『Among Us(アマング アス)』。この名前をこの夏から秋にかけて目にしたユーザーは多いのではないだろうか? 知る人も多くなっているこの作品は、現在世界的に大ヒットを巻き起こしているタイトルで、その人気はまさに歴史的といっていいものとなり、それを示す数値を各所で記録している。

 人気が出てきたのが今年2020年の7月。それまで、ランキングどころかタイトル名すら知られていなかったタイトルだったが、9月には何とSteamの売上でトップ、プレイ数でも時間帯、日によってはトップ、月次においてもトップ3に入るほどになった作品だ。

 そんな注目の作品においてファミ通ドットコムでは、ゲーム概要からおもしろさのポイント、開発のエピソード、そして具体的な攻略法といったものをシリーズとして伝えていこう。

 まず、第1回となる今回はゲーム概要と、歴史的ともいえるその快挙を説明していく。

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『Among Us』特集(全5回予定)

  • Among Us』とは? そのゲーム性と数字・記録で見る人気の秘密(今回)
  • 開発の軌跡 たった3人のチームが作った奇跡 家庭用ゲーム機版は?
  • 『Among Us』で勝つために Crewmate編
  • 『Among Us』で勝つために Impostor編
  • 『Among Us』を楽しむための設定・小ネタ編
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どんなゲーム? 最大10人で遊ぶ人狼系ゲーム

 この作品を端的にひと言で表すと“人狼”。Crewmateという宇宙飛行士に紛れ込む、Impostor(詐欺師・偽物)を探す、もしくは逆にCrewmateたちをやっつけるというゲームだ。AndroidとiOSでもアプリが出ているほか、PC、Steamにて配信されていて、クロスプレイによる異なる端末どうしでのプレイも可能。最少人数として4人以上が必要になる、マルチプレイが前提となっている作品となっている。

 少し前には『Project Winter(プロジェクトウィンター)』という同系列のゲームも流行を見せたが、そういったゲームとの比較も含めてこの作品の特徴を挙げていこう。

  • 日本語対応してないながら、触れればある程度理解できるシンプルルール・操作
  • ワンプレイ5~15分程度で終わる手軽さ
  • 要素がとにかくシンプルで何度遊んでも飽きがきづらい
  • 何より人とのやりとりが楽しめる
  • 実況映えする(これが人気爆発となった最大の要因とも言える)

 といったところになる。とくにほかの作品との比較点を挙げると

  • よりもシンプル・簡素で、結果気軽さという点につながっている
  • さくっと遊べる
  • どちらサイドになっても爽快感が味わえる

 といったところが挙げられる。シンプルさは、よくも悪くも制作したデベロッパーが3人しかいない本当のインディータイトルであることが起因となるが、いまとなっては余分なものが結果的にもなかったことが大きなポイントとなっている。

 端的に、ゲームとして“単純ながらおもしろく、かつ何回も遊べる”、これこそが『Among Us』のおもしろさを表現できるコピーとなる。その一方で、そのほか外的要因において”時代がマッチした”という点も、人気に火をつけた見逃せない要因として挙げられる。

  • 実況プレイ、視聴の普及
  • Discordを主としたボイスチャットを使ったプレイの普及
  • コロナ禍によるお家時間の増加(新しいコミュニケーションの形・需要増)

 このゲームは多人数プレイが前提ではあるが、そのやり取りはテキストチャットがベースとなる。標準機能でボイスチャットはないのだが、じつは人気が出て広がった要因として、そのボイスチャットでのやり取りが行われ、またプレイする人たちも同様に行える環境・時代になったことが挙げられる。

 テキストに比べて音声でのやりとりは何倍、何十倍ものデータを有し、感情・抑揚も含めたコミュニケーションが楽しめる。結果、ボイスチャットのありなしで大きく楽しさ、プレイスタイルが異なってくることになり、かつその様子、人間模様が“ドラマ”として楽しめるから、今日の人気につながったといえるのだ。

 また、コロナ禍においてはNintendo Switch及び『あつまれ どうぶつの森』が記録的なセールスになったことは多くのメディアでも語られているが、ゲームを遊ぶ、そして同時にオンラインによる友だちと楽しめるものとして、この作品にも注目が集まった点も欠かすことができないだろう。

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 シンプルながらするめのように何度も楽しめる、また人と人とのコミュニケーションが楽しめる作品と言える。

ブームの火付け役となった要因は?

 いくらゲームがおもしろくても人気が出るとは限らず、それを示す事実として、じつはこの作品、ベータとしてまず世に出たのが2018年6月で、Steam版は同年11月、つまり約2年前の作品なのである。ここから、当初から注目されたものではないことと、現在の人気を理解する人がいなかったことがわかる。“鳴かず飛ばず”という言葉がぴったり当てはまるといっても過言ではなく、インディーメーカーゆえ、何か大々的なプロモーションを行えたわけでもなかった。それを示すかのごとく2020年1月には新規要素の追加はもう行わないと事実上の開発終了宣言もされたのである。

 そんな、一度は終わったタイトルが脚光を浴びて評価されるようになった火付け役は何なのか?

 人気爆発の大きな要因のひとつとされているのが、Twitchフォロワー約280万を誇るSodapopinが2020年7月に実況で取り上げたからとされている。それを受け、同時に開発者によるゲームのストリーミングも開始されたが、その反響に続く形で9月までにxQc、Pokimane、Shroud、Ninja、PewDiePieといったそうそうたるトップストリーマーによる実況が行われ、結果プレイヤーの増加につながったのである。もちろんそれら実況にとどまることはなく、ストリーマー、及び視聴者・プレイヤーが「このゲームはおもしろい!」となり、プレイヤー数が増加していったことは言うまでもない。しかしこのゲーム、最低4人、現実的には8人程度必要で、かつボイスチャット利用が好まれるという、遊ぶためのハードルがやや高いにも関わらず、実況、及び実際のプレイ数が激増したのである。

 中心としてアメリカで人気を集めることとなったのだがが、じつは当初、アメリカよりもメキシコ、ブラジル、韓国で人気であり、現在ではその人気はその他各国に飛び火し、もちろん日本においてもそのプレイヤー数の増加が起きている。全世界的に共通的に人気が出ているのである。日本においても、有名YouTuber、VTuber、ゲーム実況者の実況・プレイ動画を見た人たちも多いのではないだろうか?

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ボイスチャットがなくてももちろん楽しめるが、ボイスチャットがあると実況・視聴・プレイいずれにおいても数段おもしろさが上がる。

『Among Us』が築いた記録の数々

 さて、実際に『Among Us』が叩き出した歴史的な記録の数々を紹介して、今回の終わりとすることにしよう。次回は開発の経緯と今後のアップデート、家庭用ゲーム機への展開などについてお伝えするのでお楽しみに。

■Steamnにおける月間平均プレイ人数、及び最大同時人数が驚異の成長率に

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■YouTubeが発表した9月の月間視聴に関するアナウンスで、なんと『Among Us』に関するビデオの視聴が9月のひと月で“40億”を優に超える数字に。
出典 :YouTube Culture & trends "Among Us" Surged in September

■ニューヨーク・タイムズの特集において、TikTokで『Among Us』のハッシュタグがついた動画の再生回数は130億回を記録
出典 :ニューヨーク・タイムズ Everyone’s Playing Among Us

■9月後半に1億ダウンロード、及び週間のプレイ人数がピーク時においては380万に達する(すべてのハードにおいて)
出典 :@forte_bass Twitter

■10月に入って米国下院議員が選挙に呼びかけるために『Among Us』の実況を行い、約43.5万の最大視聴数を記録
出典 :アレクサンドリア・オカシオ=コルテス氏Twitch

『Among Us』Steamページ
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■筆者:たむ爺
カセットビジョン時代からゲームを触ってきた古の人