「世界に“一番のワクワク”を届ける」をミッションに、2010年1月に設立されたf4samurai。『オルタンシア・サーガ』や『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』などの企画、開発、運用などを手掛け、いまもっとも勢いのあるスマートフォン向けゲーム開発会社の一社だ。先日は『コードギアス 反逆のルルーシュ ロストストーリーズ』を開発中であることを発表し話題になったばかり。

 ここではf4samurai 最高技術責任者(CTO)松野洋希氏と最高マーケティング責任者(CMO)佐藤允紀氏に、クリーク・アンド・リバー社 クリエイター・エージェンシー・グループ 小山大輝氏が直撃。同社がゲームを開発するにあたって大切にしていることや求められる人材などについて聞いた。

f4samuraiのキーパーソンに聞く。ユーザーに喜んでもらえるタイトルを!【ファミキャリ!エージェントが聞く】

松野洋希氏(写真右)

f4samurai 最高技術責任者(CTO)

佐藤允紀氏

f4samurai 最高マーケティング責任者(CMO)

小山大輝氏(写真左)

クリーク・アンド・リバー社 クリエイター・エージェンシー・グループ

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世界に多くのワクワクをお届けしたい

小山まずはf4samuraiさんについて教えてください。

松野当社は2010年に、「世界に、“一番のワクワク”を届ける」をミッションとして創業されました。いま12年目の会社ですね。主力事業はスマートフォン向けゲームタイトルの企画から開発、運用で、『オルタンシア・サーガ』(以下、『オルサガ』)や『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』(以下、『マギレコ』)などを手掛けています。

小山これも定番のご質問となるのかもしれないですが、f4samuraiという社名にはどのような由来があるのですか?

松野まずは海外に出ていっても日本の会社だとわかるように、和っぽい名前をつけたかったというのがあります。加えて、ありきたりではない名前にしたかったので、コードっぽいf4を頭につけて、結果f4samuraiとなりました。

小山f4という部分にも何か意味がありそうですね。

松野はい。世界をワクワクさせるという意味で“fun”、未来を変え得るサービスとして“future”、人々をつなげる有機的なサービスの“family”、そして実現のために土壌を耕し続ける努力をする、ということで“farm”。この4つのfを意味しています。

佐藤“family”に関しては、メンバーどうしを大切にし、家にいるような居心地で仕事して欲しいといった意味あいもあって、創業者のひとりである田口(田口堅士氏)がアットホームな雰囲気で仕事ができるようオフィスをデザインしたり、設立当時からオフィスも土足ではなく靴を脱いで仕事しています。

松野田口は、「スーツを着ていてもおもしろいアイデアは浮かばないでしょう?」と言っていましたね(笑)。

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f4samuraiのオフィス。カフェスペースもお洒落!

小山それでは、おふたりの経歴について教えてください。

松野僕は3人いる創業者のうちのひとりで、前職では野村総合研究所というシステムインテグレータの会社に所属していました。じつは当社を創業した3人は全員野村総合研究所の出身で、f4samuraiは同期3人で起業した会社なんです。当時はミクシィさんやグリーさんなどがソーシャルゲームを始めたころで、「何かおもしろいサービスを作りたいね」という考えが3人に共通してあったので、ゲーム事業を選びました。

佐藤僕はもともと銀行に新卒で入社して、法人向けの営業を担当した後は投資部門に入ってさまざまな業界の方々とお付き合いをさせていただきました。そんな中で2010年ごろ、まさにグリーさんのオープン化などのタイミングで地元の会社に転職し、それがたまたま携帯ゲーム会社だったんです。7年前にこの会社にはいって、ずっとここまでモバイルゲームに関わってきています。

小山おふたりともゲーム業界とはまったく異なる業界の出身なんですね。

佐藤そうですね。共通点としてふたりともBtoB(※ビジネス・トゥ・ビジネス:企業を顧客とするビジネス)寄りだったので、直接サービスを利用されているお客さんに触れる機会がなくて、自分で考えたものをお客さんに使ってもらう仕事をしたい、みたいな考えがあったと思います。

小山最初からゲーム業界を目指していたわけではないぶん、別業界で得た知見が活かされている部分も多いのでしょうか?

佐藤そういった部分もあるでしょうし、何よりも大きいのは、自分たちがゲームに関して素人であり、何もわかっていないことが前提になっていたからこそ勉強できたところもあるのかなと思います。シナリオにしてもアートワークにしても、わかった気になっていることはひとつもなかったので、それらをひとつひとつ自分たちでトライして学んでこられたのは、大事だったのかなと思っています。

小山ここ数年でf4samuraiさんは『オルサガ』のパブリッシングとアニメ化、4周年を迎えた『マギレコ』もアニメ化が行われるなど、さまざまな挑戦をされていますね。近年でとくに注力されたのはどのような部分でしょうか?

佐藤この3年間で言えば、『マギレコ』が運営5年目に入り、テレビアニメの放送といっしょにゲームを運営していくという経験をさせてもらいました。

松野僕らは最初、畑が違ったこともあって設計面や性能面で競争力を持っていた会社だったのですが、『マギレコ』をきっかけにアートワークやシナリオをさらにがんばっていこう、となったところがありますね。

 2021年は、当社が手掛けたオリジナルRPGの『オルサガ』のリメイク版である『オルタンシア・サーガR』もリリースできたので、テキストや世界観作りをがんばってきた3年間でした。

小山そして先日、来春リリース予定の『コードギアス 反逆のルルーシュ ロストストーリーズ』(以下、『ロススト』)の開発をf4samuraiさんが担当することも発表されました。

佐藤本作は、2年ほど前から開発を始めていました。もともとファンの方がたくさんいるIPを、自分たちのクリエイティブと設計でさらに広げて喜んでもらおう、という形での取り組みとしては『マギレコ』に近いかもしれません。

 また、12月5日に行われた“f4ファンフェスティバルpart3”で、『アンジュ・ヴィエルジュ ~ガールズバトル~』(以下、『ガールズバトル』)のサービス終了とともに続編『アンジュ・リリンク』も発表させていただきました。8年間続いた『ガールズバトル』は終わってしまうわけですが、『アンジュ』は10年を目指し続けていく、チームの覚悟になります。

『アンジュ・リリンク』公式サイト

小山8年間続くというのはすごいですね。

佐藤じつは『アンジュ・リリンク』を引っ張ってきたのは新卒で入社したプランナーなんです。
アンジュは、彼とずっと運営を続けてきたタイトルで、彼がどうしても先を作りたいという思いから本プロジェクトは始動し今もチャレンジが続いています。

小山新世代の芽が出てきているということですね?

佐藤そうですね。『マギレコ』や『オルサガ』といったタイトルは僕と田口が引っ張ってきたのですが、『ロススト』や『アンジュ・リリンク』といった新作に関しては、30代前半のディレクターをリーダーにしてプロジェクトを進めてきています。そういった僕ら以外のリーダーを育てていく、ということもこの3年間でやってきた挑戦のひとつかもしれません。

 f4ファンフェスティバルではそういった新しい展開もお見せできましたし、『マギレコ』のパートではテレビアニメ総監督の劇団イヌカレー(泥犬)さんから運営へのお手紙や、蒼樹うめ先生からのキャラクターデザインに関するお話、なによりたくさんのユーザーの方々から暖かいお言葉をいただけて、僕自身も彼らに負けず、まだまだがんばらねばと奮起しております。

小山社名のf4にはfamilyも含まれるということでしたが、f4ファンフェスティバルなどのお話を伺うとファンの方々もファミリーの一員として捉えられているとの印象ですね。

佐藤はい。“f4ファンフェスティバル”は当社で2年に1回開催していて、今年はオンラインでの開催でしたが、過去2回はお客さんを実際に招いたりもしていました。皆さんの反応が直に見られるのもよくて、『オルサガ』のアニメ化を発表したときは、皆さんがさざ波のように泣いていったのが印象的でした。ユーザーさんも泣いて、舞台上の演者さんも泣いて、そしてステージ台本をつくった僕も泣いてしまいました(笑)。

 スマホゲームを作っていると、どうしても数字的な部分を見てデジタルにものを考えがちですが、当社はむしろお客さんの体験や、どんな風に喜んでくれているのかを想像して企画するのが楽しいし、価値があると思って仕事をしています。そこは、一般的な“ソシャゲの会社”とは違う部分かもしれないです。

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2019年開催のf4ファンフェスティバルpart2の様子。

お客さんがいるから続けたい、続けないといけないという感覚

小山『オルサガ』のようなオリジナルIPの制作と、『マギレコ』のような既存IPに独自のクリエイティブを乗せていく方法、この2軸でのゲーム制作がf4samuraiさんの得意領域になるのですね?

佐藤その通りです。ただ『オルサガ』に関して言えばアニメも自分たちで企画をして資金も集めて、制作会社さんを探して監督といっしょに本読みをして、といった具合に作ってきたので、ゲームだけではないですね。企画展を開いたり新曲を作ってみたりもしているので、ゲームに限らずお客さんに喜んでいただけそうなものを楽しんで作っている感じです。

松野他社さんのIPを使ったゲームに関しては、ある意味学ぶ場でもあるんです。一流クリエイターさんのやりかたを横で見て学んで、それを自社のオリジナルIPで活かしている部分はあります。

佐藤「差し入れは何がいいんだろう」みたいなところから勉強しました(笑)。たとえば、アニプレックスさんといっしょにお仕事をするなかで、アニメ監督がどれだけのものを背負っているのか、どうコミュニケーションをしていくとより楽しく仕事をしていただけるのか……とか、そういった部分は本当に学ばせていただきました。

 『マギレコ』に関して言えば、『魔法少女まどか☆マギカ』 という作品がアニメオリジナルで、アニメを作った方々が作品に対して持っている思いや感覚を自分たちも持たないとは強く思いました。「IP人気に甘えてはいけない」ということは、すごく考えさせられましたね。

小山お話をうかがっていると、IPをとても大切にしているという印象がありますね。さきほど『アンジュ』プロジェクトは10年を目指すとおっしゃっていましたが、f4samuraiさんではひとつのIPを生みだしたら、それを大事にしてしっかりと継続していきたいという想いがあるのですか?

佐藤そうですね。ただ、ユーザーさんがついてきてくれていなければ割り切れてしまうかな、とも考えています。自分たちのアイデアやキャラクター自体に愛着があって続けるというよりも、お客さんがいるから続けたい、続けないといけないという感覚です。じつは、新作の『アンジュ・リリンク』についても、最初は今回のタイミングでの発表は見送ろうかなとも思っていたんです。

小山あら、それはなぜですか?

佐藤まだ我々の中でリリース目途もたてられていませんし、プロジェクト中断の可能性もまだあります。この状態での発表は無責任になるのでは、と。ただ、サービス終了告知後、『アンジュ』を思い出にしてくださっているユーザーさんの声をみて、感謝をお伝えするのに本作の発表以外ないのではないか、と思いました。実際、リハーサルの場で用意していた手紙は、当初、発表をしない想定で考えていた内容だったんです。

小山そんなことが(笑)。スマートフォン向けアプリで10年選手は少なくて、『ガールズバトル』の8年という歴史はかなりの長さになると思います。ここまで長く続けてこられた理由は何だと思いますか?

佐藤ユーザーの皆さまのおかげ、というのを大前提として。3ヵ月に一度頂上決戦というものを開催しているのですが、その3ヵ月のあいだに開催したイベントに関しては、つぎの3ヵ月で改善するというサイクルを続けてきました。

 報酬や遊びやすさ、UI、育成の幅を広げる、といった何かしらを加えることを3ヵ月ごとにくり返していて、それを12人くらいのチーム規模で続けていると、運営側も楽しくて充実するんです。そういう風に楽しみながら改善をくり返すという流れを作れたのは大きいかなと思います。運営の後半3年間はユーザーさんの熱に支えていただきつつも、チーム異動も含めて、十分なサービス提供ができなかったと悔しい思いをしています。

松野弊社は基本的に作品の設計段階から長期運営を見越していて、リリース直後に短期で開発費を回収しよう、みたいな考えかたをしていないんです。長い期間で改善しながら運用していけるように計画を立てているところがあるので、それがよかったのかな、と。

小山長期運営となると、ユーザーからのフィードバックに臨機応変に対応できるかという部分も大きいのでしょうか。

佐藤対応力がないと長く続けるのはきびしいです。それに、ほかにもおもしろいゲームはたくさんあるので、我々のタイトルを続けてくださる理由を自問して作り続けていく、というのも大事だと考えています。

小山『オルサガ』のような自社IPでも実績を積まれてきていますが、今後は既存IPよりもオリジナル作品を、といったことは考えられていますか?

佐藤それもなくはありませんが、やはり“お客さんがそこにいるかどうか”、という点で慎重になっています。「オリジナル作品を作りたい」、「こういう人たちに受けるはずだ」というのは独りよがりにもなりがちですよね。そこはつねに不安です。

 加えて、既存IPに僕らが付加価値を乗せることでファンの方により満足していただく、というのは僕らが得意とするところなので、それは活かしていきたいと思っています。

小山既存IPを扱う場合にも、やはり大きいのはそれを期待するファンがどれだけいるかということなのですね。そこに自分たちのクリエイティブをどれだけ乗せていけるか、という部分が大事になってくるのでしょうか。

佐藤その通りです。まずお客さんが見えること、そして僕らがそれをやる意味があるかどうかがキモになります。たとえばフル3Dのオープンワールドものであれば、ほかにそれを得意とする会社さんがいますから、僕らがそれをやる必要性はあまりない。“僕らだからこそ貢献できるものがあるか”というのはすごく大事ですね。

 加えて、IP側の方々といっしょに制作していけるか、というのも重視しています。窓口の方を通すやり取りだけで原作者の方との距離がある状態だと、不幸なプロジェクトになりやすいと思うんです。

小山ああ、原作者サイドと密にやり取りをしていきたいということですか。

佐藤『マギレコ』はまさにそれができたケースで、劇団イヌカレー(泥犬)さんや蒼樹うめ先生にもお会いし、その作品に対する熱量とつねに妥協なく考え抜かれる姿勢に触れ、自分たちが少しでも近づけるようがんばってきました。

小山松野さんは最高技術指導者、兼最高人事責任者と伺いましたが、ゲーム開発に関わる技術の習得には苦労されましたか?

松野たくさんのユーザーさんが遊ばれた際にどう対応するか、みたいな部分に関しては失敗を重ねながら学んできたことも多いのですが、データの管理などに関しては前職で扱っていたウェブシステムの技術ともつながっていたので、そこまで抵抗はなかったです。

 ただ最近は会社の規模が大きくなってきたこともあって、いちプログラマーとして動くよりも組織をどう作っていくかの重要性が自分の中で増してきています。いまは、どちらかと言うと人事寄りの動きがメインですね。

小山組織作りに関しては、ここ数年どのような変化があったのですか?

松野評価制度を作ったり、行動指針を改めて作り直したり、採用のHPをリニューアルしたりしてきました。体制を整えるような動きはこの1年半くらいなのですが、ちょうどコロナ禍になってしまったタイミングなので、このあたりに関してはまだまだ道半ばです。

 先ほどお話に出た、タイトルを中堅に任せていくというのも、重要視していることのひとつです。個々人のできる領域を広げることで組織力を上げていく、というのを個人的にはやっていきたいです。若いうちにチャレンジできる環境を作ることができれば、ゆくゆくはそれが会社の競争力にもなると思っています。今後何年かは個々人の領域を広げていくことが目標になるかなと。

佐藤僕が『マギレコ』を作り始めたときも32歳くらいで、いま当社でチャレンジしているディレクターたちと同じくらいだったんです。それもあって30代前半くらいでしっかりと責任を負う経験を積ませてあげたい、というのも彼らにプロジェクトを任せる動機のひとつになっている気はします。僕も、いまは自分が動くより、彼らのサポートに徹する局面が増えてきました。

扱うIPを好きであることは大事

小山現在開発中の新作タイトルについて、可能な範囲で教えてください。

佐藤先日発表のあった『コードギアス 反逆のルルーシュ ロストストーリーズ』は2022年春のリリースを予定しています。ディレクターがすごく『コードギアス』を好きで、彼にとっての青春だったらしいです。僕が彼の本気度を試す意味合いでダメ出しをしてもめげずにがんばってくれたこともあり、いい仕上がりになっています。それに関係者にも恵まれていて、いい案件になっていると思います。

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2022年春のリリース予定の『コードギアス 反逆のルルーシュ ロストストーリーズ』。
『コードギアス 反逆のルルーシュ ロストストーリーズ』公式サイト

小山関係者の方もやはり原作の『コードギアス』熱が高いのでしょうか?

佐藤本当にすごいです。発表時のコメントについても、演者の皆さまには、非常に熱のこもった言葉を頂戴しましたし、今回はフルオーケストラ収録を行っているのですが、オーケストラの方々も『コードギアス』ファンなんですよ。さらに情報の初出PVを作った方まで熱心なファンなので、そういう意味ではすごく恵まれています。

小山それはすごいですね。先ほど2年前から開発がスタートしていたというお話もありましたね。

佐藤最初は企画フェイズとして、2、3名でゲーム性などを練り込んでいきました。開発メンバーが増えたのはこの1年くらいです。リリースは来年の春を予定していて、いまから当社に入社していただければぎりぎりリリース前からプロジェクトに関われるので、我々に共感できて『コードギアス』が好きという方は、ぜひ応募していただければと思います!

小山やはり扱うIPを好きであることは大事ですかね……。

佐藤そうですね。みんながみんな好きな作品に関われるわけでもないとは思いますが、一回は自分の好きなIPに関わるという経験は、当社では大事にしています。好きな作品であればそれなりにやり切ることができますし、それを経てつぎのプロジェクトに進めばモチベーションも続きます。

 プロジェクトを続けるかどうかの話で、「まずはお客さんが」というお話をさせていただきましたが、クリエイターとして仕事をする理由としては“作品が好きかどうか”というのも大きいと思うんです。そのIPを3年~5年かけて広げていこうと思ったら、好きな人のほうが、やはりモチベーションを持ちやすいですからね。

松野ただ一方で、自分のハマりかただけに固執しないことも大事かもしれません。高校生のときにその作品を見てハマった人と、最近になって好きになった人とでは見ているポイントも違いますし、『コードギアス』は女性ファンも多いので、そちらの感覚も想像できないといけない。IPのことは好きでいつつ、そのあたりはフラットに見られると強いなと思います。

佐藤ハマっているお客さんを想像できるというのは本当に大事ですね。どこで感動するのか、何を喜んでくれるのか、そういうポイントを押さえておくのが重要なので、僕も展示会などでお客さんのことはよく見ています。

「お客さんに喜んでもらうために」を第一に、本質をしっかりと高めていきたい

小山今後のゲーム開発における方針などを教えてください。

佐藤これまでにお話しているところと重なりますが、大事なのはやっぱりお客さんを想像できているかですね。加えて、自分たちがどんな付加価値を出せているのかを意識することです。これは作品作りにおいて欠けてはいけないポイントだと思っているので、このふたつを忘れず意識してがんばっていきたいと思っています。

小山スマートフォンだけでなく、今後家庭用ゲーム機への進出は考えていますか?

佐藤そうすることによって学べるものがあれば……という感じです。実際のところは、それよりもたぶん当社でキャラクターや物語を作って、家庭用ゲーム機向けゲームの開発を得意とする会社さんがゲームを作ったほうが、ユーザーさんの満足度は高いとは思います。そういうプロジェクトなら可能性はありますね。

 ゲームでもコミカライズでも、お客さんに満足してもらうためにはどうするのがいいか、というのが重要です。そこで満足度を高められたり、自分たちにとっての成長があったりするようなら挑戦するのもアリだとは思います。

小山パブリッシングなどについても同様でしょうか?

佐藤そうですね。僕らがやることで付加価値が出るなら、可能性はあります。

 たとえば、アニメ系に強いゲーム会社にパブリッシングをしてもらうと、アニメの文脈で受け取ってくれる方がたくさん出てきますよね。そうするとアニメのコミュニティーに親和性ができて、それはお客さんにとっても僕らにとっても価値があることです。

 僕らもパブリッシングはできますが、いま仮にそれをしても、お客さんには伝わりにくい。そういう状況であれば、僕らがパブリッシングをする必要はないのかなと考えています。

 それに、これまで開発会社はパブリッシャーよりもできることが少ないというイメージもあったかもしれませんが、少なくとも当社に関してはそうではないと断言できます。自分たちでアニメも作って、ファンフェスティバルイベントも3回開催してきて……と、マーケや海外展開など、パブリッシャーさんにできて我々にできないことは、もうほとんどないのかなと。

松野やはり大前提として、お客さんに喜んでいただかないといけない、というのがあります。いまは海外のゲームもたくさん入ってきていて、そんな中で僕らのゲームを遊んでいただく理由としては、世界観やキャラクターなどの創作の部分が大きいと思っています。より世界観が伝わる仕組みや演出、没入感を強くするための技術といった競争力になっている部分はさらに高めていきたいんです。そういった部分を強くしていきたいです。

 たくさんのお客さんに支持していただけるようなオリジナルのIPを僕らが作るのでもいいですし、他社さんのIPに僕らがクリエイティブを乗せることでよりおもしろくできるならそれでもいいです。IPを軸に臨機応変に動けるところを、強みにしていきたいです。

佐藤こういうインタビューなどを通して、我々が作るものに対する信頼感が大きくなってきたら、5年後、10年後にf4samuraiがパブリッシャーとしてブランドになるようなこともある、かもしれないです。でも、いまはそこにはまだまだ足りていないと思っていますし、まずはブランディングよりも本質をしっかりと高めていきたいと思っています。

自由に幅広い仕事ができるのが魅力

小山現在はどのような職種を募集されているのでしょうか?

佐藤職種としては企画・デザイナー・エンジニアと幅広く募集をしています。先ほど話題にさせてもらった、『アンジュ・リリンク』『ロススト』のディレクターのようにユーザーさんに作品を届けるために粘り強く開発に向き合い続けられる方といっしょに作品を作っていきたいですね。

松野いまは開発中のタイトルが2本あって、企画中のタイトルにいたっては数が多くてどれを進めようかと検討しています! これから入社していただく方に、新作の開発をお願いする可能性も高いです。また、これから組織を強くしていこうと考えているので、リーダーも募集しています。

f4samuraiのキーパーソンに聞く。ユーザーに喜んでもらえるタイトルを!【ファミキャリ!エージェントが聞く】

佐藤あと求めているのは、競争力のある仕事ができる方です。リモートワークになってから、僕らがやる必然性のないことは協力会社さんにお願いすることも増えているので、当社に入っていただく方には、作品作りのより価値が高い部分に挑戦してもらいたいと思っています。

 当社ではLive2Dもチーム化しているのですが、Live2Dをちゃんとチーム化している会社はあまりないと思います。今後のプロジェクトでもLive2Dを実装することは決まっているので、これも競争力のひとつにしていきたいと思っています。

小山f4samuraiさんに入社すると、どのようなことにチャレンジできますか?

佐藤当社は変に組織然としていなくて、「これを考えるのはこの部署だけ」、みたいなことがないんです。各プロジェクトのプランナーやディレクターがプロモーションにも参加できたり、エンジニアが企画に意見を出せたり、幅広い経験を積める組織になってきたと思っています。

松野当社は、いちチームに関わる人数が少ないんですよ。ほかの会社さんですと100名や200名のチームで、与えられた領域だけを担当するようなことも多いと思うのですが、当社では多くても50名くらい、少ないと20名くらいなので、自分の強みである領域プラスアルファで動くことになるんです。これをプラスと捉えるかマイナスと捉えるかは人によりますが、プラスに考えると担当の領域以外にもチャレンジできて、自分のスキルを伸ばせる環境になっています。

小山プロジェクトの規模を小さくされているのはなぜなのですか?

佐藤組織が大きくなると管理を行う人間が必要になりますが、管理だけの人生ってつまらないだろうな、と思うんです。候補者さんにオファーするときも、「こういう人材が足りないからお願いしたい」ではなくて、「この人にこんなことを担当してもらって、その先でこう成長してもらおう」、「やりたいことがあるなら1年後、2年後にそれを実現できるようにしよう」みたいな発想なんです。ひとりひとりがプレイヤーで、それぞれが自分で考えていく、みたいな組織になっているんです。

松野チームで働く楽しさがあると思うんですよね。でも100人、200人規模になると隣の人が何をしているかもわからなくなりがちではあります。正直50名でも多いなと思うくらいなので、2、30名規模を基本にしたいです。

佐藤作業として割り切って時間で考えられるものについては、協力会社さんにお願いして、会社に常駐するメンバーはそれぐらいでいいのかな、とは考えています。

小山社内でのキャリアアップはどのように進むのでしょうか?

松野エンジニアに関しては、マネジメントとスペシャリストではっきりとパスが分かれているというよりは、グラデーション気味になっています。ただスペシャリストを目指すのであれば、業界の中でも競争力があるくらいまではなってほしいなとは考えています。

 とは言え、マネジメントになったら手を動かさない、スペシャリストになったらマネジメントをしない、みたいなことにはなっていないので、自分の伸ばしたいと思う方向を選んでもらっている感じです。

佐藤さっきのチャレンジできることにもつながるのですが、スペシャリストとしての技能を磨きつつ、周辺領域でできることを増やしていって、ゆくゆくはできていない人のフォローアップも行う。それがキャリアの流れになるかと思います。

 具体的に言えば、当社では、Live2Dの原画をやりながらモーションも勉強していって、そこからさらに衣装デザインなどキャラクターデザインにまで手を伸ばしてもらったり、シナリオを考えるチームにイラストの構図を考えてもらったりしているんです。

小山シナリオの方がイラストの構図を考えるというのはおもしろいですね。

佐藤これも人によっては「そこまでやらないといけないんですか?」ともなるのですが。マンガ家さんが自分でシナリオも作画もカメラワークもこなすように、シナリオを書く人がほかの範囲を考えてもいいし、それができたほうがおもしろいと思うんです。それが結果的に本人のスキルアップやキャリアアップにつながっていくと思います。

小山社内でキャリアチェンジも可能なのでしょうか?

佐藤エンジニアからプランナーやディレクターに転身したり、その逆もあります。いまの職種をこなせているうえで、別のことをやってみたいという転身は事例としてありますね。ただし、「逆にいまの仕事ができないから」といったものは基本的にはありません。

松野別の職種は別の職種でたいへんなことがありますからね。当社では、基本的に本人が本気であればキャリアチェンジを止めるようなことはないです。

小山ずばりうかがってしまいますが、f4samuraiさんの今後の課題は何ですか?

松野僕としてはやはり、組織作りやチーム力の強化ですね。これまでは人数が少ないぶん“個”で突破していく会社でしたが、人数を増やしていくならチームで戦えるようにしないといけないので。2年前から職種ごとにリーダーを立ててメンバーの育成をお願いするようにして、新卒も含めた人材育成にも力を入れていまして、そこをさらに伸ばしていきたいです。

佐藤これまでは仕事を経験させることで成長を促すようなことをしていたのですが、受け入れ側である会社として、導き育てるような組織づくりを……というのは、ここ2年でも課題になっていました。

 みんなのモチベーションを作っていくというのも大きな課題です。お客さんに楽しんでいただけるゲームはお届けできているかなとは思っているので、その先に何をしていくのか、そういった目標を共有できるようにしていきたいです。

小山個々の力ではなく組織として、となると、どのようなありかたが望ましいのでしょうか。

松野わかりやすいのはエンジニアで、たとえば各プロジェクトで全部いちから作るとなると、キーマンがいないとプロジェクトが成立しませんよね。でも同じことを共通でやっている部分があるなら、それは横断的に作ってしまって各プロジェクトで使えるようにすればいいんです。

 こういうことができるようになると、各チームにその分の余裕が生まれるし、クオリティーとして一定のものは作れるようになると思うんです。そういう風に共通部分の底上げを行って、そこにプラスアルファを乗せられるようにすることで競争力のある作品が作れるのでは、と。

佐藤最終的には個の力と組織力の両方が必要になるんですよね。ものすごい情熱を持っている人もいればそうでない人もいるので、後者であっても働いているうちに気づきが生まれるような会社にしたいと思っています。

小山最後に、f4samuraiさんへの転職を考えている業界の方へのメッセージをお願いします。

松野当社は、会社としてはまだまだ成長フェイズにあると思っていますしここから数年、多くのチャレンジができる環境もあります。僕たちと一緒に挑戦をしてくださる仲間を募集しています!

佐藤仕事は人生の大半を過ごすものでもあるので、退屈な仕事に時間を費やさないほうがいいとは個人的に思っています。せっかく時間を使うのに何も先がなかったり、ただの作業になってしまったりするのはもったいないので、f4samuraiがそんな状況を変えるきっかけになりたいと考えています。もし今が退屈なら、ぜひ当社に来ていっしょに変えていきましょう。

株式会社f4samurai

  • 代表取締役(CEO):金 哲碩
  • 設立年月日:2010年1月8日
  • 従業員数:150名(2021年11月30日時点)
  • 事業内容:スマートフォン向けゲームの企画・開発・運営/WEBサービスの企画開発
f4samuraiのキーパーソンに聞く。ユーザーに喜んでもらえるタイトルを!【ファミキャリ!エージェントが聞く】
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クリーク・アンド・リバー社担当が語る

“世界観づくり”を強みに多くの作品の開発を手掛けている会社です

 インタビューで印象的だったのが、自社が開発に携われることでユーザー様に“ワクワク”を与えられるのかという言葉でした。また、定期的に開発作品を集結させたイベント“f4ファンフェスティバル”を開催し、開発者とユーザー様が触れ合える機会を作るなど、ユーザー様をとても大切にしていらっしゃる会社だと感じました。

 この想いがあるからこそ、表現・技術の限界にチャレンジしながら、妥協しないものづくりを日々行っていけるのだとお話しておりました。f4samuraiさんでは、これからさらに成長を加速するため、さまざまな職種で新たなメンバーを募集中です! 奮ってのご応募お待ちしております。

(クリーク・アンド・リバー社 クリエイター・エージェンシー・グループ 小山大輝氏)