いまや新作がリリースされれば全世界数百万本のセールスが約束される、ユービーアイソフトの看板タイトル『アサシン クリード』シリーズ。2012年11月15日にPS3版、Xbox 360版が発売された最新作『アサシン クリードIII』はひさびさのナンバリングタイトルとなる(Wii U版は12月8日発売予定)。舞台を一新して、主人公も3作品に渡って活躍したエツィオから新たなアサシンへと代替わり。これまでにないレベルの新要素が追加されている。ストーリーは実際にプレイした際のお楽しみ(序盤からユーザーをいい意味で裏切るサプライズ満載!)ということで、ここでは新主人公・コナーのアクションやシステム面で進化したポイントを紹介したいと思う。

広大かつメリハリの利いたフィールド

 『アサシン クリードIII』の舞台は18世紀のアメリカ(厳密に言えば、まだアメリカではなくイギリスの植民地)。アメリカ独立戦争の裏で活躍したアサシン、コナーに扮して大小さまざまなミッションを遂行し、歴史の流れを見届けていくことになる。
 『アサシン クリード』シリーズで毎回話題になるのが、綿密な考証と圧倒的なグラフィックで当時の街並みを再現したフィールド。今作ではボストン周辺が舞台に選ばれ、リアルに再現されている。作品の時代設定がイギリス人のアメリカ大陸入植が始まったころということで、シリーズ1作目(十字軍と戦争中のエルサレム)や『II』(ルネサンス期のイタリア)の舞台と比べて華やかさには欠けるが、砂煙が舞う埃っぽさ、ならず者の”いかにも”な外見などは、日本人が西部劇の映画などで触れる”開拓者時代のアメリカ”がそのままといった感じ。当時といまのランドマークの比較は、【こちらの記事】でけっこう詳しく紹介しているので、どれだけ忠実に再現されているかを確認できるはずだ。

アメリカ独立戦争の裏で新たな暗殺者が躍動!『アサシン クリードIII』プレイインプレッション _02
アメリカ独立戦争の裏で新たな暗殺者が躍動!『アサシン クリードIII』プレイインプレッション _03

 広大なアメリカ大陸が舞台ということで、街以外のフィールドが充実しているのも『III』の特徴だ。ボストンと同じようなタイミングで行けるようになる”フロンティア”。このフィールドはコナーが生まれ育った集落以外は、ほぼ無人で森と河で構成された地域で、本作からの新システム、狩りが行なえる。狩りの基本はウサギや狐、鹿やビーバーといった小~中型の動物それぞれの習性を見極め、適切な方法(罠での捕獲、囮で誘導するなど)で捕まえ、剥ぎ取った皮や肉をアイテム化していくのだが、まれに狼や熊などの肉食獣との戦闘になることも! 人間との白兵戦とは一風変わった戦い(決められたボタンを入力していくQTE形式)なので、新鮮な気持ちで臨めるはず。動物に対してもコナーの暗殺術は通用するので、相手(動物)に気づかれなければ空中から飛び降りてのエア・アサシンなどの技が決まり、獰猛な獣も一撃で仕留められる。

アメリカ独立戦争の裏で新たな暗殺者が躍動!『アサシン クリードIII』プレイインプレッション _04
アメリカ独立戦争の裏で新たな暗殺者が躍動!『アサシン クリードIII』プレイインプレッション _05

 そして、もうひとつ何度も利用することになる場所が”ダペンポート・ホームステッド”。コナーとその仲間たちが生活するこの地では、入植者を増やせるホームステッドミッションをこなすことで、屋敷で行う交易や屋敷そのものをグレードアップできる。ほかにも『アサシン クリード ブラザーフッド』から導入されたアサシン教団の強化をはじめ、シリーズ作品のサイドミッションは多少形を変えつつも『アサシン クリードIII』に受け継がれている。
 しかしサイドミッションの目玉といえば、初登場の”海岸ミッション”だろう。ある程度ストーリーが進むとアサシン教団専用の船”アキーラ号”が完成し、海上でのミッションが受けられるようになる。コナーは船長として乗船し、操縦全般を担当。ミッション中にはイギリス海軍と遭遇することが多く、海岸ミッションでしか味わえない船どうしの砲撃戦を楽しめるのだ。

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敵も味方も進化したアクション

 『アサシン クリード』のアクションといえばフリーラン。R2/トリガーを入力しっぱなしにしているだけで、目の前の地形に最適な移動方法を取ってくれるため、誰でも気持ちよくフィールドを疾走できるこのシステムだが、本作では木の上でも適応されるようになった。木の幹が枝分かれしていたり、足場になる枝があれば、ピョンピョン跳び移れるため、行動範囲や暗殺方法の自由度が大幅に広がっている。ちなみに今作では現代世界のビルをフリーランで上っていくパートも登場する。難易度はそれほどでもないのだが、背景がビル群に変わっただけで”高いところで危ないことをしている感”が倍増しており、怖さが跳ね上がっている。ここも個人的には注目してもらいたいポイント。

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 戦闘は主人公の生きる時代が推移したことで、多くの新武器が登場。主人公・コナーはシリーズ伝統のアサシンブレードに加えて、トマホークや弓といったアメリカ先住民の血を引くキャラクターらしい武器が基本装備。トマホークは鈍器だが、前作までの剣とほぼ同じ使い勝手。暗殺使用時は”重くて痛そう”なモーションの演出が見られるので注目してほしい。弓は戦闘時はもちろん動物を狩るときにも有用。なにより音の出ない飛び道具として重宝する場面が多い。また今作では回復アイテムがなくなったかわりに、時間経過で体力が回復するシステムになっている深手を負っても粘れば生き残れる可能性が高くなっている。
 歴代のアサシンに劣ることのない武装、アクションをそなえているコナーだが、『アサシン クリードIII』の敵はいままでにないレベルで進化しており、シリーズ経験者でも油断は禁物。都市部で遭遇する敵兵のほとんどが銃を持っており、障害物の少ない場所では離れていても致命傷を食らうことがあるうえ、近接戦を挑んでくる敵は防御がうまく、ボタン連打の攻撃だけで倒せる確率はかなり低い。本作では力押しではなく、なるべくカウンターで相手のバランスを崩してから攻撃に移ったほうが無難だ。また、相手も銃を持っているがコナーも弓や銃、ロープダート(投げ縄で相手を吊るし上げて始末する“必殺仕事人”的武器)など飛び道具が充実しているので、距離に応じて武器を使い分けることでも、ある程度は対抗できるはずだ。
 敵兵といえば、戦闘能力だけでなくアサシンをいぶり出す視力&洞察力も鋭くなっている印象。人ごみや草むらに隠れるステルスアクション、隠れるのが無理なら弟子のアサシンを召喚するなどして修羅場を乗り越えていきたいところだ。

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 多数の新要素、キャラクターやマップを一新しているだけでなく、これまでのシリーズ作品よりボリューム感も充実している。このストーリーモードに加えて、マルチプレイを搭載しているのでボリューム面で不足を感じる、なんてことはないだろう。難しい操作が要求されるタイプのアクションではないので、ゲームが好きなユーザーが緊迫感や爽快感を存分に楽しめる作品といえる。

著者紹介 マンモス丸谷
ファミ通Xbox 360で『アサシンクリード』シリーズの記事を担当(『II』以降)していたライター。『アサシン クリード』ではアクションもさることながら、”アニムスデータベース”もお気に入り。「ゲームで得た知識を歴史の教養として披露してドヤ顔できるのがいい」とのこと。