の調整で注力したことについて訊く

――盟勇クエストでは、専用の報酬があるとのことですが、こちらは? 豪華なものがもらえたりするのでしょうか。

鈴木詳細はお話できないのですが、性能に大きく関わるものではありません。ユーザーにとってそれが強要されるものになってしまってはまずいという考えがありまして。そういった意味で、登場人物たちとの狩りを楽しんでいただけた方が喜ぶような、そんな報酬になっています。

――いろいろと楽しみな要素があるようですね。ところで、先ほど話に出てきた百竜夜行なのですが、こちらはマスターランクでの追加はあるのでしょうか。

鈴木百竜夜行は、カムラの里で起きた災厄です。今回は異国の地にあるエルガドでのストーリー進行なので、百竜夜行を題材としたストーリーは存在しません。

――あくまでもストーリーとしては存在しない、ということですか?

鈴木いえ、百竜夜行のマスターランク相当のクエスト自体が存在しないということになります。

――なんと! そうなると、百竜武器の強化などは……?

鈴木百竜夜行に絡んだ武具やアイテムなどが『MHRise:SB』でどのような扱いになるかは、ぜひ続報をお待ちいただければと思います。

トータルを見据えてのゲームバランス取りにも苦労がある

――本作には新フィールドとして城塞高地が公開されていますが、制作にあたって気を付けたこと、苦労されたことはありますか?

鈴木コンセプトとしては、広大な自然の中に取り残された古城であったり、森林エリアや氷雪エリアなど、さまざま側面を持ったフィールドになっています。

 城塞高地でも、『MHRise』のモンスターが登場するのですが、新フィールドとしての側面でユーザーに新鮮さを味わってもらいつつ、既存のモンスターを狩猟するうえでエリアサイズや配置される環境生物など『MHRise』のレベルデザインから逸脱しない……これらをいかに両立させるか、全体のバランス取りには非常に苦労しました。

――広さ的には『MHRise』のフィールドと同程度のものと考えていいのでしょうか。

鈴木はい。全体のサイズ感なども『MHRise』のものと合わせて作っていますので、ほぼ同じ感じだと思っていただければ。高低差なども含め、モンスターと対峙するエリアや探索エリア、それらをつなぐ道などもしっかり作り込まれていますので、いろいろと見て、歩いて、楽しんでいただきたいですね。

『モンハンライズ:サンブレイク』辻本P&鈴木Dインタビュー。疾替え、先駆けの注目ポイントや新要素の調整で注力したことについて訊く
『モンハンライズ:サンブレイク』辻本P&鈴木Dインタビュー。疾替え、先駆けの注目ポイントや新要素の調整で注力したことについて訊く

――武器についてお聞きします。今回は新たな入れ替え技や疾替え、先駆けなど、新アクションが多数追加されていますが、14武器種もあるとバランス調整が難しかったのでは? とくに苦労されたところはどこでしょうか。

鈴木疾替え、先駆けに関しては、当初の「2セット分の入れ替え技を自在に操る」というコンセプトからはじまり、いかにアクションの流れを断ち切らずに、そのコンセプトを実現するかを考える過程で疾替え、先駆けが生まれつつ制作を進めました。

 そこに14武器種のバランス調整ですから……開発難度は間違いなく跳ねあがりましたし、最後まで実現に向けて動いてくれた開発スタッフには感謝の気持ちでいっぱいです。

 疾替え、先駆けに関しては、使わなくてもクリアーできるバランスにはしておりますので、決して必須のシステムではありません。ただ、使っていただくことでより深くアクションを楽しめますし、いわゆる“魅せる”プレイも可能になります。遊びの幅を広げるものとして、自信を持ってお届けできるものに仕上がっているかなと。

『モンハンライズ:サンブレイク』辻本P&鈴木Dインタビュー。疾替え、先駆けの注目ポイントや新要素の調整で注力したことについて訊く
『モンハンライズ:サンブレイク』辻本P&鈴木Dインタビュー。疾替え、先駆けの注目ポイントや新要素の調整で注力したことについて訊く

――そういった調整で、ユーザーにとくに見てほしい部分はどこでしょう。

鈴木やはり疾替え、先駆けを活用したアクションの気持ちよさや、独自の入れ替え技の組み合わせの豊富さを楽しんでいただきたいですね。あと、『MHRise』から手を加えている部分もあるので、そこもぜひ見て欲しいです。

――先駆けの回避は使いこなせたときが気持ちよく、アクションの幅が広がりそうな印象を受けました。

鈴木入れ替え技や鉄蟲糸技を出した後、次の行動へ移るまでの部分を単純に疾替えだけで切ってしまうと、モンスターとのやり取りで“間”が生じてしまうんですよ。その間を埋めつつアクションを継続するために先駆けを使っていただく、といった感じですね。

――『MHRise』を遊んだユーザーからの意見は多数届いているかと思いますが、良い悪いを含め、どのような意見がありましたか?

辻本翔蟲アクションに関する評価をとくにたくさんいただきましたが、オトモガルクなど、新要素に関しては概ね好評だったかなと。また、『MHRise』は登場人物も個性の強い世界観になっていたので、そこも楽しんでいただけたようで何よりです。

 その辺りは『MHRise:SB』でも同様で、翔蟲絡みはより深いアクションができるように、登場人物周りに関しても、世界観こそ和から洋に変わってはいますが、根底にある部分や考えは引き継いでいますので、変わらず楽しんでいただけるかなと思っております。

 あと多かった意見ではタイトルアップデートの情報に関してですね。そこを踏まえて、『MHRise』のときよりも、情報出しのタイミングで前作より少し早めに情報を出していこうかなと考えています。

――おふたりが、本作の新要素でもっとも気に入っているところ、よくできたと思っているところがあれば教えてください。

辻本もっとも……と言われると難しい。全部と言いたくなるので(笑)。あえて挙げるなら、やはりアクション面ですね。今回加わった新要素でアクションの幅が大きく広がっていますから、『MHRise』をやり込んだ方も気持ちを新たに遊べるかなと。

鈴木アクションなら疾替えに先駆け、モンスターとの新たなやり取り、ひとりでも疑似マルチプレイ体験ができる盟勇クエストなど、本作の魅力は多々あります。

 どれかひとつを選ぶというよりは、やはり追加した要素を総合して、あらゆるユーザーのニーズに対して答えられるように可能な限り努力したところです。

――なるほど。今後、発売日イベントやモンハンフェスタなどの開催予定はあるのでしょうか?

辻本イベント関連はすぐに実行できるわけではないので、現時点では未定ですね。とはいえ、最近はさまざまなイベントをやれていない状況ですので、今後じっくりと検討していきたいですね。

――ズバリ聞きますが、体験版の配信予定はありますか?

辻本そこはナイショです。まもなく発売日を迎えますので、皆さん楽しみにお待ちください。