C4 LANというイベントについて語らせてほしい。なぁに、時間は取らせないよ。少しだけ話に付き合ってくれないか。

ゲームを遊びまくるイベント“C4 LAN”はなぜ楽しいのか。魅力を言語化したら、ここが故郷だと気づいた_01

 書き出しに迷った挙句、語りかけることにした。こんにちは。ファミ通.comのミス・ユースケと申します。

 2019年12月6日(金)~8日(日)に“C4 LAN 2019 WINTER”というイベントが開催された。C4 LANは年に2回ペースで開催されている。僕はこのイベントが好きで、参加するたびに記事を書いてきた。

 ファミ通.comみたいなメディアがイベントを取り扱う場合、あんなことがあった、こんなことがあったと内容をリポートするのが基本だ。

 だが、この記事はリポートというよりエッセイ寄りにしたいと思っている。報告することがあまりないからだ。とはいえ、ネガティブな意味ではない。僕はむしろC4 LANにその状況を求めている。

 あと、仕事ではなく遊びだったから、という理由もある(振替休暇と土日を使って参加した)。そもそもきっちり取材してないのだ。

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 C4 LANは“LANパーティー”と呼ばれるタイプのオフラインイベントだ。

 ゲームの最新情報が発表されるわけでも、eスポーツの大会が開かれるわけでもない。主軸は“ゲームを遊ぶこと”。好きなゲームを本体ごと持ち込み、3日間にわたって昼夜ぶっ通しで自由に遊ぶ。会期中は帰宅しても会場に居続けてもいい。

 乱暴に言えば、みんなでゲームを遊ぶだけの場である。だからこそ多くの参加者に親しまれている。

 ゲーム機やPCを設置する席は有料だ。通しの席料は1万5000円と安くはない。それにも関わらず、およそ500席が埋まった。席なしの入場チケットは2000~3000円で、延べ2000人ほどが来場。開催を重ねるごとに人気はじわじわ拡大している。

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 もうイベントの全容を紹介し切ってしまった。

 ステージ企画も実施されるし、協賛各社のブースはあるが、メインはあくまでも遊ぶこと。C4 LANのステージ企画は遊び場を自席から広い場所に移したものだと思っている。広いほうが大勢でゲームしやすいから。

 そろそろみんなC4 LANに興味がわいた頃だと思う。イベントの中身については、これまでのリポート記事やプロデューサー&開催会社の社長インタビューをお読みください。

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アイ・オー・データ機器さんのゲーミングモニター激安購入権をかけた戦い。

C4 LANの会場内を歩くとわくわくする

 僕は席を取らず、いつもふらふら歩き回っている。会場内を徘徊していると、ゲーマーたちが遊ぶ様子が目に入る。楽しそうな人が多くて気分がいい。

 気になるものがあったら写真を撮り、おもしろそうなゲームを見つけたら遊ばせてもらう。自分の好きなゲームを熱心に説明してくれる人もいる。そういう話に耳を傾けるのが好きだ。愛おしい。

 ほかの参加者とのコミュニケーションが生まれることもあるし、生まれないこともある。生まれなかったとしても気にすることはない。周りにはゲーム好きしかいないのだ。薄い連帯感とほんの少しの仲間意識。これ以上ない安心が空間に溶け込んでいる。

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人付き合いが苦手な人もいるだろう。無理にコミュニケーションを図らなくても、こういう空気に身をゆだねるだけで十分楽しいと、僕は思う。

 持ち込むゲームは人それぞれ。流行りもの、ずっと遊んでいるお気に入り、オフラインの場でわいわい遊びたいゲームなど。多人数用のアナログゲームなんかもいい。

 中には伝説のXbox用ソフト『鉄騎』専用コントローラーを自席に設置した人もいて、感動してしまった。Xbox本体がなかったので秋葉原までジャンク品を買いに行ったとのこと。これを衝動と言う。

 ジャンク品Xboxの設置に悪戦苦闘する彼を、周囲のみんなで応援するのはおもしろい。新ジャンルの一体感を味わった。

 僕は決定的瞬間を見逃してしまったのだが、Xboxは無事に起動したそうだ。これをC4 LANの奇跡として語り継ぎたい。

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急にロボットの操縦席が出現するのもC4 LANならでは。
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なかなかXboxが起動しない。「動け! 動け! 動いてよ!」とエヴァのシンジくんみたいになってた。
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楽しく遊んでいるように見えるが、実際はゲーム配信歴10年以上なのに設定がうまくいかない友人を「早くしろよー」などと煽っている図。それが妙におもしろくて、煽られている当人も含めて爆笑していた。
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タイピング好き参加者の席には『ザ・タイピング・オブ・ザ・デッド』。最近、タイピング界隈と縁がある。
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デコレーションしたPC(通称MOD PC)を持ち込むPCMODerたち。基本的にはパーツを固定できれば何でもPCとして成立するのだ。
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アタッシュケース状になっていて、3面モニターを折りたたんで収納できるPC。取っ手もついているので持ち運びにも便利。
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PCの中に緑があったり、台座がゆっくり回ったり、鳥がいたり。
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コミュニティでまとまって参加する『スタークラフト』勢。
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全体MCを担当したゲームキャスター・岸大河くんが娘ちゃんを連れてきていた。同じくキャスターのyukishiro夫妻とお子さんも撮らせてもらったのだけどピンボケだった。申し訳ない。
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キャスターのOoodaくんもいたので写真を撮らせてもらう。持っているのはCyAC15周年を記念して作られた“FPS専用アケコン”。一般的なアケコンをぐるっと180度回転させた構造で、左側のボタンで移動、右側のスティック+ボタンでエイム&射撃を行う。
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CyACとは2004年から始まったゲーム大会運営プラットフォーム。C4 LANの前身にあたるサービス(システム)だ。会場の隅に足跡が展示されていた。
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会場内にはフードも販売されていて、これがめちゃうまい。ローストビーフ丼と唐揚げ丼の写真をどうぞ。

 C4 LANは全国からゲーマーが集うイベントだ。地元のおみやげをみんなで配り合うため、各地の名物が一堂に会する場でもある。うまいものが幸せな空間作りに拍車をかける。

 ゲームやeスポーツが注目されている情勢もあってか、地方自治体がブースを出展することも増えてきた。前回は岩手県。今回は群馬県。ここで買いものをするのも楽しみのひとつだ。

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ゲームイベントの中に物産展がある。ちょっとした違和感がおもしろい。
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群馬県のご当地キャラ・ぐんまちゃんも来場。かわいい。

 僕は焼きまんじゅう、ご飯のお供、ぐんまちゃんの小さなぬいぐるみを購入。ぬいぐるみはスタッフさんが「どの子がいいですか?」と選ばせてくれた。「どれが」ではなく「どの子が」。100点満点の接客である。ぬいぐるみ好きにとって、ぬいぐるみは自分ちの子なので。

 こういったブース出展をきっかけに、ゲーマーが群馬県を好きになってくれたらうれしい。

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かわいい。

東京を飛び出してネクストステージへ

 楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、エンディングの時間がやってきた。

 ステージでは景品がもらえるじゃんけん大会が開かれたり、みんなで協賛各社にお礼を言ったりする。いつもの光景だ。落ち着く。

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協賛の日清食品さんはカップヌードルなどが大量に提供。

 名残惜しいが、今回はここまで。スクリーンにはエンディングムービーが映し出された。ムービーのラストで次回の開催スケジュールが発表されるのが通例。

 さて、つぎはいつだ。

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ばーん!

 次回の会場はGメッセ群馬。開催日は2020年7月17日~19日だった。

 開催日はともかく、みんなを驚かせたのは開催地だろう。東京を飛び出した先は群馬県。Gメッセ群馬は2020年春にオープンする大型コンベンションセンターだ。とにかく広い。

 2019年2月に公開したインタビューの中で、プロデューサーの田原さんは「2020年は大きな決断をする年になる」と語っている。この発言も群馬県のブース出展も、すべては伏線だったのだ。「鳥肌ものの伏線回収!」といううたい文句が踊りそうである。

 最初のフェーズを終了し、つぎのステップに進むC4 LAN。その進化を見届けるために、まずは有給休暇を申請する。

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おつかれさまでした。群馬でお会いしましょう。

C4 LANとはいったい何なのか

 ここで記事を終えてもいいのだが、もう少し感想を書く。

 会場内でゲーム業界や協賛企業の知り合いとたくさん話した。中にはマンネリ化を危惧する人も何人かいた。

 その声に対して、僕の疑問はふたつ。

  • 毎回のように変化していると思うのだけど
  • そもそもマンネリ化は悪いこと?

 プロデューサーの田原さんによると、C4 LANの本質は“「ゲーマーはどうやったら楽しめるのか」を本気で考えて実現すること”(前述のインタビューより)。ゲーマーはゲームを遊ぶことが好き。だったら遊びやすくするのが最重要なわけで、派手な驚きは重視しなくていいと思うのだ。

 席が散らからないようにゴミ袋を配布したり、飲みものを買うために外出しなくていいようにドリンクチケットをつけたり。2019年春からは数人で座って遊べる床席も導入された。外側からは見えにくくても、着実に変化は起きている。

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変化の軸は“ゲームを遊ぶために重要か否か”。人によって実感しにくいのは当然とも言える。

 劇的な変化がないから毎回同じイベントに見える。だから心配だ。新しいものを提供しないと参加者に飽きられてしまう。

 たしかに、この理論はわかる。何らかのイベントというものは、多くが“観ること”を目的としている。展示会、コンサート、スポーツの試合、博物館の期間限定展示など。それらはお客さんをもてなすものなので、飽きさせない心がけは大切だと思う。

 一方、C4 LANは“観る”イベントではない。“(自分たちで)する”イベントだ。“地元に根差した伝統的なお祭り”も同じタイプだと思う。あれこそマンネリの権化だが、お祭りが好きな人は前向きに取り組む。「新しいことをしよう」なんて声が挙がるとすると、外野からではなかろうか。

 C4 LANはある種の祭りだ。音楽フェスのように派手な興行ではなく、いま説明した伝統的なお祭りのほう。お祭りもC4 LANも、内部の参加者自身が空気を作り上げるもの。遊んでいるうちにいつしか自分と周囲の境目が曖昧になり、自分自身がイベントの一部になっていく。

 C4 LANの参加者の中には、ボランティアとして設営に関わる人もいる。自分たちの手で作り上げるという点もお祭りと同じ。お客さんではなく、あくまで“参加者”。

 第三者が用意する商業的なイベントとは根本的に違うのである。

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自分たちで準備して自分たちで楽しむという意味では、コミケやバーベキューなどの感覚も近いと思う。はるか未来には奇祭として歴史の教科書に載ってほしい。

 お祭りはハレの日とはいえ、数百年単位の長い目で見れば日常の一部だ。僕はC4 LANにそういった伝統行事のような感覚を見出している。

 楽しいしテンションも上がるが、同時に抱くのは「ああ、C4 LANがあるなあ」という安心である。久しぶりに実家に帰ってきた感覚に近いかもしれない。

 忙しない現代には頭を空っぽにして遊べる環境が必要だ。C4 LANはまさにそういうもの。ゲーマーとしての心の故郷。振り向けば、ただそこにあるもの。

 何度もC4 LANに参加してきた僕は、きっとその誰かの故郷の住人なのだ。LANパーティーがおもしろいらしいと聞きつけた人に「ようこそ、ここがC4 LANだよ」と告げる。

 そんなNPCみたいな生きかたを、今後もまっとうしたい。