ユービーアイソフトより、2020年10月29日発売予定のプレイステーション4・5、Xbox One、Xbox Series X・S、PC用オープンワールドアクション『ウォッチドッグス レギオン』。

 プレイヤーは荒廃したロンドンを取り戻すべく、ロンドン中の市民をリクルートしてメンバーに迎え、レジスタンス活動を行う。住民の誰もがプレイアブルキャラクターであり、「誰にでもなれる」と謳う野心的なゲームシステムが特徴のシリーズ最新作だ。

 ここでは、本作のクリエイティブディレクターを務めるClint Hocking氏へのインタビューを掲載。本作の物語や見どころ、オンライン協力プレイなどについてうかがった。

Clint Hocking

クリエイティブディレクター

――これまでのシリーズではアメリカを舞台としてきましたが、今回、舞台をロンドンにした大きな理由は何でしょうか?

Clintウォッチドッグス』シリーズは、政権の座にあるものに責任を取らせ、テクノロジーと社会にもたらす結果をテーマにしていますが、これはどんなところにも起こりうるグローバルなテーマです。そしてテクノロジー、自由、民主主義、経済などとの関連性において、ますます現実の問題になりつつあります。このようなグローバルな視点を反映するために、第3作は北米以外の場所がいいのではないかと思いました。

 もうひとつの重要な要因は、どのキャラクターでもプレイできるというゲームの主要なイノベーションを考慮した際に、人口の多様性に富む都市を選びたいと思いました。誰にでもなれるわけですから、単一民族の国より幅広い選択肢のあるところのほうがいいですよね。その意味でロンドンは世界で最も多様性に富んだ都市ひとつであり、さまざまな大陸、何百という国から移り住んできた人たちが300種類以上の言語を使っています。

 とくに私たちがフォーカスしたロンドンの中心部は何十年、何百年に渡って何度も移民の波が押し寄せたため、非常に多様な文化を持つ変化に富んだ場所です。これらがロンドンを選んだおもな理由です。

『ウォッチドッグス レギオン』開発者インタビュー。「チームの誰もが物語のヒーローに。追加キャラクター“エイデン・ピアース”では専用のセリフやスクリプトで物語を楽しめる」

――本作では謎の組織“ゼロデイ”や、民間軍事企業“アルビオン”との対立を描いていますが、ほかにはどのような組織が関わってくるのでしょうか?

Clintゲームの中の英国政府は機能しておらず、資金不足で崩壊し始めています。市警察は権力を失い、アルビオンやケリー・クライム・シンジケートの組織的犯罪、ブルームなどの大企業が力をつけています。これらは直接的な敵ではないですが、すべてヴィランであり、デッドセックは彼らとも戦っています。SIRS(シグナル・インテリジェンス・レスポンス・サービス)は新たに作られた諜報エージェンシーで、市民の行動を監視しています。プレイヤーが関わるほとんどのグループは反対勢力と言えますね。

 MI6はゲームには登場しませんが、SIRSはストーリーのさまざまな部分で関わってきます。大きな要素としてはAアルビオンの軍事力を抑制しようとする計画を明らかにすることです。またSIRSがスーパー・コンピューターおよびフィラメントと呼ばれるシステムを使って、市民を追跡し、ハックして監視しています。ケリー・クライム・ファミリーなどのグループは奴隷、臓器、人身売買だけでなくドラッグ取引、闇市場にも網を張り巡らせていますし、多様な要素がワールドとストーリーの背景となっています。

『ウォッチドッグス レギオン』開発者インタビュー。「チームの誰もが物語のヒーローに。追加キャラクター“エイデン・ピアース”では専用のセリフやスクリプトで物語を楽しめる」

――特定の主人公を採用しなかったことで、シナリオライティングのうえで苦労したことはありますか?

Clintメイン・ヒーローなしにストーリーを語る際には、いろいろな課題に直面します。同時に多くのゲームやメディアはストーリーのヒーローとして、チームやグループを使うことがあります。強盗をテーマとした映画『オーシャンズ11』では、チームがフォーカスされていますし、FIFAなどのスポーツゲームも特定の個人ではなくチーム全体とそのチームのジャーニーをプレイします。

 誰にでもなれるという私たちの画期的取り組みのコアは、ストーリーを提供することのない人々のチームをプレイするというのではなく、リクルートした人は誰でもゲームのヒーロー、ストーリーのスターになれるというところです。

 カットシーンではプレイしているキャラクターがそのシーンに登場し、それぞれのストーリー、背景、人生に応じて独自のスクリプト、セリフ、アニメーションが変化します。70才の女性と物騒な地区に住む22才の若者のシーンはまったく違うものになります。単にキャラクターを置き換えているだけではなく、シーンの長さやカメラアングル、照明も異なり、どのキャラクターをプレイしているかによってダイナミックに組み立てられます。

――ザビーネなどの登場人物を深く堀り下げるようなサブクエストなどはありますか?

Clintもちろんです。ちょっとネタバレになりますが、ストーリーのひとつのセクションはザビーネに関係したものです。ゲーム内で出会うキャラクターは全員、メインストーリーの一部をクリアした後にサイドミッションを提供してくれます。そこから彼らの人となりや動機について、詳しく知ることができます。

『ウォッチドッグス レギオン』開発者インタビュー。「チームの誰もが物語のヒーローに。追加キャラクター“エイデン・ピアース”では専用のセリフやスクリプトで物語を楽しめる」

――住人のリクルートを行うことが、プレイのテンポやスピード感を損なうようなことはないでしょうか?

Clintゲームデザインの柱のひとつは、プレイヤーが好きなやり方でゲームと関わり、ゲームに挑戦できるようにすることでした。銃器や爆発物を頻繁に使うこともできますし、隠れながらステルスで進むこともできます。またハッキングやドローン、ビークル、リモートカメラ、ロボットを駆使することも可能です。

 それと同様に、プレイヤーにはどれだけリクルートをやり込むかをご自身で決めてほしいと思っています。テストプレイではゲームを通して5~6人しかリクルートしなかった人もいましたし、1週間ほどプレイして25人以上をリクルートし、まだゲーム半ばという人もいました。プレイヤーはそれぞれ関わり方が違います。コレクションにこだわりたいのであれば、すべての異なるキャラクターでプレイして、おもしろい人物やストーリーを見つけることができます。

――過去シリーズのキャラクターが登場しますが、彼らにも専用のスクリプトが用意されているのでしょうか?

Clint『ウォッチドッグス』のヒーローであるエイデン・ピアースがプレイアブルキャラクターとして本作に登場します。スクリプト全体がエイデンのために書き直されていおり、専用のセリフが用意されていますので、ゲームを通してエイデンとしてプレイすることが可能です。また、『ウォッチドッグス2』のレンチでもプレイできることを発表しました。エイデン、レンチのストーリーコンテンツが提供されます。ほかにも詳細が決まっていないものがまだあります。

『ウォッチドッグス レギオン』開発者インタビュー。「チームの誰もが物語のヒーローに。追加キャラクター“エイデン・ピアース”では専用のセリフやスクリプトで物語を楽しめる」

――オンライン協力プレイの際には、フレンドの世界に自分のチーム全体を連れていくのでしょうか?

Clintオンラインでプレイする場合は、もうもうつ別のチームを作ります。つまり、シングルプレイヤーでプレイするチームがあり、これがシングルプレイヤーのプレイ経験となり、オンラインでプレイする時は別のチームがあり、リクルートの方法も異なります。プレイヤーのオンラインチームとフレンドのオンラインチームがワールドを共有していっしょにプレイすることになります。

――本作のロンドンは、伝統的な建物と最新のドローン、先鋭的なアートが組み合わさり、現代よりも"かなり尖った"街並みとなっています。ゲーム内では、タワーオブロンドンや古い教会なども中身がハイテク化されていたりするのでしょうか?

Clintおっしゃる通りです。ゲームのメジャーなロケーション、とくにゲームのクライマックス・シーンとなる場所、バッキンガム宮殿の内部に入るミッション、超富裕層が住む通称アイスバーグ・マンションなどで、さまざまなインテリアが見られます。ロンドンは密集地帯であり規制が厳しいため、建物は高さ広さとも制限されています。そこで超富裕層、ビリオネアたちは地下を深く掘り下げてマンションを建てているのです。このゲームではこのような非日常的なものを経験することができます。

『ウォッチドッグス レギオン』開発者インタビュー。「チームの誰もが物語のヒーローに。追加キャラクター“エイデン・ピアース”では専用のセリフやスクリプトで物語を楽しめる」

――クリエイティブディレクターのClintさんだからこそ知る、本作のロンドンのおすすめスポットやお気に入りの場所はどこでしょうか?

Clintそうですね、私は買物に結構な時間を費やしました。10~20人のチームを持っていて楽しいことは、全員をカスタマイズすることです。それぞれ性格やスタイル、アクセント、声が違うので、どんなものが似合うのか何となくわかります。リージェントストリート、ピカデリーサーカス、ショーディッジ・エリア、オールドスピタルフィールドなどのマーケット、レスタースクエア、カムデンハイストリートなどへ買い物に行くのが好きです。

 クールなパンクスタイルや、ほかにはないものを見つけることができます。どんな人がチームに入っているかによりますが、20以上の異なるショッピング地区があり、ほとんどの地区には3~4、多いところでは10~12の店舗があるので、個々のキャラクターに合ったスタイルを表現することができます。

――デモ版をプレイしましたし、実際にロンドンに行ったことがありますが、本作のロンドンはとてもカオスでクールですね。

Clint現在のロンドンはもちろん課題はありますが、かなり平和なところで、ロンドン市民は控えめですが親切です。ゲームの中では武器を持ったガードがいてドローンやミサイル、ショットガンがあちこちに見られ、チェックポイントではタレットが人々を追跡しており、非常に独裁的で攻撃的な世界です。そしてもちろんプレイヤーがそこへ放り込まれるや、かなりのカオス状態になります。

 ロンドンの人々、場所の雰囲気、そしてこうした圧力をかけられた時に、この場所がどうなるのかを想像し、本物らしく同時に新鮮に感じられるように努力してきました。ロンドンに行ったことがある方は、ここはロンドンだと認識されると思いますが、そのときとは違うエキゾチックな場所になっていると思います。

――本作にはさまざまな音楽や楽曲が登場しますね。

Clint非常に人気のあるロンドンのアーティスト、Stormzyに出演してもらうことができました。ゲームに登場するだけでなく、彼を助けるミッションがあり、この部分のビデオはシングル曲に使われています。音楽はロンドンの重要な部分を占めるので、そこをうまく捉えることができてうれしく思っています。

『ウォッチドッグス レギオン』開発者インタビュー。「チームの誰もが物語のヒーローに。追加キャラクター“エイデン・ピアース”では専用のセリフやスクリプトで物語を楽しめる」

――日本のファンにメッセージをお願いします。

Clint現在はロンドンを訪問できる状態ではなく、出かけることも難しいです。ロンドンに興味のある方、近未来のダーク版ロンドンに興味のある方々が、この機会にバーチャルで訪問して楽しんでいただければと思います。美しく本物らしく生き生きとしたロンドンを表現するために、制作チームががんばってきました。皆さんにも、私と同じようにロンドン滞在を楽しんでいただけたらうれしいです。