スクウェア・エニックスから2022年3月18日発売予定のプレイステーション5、プレイステーション4、Xbox One、Xbox Series X|S、およびPC(Epic Games Store)向けのアクションRPG『ストレンジャー オブ パラダイス ファイナルファンタジー オリジン』。

 本記事では、発売に先んじて製品版をみっちりとプレイしたライターのレビューをお届け。なお、 3月10日より序盤の3ステージが遊べる体験版が配信されている。セーブデータは製品版に引き継ぎ可能なので、気になっている方はぜひダウンロードしてプレイを。

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幅広い層が楽しめる『FF』を冠するにふさわしい本格アクション

 『FFオリジン』は、スクウェア・エニックスとTeam NINJA(コーエーテクモゲームス)の共同開発による、“『FF』×本格アクション”、そしてダークファンタジーという挑戦的な作品。それに『仁王』シリーズなどで培われたTeam NINJAのスリリング、かつ爽快なアクションに、ジョブやアビリティなど『FF』らしいエッセンスが加わり、独特の高揚感が味わえる仕上がりになっている。

 「これは『仁王』の『FF』バージョンなのか!?」、「ソウルライクのゲームなのか」という声もよく耳にするが、これはYESともNOとも言いにくいところがある。期待を込めてそういったイメージを持っているなら期待以上の体験が待っていると自信を持ってオススメできるし、そういった前評判でネガティブなイメージを持っているなら「そんな単純な作品ではない!」と、待ったをかけたい。とくに、アクションが得意ではなくても楽しめるという点は強くアピールしておく。

ストーリーはコンパクトに描かれつつも『FF』らしさ満点

 本作はアクションゲームということもあってか、イベントシーンは短めで、コントローラを置いてじっくりキャラクターたちの会話を見るような場面はほとんど訪れない。かといって、『FF』の醍醐味である緻密に練り込まれた世界観やひと筋縄ではいかないストーリーが軽視されているわけではない。イベントシーンが短いがゆえにいろいろな疑問が湧いてくるし、ダンジョン攻略中に交わされるたくさんの会話から多くの事実が見えてくる。

 いちおう触れておくと、本作は『FFI』がベースとなっている作品ではあるが、私のように『FFI』を遊んだことがないプレイヤーでも問題なく楽しむことができた。ストーリーは独自のものなので本作と『FFI』との関係を知っている必要もなく、いますぐ忘れてもらっていい。ただ、『FF』シリーズファンへのサービスも満点で、その点についてはつぎのセクションで紹介する。

 主人公は、なぜかカオスという悪者っぽい存在を倒したがっているジャックという男性。わりと有無を言わせない性格で、仲間だけでなく操作するプレイヤー(私)もグイグイとカオス退治の旅に引っ張られていく。最初のうちは「ジャック(仲間も)は何を言ってるんだ」の連発だったが、次第にジャックのカリスマ性にも引っ張られていく。

『FFオリジン』製品版レビュー&プレイ動画。“死にゲー”と躊躇する必要なし。すべての『FF』ファンが楽しめる懐かし要素満載の爽快アクション

ナンバリングの歴代『FF』がモチーフとなっているダンジョン。BGMにも注目

 カオス討伐の旅で、ジャックたちはさまざまなダンジョンを探索することになり、その地名自体は『FFI』から引用されていることが多い。だが、ほとんどのダンジョンは、歴代『FF』のナンバリング作品のロケーションがモチーフとなっているのが本作の特徴のひとつ。公式ツイッターでも引用元の作品がいくつか紹介されているので、気になる人はフォローしてチェックするといいだろう。

 モチーフとなったダンジョンは、BGMもその作品のアレンジバージョンとなっており、目だけでなく耳でも懐かしさを味わえる。個人的にいちばん印象に残っているのは『FFXI』がモチーフになっていたダンジョン古代人の塔。『FFXI』経験者なら、すぐにピンとくるくらいに懐かしい情景が広がり、『FFXI』は自分が現在の仕事をするキッカケにもなったゲームでもあるので感慨深かった。

『FFオリジン』製品版レビュー&プレイ動画。“死にゲー”と躊躇する必要なし。すべての『FF』ファンが楽しめる懐かし要素満載の爽快アクション
古代人の塔には、『FFXI』のマジックポットそっくりのギミックもあった。
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記憶にも新しい『FFXV』がモチーフのダンジョン。ボスがいる場所は玉座の間そっくり!

ダンジョンはギミック満載で探索しがいのある構造

 ダンジョンは高低差に富み、かなり入り組んだ構造になっていて、隠し通路や隠し宝箱なども豊富に用意されている。「あっ! ここにつながっていたのか」となることも多く、ときには仲間の発言で宝箱の存在に気づくこともあったので、じっくりと周囲を観察しながら進むといい。ここは怪しそうだな……という場所にはたいてい何か用意されているので、探索欲が満たされること請け合いだ。

『FFオリジン』製品版レビュー&プレイ動画。“死にゲー”と躊躇する必要なし。すべての『FF』ファンが楽しめる懐かし要素満載の爽快アクション
天候を操ったり、カードキーを探したりと、ギミックもダンジョンごとに大きく異なる。
『FFオリジン』製品版レビュー&プレイ動画。“死にゲー”と躊躇する必要なし。すべての『FF』ファンが楽しめる懐かし要素満載の爽快アクション
ダンジョン内では、世界観、物語への理解が深まるアーカイブが手に入ることもある。

3つの難易度であらゆるニーズに対応

 ここで改めてゲームの流れを説明しておくと、メインミッションでダンジョンを攻略すると、つぎのメインミッション(ダンジョン)が出現。といった具合に、ミッション単位でストーリーは進んでいく。寄り道要素として、サブミッションも用意されていて、その報酬として仲間のジョブが増えたり、鍛冶屋(装備の強化ができる)の機能が拡充されたりもする。

『FFオリジン』製品版レビュー&プレイ動画。“死にゲー”と躊躇する必要なし。すべての『FF』ファンが楽しめる懐かし要素満載の爽快アクション
ダンジョン内には小休止できるチェックポイントとしてキューブが用意。自分の場合、ひとつのダンジョン攻略に要する時間は1時間前後だった。

 本作には“STORY”、“ACTION”、“HARD”という3つの難易度が用意。“STORY”なら、受けるダメージが比較的小さく、戦闘不能になりにくいので、気楽にアクションとストーリーを楽しめる。といっても、回復を怠るとすぐに戦闘不能になってしまうのが本作のゲーム性なので、決して油断はできない。

 自分は“STORY”で最初のダンジョンをプレイしてみたところ少し物足りないなと感じたので、1段階難度を上げて“ACTION”で最後までプレイ。“ACTION”でも、一瞬の判断ミスが命取りになるスリルは存分に味わえるが、より険しい道のりを好むプレイヤーは“HARD”をチョイスしてみてはいかがだろうか。ちなみに、難易度は途中で変更可能なので、気楽に選んでかまわない。難易度でのストーリー、エンディングの変化はないのでご安心を。

幾度かの負けを経ての勝利の味は格別

 ゲームの難易度については、腕前が人それぞれなので語るのが難しい部分ではあるが、“ACTION”で遊んだ自分は初見で倒せるボスのほうが少なく、「さて、どう攻略したものか」と試行錯誤するバトルが多かった。ボスだけでなく道中のモンスターにも言えることだが、攻撃パターンをしっかり把握することが大事で、そのうえでどう対策を講じるかというを考えるのがおもしろいのだ。

『FFオリジン』製品版レビュー&プレイ動画。“死にゲー”と躊躇する必要なし。すべての『FF』ファンが楽しめる懐かし要素満載の爽快アクション
難易度を下げるのは簡単だが「なにくそやってやる!」と思わせてくれる絶妙なバランス。

 アクションゲームなので、対策を立ててもそれを実行できるかは自分の腕しだい。「この方法では、集中力が持たない……」と戦いかたを変えざるを得なかったボスもいたし、試行錯誤のうえで倒したボスほど、倒したときの気持ちよさは筆舌に尽くしがたい。本作にはたくさんのアクションやジョブ、アビリティが用意されているし、カスタマイズ要素も豊富。仲間もいっしょに戦ってくれるので、ボスをどう倒したかは人によってまったく違うと思うので、発売されてからほかのプレイヤーのプレイ動画を観るのも楽しみだ。

仲間がいっしょに戦ってくれる

 本作をプレイしていて、いちばん印象に残っているのが仲間の心強さ。昨年の体験版では、正直あまり役に立ってくれている感はなかったが、製品版ではその印象は一変。“レゾナンス”というシステムも用意されていて、実行するとしばらくのあいだ積極的にアビリティを使って戦ってくれる。レゾナンスは、クールタイムこそ設けられているが、とくにそれ以外に制約はないので、ちょっと強そうな相手を見かけたらまずレゾナンスで仲間を突っ込ませたりもしていた。

 ちなみに、ジャックの仲間になってくれるキャラクターは4名いるが、いっしょに戦ってくれるのはふたり。残りは控えとして待機してもらうことになる。仲間のジョブが決まっているので、どういった役割を担ってもらいたいかによって、誰を、どのジョブで連れて行くかという、ちょっとした戦略性もある。自分は画面に華やかさがほしかったのでネオンとソフィアをずっと連れていたが……。

『FFオリジン』製品版レビュー&プレイ動画。“死にゲー”と躊躇する必要なし。すべての『FF』ファンが楽しめる懐かし要素満載の爽快アクション
仲間の存在は、従来の高難度系アクションゲームとの大きな違いだ。

武器やジョブによって大きく変化する立ち回り

 ジョブは、『FF』シリーズを象徴する要素のひとつで、ジャックはふたつのジョブをワンボタンで切り替えながら立ち回れる。ジョブごとに装備できる武器は違い、実行できるアクションは武器に大きく左右されるので、まずは自分好みの動きができる武器を探すことに。本作に登場する武器種は、剣、大剣、刀、棍、斧、格闘、短剣、槍の8種類。ひと通り触ってみた結果、自分は敵を“ブレイク”しやすい斧や棍を使うことが多かった。

『FFオリジン』製品版レビュー&プレイ動画。“死にゲー”と躊躇する必要なし。すべての『FF』ファンが楽しめる懐かし要素満載の爽快アクション
武器ごとの動きの違いは、動画のほうをご覧になって雰囲気を掴んでほしい。

 ここでブレイクについての簡単な説明を。敵を倒す方法は大きく分けて2種類で、HPをゼロにするか、ブレイクゲージをゼロにして体勢を崩し“ソウルバースト”を実行するかだ。アビリティ(攻撃や回復など、さまざまな効果を持つアクション)を使うには、MPが必要なのだが、ソウルバーストに成功するとMPの最大値が上がり、MPも大きく回復する。そのため、HPを減らして倒すよりもブレイクを狙うほうがメリットが多く、自然とブレイクゲージを削りやすい斧や棍を持つ機会が増えた。

 といっても、斧や棍が使えるジョブばかり使っていても、ジョブの選択肢は広がりにくい。なぜなら、ジョブには基礎、上位、最上位の3カテゴリーがあり、上位ジョブを開放するには基礎ジョブを育成し、スキルツリーを進める必要があるからだ。たとえば、上位ジョブの戦士になりたい場合は、大剣士と刀士のスキルツリーで対応するマスを開放しなければならない。

『FFオリジン』製品版レビュー&プレイ動画。“死にゲー”と躊躇する必要なし。すべての『FF』ファンが楽しめる懐かし要素満載の爽快アクション
スキルツリーで開放できる能力はジョブごとに異なり、どう進めるかを計画を立てるのも楽しい。

 経験値は、現在使用中のジョブにたくさん入る仕組みになっているので、つぎになりたいジョブがある場合は、前提となるジョブを優先的に使うことになる。ミッション報酬や特定のモンスターを倒した際、アニマの破片というジョブの経験値を増やすアイテムが手に入ることがあり、それを使用することでも任意のジョブの経験値を増やせた。

 自分の場合はボスに行くまでの道中は基本的にジョブの経験値稼ぎを意識し、ボスでは使い慣れている斧や棍が使えるジョブに変更することが多かった。また、各ジョブにはそのジョブを象徴するような固有アビリティがひとつ用意されていて、そのアビリティが相手するボスに有効だな、と判断した場合はアビリティ優先でのジョブ選びをすることもあった。最上位ジョブのほうが強いというわけではなく、基礎ジョブのほうが扱いやすいジョブ固有アビリティを持っていたりするのも悩みどころ。

ソウルシールドを使った駆け引きがアツい

 基本となるHPの回復手段は、基本的にはキューブで補充されるポーション5つ。特定のジョブでのみ使えるHP回復用のアビリティや敵がポーションを落とす可能性を排除した場合、このポーション5つでつぎのキューブまで進む、もしくはボスを倒す必要がある。そこで重要なのが身を守る手段だ。

 身を守るために取れるアクションは、移動(ダッシュ)、回避、ローリング(回避ボタン連打で実行できる長距離移動)、ガード、ソウルシールドの5つ。回避は出掛かりは無敵状態なので、方向とタイミングをうまく合わせれば、無傷で敵の攻撃をやり過ごせるうえ、反撃に転じやすい。短距離を素早く移動するのにも便利なので、自分は回避はいちばん多用した。

 ガードはもっとも安全な防御手段だが、ガードのたびにブレイクゲージが減少するし、属性攻撃などは防げても若干のダメージは受ける。また、赤く禍々しいオーラが表示された敵の攻撃はガードでは防げない。自分のブレイクゲージがゼロになったときに攻撃を受けると、大きく体勢を崩して長時間隙だらけになるので、ブレイクゲージにはつねに気を配る必要があった。

 ソウルシールドは、そんなブレイクゲージを消費して実行する防御アクション。ボタンを押しているあいだは急速にブレイクゲージが減少するが、このあいだに攻撃を受け止めると相手の体勢を崩せる(一部の攻撃を除く)。また、MPが回復し、MPの最大値が少し増えるというおまけつきで、紫色に表示された敵の攻撃を受け止めた場合は、その攻撃をインスタントアビリティとして自分が使用できるようになる。

 ガードと同じく、赤色の攻撃は受け止めることはできず、ブレイクされるリスクはあるアクションだが、成功時のメリットも大きく、なにより成功すると演出を含めてとても気持ちイイ。ソウルシールドを使いこなせるようになると、立ち回りの幅も大きく広がるので、ぜひチャレンジしていただきたい。

 ちなみに、攻撃を受ける直前にガードをすると、白いエフェクトが出るジャストガードになり、ブレイクゲージの回復速度がアップするので、腕自慢のプレイヤーは、回避、ジャストガード、ソウルシールドの3つで、敵の猛攻をしのぎきろう。

装備の厳選や強化は、終盤のコンテンツ向けかも

 装備にはレベルが設定されていて、ミッションレベルより大きく下回ると敵を倒すのがたいへんになってしまう。といっても、敵はポロポロと装備を落としてくれるので、装備とミッションレベルに差がある場合でも、ポーションがぶ飲みしてでも敵を倒す→キューブで回復&敵を復活させる、とくり返していれば、すぐにミッションレベルと同程度の装備を揃えることができた。

 敵が落とす装備は、同名でもレベルや付加効果に差があるため、よりよい装備を追い求める“ハクスラ”的な遊びかたもできるのだが、物語が進むとミッションレベルはどんどん上がっていくため、装備を見直さないといけないほど苦戦しない限りは、装備の厳選はさほど必要はなさそう。自分は、装備を集めるためのミッション周回をすることはなく、進め続けられた。厳選や強化が活かせるコンテンツが登場するのはこのあとかも……!?