コーエーテクモゲームスより2020年11月20日に発売された、Nintendo Switch用ソフト『ゼルダ無双 厄災の黙示録』。本作は『ゼルダ無双』シリーズ最新作でありつつも、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の世界観をもとにした『ゼルダ無双』となっており、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』から100年前の世界を舞台に、大勢の敵をなぎ倒す一騎当千のアクションが楽しめる。

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 本記事では、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(以下、『BotW』)のプロデューサーである任天堂の青沼英二氏を交えて、『ゼルダ無双 厄災の黙示録』プロデューサーの早矢仕洋介氏、同じくディレクターの松下竜太氏ら開発者たちへのインタビューをお届けする。

青沼英二(あおぬま えいじ)

任天堂
『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』プロデューサー(文中は青沼)

早矢仕洋介(はやし ようすけ)

コーエーテクモゲームス
『ゼルダの伝説 厄災の黙示録』プロデューサー(文中は早矢仕)

松下竜太(まつした りょうた)

コーエーテクモゲームス
『ゼルダの伝説 厄災の黙示録』ディレクター(文中は松下)

『ゼルダ無双 厄災の黙示録』インタビュー。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』のよさを残し、無双アクションを実現した開発秘話が語られる

無双らしく“はっちゃけて欲しい”

――『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』のエピソードを『ゼルダ無双』シリーズで描こうと思った経緯、理由を教えてください。

青沼本作の発案は私ではなく、『BotW』のディレクターの藤林(秀麿氏)やアートディレクターの滝澤(智氏)でした。私も“厄災の戦いを題材にした無双”を初めて聞いたとき、とても興味深いと感じましたが、やるとなればたいへんな話なので、どうしたものかと思案していました。それ以降もたびたび「あの話、どうなりました?」と聞かれ、さらには「企画書もあります!」となったので、彼らの本気度に突き動かされた形で、『ゼルダ無双』プロデューサーの早矢仕さんにご相談するという流れとなりました。

 本気度が強すぎて、シナリオやグラフィックの細部まで口を出すようなことになってしまって、コーエーテクモゲームスの皆さんにはたいへんな思いをさせてしまったのではと恐縮していますが、結果的には、コラボレーションの域を超えた、真に『BotW』の世界に肉薄した“厄災の戦い”が実現したと感じています。

早矢仕懐かしいですね。コーエーテクモゲームス側では、前作の『ゼルダ無双』を作ったあと、「新たな『ゼルダ無双』をつくるのであれば、どんな形が相応しいのだろう」という話はチームで話し合いを続けていました。そんなときに青沼さんからご相談をいただいたので、「ピースがハマった」と思いました。いままでの『無双』シリーズは、多彩なプレイアブルキャラクターが集合するオールスター的な立ち位置が多かったわけですが、本作は新たな方向性を示すことができたように思います。

松下私も、100年前の大厄災真っただ中、操作するのは現役バリバリのリンクということで、アクションゲームとしては“無双する”必然性のある最高の舞台をいただけたと感じました。

 ゲーム開発者としてとても大役ではありますが、開発メンバーはみな『BotW』ファンなので、プレッシャーを感じるというよりは“大好きな『BotW』の世界で、中途半端なものを作るのは(自分を)許せない”という面のほうが大きかった気がします。表に出ない、『BotW』愛のぶつかり合いがたくさんありました。

――数々のキャラクターの100年前の姿が描かれますが、『BotW』のころから、すでに姿や性格などは設計されていたのでしょうか。

青沼各種のキャラクターの性格付けや、100年前の主人公リンクとの関わりなどは『BotW』開発時にも設定されていましたが、具体的な姿は本作で無双チームの皆さんと相談しながら作り上げて行きました。ちょっと変わった歳の取りかたをしているプルアなど、本作でさらにキャラクターとしての魅力が増したと感じています。

松下インパやプルア、ロベリーのデザインを弊社から提案させていただけたことはとても嬉しく思いました。どのキャラクターも、『BotW』の中で断片的でありながら濃いキャラクター情報が描かれているため、それらを手掛かりにゼルダチームとの間でイメージや設定に齟齬がないかすり合わせを行いながら、100年前の姿が形になっていきました。これは『BotW』の中で小さなトリガーをもとにリンクが記憶を取り戻していく物語に似ているなと思っていました。

『ゼルダ無双 厄災の黙示録』インタビュー。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』のよさを残し、無双アクションを実現した開発秘話が語られる
『ゼルダ無双 厄災の黙示録』インタビュー。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』のよさを残し、無双アクションを実現した開発秘話が語られる

――100年前の物語は断片的に描かれていましたが、そのときからすでに『ゼルダ無双 厄災の黙示録』のストーリー構想はあったのでしょうか。

青沼『BotW』の世界にある遺物や遺構は、100年前の戦いの痕跡であり、それらは詳細な設定やストーリーの下に世界に配置されています。本作ではそれらをさらに詳細にしていったという流れですね。

松下『BotW』の4人の英傑たちとは、記憶の中の人物として短い時間しか出会っていないはずなのですが、それぞれにどんな人物であり、どんな関係性をもって生きていたのかが伝わる、奥行きのある描かれかたをされていました。そのため、本作でシナリオをゼルダチームにご提案・ご相談しながら作成していく過程でも、“こんなときミファー、ダルケルはこう言うし、こう行動するに違いない”と、制作チームでもほとんど迷いなく共有できました。

――青沼さんがリクエストした絶対にやってほしい要素などはありましたか?

青沼『ゼルダ無双』チームの皆さんの、『ゼルダの伝説』というゲームに対しての理解度と、それを自分たちのゲームとしてまとめ上げる力は、前作の『ゼルダ無双』のときに強く感じさせてもらったので、私からはとくに「こうして欲しい」というお願いはしていませんし、本作もその力には改めて驚かされました。

松下ありがとうございます。ただ本作の基本方針として“本作ならではのオリジナリティと新体験のあるものにしてほしい”という点はオーダーとしていただいていました。とてもうれしい反面、とても身の引き締まる思いでした。そういったお墨付きをいただけたことで、本作でしか描けない“大軍に無双するアクションゲームとしての『ゼルダの伝説』”が、ユーザーの皆さんにとっての新体験になるよう、思い切って挑戦できました。

――逆にこれだけは絶対にやらないでほしいという要素はありましたか?

青沼題材は『BotW』ですが、“戦い”に絞ったゲームである『ゼルダ無双』は、“無双として描くコツ”のような物があるのだろうし、それをやる上では『BotW』の枠をあまり意識せずにはっちゃけて欲しい、という思いがありましたので、監修を行うゼルダチームにも、そういう目線で見て欲しいと伝えていました。

松下そうですね、むしろ「もっとやってほしい!」と一貫して言っていただいておりました(笑)。いただいたチャレンジにしっかり受けて立つ! という使命を持って、チーム一同開発を進めていました。たとえば、リンクがリモコンバクダンを4発連続で投げて、しかも4発目はダメ押し! そのままボコブリンの拠点ごと破壊できたりするのは、その回答のひとつかもしれません。

――コーエーテクモゲームスとの監修などのやり取りはいかがでしたでしょうか。

青沼監修のリーダーである『BotW』のディレクターの藤林と話していたのですが、私たちが開発時に大切にしていた部分をキチンと汲み取っていただけたり、最初にお願いした企画意図を正確に表現してもらっていて、まずもって『BotW』に対する愛情に驚きました(笑)。どのあたりかはネタバレもあるので、プレイして体験していただければと思います。

 ただ、その愛故か、開発当初は世界観を大切にしていただき過ぎて『ゼルダ無双 厄災の黙示録』ならではの“いま明かされる100年前のエピソード度”が少なかったのですが、打ち合わせをおこなわせてもらうたびに、どんどんとゲーム内容やシナリオが豊かに膨らんでいき驚いたのを覚えています。

松下ありがとうございます。ゼルダチームの皆さまの『BotW』への深い愛情を改めて感じるとともに、世界と戦うコンテンツの品質やものづくりへの姿勢に間近で触れられたことが、何より開発チームにとっても貴重な経験となりました。

『ゼルダ無双 厄災の黙示録』インタビュー。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』のよさを残し、無双アクションを実現した開発秘話が語られる

より深く語られる、開発秘話

――『BotW』のエピソードを無双で描いてほしいというお話をいただいたときは、どう感じたのでしょうか。

松下レジェンド級のゲームにまつわる作品を作れること、しかもその100年前のエピソードを描けるということで、ありがたいチャンスをいただいたと感じました。ただ、大きな驚きとうれしさ、責任感のあとで、正直“困ったな”という思いもありました。なぜならば、『BotW』は100年間の眠りから覚めたリンク=プレイヤーが、100年前の記憶を、自分の手で取り戻しに行く物語です。そのため、“100年前の世界”は、プレイヤーがゲームプレイの中で手にしたものが、絶対に最高の姿だと思います。本作で100年前を描くにあたっては、『BotW』プレイヤーそれぞれが持つ100年前と向き合いつつ、懐かしさと新体験のいずれも感じていただけるように意識しました。

――開発は前作に引き続き、今回もTeam NINJAとω-Forceのチーム共同開発なのでしょうか?

松下今回はω-Forceが主体となりましたが、ゼルダファンの方をはじめ、多くのゲームファンから好評をいただいた『ゼルダ無双』のスタッフには初期段階からチームに入ってもらって、しっかり“ゼルダと向き合う”ための熱量やエッセンスを吸収して進めました。

早矢仕開発チームメンバーはほとんど違いますが、前作『ゼルダ無双』で大事にしていた点や反省点などの想いをしっかり継いで、形にしてくれたと思います。

――グラフィックはもちろんのこと、フォント、UI、SEなども、『BotW』に準拠していることに驚きました。改めて『BotW』はかなり研究されたのでしょうか?

松下ゼルダチームから資料の提供はもちろんいただいたのですが、CGチームに『BotW』の熱狂的ファンが多く、個人の『BotW』のゲーム進行度も、みんなかなり進んでいました。ちなみに、“息吹の勇者”装備(※)をみんな持っていましたよ(笑)。『BotW』の世界でどうなっていたかを確認することを、我々は“ロケハン”と称していたのですが、誰のセーブデータでロケハンしてもデータが充実していて、調べものが楽でした。

※“息吹の勇者”装備……120ヶ所に用意された試練の祠を、すべてクリアーすると入手できる装備シリーズ。歴代リンクが着ていた、おなじみの緑色の衣装。

――『BotW』の独得のグラフィックを再現しながらも、無双アクションに必要なリソースを担保されるのは苦労されたのではないでしょうか。

松下ゼルダチームのご協力もあり、いままでの『無双』シリーズのノウハウもあったのですが、“BotWの世界で無双する”というハードルは、画作りとしても技術的にもとても高いものでした。監修でご助言いただきつつ、キーポイントを少しずつつかんでいき、段階的に『BotW』の世界に近づけていけました。なお、"『BotW』の画があるから、作るの簡単でズルイ!"と社内の他のチームに言われたら勝ちだ! というスローガンでがんばりました。

『ゼルダ無双 厄災の黙示録』インタビュー。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』のよさを残し、無双アクションを実現した開発秘話が語られる

――ゼルダチームからは、かなり細かいところまで監修を受けたのでしょうか?

松下ストーリーやキャラクターについては『BotW』の世界をしっかり継承するために厚く監修していただき、一方でアクションについてはある程度こちらに任せていただきました。ただ、中には一部設定に関わるものもあります。たとえば、ミファーは空中で水流を生み出しながらドルフィンキック泳法で飛ぶのですが、泳ぎの優雅さ、ゾーラの姫らしさについては何周もご意見をいただきました。「カーブでのバンクはもうちょっとこんな角度」など、細かい監修をしていただきましたね。反面、そもそも飛ぶこと自体についてのツッコミはとくにいただきませんでした。本作ではすべてのキャラがチャレンジングな“無双ならではの拡大解釈アクション”をくり出しますが、いずれも監修では「もっとこうしたほうがおもしろい! キャラの魅力が出せる!」と、ゲームの天井を上げる形でのコメントをいただき、純粋に本作のおもしろさを伸ばすことができました。

――ストーリーの流れなどの原案は、どのように作成されていったのでしょうか?

松下ゲームに必要な要素を混ぜ込んだ上で、こちらから骨子を提案させていただき進めました。最初期のおおまかなストーリープロットの段階から監修いただき、肉付けしていく際も“過去世界であり、新体験である”といった点のバランスを取りながら、その都度丁寧に監修いただきました。ちなみにですが、監修していただく中では「じつはこういう設定があって……」、「このキャラクターはじつは……」というお話も聞かせていただきました。『BotW』のいちファンとして当然かなり興奮していたのですが、あまりそんな顔を見せるのもパートナーシップとしてよくないかも……と思い、なんとか顔に出さないように努めました(笑)。

早矢仕補足ですが、前作の『ゼルダ無双』でより改善したいと思っていたもののひとつが、ストーリーでした。ゲームで実際にご体験いただきたいので詳細の説明は避けますが、『ゼルダの伝説』シリーズが好きな方がより盛り上がるストーリーになっているかと思います。

――リンクや英傑たちはアクションが想像しやすいですが、忍者のようなインパ、シーカーストーンを強くフィーチャーしたゼルダのアクションには驚きました。どのような発想で生まれたものなのでしょうか。

松下ゼルダについては、最後まで悩みがありました。どこまでいっても戦うお姫様ではないはずなので、当然のように無双アクションをすることはありません。ただ、使命感に溢れた人であるので、もしこの状況であったら取るはずである行動として生まれたのが、シーカーストーンによるアクションでした。

 インパのアクションについてはスムーズに進みました。シーカー族は術で戦うという点と、序盤の3人パーティのバランスとしても、正統派の戦士であるリンク、魔法のような戦い方をするゼルダ、そしてもうひとりはトリッキーな性能を持つ、忍者スタイルのキャラクターがピッタリ。ということで、自然と着地したように思います。

『ゼルダ無双 厄災の黙示録』インタビュー。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』のよさを残し、無双アクションを実現した開発秘話が語られる

――料理やパラセールなど、『BotW』にあった要素を本作に落とし込むために苦労された点はありますか?

松下“『BotW』はリンクひとりの冒険”だったのに対し、本作は仲間との共闘であるというのがポイントであり、本作だけで味わえる新体験として入れ込んだ要素です。料理もパラセールにも共通し、最大4人のキャラクターでバトルに出撃できるので、4人で料理を食べて、4人でパラセールや翼などで空を飛びます。そこに苦労があったとすれば、「このキャラクターが料理を食べるシーン……?」であったり、「このキャラクターが……飛ぶの……?」といった、想像しにくい部分を補間することでした。そこは、ぜひ皆さんのプレイを通して目撃していただきたいです。

――広大な戦場で戦う『無双』シリーズでありながらも、建物の中を細かく探索できたりする要素に驚きました。やはり原作の中にあった探索要素を意識されたのでしょうか?

松下本作は戦争を描いた物語であり、バトルが始まってからは緊急事態であるので、じつはじっくり探索をさせようという意図はありませんでした。ただ、ステージは『BotW』で実際にあったロケーションをベースにしており、その100年前の姿として復興したものです。無双アクションのためにアレンジされた部分も当然大きくありますが、『BotW』をもとにさせていただいている以上、どうしても人に探索・探検をさせてしまう魅力が出ているのだと思います。そんなプレイヤーの探検欲に応えるためのご褒美は、しっかり用意してありますよ。

――武器は合成システムを採用していますが、さすがに『BotW』の武器システムは無双アクションには合わないと判断されたのでしょうか。

松下武器を集めたり、武器が壊れる要素や、暑さ・寒さといった要素は、『BotW』で“リンクひとりの冒険・サバイバル”を楽しむためのものだと思います。本作ではゲーム性の違いから省略しました。

――シーカーストーンのアクションがキャラクターごとに異なるのはおもしろい要素だと思います。それぞれに特徴をもたせるのはたいへんだったのではないでしょうか。

松下それが案外すんなりと決まったんですよ。『BotW』のキャラクターたちはいずれも性格・戦いかたに強い個性があるので、特徴を持たせやすかったのです。たとえば、“ビタロックで戦ってください”と言われたらリーバルならどうする? という質問に対して「リーバルは当然こうする!」などと、大喜利的に意見を募って、アクションを当てはめていったんです。みんな回答がすごく早かったですね(笑)。

――通常の敵との戦いは無双らしく、ボス敵との戦いは回避やカウンターを主体としたアクションが鍵を握っています。これは原作要素を意識したバトルシステムなのでしょうか。

松下“注目”や“回避ジャスト”などといった要素は『BotW』からの引用ですが、リンク以外のキャラクターがそれらを駆使する姿はしっかり新体験となるので、バトルシステムとして導入しました。本作ではこういった“うまいアクション”以外にも、シーカーストーンや地形の属性を利用することで強敵との戦いを楽にできる手段があります。『BotW』はリンクが世界のすべてを攻略していくゲームであり、その手段は戦いだけでなく無限大に多彩であったと思います。対して、戦争を描く本作の攻略対象は、敵キャラクターが中心となります。戦いの攻略アプローチが複数あり、周囲のヒントからそれらを見つけて選びとっていくゲームプレイとすることが、原作要素を強く意識したところです。ですので、たとえばゲーム中にジャスト回避を1度も成功できなくても、ゲームをクリアーできるようになっています。アクションが苦手なプレイヤーにも、ぜひチャレンジしていただきたいです。

早矢仕前作『ゼルダ無双』と『BotW』が融合したアクションを実現できたように思います。最初はバトル要素が多い様に感じるかもしれませんが、松下Dがお話した通り、“バトル攻略の多彩さこそ、『BotW』の多彩さ”を、無双に落し込む際に必要だと思って開発しました。ぜひさまざまな攻略法を探してみてください。

『ゼルダ無双 厄災の黙示録』インタビュー。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』のよさを残し、無双アクションを実現した開発秘話が語られる

――『無双』シリーズと言えばギターサウンドが特徴で、前作の『ゼルダ無双』ではロックアレンジされたBGMになっていました。本作のBGMは『BotW』を踏襲したアレンジが多いように感じます。今回のサウンドコンセプト、こだわった点などをお聞かせください。

松下『BotW』ではリンク独りで失われた世界を旅していて、サウンドはその冒険の端々で、100年前の一端のようなものを感じさせてくれました。本作では、その世界でくり広げられた戦いのさ中を描くため、『BotW』のサウンドが感じさせた一端を掘り起こして、風化していた戦いの激しさや力強さをライブで表に出してもらうようなかたちで進めていきました。当初はロックなギターサウンドを入れるという案もありましたが、大軍のぶつかり合う規模感、物語の重厚さを表現するにはオーケストラがふさわしく、そこに『BotW』でフィーチャーされていたピアノサウンドや印象的な楽曲を本作でも採り入れようという方針で臨み、アレンジ・新曲ともに『無双』らしさと、『BotW』らしさが共存できるよう心掛けて制作しました。ゼルダチームのアドバイスもあり、100年前の世界でくり広げられる戦いの物語を音でも表現できたと思います。

――『BotW』に比べると、今回はボイスの量が非常に多いように思いますが、こだわりなどはありますか?

松下本作ではアクションの掛け声などハードな内容の収録が多かったのですが、声優陣の皆さんは、厄災に勝つ気まんまんでスタジオに来ていただいたようで、『BotW』では戦わなかったキャラクターたちも、戦う姿がありありと浮かぶような、しっくりくるボイスをいただけました。“戦う英傑”の声を聴いた瞬間は、現場にいたサウンドディレクター含めて、私も非常に感動したのを覚えています。ちなみに、ゼルダ姫が演説でハイラルの兵たちを鼓舞するシーンを収録する際、演説後の兵たちの「オー!」という掛け声の音声がまだ入っていなかったのですが、収録ブースの外にいた開発チームメンバーたちから、自然と「オー!!」と声が出てしまいました。「絶対勝とう!」と思いましたね(笑)。

――最後に、松下さんと早矢仕さんから読者の方々へメッセージをお願いします。

松下世界中の多くの方が夢中になった『BotW』は、リンクが100年前を取り戻しにいく物語でした。厄災との戦いがどのような結末を迎えるのか。本作では100年前に戻って、もういちどリンクになった皆さんが、知られざる未来に向かって戦い進んで、確かめてみてください。

早矢仕前作『ゼルダ無双』は“ゼルダのアタリマエ”を、たくさん詰め込むコンセプトで開発しました。その後リリースされた『BotW』は見事に“アタリマエ”が見直されていて、驚いたことを覚えています。結果として本作は、その『BotW』に刺激を受けた“新たな『ゼルダ無双』”を表現できたように思います。無料体験版も配信中ですので、『ゼルダ無双』を遊んだことない方も、まずは体験版で1度遊んでみてください!

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