セガ設立60周年と、ゲームギア誕生30周年という記念すべき年に華を添える“ゲームギアミクロ”がついに完成。あとは10月6日の発売を待つばかりとなったこのタイミングで、製作に携わったセガの物販チームのキーパーソンのもとを訪ね、このプロジェクトの発端や開発エピソードなどを尋ねた。すると、本邦初公開となるセガ60周年記念グッズの詳細や、つぎの“ミニ”に関する情報まで飛び出した! セガファン必見のインタビュー、どうぞお楽しみください。

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奥成洋輔(おくなりようすけ)

セガ ジャパン事業部 営業部 物販チーム クラシックハードプロデューサー

松田愛依子(まつだあいこ)

セガ ジャパン事業部 営業部 物販チーム チームマネージャー

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イベントグッズしか作ったことがなかった部署に、メガドライブミニの開発に携わったセガ大好き社員が参加して……

――ゲームギアミクロは、松田さんがプロジェクトの統括をされて、奥成さんがコンテンツのアイデア出しをされたそうですね。まず、おふたりが所属するチームのことを教えてください。

松田もともと物販チームは、Tシャツやピンズなど、セガのコンシューマータイトルのグッズを製作して、セガフェスや東京ゲームショウなどの会場や通販で販売をしています。チーム自体は4年ほど前にできたのですが、今回ゲームギアミクロを製作するにあたって、2020年の4月に奥成が異動してきたという流れになります。

奥成セガ60周年にあたり、昨年からいろいろな企画を松田が検討していたんです。

松田ゲームギアミクロは、以前からセガトイズが温めてきた企画でした。その話が私のところへやってきたのが昨年10月くらいで。その段階では、「物販グッズのひとつとして、開発して売ってみない?」というとてもライトな話でした。

――グッズと言っても遊べるわけですよね?

松田はい。どう考えてもただのグッズじゃないですよね(笑)。過去に扱ったことがない規模感で不安でしたが、おもしろい話でしたし、60周年を謳う代表となる商品が必要だったので挑戦してみようと取り掛かりました。それですぐ、ご意見番として奥成にタイトルラインナップの相談をしました。なにぶん、私はクラシックゲームに詳しくありませんので(笑)。

――昨年10月と言えば、メガドライブミニが発売された直後です。

奥成おかげさまで非常に好評をいただきましたメガドライブミニは、メガドライブ発売30周年を祝うという会社の命題のもとに開発したもので、“一度きりの花火”と言いますか、「継続はありません」ということをそのころのインタビューでもお話させていただいていました。でも僕自身は、もちろんこれだけに終わらず、「もっといろいろなことができれば」という気持ちは持っていまして……。ゲームギアミクロは、そもそもの企画の立ち上がりが、物販チームが手掛ける“グッズ”であると。そしておりしもメガドライブミニが成功に終わり、セガ好きの社員みんなが「楽しかったよね」と高まっている空気の中、「そうか、グッズなら作ってもいいのでは?」と気がついたんです(笑)。

――絶好のタイミングでしたね。

奥成このチャンスを逃す手はないと、わりと前のめりに参加させていただきました。

松田プロジェクトが正式に動き出したのは、今年の1月になってからでした。

――おそろしいほど最近ですね!?

奥成じつは、会社設立60周年を祝うセガフェスを6月に予定していて、そこで販売する予定でした。ですから、「これ間に合うの?」という状況からのスタートだったわけです(笑)。

松田そこから予定を切り替えて、セガフェスでお披露目して、その場でお客さまに試遊していただき、ゲームショウのタイミングで販売するように段取っていました。ですが、それらもご時世のため、もろもろ中止に……。

――それで現在の販売形式になったんですね。

奥成僕は当時アジア事業部にいて、仕事を掛け持ちしながらも、こちらのプロジェクト自体をずっと続けられたらいいなと思っていて。そこへ宮崎(※宮崎浩幸氏。セガ ジャパン事業部 副事業部長。メガドライブミニのプロジェクトの統括を担った重鎮)から異動の話が出まして。いま仕事は基本的にテレワークなんですが、「明日から実施です」という日に内示があり、まさに青天の霹靂でした(笑)。

松田弊社でテレワークが始まったのが2月末でしたが、本当に直前でした。私も、「よそのチームの人にこんなに働いてもらっていいのかな?」と心配していたころで(笑)。ゲームギアミクロのコンセプトやタイトルラインナップなど、商品としての精度を上げるために、できる限り奥成のアイデアを採用していたのですが、明らかにめちゃくちゃ工数がかかっていて。彼の部署から人件費を請求されないか不安になるほどでした(笑)。ですから、チームに加わってからは、思いっきりお願いできるようになってよかったです。……そこでやっと気がついたんですが、これはやっぱりグッズじゃなくて、ゲーム機だなって(笑)。

ゲームギアミクロ完成おめでとう! と伝えに行ったら、セガの新作グッズが続々登場。つぎの“ミニ”のことまで聞けました【インタビュー】

――そこで気がついたと(笑)。これまで扱っていたグッズとは工場から違うのでは?

松田まったく違います。ゲームギアミクロの製作はセガトイズが担当していて、ハードウェアの製作やパッケージなどのデザインワークはメガドライブミニに携わったメンバーがそれぞれ引き継いでいますので、教わりながら進めました。高い熱量で仕事をするメンバーばかりで頼もしかったです。そのぶん私は、会社から予算をもぎ取る役に徹することができました(笑)。

奥成セガトイズの担当もメガドライブミニに携わっていて、みんな実績があります。これにソフトの移植を手掛けたエムツーさん(※レトロゲームの移植技術に高い信頼を集めるソフトウェア開発会社。『SEGA AGES』シリーズやメガドライブミニ、PCエンジンミニなどの開発に携わる)が加わればほぼ同じ陣容で。タイトなスケジュールでもなんとかなると確信できました。メガドライブミニが開発準備期間を含めて発売までに2年以上かかったことを考えると、ゲームギアミクロは非常に短期で完成させたという印象です。

――それはメガドライブミニの成功経験があればこそでしょう。ゲームギアミクロも、社内の想定を上回る予約数だったとお聞きしました。

松田そうですね。当初目標として会社に上程した数字の、およそ倍の製造数になりました。

――予約の勢いを見て増やしたんですか?

松田はい、予約開始の翌日にはストアで品切れを起こしていて……。なんとか発売までに足りるように裏で奔走しました。

奥成ソフトウェアと違ってハードウェアなので、金型や部品を製造数に合わせて用意しておかなければならないなどの諸事情がありまして。会社が掲げた目標の数ぶん、お客さまに予約していただけるようにしていたところ、翌日の午前中には再発注をかけることになったんです。

――それはすごい。

奥成「セガファンはこの程度じゃない。もっと来るよ」と、事前に呼び掛けておいたんです。最初は「さすがにないでしょう」と言っていた人も、「まあ奥成が言うんだったらいちおう備えておくか」と準備だけしておいてくれて。それがさっそく役に立ったという(笑)。

松田正直に言って、誰も信じていませんでした(笑)。というのも、私が会社に製造数を通すときには、その半分の数でも渋い顔でしたから。

――すばらしいですね(笑)。

松田それでも万が一にと思い、「これだけプラスしておけば大丈夫だろう」という数を準備していたのに、あっさりまた足りなくなって。疫禍で部材を確保するのもけっこうたいへんで、「そんなに急にプラスチックを用意できると思ってるのか?」などと言われながら……。

奥成物販チームのみんなや松田には、経験のないことをずっとやらせてしまいましたね。

――黒、青、黄、赤。カラーごとの予約比率はどんな感じですか?

松田そうですね、この4機種を作るときに、ブラックをメインに据えていちばん売れるようにしたいと奥成に話していました。ほかの3種類はなるべく同じくらい売れてくれると傾斜配分が楽でありがたいと、こちらの都合を言っていましたが……。結論としては、ブラックが飛び抜けて売れていて、ほかの3種類が続くのですが、驚くことに数百しか差がないほど揃って売れているんですよ。ですから、奥成のタイトルチョイスを信じてよかったと思います。

――奥成さんは内容以外に、売り上げのことも考えてゲームをチョイスされたんでしょうか。

奥成もちろん全部同じだけ売れればいいですが、どれかひとつだけ欲しい方がいることも考えました。とりあえずひとつ欲しいという方や、それほどゲームギアに詳しくない方にはブラックを。ゲームギアやタイトルそのものに思い入れがあって、どれかひとつ欲しいという方のために、残りの3機種があるという考えかたです。

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――自分はイエローを買いました。

松田ありがとうございます! イエローがいちばんプレイ時間が長そうですね。

――電池を長持ちさせないと(笑)。

奥成電池はアルカリの単4電池2本で3時間ほどです。オリジナルのゲームギアよりは少し長くなりました(笑)。電池の持ちにいちばん影響するのは気温や液晶画面の輝度ですので、ジャンルで差が出るということはないですよ。

――予備の電池やマイクロUSBケーブルを携帯しておきます。しかし、長丁場になるとビッグウィンドーミクロに頼りたくなります。受注販売でいいので、別売りされませんか?

奥成ごめんなさい。これは、4種類買ってくださった方へのお礼として生まれたものですので。後から別売りするのは、予約してくださった方に申し訳ないので、その予定はありません。

松田プレゼントなので、じつは物販チームの持ち出しで作っているんですが、まあまあの原価がかかっているという(笑)。受注が倍になって焦ったのが、この予算をどうするかということでした。予約される方はかなりの割合で4種類セットを選ばれていて、こちらの想定よりはるかに多かったんです。またも部材の調達と予算の確保に奔走しましたが、その甲斐がありました。

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奥成エムツーさんから発売される『アレスタ コレクション』の限定版を買っていただくと、ゲームギアミクロのホワイトと、ビッグウィンドーミクロのホワイトもついてきますよ。でも、すでに売り切れていたらごめんなさい。

――なるほど、そういう手もアリですね。それに、ホワイトというカラーも魅力的です。

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コンソール機と同様の、セガ・マークIII『アレスタ』、ゲームギア『GGアレスタ』、ゲームギア『GGアレスタII』、マスターシステム『Power StrikerII』を収録

奥成ゲームギアはもともとブラックだけでしたが、1年後にTVチューナー付きのパールホワイトという限定版が出ています。その後しばらくして、レッド、イエロー、ブルーとスモークというカラーバリエーションが出たんですよ。

松田スモークは一瞬製造されただけでしたので今回のカラーバリエーションには加えず、セガストア限定発売のデラックスパック(※ゲームギアミクロ4種類とゲームギアミクロのスモークの模型がセットになった、“ゲームギアスモーク模型つき特製額装仕様 DXパック”のこと。すでに売り切れ)にモック(模型)として同梱しました。中身こそダミーの基板が入っていますが、外側はほかのカラーとまったく同じ品質になっています。

――細かいところにまでこだわっていますね! 

奥成ゲームギアのパールホワイトって、画面のフロント部分が明るいグレーで、ブラックとは違う部材が使われているんです。同様に、ブラック、ブルー、イエロー、レッドも、見比べてみるとボタンの色が微妙に違うんですよ。

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松田もっと共通部材が多いと思っていたんですけれど、そうではなかったという(笑)。

――(笑)。そういう苦労を乗り越えて、当時のスピリットを再現する心意気がすばらしいです。