『三國志曹操伝』が待望の初リメイク
かつて、歴史ゲームファンのあいだで一世を風靡した、コーエーテクモゲームス(当時、光栄)の『英傑伝』シリーズ。歴史上の有名武将たちのさまざまなエピソードが展開するストーリーと、本格的な戦略シミュレーションが楽しめるバトルの両輪で、歴史ゲームとしてはもちろん、バトルシステムでも高い評価を得ていた。
そんなシリーズの最後の作品である『三國志曹操伝』が、ネクソンの手でリメイクされ、『三國志曹操伝 ONLINE』として甦った。韓国・台湾ではすでに配信が開始されており、秀逸なリメイクでヒットしている本タイトル。現在、日本でも事前登録を受付中で、登録件数に応じて特典が豪華になるキャンペーンを開催中だ。
いつも“敵役”として登場していた曹操を主人公に据えた“意外性”溢れるストーリーと、「最高のゲームバランス」と絶賛されたバトルシステム、そしてPC以外のハードで発売されなかったという事情もあって、ファンのあいだでも“伝説の作品”と名高い本作。本記事では、おもにストーリー面からその魅力を紹介していく。
衝撃の“青ルート”がふたたび!
『三國志曹操伝』を有名にしたのは、いわゆる“青ルート”、もしくは“魔王孔明ルート”と呼ばれる終盤の分岐だろう。『三国志』をモチーフにした数ある作品の中でも、忠誠心に溢れ、清廉潔白、知性の権化である諸葛亮孔明を悪役にしたものはあまりない。
それが“魔王”(笑)である。しかも、見た目もやることもなかなかにエグい。どれだけエグいのかはネタバレになるので言えないのだが、“魔王”と名乗るだけのことはあると言っていい。
史実をベースにした本格派の歴史ゲームメーカーとして知られていた光栄(当時)による、まさかのifシナリオだったこともあって、この衝撃はかなり大きかった。さらに、このシナリオでは諸葛亮だけでなく、ある意外な人物も深く関わっていて、二度びっくりさせられることに……。
また、『三國志曹操伝』では、このルートだけでなく“赤黄ルート”もしくは“正史ルート”と呼ばれる分岐も存在していた。正確には、こちらも分岐後の終盤で史実とは大きく異なる展開になるので、正史ではないのだが……。
そんな衝撃の終盤戦で知られるストーリーに数多くの新シナリオを加えたうえ、曹操以外のキャラクターにも同様のストーリーを用意したのが、本作の“演義編”モードなのである。
演義編モードは、シナリオ(+出陣武将)選択→会話イベント→ステージ攻略という流れがワンセット。これをシナリオごとにくり返していく。ストーリー“曹操伝”では会話イベント、もしくは一部のシナリオでステージ中に条件を満たすと選択肢が登場することがあり、そこで選んだ行動や言動によって、曹操の“野望”ゲージ(『三國志曹操伝』では“アライメントメーター”)が増減していくという形だ。
ストーリー第3章のあるシナリオ終了時点で、ゲージがすべて青になっていると(野望がゼロ!)“魔王孔明ルート”に突入し、少しでも赤ゲージが残っていると“正史ルート”へ進む。また、それ以外でも選択肢やステージ中の達成度に応じて、セリフが微妙に変わったり、シナリオが1ステージ限定で分岐したりすることもある。
“曹操伝”のストーリーは、基本的には『三国志演義』の曹操の出番をピックアップしたものに、正史や『三國志曹操伝』独自の解釈によるアレンジが加えられた形になっている(前半戦は『三国志演義』、中盤から正史色が強くなる)。
おもしろいのは、諸葛亮にだけ「どうすればよいかな?」と聞けばいい劉備と異なり、曹操には軍師が荀彧に荀攸、程昱、郭嘉、劉曄、賈ク(※)、司馬懿などたくさんいること。会話イベントでは、事あるごとに彼らが「賛成!」、「反対!」と喧々諤々の議論を交わしだし、やや脳筋キャラの夏侯惇らを圧倒する微笑ましいシーンが見られるぞ。
(※ゲーム中では漢字表記だが、常用漢字ではないので、記事中ではカタカナを使用)
なお、各シナリオを開始するためには、“戦略編”と同様に参加武将のコストやレベルに応じた“兵糧”が必要となる。さらに、“系譜”で解放して入手するキーキャラクターを登用すると進められるシナリオも。戦略編も同時に進めて兵糧や銀銭などを稼いでおくとスムーズに楽しめる。
一方で、演義編で育てた武将は、そのまま(レベルや装備など)戦略編で使えるので、ゲームを隅々まで楽しむためにも、戦略編と演義編を並行して進めるのがオススメだ。
やっぱりスゴい人だった曹操!
『三国志』といえば、“蜀=正義、魏=悪者”というイメージを抱いている人も多いだろう。吉川英治氏による小説や、横山光輝氏のコミックなどもそうだが、現在広く世に知られている『三国志』は、後の時代の人間が蜀を主役にして書いた小説『三国志演義』が原典となっているものだ。
物語『三国志演義』は、史実をベースとしつつも主人公・劉備の立志伝的ストーリーとしておもしろくするために、じつにさまざまなフィクションが加えられているのが特徴だ。物語前半こそ、汚職の象徴である十常侍や、独裁者の董卓、ミスター裏切りの呂布といった実績十分の悪者がいて、盛り上げ役も十分だったのだが、その後が問題である。
主人公を引き立たせるための悪役が不在となってはマズい……と思ったかどうかはわからないが、呂布の滅亡後、急に曹操が悪役と化すのだ。皇室をないがしろにし始めたり、陰湿な謀略を仕掛け始めたり……。その後の展開は、仁君・劉備 VS 冷酷漢・曹操という対立構造を軸に進んで行くことになる。
だが、実際はむしろ曹操のほうが主人公っぽいことをたくさんやっている。何もないところから兵力を集め、強敵(董卓)にぶつかっていったり、ときどき失敗して城を奪われたり(濮陽の戦い)、頼れる部下を失ったり(宛城の戦い)しながらも、かつての敵からつぎつぎと仲間を増やして勢力を拡大していくのだ。
屯田制を敷いたことで兵力・兵糧補給で優位に立ち、覇者への道を駆け上がっていった曹操。ずっと後の世にも受け継がれていくことになる法制度や税制を整備した曹操。それほどまでの英雄であるにも関わらず、『三国志演義』でだいぶ悪者扱いされてしまったせいか、いまひとつ人気のない曹操……。
そんな彼が、主役として大活躍する物語を、本作では存分に楽しんでほしい。
……という話をした直後ではあるが、もうひとつ耳寄り情報を。本作では戦略編を少し進めると、君主を曹操からほかの武将に変更することができるようになる。
「曹操ってちょっと悪そうだからイヤ!」という人は、いつでも好きな武将に変えてしまえるのだ(笑)。ゲームを進めて系譜で解放することが条件ではあるが、曹操だけにこだわらない、こんな要素も用意されているのは、非常にうれしいところだ。さまざまな“if”をスマホで楽しんでほしい。