月額980円で、雑誌やマンガ、書籍が読み放題になるAmazonのサービス“Kindle Unlimited”。自宅で過ごす時間を楽しむために加入した方も多いのではないでしょうか。

 とはいえ読み放題対象作品は10万件以上もあり、何を読めばいいのか迷ってしまいますよね。そこで本稿では、Kindle Unlimitedのおすすめ作品を個人的チョイスで紹介。今回はアニメ映画も大ヒットを記録した、こうの史代先生のマンガ『この世界の片隅に』をピックアップします。

“Kindle Unlimited”の導入はこちら(Amazon.co.jp)

タイトルにこめられた意味とは?

 2007年から2009年にかけて、『漫画アクション』に連載された『この世界の片隅に』。片渕須直監督によるアニメ映画化は大成功を収め、新規エピソードを加えた『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が2019年にヒットしたことも記憶に新しいですよね。また2度にわたってドラマ化もされているので、作品に触れたことがあるという方は多いかもしれません。

 本作は戦時中の軍港・呉を舞台に、主人公の“すず”が広島から呉へ嫁いで、新しい家族と健気に生きていく姿を描きます。すずの新婚生活は戦時下ということもあり、思わず目を背けたくなるような悲惨な状況が度々登場するのですが、作品のテイストは全体的に朗らか。物資が足りない戦時下の暮らしの中でも、すずさんは様々な工夫と持ち前の性格で明るく暮らしていきます。けれど、そんな朗らかな雰囲気の中に辛い展開が待ち受けているので、より大きな衝撃を受けたり、逆にすずさんの明るさに読者も救われたり……。とにもかくにも、心揺さぶられる作品になっています。

 それでは、すずさんにどのような出来事が起きたのかご紹介していきましょう。本作の上巻冒頭にはすずの幼少期を描いたエピソードが収録。なんと、冒頭から彼女は“人さらい”にさらわれる羽目に。そこで先に捕まっていた周作がすずと出会うきっかけにもなり、無事脱出したふたりは、年月を経て結婚することに。

 北條家の一員となったすずの新しい生活がスタートします。

『この世界の片隅に:上(アクションコミックス)Kindle版』(Amazon.co.jp)
漫画『この世界の片隅に』戦時中も健気に生きていく主人公・すず……深い余韻を残す“夫婦の絆”も必見の名作【Kindle Unlimitedおすすめ】
『この世界の片隅に:上(アクションコミックス)Kindle版』(こうの史代/双葉社)より

 しかし、ふたりの夫婦生活は順風満帆とはいきません。たとえば中巻・第14回ですずは遊郭の美しい女性リンと親しくなりますが、ひょんなことから周作がかつてリンと懇意にしていたことが判明。

 「ほいでもなんで 知らんでええこととかどうかは、知ってしまうまで判らんのかね」というすずのセリフからも、揺れ動く彼女の心境が窺えるのではないでしょうか。

漫画『この世界の片隅に』戦時中も健気に生きていく主人公・すず……深い余韻を残す“夫婦の絆”も必見の名作【Kindle Unlimitedおすすめ】
『この世界の片隅に:中(アクションコミックス)Kindle版』(こうの史代/双葉社)より
『この世界の片隅に:中(アクションコミックス)Kindle版』(Amazon.co.jp)

 また、すずと旧知の仲の水原哲が訪ねてきた際、周作はすずと水原をひと晩ふたりきりにさせるという行動に出ます。そんな夫の行動にすずは腹を立てますが、それは彼女が周作を好きだからこそ。しばらくして「夫婦いうてこんなもんですか?」と思いをぶつけるすずに、周作も「ほんまはあん人(にい)と結婚したかったくせに」と、隠していた心情を吐露することに……。

 戦争という悲惨な状況の中でも、ゆっくり絆を深めていく夫婦の姿は必見。第44回での「この世界の片隅に うちを見つけてくれてありがとう周作さん」というすずのセリフは、作品タイトルを回収すると同時に大きな余韻を残してくれるはずです。

漫画『この世界の片隅に』戦時中も健気に生きていく主人公・すず……深い余韻を残す“夫婦の絆”も必見の名作【Kindle Unlimitedおすすめ】
『この世界の片隅に:下(アクションコミックス)Kindle版』(こうの史代/双葉社)より
『この世界の片隅に:下(アクションコミックス)Kindle版』(Amazon.co.jp)

 2009年に“第13回文化庁メディア芸術祭”のマンガ部門優秀賞を受賞するなど、高い評価を誇る『この世界の片隅に』。Kindle Unlimitedでは上・中・下巻のいずれも読み放題となっています。

 映画版をご覧になった方も、そうでない方にも、ぜひじっくりと読んでいただきたい作品です。