本格シューティングアクションながらも、若年層にも訴求するタイトルに

 2016年6月14日~16日(現地時間)、アメリカ・ロサンゼルスにて、世界最大のゲーム見本市E3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)2016が開催。『ReCore』は、昨年行われたXboxのプレスブリーフィングでサプライズ発表されて話題を集め、今年の“Xbox E3 2016 Breifing”でも大々的にピックアップされた、マイクロソフト期待のXbox One/PC向けソフトだ。日本では、あの稲船敬二氏が開発に参画していることでも注目を集めている。そんな稲船氏に、E3 2016前日に行われたXbox Showcaseにて、お話を聞く機会があった。国内での発売日も9月15日(海外は9月13日)とアナウンスされた『ReCore』は、いまは「バランス調整とバグ対応をしています。あとはフレームが落ちる部分があるので、その調整ですね」(稲船氏)という状態にあるという。

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『ReCore』稲船敬二氏に聞く テレビドラマのような感覚で、“シーズン2”、“シーズン3”と作っていきたい【E3 2016】_01

――今回のE3で公開したPVは、これまでと違って少しポップな感じでしたね。

稲船 そうですね。ちょっとスタイリッシュに攻めてみました。物語を語るのではなくて、キャラクターの紹介的に作ってみたんですよ。本作は、犬のロボットだけじゃなくていろいろなキャラクターが使えるので、セスとかダンカンという。マックというのは犬のキャラクターではなくて、“マック”というコアなんですね。マックをゴリラの形にもできるし、マックをクモの形にもできます。キャラクター性があるマック以外に、ダンカンとセスというのが今回出てくるので、それを紹介した映像ですね。

――セスとダンカンにも、それぞれキャラクター性があるのですね?

稲船 あるんですよ。

――見た目は変化する?

稲船 はい。たとえば、マックとセスとダンカンで同じ姿形にすることはできます。要は着せ替えなので。いろいろなカスタマイズができるので(いまはあまり語れないのですが)、犬の形もいろいろなカスタマイズで色を変えたりとか、形を変えたりとかはできます。

――それぞれのキャラクターはどこで個性化を図るのですか?

稲船 それぞれ感情があるんです。しゃべったりします。

――あるキャラクターはアグレッシブで、ほかのキャラクターはおとなしかったりとか?

稲船 これはストーリーにかかわってくることなので、あまりお話しできないのですが、人格みたいなものがあるので、そこは触れ合うものがあります。感情移入できるようにしているんですよ。

――去年お話をうかがったときは、“コア”を入れ替えるみたいなお話でしたね。

稲船 何個が友情を持てるんですよ。それがマックであり、セスであり、ダンカンです。

――それは最終的にはどれくらいに?

稲船 キャラクター的には3つですね。着せ替えのロボット的な部分では5種類くらいあります。自分の使いやすいようにやれる形ですね。いっしょに連れていけるのが2体いて、攻撃にも参加するので。

――主人公を入れて、3人でパーティーを組んでゲームを進めていく?

稲船 そうですね。

『ReCore』稲船敬二氏に聞く テレビドラマのような感覚で、“シーズン2”、“シーズン3”と作っていきたい【E3 2016】_05

――正式発表から1年経ちますが、この1年で「こう進化した」といった部分などありましたら。

稲船 そうですね……マイクロソフトサイドとか、プレイをする人たちの意見をどんどん入れながらやっているので、悪い意味じゃなくて、「こういうふうに行きたいな」と言っていたのから少し角度がずれたりとか……というのは、この1年間の中で何度かありました。

――ああ、具体的にはどのような感じで?

稲船 たとえば、友情などの世界観的な部分で、僕が関わっていることが多いのですが、それをやり過ぎるとバトルがおもしろくなくなってしまう。そういうバランスを取るのに、そこを薄めてみたりとか。

――友情が深くなるとバトルがおもしろくなくなるのですか?

稲船 そこは現状では語ってはいけない部分に関わってきまして(笑)、現状はお話しづらいですね。

――今回、マイクロソフトのカンファレンスで、Xbox One SやProject Scorpioが発表されましたが、それに対してはいかがですか?

稲船 時代の流れですよね。4KとVRへの対応を考えたら、やはり(現行機だと)処理が追いつかない。だから、新しいハードを出すか、いままでに追加していくということをやっていかないと……。どこもVRへの対応に力を入れてきますので。

――VRは海外でもものすごい盛り上がっていますよね。

稲船 技術ですからね。海外の方はテクノロジーが好きなので。日本人はテクノロジーよりも、“どうおもしろいか”が好き。そこが、海外と温度差があるところかもしれません。テクノロジーがある程度ないと、デベロッパーでも海外では認められないところがりますよね。ですので、そういう意味では、VRはテクノロジーを出しやすい。

――稲船さんはVRに対してはどのような捉えかたをしていますか?

稲船 VRに対しては、めちゃめちゃ積極的というわけではないです。VRはテクノロジー的にはおもしろいし、やってみたいこともいろいろあるのですが、それをビジネスに展開するための方法論というのが、ちょっとまだ誰も発明できていないというか。そこでみんな困っているんですよね。大手メーカーさんとかも。作ってもいいのですが、かけた資金はどこで回収するのかということで、二の足を踏んでいる人が多いように思います。資金を回収する明確なものができていない。「いくらまでならお金をかけられるのか?」、「どこまで作っていいのか?」というのが、まだ試作の段階から出ていないのがいちばん大きいのかと。

――さきほど、海外の方は技術が好きだと言っていましたが、日本の開発陣に伍していくためには、技術を磨く必要があるのですね? それに対して、稲船さんはどのような取り組みを?

稲船 技術は磨けないと、僕は思っています。だから、今回の『ReCore』で言うと、技術のあるところ( Armature Studio)と組んでいるんです。日本国内で技術のある人たちを探しても、内製のチームだったり、特定のメーカーと組んでいるところがほとんどです。僕らが手を組めるところはあまりありません。その点海外のほうが組みやすい。インディーのゲームを見てもらえばわかるのですが、海外では「これインディーなの?」というクオリティーの高い人たちがいるじゃないですか。彼らは2~3人ですごいものを作ってしまうんですよね。この国の人たちは。彼らに何が足りないかというと、コンテンツを作るオリジナリティーだったり、世界観の構築だったりします。その部分は僕らにリスペクトがある。そこをマッチされることが、いちばんおもしろいのかなと思っています。

――それが、『ReCore』の方法論なんですね。ところで、なぜ技術は磨けないのですか?

稲船 さっきの話でいうと、「技術が重要だよ」ということを、本当の意味で日本人が思ってないということがあるかもしれません。マイナーなスポーツよりは、野球やサッカーを選んだほうが脚光を浴びるのといっしょです。それは野球やサッカーがかっこいいという価値を持っているからです。それと同じで、「技術がすごい」ということを本当に思ってないから、そっち側を目指す人があまりいない。こっち(北米)では、超天才がゲームを作り始めたりするわけです。

――それは、ゲームのポジションが日本と北米とでは違うということもあるのかもしれませんね。

稲船 こっちで成功したときの成功と、日本で成功したときのレベルは違うかもしれないですね。日本で成功したとしても、『マインクラフト』のレベルまでいくのは、なかなか難しい。日本では、すごいゲームを作っても、「ふーん、すごいね」で終わってしまうんです。なぜ日本が……というのは、根本が深いところにあって、社会の問題と言えるかもしれません。日本だとお金をかけてもあまり売れないという理論になってしまいます。となると、海外でやるしかなくなってしまっているところが、苦しいところです。

『ReCore』稲船敬二氏に聞く テレビドラマのような感覚で、“シーズン2”、“シーズン3”と作っていきたい【E3 2016】_06

――『ReCore』にかかる期待も大きくなるということですね。

稲船 注目していただけているので、いいものになったかなとは思っています。もっともっと、作りこんでやっていきたいです。『ReCore』の値段がいくらかご存じですか?

――いえ。いくらなのですか?

稲船 40ドルなんです。フルプライスが60ドルじゃないですか。ダウンロードで安いのは20ドル。その中間で出すんです。

――それはどのような意図で?

稲船 ネガティブに捉えられたくないのですが、マイクロソフトにしては珍しく、ティーンに向けたタイトルなんですね。本格的なシューティングアクションで、血がでない。Xboxのイメージって、“ゲーマーに向けた、ある程度大人向けのタイトル”という印象が強いのですが、それをちょっと覆したいと思っているんです。それがお求めやすい価格にした理由です。そういった意味での戦略タイトルでもあるので、これでどんどんシリーズとして続けていけるといいのかなと思っています。ふつうのゲームの『1』、『2』、『3』と作るのではなくて、どちらかというと、ドラマの“シーズン1”、“シーズン2”といった位置づけですね。ドラマなので、毎週チャンネルを合わせれば気軽に見られる。その感覚のゲーム作りをやってみているんです。

――となると、来年“シーズン2”がでて、再来年に“シーズン3”が出るなんてことも?

稲船 目指したいですね。構想的には長いものを考えています。もちろん“1”でも切れるようにはしていますが、長い構想になっています。

――アイデアは先々までできている?

稲船 そうですね。世界観は大きく作りこんでいます。あとは、ユーザーさんの反響しだいです。ドラマもそうですが、“シーズン1”が視聴率よくないと“シーズン2”の制作が決まらない。

――たしかに視聴率は大きいですね。

稲船 だから、そこはシビアですね。「もう“シーズン2”を作っています」というわけではないですが、そういう意味合いでも、マイクロソフトにとってもチャレンジタイトルです。

――最後に日本のファンに向けてひと言お願いします。

稲船 E3に来ると、毎回「がんばらないといけないな」とすごく思うんです。今回も日本人として「がんばらないといけない」と思ったし、もっともっと世界に通用するタイトルを、日本発信で作っていけないと、なかなかものを言えないなというので、僕だけではなくて、いろいろな人ががんばってくれていますけど、僕もそのひとりとしてがんばって、この『ReCore』でがんばっていきたいですし、もちろんたくさんの日本の皆さんにも遊んでいただきたいですね。楽しんでいただけるタイトルにはなっていると思うので。いわゆる“洋ゲー”にはなってない自信があるので。そこをしっかりとみんなにみていただければと思っています。

『ReCore』稲船敬二氏に聞く テレビドラマのような感覚で、“シーズン2”、“シーズン3”と作っていきたい【E3 2016】_02
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