(本当は)ずっと盛りだくさんだった60周年企画のひとつ

 ゲームギアミクロが、セガ60周年を記念して発売されることが明らかとなった。当時の思い出もさることながら、見ればあまりのミクロさに度肝を抜かれるだろう。これはいったいどのような経緯で企画されたのか。ということで、3密を避けるこの状況下、遠隔で対話可能なZoomでセガ宮崎氏と奥成氏に話をうかがった。おのおの自宅からリラックスしてユニークなバーチャル背景を背負いつつご登場。距離感の近いインタビューとなった。

宮崎浩幸氏(みやざき ひろゆき)

新生セガの、ジャパン事業部副事業部長。セガを愛し、セガに愛された漢。(文中は宮崎)

奥成洋輔氏(おくなり ようすけ)

セガの社員でありながら熱狂的なセガファンでもある。メガドライブミニを成功に導いた中心人物。(文中は奧成)

“ゲームギアミクロ”インタビュー。キーパーソンに訊くコンセプト&収録ソフト選定の経緯_05
“ゲームギアミクロ”インタビュー。キーパーソンに訊くコンセプト&収録ソフト選定の経緯_06

宮崎氏の画策でめでたく部署異動?

――ゲームギアミクロは、どのようなタイミングで発案されたものなのでしょうか。

奥成もともとはセガ60周年事業の一環でした。「ふだんとは少し違うものを」とグループの社員全体で考えていたときに、グッズを企画販売している営業部の物販チームがメガドライブミニの設計にも参加したセガトイズに出させたアイデアだったんです。“ロボピッチャJr.” (※1) なんて案もあったんですが(笑)。

――話によっては、ロボピッチャやジリオン(※2)になっていたかもしれないと(笑)。

奥成そうですね(笑)。ですが、ゲームギアは2020年10月6日で発売30周年になるので、それでセガ60周年を祝おうという話で物販チームが非常に盛り上がったんです。

――うまくキリのいい数字が重なりましたね。

奥成それが、僕がメガドライブミニを作った後のことで。座席が物販チームの隣りということもあって、あれこれ相談に乗っているうちにメガドライブミニだけでなくゲームギアミクロにも前のめりになって(笑)。気がついたら開発自体に参加していました。そして、その手引きをしていたのが宮崎です(笑)。

※1 … 1984年発売のおもちゃのピッチングマシン(Jr.とすることで、その復刻版を指す)。
※2 … 1988年に発売された、おもちゃの光線銃。

宮崎いっそ集中して働いてもらおうと、奥成には物販チームに異動してもらいました(笑)。

――えっ、そうだったんですか?

奥成はい(笑)。

宮崎僕も去年はメガドライブミニに携わっていたんですが、じつは60周年事業のほうにこそどっぷりと携わっていたんですよね。本当はいろいろとスゴいことが計画されていたんですが。

奥成……お話しても、載せられるのかな?

宮崎まあ、全部中止になってしまったという。せめて発表だけでもしておけば……(笑)。コロナの騒動が一段落したら、“こんな企画が潰れてしまいました大特集”をやりたい!

一同 (笑)。

宮崎もちろん、ゲームギアミクロもコロナの影響を受けています。今回の製造は台湾です。でもだんだん製造ラインも回復してきて、なんとか軌道に乗りました。これは奥成が“持ってる”からなのかもしれません。

――ほかにも目玉がいろいろあったんですね。

宮崎このミクロが生き残ってくれて本当によかったです。でなければ、セガを60年間支えてくださっているユーザーの皆さんに、何もお返しできなくなるところだったので。傍からは何もしていないように見えるかもしれませんが、じつはいろいろ計画していたんですよ。

小さい! 軽い!

――なぜメガドライブミニと同じ“ミニ”ではなく、“ミクロ”なのでしょうか。

奥成早い話任天堂さんをリスペクトしているからですね。メガドライブミニも、任天堂さんがファミコンやスーパーファミコンでやったような縮尺に合わせ、隣りに置いてねと作りました。このミクロは小さくなりすぎましたが(笑)。

一同 (笑)。

宮崎メガドライブミニは、“メガドライブの時代”というテーマで、発売から終わりまでのタイトル群をこれでもかと詰め込んで、“時代を語る”感じで作りました。対して、ゲームギアミクロの基本コンセプトは“ギミック”です。「持ってちょうだい。ほら、かわいいでしょ? 懐かしいでしょ? 小ささにびっくりしませんか?」みたいな。ノリがちょっと違うんです。

“ゲームギアミクロ”インタビュー。キーパーソンに訊くコンセプト&収録ソフト選定の経緯_03
Zoom中、奥成氏が私物のゲームギアの上にゲームギアミクロのテストサンプルを乗せて趣味で比較をした画像を見せてくれた。画面面積は1/4くらいだが、輝度が高く、映像がくっきりととても見やすいことがよくわかる。

奥成僕は“遊べるミニチュア”だと思っています。キーホルダーとしてぶら下げるような。この小ささをおもしろがってほしいですね。あとは、デザインを縮小したメガドライブミニとは違い、操作ボタンを大きくするなどのディフォルメもしています。

――試作品で液晶ディスプレイの大きさを拝見して、「これで『シャイニング・フォース』とかやるのか!?」と驚きました。老眼なので(笑)。

“ゲームギアミクロ”インタビュー。キーパーソンに訊くコンセプト&収録ソフト選定の経緯_01
これが原寸大の画面写真。写真だと若干粗く見えるが、モニター越しに見ると、ほとんど気にならない。

奥成(笑)。いちおう、開発元のM2さんで40 代と50代の方々に、遊べるかどうかモニターしてもらっています。それで大丈夫だったので、「じゃあRPGも入れよう」となりました(笑)。

――30年前は10代でも、いまは40代ですからね。

奥成本体が完成していないので絶対的な自信を持ってお話をできませんが、今回もメガドライブミニと同じスタッフが集まり、操作性や画面表示のレスポンスなどを検証していますので。ドリームキャストのビジュアルメモリの方向キーを参考にするなど、過去の経験を踏まえつつ、いちばん操作しやすいものを目指しています。

――重さはどのくらいになる予定ですか?

奥成さきほど量ったら、30〜40gでした。これに単4電池2本ぶんの20gが加わりますから、60g弱ぐらいになると思います。

宮崎ヘラクレスオオカブトぐらいだね。

奥成持ったことがない……(笑)。

“ゲームギアミクロ”インタビュー。キーパーソンに訊くコンセプト&収録ソフト選定の経緯_02
『新甲虫王者ムシキング 激闘5弾』より

――Nintendo Switchの、パッケージを含めたソフト1本分と同じくらいのようです(笑)。

奥成電池の持ち時間は、消費電力を含めて最後まで調整するので未定ですが、できればオリジナルのゲームギアの持ち時間はクリアーしたいですね。あれが単3電池6本で3時間でしたので。

――長時間遊ぶときはどうするんですか?

奥成途中で電池が切れそうになると合図が出ますので、まずはセーブしてください。中断セーブも、メガドライブミニ準拠で4ヵ所できます。あとは、USBからも給電できますから、心配な方は電源につないで遊んでいただければ。

――収録ソフトが16作品ありますが、どのようにして決められたのでしょうか。

奥成これはメガドライブミニに続いて僕が選ばせてもらいました。過去のデータを見て、当時の販売実績や専門誌でのランキング、ニンテンドー3DSでバーチャルコンソールとして配信したときの反響などを参考にしました。

――本体1個につき、4種類のソフトが収録されたプロセスを聞かせてください。

奥成当初の商品企画は、本体1個につきソフトも1種類でした。それでバリエーションを出そうと考えていましたが、そんなにたくさんのハードをお客さんが買い揃えるというのは無茶だと思い、1個に3種類入ったものを3つのカラーバリエーションで出そうとなったんです。でもそのうち欲が出て、やっぱり4種類入りにしようと(笑)。カラーも4つに増えました。

――どの本体にも、必ずパズルがパックされているのはなぜでしょうか。

奥成最初は『ソニック』パックとか、『ぷよぷよ』パックみたいな形で、シリーズで揃えたほうが商品としてわかりやすいと思っていたんです。でもそれだと、お客さんはどれを遊んでも同じゲームをしている気持ちになるかもなと。ゲームギアミクロをひとつポケットに入れて「ちょっと遊ぶ」というときに、いろいろ遊べたほうがいいと思い、ジャンルを散らすことにしました。ただ、『シャイニング・フォース』だけは3作品まとめました。これは1、2作目が前後編ですし、お客さんも「オレは『シャイニング』だけ遊びたいんだよ」という方のほうが多いと思いましたので。それに『シャイニング・フォース外伝 ファイナルコンフリクト』だけ別というのも違うかなと。それで箸休めに『なぞぷよ』を遊んでもらおう、という感じにしています。

――なるほど。箸休めのパズルなんですね。

奥成メガドライブミニで『ランドストーカー』や『ベア・ナックル』目当てで買った方が、意外にずっと『テトリス』や『コラムス』だけやっているという声をけっこう見かけまして(笑)。やっぱりいちばん手軽に遊べるのがパズルなんですよね。とはいえ、パズルだけが入っている本体はなかなか手に取りにくいものなので、今回のような形に収まりました。

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――サウンドはどう再現されていますか?

奥成オリジナル通りです。最初は本体スピーカーで鳴るだけでしたが、「ゲームギアはステレオ音源だから、ヘッドホンがなきゃダメだよ」と言って、価格は上がったんですがヘッドホン端子が付きました。メニュー画面では新曲が流れますが、それはお楽しみにということで(笑)。

――メガドライブミニのように、古代祐三さんが書き下ろされているんでしょうか。

奥成今回はChibi-Techさんという、M2のサウンドスタッフにお願いしました。これまでもSEGA AGES版の『アウトラン』や『ファンタジーゾーン』で新曲を書いてくださっていて、チップチューンでは定評のある方です。

――発売が楽しみです。いろいろ中止になった企画がある中、実現されてよかったです。

宮崎60周年というタイミングに、たまたまゲームギアミクロというハードを企画していてよかったです。セガはいまコンテンツプロバイダですが、過去はハードメーカーだったということがDNAの中にあり、それを未来に残していけますから。ただやっぱり今回は、手に取った方に「ちっちぇえー!」と言わせることができたら僕はもうだいたい満足です。昔、ゲームギアってゲームボーイと比べて重かったでしょ? ポケットにも入らなくて。でも、今回のは軽い! 4個まるごとポケットに入りますから!(笑)

奥成メガドライブミニを楽しんでもらえたファミ通の読者さんなら、必ずおもしろがってもらえるアイテムですので。ぜひビッグウィンドーミクロ付きの4種セットとか、セガストアDXパックも購入の選択肢として考えていただいて……。そうした皆さんの反響しだいで、僕のつぎの仕事が決まります!(笑)

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