さらに広がる“『Halo』ユニバース”
2015年7月9日~7月12日(現地時間)、アメリカ・サンディエゴのコンベンションセンターにて、エンターテイメントコンテンツの祭典、Comic-Con International 2015(通称:コミコン)が開催。2日目の7月10日には、『Halo 5: Guardians』をモチーフにしたパネル、“Hunt For the Truth: Following the Trail of the Halo 5: Guardians Story”が行われた。登壇者は、Halo Entertainmentのスタジオヘッドにして343 Industriesのエグゼクティブプロデューサー、キキ・ウルフキル氏をモデレーター(司会)に343 Industriesのフランチャイズ・ディベロップメント・ディレクター/フランク・オコナー氏とナラティブ・ディレクター/モーガン・ロックハート氏、そして映像制作会社The Sequence Groupのディレクター/イアン・カービー氏、Ayzenbergのクリエイティブ・ディレクター/ノア・エイキン氏という5名。
詳細な世界観を持つ『Halo』シリーズでは、“『Halo』ユニバース”として、ゲーム以外で、映像などでその世界観を補完するコンテンツを随時展開している。たとえば、2014年にリリースされた『Halo: The Master Chief Collection』と同時に提供された映像『Halo Nightfall』はそのひとつ。昨年のコミコンでワールドプレミアが行われた『Halo: Nightfall』は、『Halo 5: Guardians』でもうひとりの主役となったスパルタンロックが登場するなど、“『Halo』ユニバース”を語るうえで、重要な位置付けの映像コンテンツとなっている。さまざまなコンテンツを行き交いながら世界観を紐解く……というのが、“『Halo』ユニバース”の楽しみかたと言えるだろう。
「『Halo』では、これまで書籍やライブアクション、アニメ、グラフィックノベル、そしてゲーム自体などさまざまな媒体を使ってストーリーを語ることに情熱を注いできました。こうした異なる媒体を持つことは、刺激でもあるがチャレンジングな取り組みです。一方で、受け取る皆さんにとっては、“『Halo』ユニバース”を異なる視点から見るよい機会だと思います。全体がいっしょになって深みのあるストーリーを提供してくれるはずです」と、キキ・ウルフキル氏。たしかに、ひとつの世界観を異なる立ち位置から楽しむことは、ファンにとっては大きな喜びだ。
パネルのタイトルにある“Hunt the Truth”は、『Halo 5: Guardians』をモチーフにしたポッドキャスト。『Halo 5: Guardians』では、3月に“Traitor(弾丸)”という映像を展開し謎を投げかけ、さらにテレビCMとして、マスターチーフとスパルタンロックの異なる立場からの映像を展開したらしいが(以下にその3本の映像を掲載)、「“Traitor”とテレビCMのあいだを埋める手段を提供する必要がありました。そこからいろいろな疑問が出てきたんですね。最初は25分の予定でしたが、いろいろと構想が膨らんできました」とエイキン氏。
「“Hunt the Truth”はとても有意義な展開だと思います。ぜひともストーリーを聞いていただきたいです」とはオコナー氏。ポッドキャストでも『Halo』ユニバースが展開されるとは、少し意表をつかれる思いだが、“Hunt the Truth”はこの9月にもシーズン2を予定しているとのことなので、世界観の広がりを語る適例と言えるかもしれない。“Hunt the Truth”が日本語対応してないのがいささか残念なところだが、『Halo』ユニバースの広がりを実感するためにも、一度聴いてみてはいかが?
会場では、“『Halo』ユニバース”の広がりを示すものとして、ノベルやコミックが紹介された。『New Blood』は、バックがODSTとなるまで、そして人々がスパルタン4になるまでの詳細が語られる。『Last Light』はマスターチーフの視点ではなく大きな視野で“『Halo』ユニバース”を見ることができる。『Halo5: Guardians』以前のイベントも出てくるとのこと。フィルムノアール的な展開で、スリラー的なニュアンスを持っているらしい。ブルーチーム内の相互関係もわかるのだとか。『Hunters in the Dark』は同様にフィルムノアール的な展開が楽しめる。海外ではバックの人気が高いようだが、「ゲームをプレイすれば、タナカやヴェイルのよさもわかるはずです」とオコナー氏。ちなみに、タナカとヴェイルは、バックとともに『Halo5: Guardians』ではスパルタンロックのファイヤーチームのメンバー。E3では、343 Industriesの開発者が、『Halo5: Guardians』では、深みのあるストーリー展開のためもあり登場キャラクターを増やすという主旨の発言をしていたが、“『Halo』ユニバース”の広がりを見ると、さらに納得できるような気がする。
ノベルやコミックなど、さまざまな展開を見せる『Halo』ユニバースだが、その最新コンテンツとして、紹介されたのがアニメシリーズ『The Fall of Reach』。こちらは三部作となる模様で、スパルタンプログラムが生まれたころが描かれるという。「シリーズのゴールはマスターチーフやブルーチームの成り立ちをより深く理解してもらえるようにすることにあります。6歳の子どもたちが家族から引き離されてプログラムに入れられるという暗黒の時代で、子どもたちが苦悩しつつ、お互いの関係を築いていく様子がわかるようになっています」と、イアン・カービー氏。この『The Fall of Reach』は、『Halo 5: Guardians』の限定版を購入すれば視聴可能になるとのこと。さらに、その1週間後からは“Halo Channel”で見られるようだ。
“Halo Channel”と言えば朗報が! つい先日“Halo Channel”のアプリがiOSとAndroidで配信を開始したというのだ。こちらは現時点では英語対応のみであるものの、手軽に『Halo』関連のコンテンツに触れられる絶好の場所と言えるだろう。
さて、パネルでは、さすがに最新作の『Halo 5:Guardians』に触れないわけにはいかない……というわけで、いくつかの興味深い発言を聞くことができた。それによると……。
「本作では、マスターチーフがどこに行き、何をしてきたのかが、ふたつのチームの視点を通して語られることになります。ストーリーとキャラクターをどのように生き生きしたものにするかが課題でした。ふたつのチームの4人のキャラクターが、それぞれチームに貢献するので、個性的なキャラクターとして楽しんでもらえると思います。ストーリーを楽しみたいのならば、ゆっくりと時間をかけて、詳細を噛み締めながらプレイしてほしいですね」(ロックハート氏)
「ストーリーを語るキャンペーンに協力プレイが組み込まれているので、調整に難しいところもありました。異なるキャラクターやスタイルで何度もプレイすることによって、ゲームやストーリーを大きな視野で深く理解できると思います」(オコナー氏)
ちなみに、これだけユニバースが広がると、世界観の統一性に苦慮しそうなものだが、「さまざまなクリエティブな努力がパズルのように組み合わされてストーリーが構成されていますが、どのように仕事をしているのですか?」との、ウルフキル氏のユーザーの疑問を代弁しての質問には、「つねにネットワークを駆使して連携をとっています。複雑なようですがコミュニケーションが取れているので、けっこうシンプルです。軸となるメインストーリーがあって、そこからさまざまな方向に進められるんです」(オコナー氏)とのこと。
この発言を聞いて、やっぱり根幹となる揺るぎないバックボーンがあってこそ初めて、“『Halo』ユニバース”という広がりを持たせられるんだなあと改めて認識しつつ、世界観を構築するクリエイター陣の良好なリレーションシップを実感。いずれにせよ、今後のさらなる“『Halo』ユニバース”の広がりが楽しみです。