月額980円で、雑誌やマンガ、書籍が読み放題になるAmazonのサービス“Kindle Unlimited”。現在読み放題対象作品は10万件以上にものぼり、おうち時間を楽しむために加入している方も多いですよね。とはいえここまで多いと、何から読めばいいのやら……。

 そこで本稿では、Kindle Unlimitedのおすすめ作品を個人的チョイスでピックアップ! 今回は、武富健治先生によるすべてが異質すぎるマンガ『鈴木先生』に注目してみました。

“Kindle Unlimited”の導入はこちら(Amazon.co.jp)

 現在Kindle Unlimitedにて、単行本11巻ぶんがすべて読み放題の『鈴木先生』。

 2007年には吉田秋生先生の『海街diary』と一条ゆかり先生の『プライド』などとともに、文化庁メディア芸術祭マンガ部門の優秀賞に選ばれました。さらに2011年4月には、俳優・長谷川博己さんを主演に迎えて実写ドラマ化。2013年には映画化もされているため、名前を耳にしたことのある人も多いのではないでしょうか。

『鈴木先生(アクションコミックス)Kindle版』1巻(Amazon.co.jp)

給食の酢豚について真剣に考え抜く!?

 本作は些細な問題から重大な試練まで全力で考え抜く、まったく新しい教師像を描いた教育物語。主人公はどこにでもいそうな平凡な教師・鈴木先生で、生徒たちとの触れ合いの中でさまざまな問題に直面していきます。

漫画『鈴木先生』給食の酢豚についてガチ議論? 従来の教育モノにはない全く新しい教師像がココに……!【Kindle Unlimitedおすすめ】
『鈴木先生』1巻(武富健治/双葉社)より
漫画『鈴木先生』給食の酢豚についてガチ議論? 従来の教育モノにはない全く新しい教師像がココに……!【Kindle Unlimitedおすすめ】
『鈴木先生』1巻(武富健治/双葉社)より

 ……とここまでは一般的な教育マンガと何ら変わりないように思えますが、本作が極めて異質に感じる理由は“直面した問題への向き合いかた”。とにかく鈴木先生と生徒たちがささやかな問題に対して徹底的に考え抜き、毎回意外な着地点へと辿り着くのです。

 取り上げる問題もじつにさまざまで、たとえば単行本第1巻では給食のメニューから酢豚を外すかどうかが議論される展開に。いじめなどと比べると一見ささやかな問題のように思えるものの、当の生徒や先生たちは至って真剣です。やがて学校全体でアンケートを実施した結果、酢豚を食べられないという人は全校生徒427人中51人。つまりひとクラスに平均4人強しかいないことが判明したわけですが、果たしてクラスに4人って本当に“少ない”と思いますか?

 一見どうでもいいようなテーマでも、物語が進むにつれて問題の本質が見えてくるのが本作のおもしろいところ。上記に挙げた酢豚問題に関しても、アンケートの数字だけを見れば継続が打倒でしょう。しかし本当にそれでいいのでしょうか? もし酢豚の代わりにあてられた献立がハンバーグだったら? 酢豚を無理に継続するよりもその方がみんなも納得するのではないかと、どこまでもひとつの問題を突き詰めていきます。

漫画『鈴木先生』給食の酢豚についてガチ議論? 従来の教育モノにはない全く新しい教師像がココに……!【Kindle Unlimitedおすすめ】
『鈴木先生』1巻(武富健治/双葉社)より
『鈴木先生(アクションコミックス)Kindle版』(Amazon.co.jp)

 加えて問題を抱えているのは生徒のみならず、先生たちもくせ者揃い。1番まともそうな鈴木先生でさえ、その裏ではとんでもない葛藤に苛まれています。それは、自身が担当する生徒・小川蘇美への道ならぬ想い。もちろん、鈴木先生自身もいけないことだとは考えながら、大人びていてどこか神性を感じさせる小川へ特別な感情を抱いてしまうのです(ちなみに小川はドラマでは土屋太鳳さんが演じていました)。

 ベタな学園物語を想像しながら読むと、その異質さに変な違和感を感じてしまう本作。ただ、その違和感こそが最大の魅力でもあります。従来の教育マンガでは物足りないという方は、ぜひ『鈴木先生』の独特な世界観に1歩足を踏み入れてみてください。