ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)の発表によると、2020年11月12日に発売から同年12月末までの時点で全世界で450万台を販売したプレイステーション5(以下、PS5)。現状では抽選販売が基本ということもあり、まだまだ手に入れられていない方も多いと思われるが、果たして今後の動向はどうなるのだろうか?

 ファミ通.comでは、PS5のローンチ(発売からの立ち上げ)の状況や、今後の供給見通しなど、気になる点をSIEの代表取締役社長を務めるジム・ライアン氏にインタビュー取材する機会を得た。インタビュー中にはライアン氏より、思わぬビッグニュースも語られたので、ぜひご注目を。

ジム・ライアン

ソニー・インタラクティブエンタテインメント代表取締役社長(文中はライアン)。

PS5向け次世代VRシステムの開発が明かされる!

ライアンご質問に答えていく前に、私のほうで少々プレゼンをさせてもらってもよろしいでしょうか。

――もちろんです。よろしくお願いいたします。

ライアンありがとうございます。まず、PS5のローンチは大成功と言っていい結果を迎えることができました。全世界で450万の販売を達成し、プレイステーション4(以下、PS4)のローンチを上回る販売台数となっています。ただ、PS5がなかなか手に入らないという声が、全世界のみならず日本でも挙がっていることは、もちろん承知しています。皆さんをやきもきさせてしまっていることは、私としても心苦しいことです。

 供給が追いついていない理由はいくつかあり、やはり新型コロナウイルスによる影響が大きいです。また、コロナ禍で半導体の市場が非常に逼迫しているというニュースは皆さんもご存知のとおりです。

 さらに、コロナ禍においては販売方法はオンラインをメインにせざるを得ない、というのも問題でした。そして、PS5の需要自体がこれまで以上に高いというのも、供給が追い付かない原因となっています。

 私たちは本当に力を入れて、PS5の製造をより急ピッチで進めています。2021年はさらに多くのPS5をファンの皆様にお届けしたいと考えています。

――それはゲームファンにとってうれしいニュースですね。

ライアン1日でも早く、皆さんにPS5で遊んでいただきたいと願っています。また、ゲームタイトルについてですが、ローンチのタイミングでは素晴らしいソフト群を世に送り出すことができました。PS5のソフトラインアップは、これまで以上に力を入れていきます。まず野球ゲーム『MLB The Show 21』が2021年4月20日、SF世界を戦い抜く新規TPS『Returnal(リターナル)』が2021年4月30日、人気アクションシリーズ最新作『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』の発売を2021年6月11日に予定しています。そして2021年の後半には、『Horizon Forbidden West(仮称)』の発売が控えています。

――とても楽しみです。

ライアンそして私からのお話の最後は、プレイステーションでのイノベーションについてです。我々にとってVRは戦略的なチャンスであり、ファンの皆さまにも喜んでいただける革新的な技術だと考えているのですが、その最新の取り組みとしてPS5用の次世代VRシステムを準備していることをお知らせしたいと思います。

 PS4向けのPS VRの提供により、我々としてはいくつか学べたことがあります。そのひとつとして、わずらわしかったVRデバイスの接続を、より簡単にできるようにシングルコードにしています。PS5用の次世代VRシステムについてはより詳しい内容を近々発表予定です。

――確認なのですが……PS4で発売されたPS VRとは異なる、新しいVRシステムを発売するというわけですね!?

ライアンそうです。PS5用に設計した、まったく新しいものです。

――いや、驚きました! 近々発表とのことですが、その場では対応ソフトなどの情報も明かされるのでしょうか。

ライアン現在、さまざまな企業やインディースタジオの皆様に、開発キットを配布している段階です。ソフトウェアのラインアップ自体は、これから決まっていくでしょう。ゲームについては、現在何もお話しできることはありません。

PS5発売後をライアン氏はどう見る?

――続報を楽しみにしています。では、PS5の現状についての話に戻したいと思います。お話の中でも「PS5の需要が高かった」とありましたが、需要が高まった要因はどこにあると考えていますか。

ライアンPS5にはさまざまなイノベーション、つまり技術革新を取り入れました。たとえば、専用コントローラーの“DualSense(デュアルセンス)”であったり、“Tempest 3Dオーディオ”、さらには高速SSDなどがあります。

 とは言っても、PS5が欲しくなるのはやはりゲームソフトが遊びたいからでしょう。『ASTRO's PLAYROOM』や『スパイダーマン:マイルズ・モラレス』、『Demon's Souls(デモンズソウル)』といった作品群が広くユーザーに受け入れられ、本体の売り上げを牽引したと言えるでしょう。2021年は、もっともっと多くのゲームソフトをお届けしていきます。

――日本ではPS5のパッケージ版の本数はそこまで伸びていない印象がありますが、その分、ダウンロード版の販売本数は伸びているのでしょうか。

ライアン日本だけでなく、ダウンロード版の比率というのは世界的にどんどん高まっています。2020年はとくに新型コロナ感染症の影響により、海外ではゲームショップが営業できないということもありました。その影響もあり、ダウンロード版はどんどん増えています。

――ソニーの2020年度第3四半期の決算では、ゲーム&ネットワーク分野の大幅増収となっていました。これはSIEの貢献が大きかったのでしょうか。

ライアンやはりPS5のローンチがおもな要因ですが、それに加えて、ネットワークビジネスも強かったのがポイントです。

――たとえば“PlayStation Plus”(PS Plus)などですよね。“PS Plus”の加入率はとても高い水準のようですが。

ライアン非常に高いですね。“PS Plus”は、“PS Plus”そのものがユーザーの皆さんに愛されるよう、つねに努力しています。たとえば毎月フリープレイのゲームを提供しているのは、大きなサービスのひとつです。今後はさらにサービスを強化していきたいと考えています。

――ライアンさんの視点から見て、現状においてPS5のユーザー満足度というのはどうなっていると分析されていますか。

ライアン発売からしばらくのデータを見ると、PS5の稼働率は非常に高く、すでにPS4よりも高くなっています。PS5ユーザーの皆さんには満足していただいていると考えています。

――そうしたユーザーは、PS5の新作を遊んでいるのか、あるいはPS4のゲームを快適に遊ぶことに活用しているのか、どちらが多いといった傾向はあるのでしょうか。

ライアン両方だと言えるでしょう。PS5のタイトルは好評を得ていますし、後方互換性によりPS4タイトルを遊んでいるユーザーも多いです。

――ちなみに、いまのところライアンさんがPS5のゲームで、個人的にもっとも気に入っているタイトルは何ですか?

ライアンプリインストールされている『ASTRO's PLAYROOM』ですね。本当にファンタスティックなゲームだと思います。私は初代のころからプレイステーションの事業に関わっていることもあり、歴代プレイステーションを思い出させてくれる隠し要素が本当に楽しくて(笑)。

――まさに『ASTRO's PLAYROOM』を開発したTeam ASOBIがそうですが、日本のゲームファンとしてはJAPAN Studioのさらなる新作を期待する声も多いと思います。何か新作の情報はありませんか?

ライアン現時点ではコメントできることはありません。ただ、Team ASOBIが手掛けた『ASTRO's PLAYROOM』については本当にデキがよかったですね。これについてはまた後日お話できることがあると思います。

――SIEは、ほかにも各国にワールドワイド・スタジオ(開発拠点)を所有していますが、今後もこうしたスタジオを軸としたタイトル展開を考えているのでしょうか。

ライアンワールドワイド・スタジオから発売された“PS Studios”のタイトルについては、本当に満足していますし、誇りに思っています。もうすでに発表されているものもありますし、これから発表するものも控えています。また、SIEは日本のライセンシー様とも深いつながりがありますので、今後も連携をますます強化し、世界のプレイステーションファンの皆様向けて日本で作られたタイトルを展開していきたいとも考えています。

――まだまだ新型コロナ感染症の影響は大きいと思います。今後も新情報の発表は、“State of Play”のような映像配信をメインに考えられているのでしょうか。

ライアンいまのところはオンラインイベントでやろうと考えています。2020年で体験して分かったように、オンラインイベントがいちばん安全で、いちばん効率的だと思っています。

――本日はありがとうございました。

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