スクウェア・エニックスから2022年3月18日発売予定のプレイステーション5、プレイステーション4、Xbox One、Xbox Series X|S、およびPC(Epic Games Store)用ソフト『ストレンジャー オブ パラダイス ファイナルファンタジー オリジン』。本作はスクウェア・エニックスとアクションゲームに定評のあるコーエーテクモゲームスのTeam NINJAが開発を手掛け、『FF』史上もっともダークで高難度のアクションRPGとなっている。

 2022年3月10日には製品版へ引き継げる体験版も配信。そんな『ストレンジャー オブ パラダイス ファイナルファンタジー オリジン』について、本稿では発売前最後の開発者インタビューをお届け。

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藤原 仁氏(ふじわら じん)

2007年にスクウェア・エニックスに入社。『THEATRHYTHM FINAL FANTASY CURTAIN CALL』(プロジェクトマネージャー)、『DISSIDIA FINAL FANTASY OPERA OMNIA』(プロデューサー)など、複数のプロジェクトに携わる。
本作ではプロデューサーとして、プロジェクト全体を統括し、チームのマネジメント、コンテンツの企画、予算、スタッフの配置、進捗管理など、幅広い業務を担当している。

井上大輔氏(いのうえ だいすけ)

2005年にスクウェア・エニックスに入社し、複数のプロジェクトにさまざまな役割で参加。
本作ではディレクターとして、ゲーム全体のディレクションを担当している。

安田文彦氏(やすだ ふみひこ)

コーエーテクモゲームス執行役員、Team NINJAブランド長、仁王/NINJA GAIDEN IP(シリーズ)プロデューサー。2006年テクモ入社 (2010年コーエーテクモゲームスに合併)。『NINJA GAIDEN』シリーズの企画/ディレクターを務めた後、『仁王』ディレクター、『仁王2』プロデューサー/ディレクターを経て、現職。
本作ではプロデューサーとして、Team NINJAスタジオ開発統括を担当している。

モンスターデザインは野村氏のデザインラフから方向性が決定した

――発売を目前に控え、これまでいろいろな出来事があったと思いますが、開発期間を振り返って真っ先に思い浮かぶことは何ですか?

井上真っ先に思い浮かぶのは、やはり新型コロナの影響で在宅ワークになったことなのですが、印象に残っているのは野村(野村哲也氏。本作のクリエイティブプロデューサー)とのやり取りですね。本作はさまざまな要素が混ざり合う混沌とした世界になっているので、モンスターをどういった方向性のデザインにすればいいかをすごく悩んでいたんです。そのことを相談したとき、「こういう方向性でどう?」とその場でゴブリンのラフデザインを描いてもらい、それからモンスターの方向性が決まったので、すごく助かりました。

――チュートリアルの?

井上はい。シルエットはいかにも『FF』らしいファンタジックなゴブリンなんですが、よく見るとガードなど装備もした、いろいろなものが混ざり合ったデザインになっているのがわかっていただけると思います。そのデザインをサラッと描いてくれたことをよく覚えています。

『FFオリジン』開発インタビュー。モンスターデザインは野村哲也氏が描いたゴブリンから方向性が決定、最上位ジョブは『FF』ヴィランがコンセプト!? など開発秘話をお届け

――野村さんのモンスターのデザインは貴重ですね。つぎに、藤原さんは開発期間を振り返っていかがでしたか?

藤原各ステージやロケーション、楽曲など、さまざまな要素を『FF』シリーズからお借りしていて、その交渉のことが思い出されますね。歴史の長いシリーズだからこそ、いろいろとたいへんでしたし、大事にしないといけないことも多かったです。ようやく形になって世に出せるのがうれしいですね。

――藤原さんと井上さんは歴代『FF』シリーズのキャラクターが登場するクロスオーバー作品『ディシディアFF オペラオムニア』(サービス中のスマホ向けゲームアプリで先日5周年を迎えた)のプロデューサーも務められていますが、やりやすい部分もあったのでは?

藤原そうですね。各担当の方には顔が利くのでスムースに話が進む部分はありました。ただ本作では各シリーズのどういった部分を扱うかは井上が選ぶのですが、「そこ選ぶか!」と初期段階で感心する部分もありました(笑)。

――井上さんのこだわりのチョイスがいろいろ入っているんですね(笑)。では、印象に残っている点について、安田さんはいかがですか?

安田ジョブやパーティの部分を作るのに苦戦したことでしょうか。我々Team NINJAは、これまでオンラインマルチプレイのゲームは作ってきましたが、同行するNPCがいるゲームを作った経験がなく、その調整には苦労しました。最終的に“レゾナンス”という仲間に指示を出すシステムを追加して、いいところに落ち着いたと感じています。また、個人的には『FF』シリーズ作品のさまざまなモチーフ、とくにBGMが使えるところが自社のタイトルだと実現できないところでもあり、世代的にも刺さるので、そこも印象に残っています。

――過去の『FF』作品がモチーフになっているダンジョンでは、その作りはもちろん、音楽も一部フレーズが使われていたり、初めてなのに懐かしさも感じられて、うれしい気持ちになりますよね。

安田私は『FFXI』で留年した経験もあるので、とくに思い入れが強いです(笑)。

――最初にできたダンジョン、もしくは、本作のダンジョンとして方向性が決まった、全体のベースとなったダンジョンなどありますか?

井上最初に着手したのはカオス神殿だったと思います。ただ、すべてのダンジョンが決められたモチーフを元に作られていったので、カオス神殿がベースになった、といったことはなかったと思います。続々と作られていく中で、ライティングに関しては調整する部分はありましたが、レベルデザインの設計などは最初のルールに則って作っていきました。各ダンジョンはモチーフになっているロケーションは意識しつつも、バリエーションを持たせるように工夫しています。

『FFオリジン』開発インタビュー。モンスターデザインは野村哲也氏が描いたゴブリンから方向性が決定、最上位ジョブは『FF』ヴィランがコンセプト!? など開発秘話をお届け
安田氏の思い出の『FFXI』をモチーフにしたダンジョンもしっかり。
『FFオリジン』開発インタビュー。モンスターデザインは野村哲也氏が描いたゴブリンから方向性が決定、最上位ジョブは『FF』ヴィランがコンセプト!? など開発秘話をお届け

――『FF』装備品は過去作をモチーフにしているのですか?

井上名称など『FF』シリーズに登場するものを意識して残していたりしますが、作品ごとに同じ名前でも性能や見た目などが変わっていたりもするので、あくまでも名前だけという感じですね。

――装備のデザインはどういったコンセプトがあったのでしょう? ジャックの装備品など、ダンディな物が多いようにも感じられますが。

井上とくにダンディズムを強調してはいないのですが(笑)、定番のファンタジー世界の鎧のようなものだけでなく、現代的、近未来的な本作ならではのさまざまな時代が入り交じったようなものを用意した結果のものとなっています。

――装備集めも楽しい本作ですが、ドロップ率が極端に低い、持っていると自慢になる、といったようなレアな装備はあったりましますか?

安田もちろん、平凡な性能なものがたくさん手に入るだけではおもしろくはないので、同じ装備品でも運がよければ高性能な装備が手に入る、といった要素はあります。

コツをつかんだら一気に世界が広がるゲーム性

――先ほどレゾナンスの話題がでましたが、こちらは最初の体験版でのフィードバックを受けて導入されたのですか?

井上フィードバックもありましたが、もともとTeam NINJAさんのほうでも仲間に指示を出す要素は考えられていて、レゾナンスという名称も含めて提案がありました。レゾナンスを使うと敵の注目を引いてくれたり、積極的に攻撃してくれたり、アビリティを駆使して戦ってくれるようになります。クールタイムが設けられているので、いつ使うかという戦術性も生まれ、いい仕上がりになっていると思います。

――難易度の違いで、獲得できる装備や報酬が豪華になるという違いはありますが、それ以外に影響はありますか? たとえば“ACTION”以上だとシークレットムービーを観ることができるとか、追加シナリオが解放されるとか。

井上そういった違いはないですね。ゲーム体験として違いはありません。

――昨年の体験版よりも、カオスとなる者(最初に戦うボス)が弱く感じたのですが、何か調整はされていますか?

井上いえ、基本的には変えていません。NPCが賢くなったので、そう感じる部分はあるかもしれませんね。

安田腕前が上がったり、攻撃パターンを把握したりすると、手こずっていた相手が急に弱く感じるようになったりします。これは、このゲームの醍醐味でもありますね。

――たしかに、ソウルシールドを防御しつつMPを溜め、溜めたMPでアクションアビリティを放ちつつ、ソウルバーストで倒す、といった流れで戦えるようになると、途端に気持ちよく戦えますね。

安田コツを掴んだら一気に世界が広がる内容になっていると思います。

『FFオリジン』開発インタビュー。モンスターデザインは野村哲也氏が描いたゴブリンから方向性が決定、最上位ジョブは『FF』ヴィランがコンセプト!? など開発秘話をお届け
『FFオリジン』開発インタビュー。モンスターデザインは野村哲也氏が描いたゴブリンから方向性が決定、最上位ジョブは『FF』ヴィランがコンセプト!? など開発秘話をお届け

最上位ジョブは『FF』ヴィランのイメージ!?

――30近くジョブが用意されていますが、オススメのジョブなどはありますか?

井上プレイヤーごとに得手不得手があると思いますので、一概にどれがいいとは答えにくいですが……距離をとって戦える魔術士は生き残りやすいと思います。レゾナンスで仲間に注意を引かせれば、比較的安全に詠唱できますし。

――ヴォイドナイトやタイラントなど、ジョブとしては初登場のものもありますが、それらはどんなコンセプトで設計されたのですか?

井上もともと、最上位ジョブは『FF』シリーズのヴィランの名称をつけようかと考えていた時期もあったのですが、タイラントはその名残で、暴君として敵をボコボコにする、といったコンセプトになっています。ヴォイドナイトは、相手の魔法を吸収できるので、『FFVI』のセリスのようにルーンナイトという名前にしてもいいかとも思ったのですが、ジャックの雰囲気に合わせてヴォイド(空間、虚空、喪失感、孤独感などの意)という言葉を使うことにしました。

――HP回復の手段が潤沢にあるわけではないので、プレイしていて毒はかなりキツい状態異常のように感じましたが、どう対策すればいいですか?

井上特定のコマンドアビリティで耐性を上げるのがお手軽ですね。鍛冶屋を利用し、毒耐性を上げるのもいいと思います。

――鍛冶屋といえば、進むにつれ、いい装備がどんどん入手できるので、装備を強化するタイミングは悩ましいと感じました。

井上鍛冶屋は、自分が行き詰まったタイミングで利用するのがオススメです。ほかにも、サブミッションで能力を底上げしたりと、自分を強くする手段はいろいろと用意しています。

――データが引き継げる体験版も配信され、アーリーアクセスは明日3月15日から、製品版の発売は3月18日となっています。最後にひと言ずつアピールをお願いできますか?

井上アクションゲームとしてもそうですし、重厚なストーリーが展開される『FF』としても胸を張れる作品になりました。『FF』シリーズファンはもちろん、多くの皆様にフックになるような要素をたっぷり盛り込みましたし、この世界の謎に迫るフレーバーもたくさん散らばっているので、ぜひそちらも楽しんでいただきたいです。

安田Team NINJAとしても『FF』に関われたことは、とてもうれしかったです。プレッシャーはありましたが、しっかりと『FF』というハードルを越えられたかなと思っています。「“死にゲー”なのか、『FF』なのか」みたいな論争もありますが、細かいことを気にしない主人公のジャックのように、シンプルにアクションゲームを楽しんでいただけたらうれしいです。

藤原難易度を自由に選べますし、ジョブも30近く用意しており、いろいろな遊びかたができるようになっています。『FF』シリーズのアクションゲームへの挑戦というものを存分に味わっていただき、みなさんには特別な体験をしていただけたらと思います。